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新金融安定化策

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FINANCIAL STABILITY PLAN
http://www.financialstability.gov/docs/fact-sheet.pdf

★Financial Stability Trust:
1.その銀行が不況下でも貸出を続けることができるかを評価する
- 銀行の開示をより透明にする B/Sのエクスポージャーの開示など
- 銀行のエクスポージャーに対しての正確で現実的な評価
- ストレステスト-経済環境がより厳しくなった場合に貸出を続けるに十分な資本を有しているかの評価(今後どのくらい損失が出るかシミュレートするのだと思う)
- 1000億ドル以上の資産を保有する銀行は全て、これらの評価とストレステストを受けなければならない。
2.このストレステストに合格した銀行は、財務省の提供する資本を利用することができる。
- 資本の提供は転換型優先株によって行われる
- 資産が1000億ドル以下の銀行も監督局によるレビュー後に資本にアクセスすることができる。

★Public-Private Investment Fund:
- 政府と民間で資本を出して、政府の資金でレバレッジをかける
- 当初は5000億ドルを上限にスタート。いずれは1兆ドルが上限に
- 公的資本を最小化し民間資本を最大化するだけではなく、民間資本が問題のある不良資産の値段を決めることができる

★Consumer & Business Lending Initiative – Up to $1 Trillion
- TALFの規模を最大1兆ドルに拡大(現状は2000億ドル)
- 財務省の拠出する資金を200億ドルから1000億ドルにする
- 対象は新たに組成されたAAAのものに限定する
- CMBS(商業不動産から組成)、ノンエージェンシーRMBS(住宅ローンから組成)、社債から組成された証券も対象に含める。従来のTALFは、自動車ローンやクレジットカードローンから組成された証券が対象。

★New Era of Transparency, Accountability, Monitoring and Conditions
1.銀行は、支援をどれだけ貸し出しに結び付けたか
- 支援を受ける銀行は、どのようにして貸出強化を行うのかの計画書を提出しなければならない。
- 支援をうけた銀行はどれだけの貸出を行い、どれだけのABSを購入したかの詳細を、月間報告書に書かなければならない。
- 納税者はこれらの情報を財務省のサイトで知ることができる。
2.支援を受けた銀行は全て、住宅差し押さえ緩和プログラムへ協力しなければならない。
3.普通株配当、自社株買い、他社買収の制限
- 四半期普通株配当の上限は、$0.01
4.上級役員の報酬を、年間50万ドル以下に制限。
5.政治的干渉の禁止

★Housing Support and Foreclosure Prevention
総合的なプランを間もなく発表する。
- 住宅ローン金利の押し下げ。
- 中間層住宅保有者の住宅差し押さえ防止のために500億ドルを使用する。
- 差し押さえ回避のための、ローン内容の変更の基準とガイドライン作成

★Small Business and Community Lending Initiative
数日内にアナウンスがある。(自営業者向けのプログラムだと思います)
- AAAのスモールビジネスローンの購入
- スモールビジネスローンへの保証を75%から90%へ引き上げる
- ローンのフィーの削減



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感想。
支援する銀行をしっかり選別して監督も強化するのは良いと思います。ストレステストも膿を明るみに出すためには良いことだと思います(金融システムが耐えられるかどうかは別ですが・・・)。でも、肝心の「どうやって銀行のバランスシートを綺麗にして再生させるか」については、詳細はほとんどわからないまま。

・不良資産の買い取り価格はどうするのか
・納税者の負担は最終的にどれだけ膨らむのか
・銀行の資本不足はどうするのか(TARPの残りだと足りない可能性大)
・結局、金融システムは回復することができるのか

これらについては不透明なままです。

TARPの残り3500億ドルを元にFedや民間資本を利用するということで、合わせて最大2兆ドルという数字を出してきましたが、政府の出す”資本”と、買い取りの”資産”の総額は区別しておかないといけないです。

金融システムに空いた巨大な穴は、民間の出し手がいない現状では政府の資本で埋めなければならなく、その穴は1兆ドル以上という試算が多いので、単純な計算でTARPの残りだと足りないのです(だから色々と策を弄している)。民間が不良資産を買い取るのだったら自分が損失を出さないように思いっきり低い価格で買い取ろうとするし、その価格で銀行が売却したら銀行は資本不足になり、その資本不足を埋めるのは政府の資金しかない。民間にもうちょっとましな価格で買い取らせようとするんだったら政府が損失保証などをしないといけない。最終的には、政府かFedが1兆ドル以上の損失を引き受けないといけなくなると思います。(これを政府関係者も民間資本もわかっているから、こんなに揉めている。特効薬は無いのです)


昨晩の株式市場の反応は、単なる「Buy-the-rumor and sell-the-news」なのか、それ以上の失望感や、現状の厳しさに対する新たな認識があったのか・・・微妙なところです。今のところ為替や債券の動きを見る限りは、パニック的な印象は受けません。とりあえず、米株価指数は11月の安値を守れるかが焦点になるでしょう。

あと、誰かも言ってたことなのですが、借金の穴を借金で埋めて、借金による消費を今後も続けようとするのはいい加減止めた方が良いのではないかと思います。短期的には今回の危機の衝撃を吸収するために仕方がないとは思いますが、長期的にも同じ姿勢を続けると、暴れまわるマネーに実体経済が翻弄され続けると思います。



(金融安定化策について色々読んでからまた何か書くかも。書かないかも)
2件のコメントがあります
  • イメージ
    はんちくさん
    2009/2/11 13:05
    こんにちは

    > Buy-the-rumor and sell-the-news

     雇用統計を完全無視してまで、「期待上げ」を行っていましたので、これでしょうね。対になる動きと言いますか。

     発表の内容がもう少し踏み込んでいたとしても「出尽くし」とか言って、下げ終わりだったかもしれません。幅の大小はあったと思いますが。

     アメリカは相変わらず、日計りで一方向にパニック起こしますので、「下げ幅=大きな失望感」とは一概に言えず難しいところです。
     

     「貯蓄」ばかりで、血が回らなくなっている日本もよくありませんが、借金ベースで経済を成り立たせているアメリカは、もっと良くない。
     クレジット破産する阿呆がまだ居るといいますが、「身の丈を超える」ことを許すような仕組みや環境ができたとき、すでに破綻は始まっています。
     
     今回の危機が一段落しても、本質を変えなければ、似たようなことを繰り返すでしょうね。

     今起きている問題は、「たまたま歯車が狂った」わけではなく、「金融市場」の仕組みそのものの問題と考えます。これにメスを入れないと、いくら金をつぎ込んでも同じです。
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    NGTNさん
    2009/2/11 22:45
    出尽くし売りの面が大きいでしょうね。オバマ当選後は、期待上げ⇒出尽くし売りの繰り返しな感じです。それに加えて、個人的には、重たい雰囲気になってきたというか、現実の厳しさについての市場関係者の認識がもう一段深まった感じがします。金融システムの穴も実体経済の穴も大きすぎます。

    アメリカの個人の借金体質は、今のところ強制的に修正させられていますね。米個人消費の衰退に伴う米貿易赤字の縮小は、日本や中国の貿易黒字の縮小と表裏一体なので、日本の輸出業も困難な時期が続くでしょう(経済学的な言い方をするとグローバルインバランスの修正ですかね)。回復後の世界が、再度、クレジットバブル&米個人消費に頼るようですと、同じことの繰り返しになりますね。もちろん金融市場の緩いルールも変えないといけないです。
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