ヨッシーさんのブログ

最新一覧へ

« 前へ336件目 / 全455件次へ »
ブログ

私を変えたあのおじさんの言葉

私はまだ25歳位で、競馬を卒業して、競輪にどっぷり浸かり、毎週末競輪場に通い詰めていた頃の話です。

私はざわつく競輪場でいつも同じ1コーナーあたりの人もまばらな席に座っているおじさんの存在に気がつきました。当時60歳前後だったでしょうか、ちょっと年齢不詳のあるおじさんでした。その人は来る日も来る日も同じ辺りの席に腰を下ろし、競輪を眺めています。私がなぜその人のことが気になったかと言えば、普通は競馬でも、競輪でも1レース終わると
次のレースの馬券や車券を買いに席を立ち、戻ってきて観戦します。そして、そのレースが終わるとまた次のレースへ、という風にレースが終わるごとに席を立つのです。

でも、そのおじさんが席を立つことはほとんどありません。私は前売りで車券を買っているのかなと思いましたが、その雰囲気もありませんでした。でも、時たま席を立って車券を買いに行くと、その後数レース続けて買ったり、また、逆にまだ途中なのにふっと帰ってしまうこともありました。

私は競輪場で変な動きをするそのおじさんが毎回気になって仕方ありませんでした。そして、ある寒い日のことコーヒーを持って、そのおじさんのところに行ってみました。そして、初対面のおじさんに思い切って「おじさんはどうして車券を買ったり、買わなかったり、せっかく来たのに途中で帰ってしまったりするんですか?」と聞いてみました。

すると、おじさんは「お兄ちゃんは競輪場に何しに来てる?」と逆に問いかけてきました。私は「それはもちろん儲けるためです。」と答えましたが、すかさず「朝の1レースから最終レースまで全部買うのか?」と聞かれ、「せっかく来ているのだから、もちろん。」と答えると、おじさんはにっこり笑って、「お兄ちゃん、儲からないだろう。」と言いました。確かに毎週競輪に来ても儲けて帰ることなどほとんどない状態でしたので、返答に窮し、黙っていました。

私とおじさんの間の沈黙は、しばらく続きました。バンクではレースが始まって客の歓声が飛んでいましたが、私の耳には入ってきません。そして、おじさんが「儲けたいか?」と唐突に聞いてきましたので、「もちろんです。」と即答しました。

「お兄ちゃん、風だよ、風。」とおじさん。「風?」意味の分からなかった私は聞き返しました。おじさんはコーヒーをすすりながら、「お兄ちゃん、よく覚えておけ。博打は競輪でも、競馬でも、パチンコでも、麻雀でも、風が吹いているんだ。儲かる風だ。それは絶えず吹く方向を変える。他人の方に吹いている時には何をやっても絶対儲からない。でも、それが自分に向かって吹いて来たら絶対チャンスを逃さずに勝負に出ることだ。自分に向かって吹く風は一瞬のこともあれば、しばらく続くこともある。でも、その風がやんだら勝負はやめることだ。いつまでも調子に乗っていては儲けを吐き出してしまう。」とレースを眺めながら言いました。私はそれを聞いて、おじさんの行動が分かった様な気がして、「それじゃあ、おじさんはここで・・・。」言い終わる前に、「風を待っているんだよ。風が吹いてくれば勝負する。風が吹かないようなら帰る。それだけだ。」と言いました。

それからも、おじさんはいつものようにいつもの場所に座り、自分のスタイルで競輪をしていました。私はいつしか「風か、勝負の風ね。それに乗れなきゃ勝てない。それが吹いて来たら絶対逃さない。」とおじさんの言葉を意識するようにして勝負するようになりました。買うレースが極端に減って、車券を買わずにレースを見ていることも多くなりました。風が吹いていないときには車券は買いませんでした。そのかわり風を感じると大勝負に出ました。勝率は目に見えて上がり、儲けもかなり出るようになっていました。

そんなある日、初めてあのじさんが近づいてきてこう言った。「お兄ちゃん、博打が少しは分かるようになったな。」そして、コーヒーを差し出してくれました。何となく照れくさいような、嬉しいような複雑な気持ちでコーヒーを飲みました。味は苦いようで甘いようでよく分かりませんでした。


そして、それから15年が経とうとしている今、その時のおじさんの言葉は相場を張る私の中に脈々と流れています。風を待つ、風に乗る、風に逆らわない。そして、それは相場という世界でも十分通じることだということが、遅ればせながらようやく最近になって分かってきたような気がします。相場で儲かった時には、あのおじさんに「お兄ちゃん、風を掴んだな。」と言われているような気がしてなりません。
13件のコメントがあります
  • イメージ
    Rsunさん
    2007/9/15 08:09
    すげエ~、職人の世界だ~。
    何を?どうして?風を感じるのか。
    そういう人の頭の中を覗いてみたい。

    いつも嵐の中にいるような小生でした。
  • イメージ
    ヨッシーさん
    2007/9/15 09:19
    GT-Rさん

    なんというか勝負勘みたなものみたいですよね。言葉では表現が難しいですが、何となく今日はついているというのは皆さんにもあると思います。それのもっと強い感覚ですかね。どっちかというと嗅覚に近いかもしれません。

    私も早く職人の世界に達するべく日々勝負勘を磨いています。
  • イメージ
    育成計画さん
    2007/9/15 10:26
    『勝つ確率の高い時しか張らない』
    …相場で生き残るには必須の条件ですかね…

    けれども、『勝つ確率が高い』、
    それが分かるようになっていれば、相当なものです。
    (#特に株の場合は、
     手仕舞いのタイミングを自分で設定できるので、
     いくらでも辻褄合わせができてしまう。
     それが「風」に無頓着になる原因のような気がします。)


    > 自分に向かって吹く風は一瞬のこともあれば、しばらく続くこともある。でも、その風がやんだら勝負はやめることだ。

    この言葉、ありがたく頂戴いたしました。
  • イメージ
    みやまな鉄砲長さん
    2007/9/15 10:49
    すごい言葉を聞いていますね。
    私は、なんとなくわかりますよ。
    思いっきり競馬派です。

    特に私は、本当に自信がある?というか
    これなら買っても後悔しないという賭けに乗ります。
    (それはオッズが低くても高くても関係がありません。)
    新聞を見て、
    これは取れる自信がないと思ったら競馬場でも
    本読んだり、人間観察する人間ですからね。(^^ゞ

    株もそうですが、
    流れを見えないときにやらないというのも
    判断としては難しいところなんですよね。
    好きな馬が出てるとついやっちゃうところがあるんですが、
    競馬では大損した記憶がないんですよね。。。(^^ゞ
    馬券を買うスタンスは銘柄えらぶスタンスと
    近いからかもしれないです。

    株だってそうですが意外と相場に乗ってみないと
    どんなに強いといわれてもわからないところは多々ありますから。
    馬がレースに出てみないとわからないのと同じかなぁーと。
  • イメージ
    Tanpanさん
    2007/9/15 12:00
    面白かったです!(^^)

    そんなおじさんが気になって話を聞きに行ったヨッシーさんって勝負の女神様に愛されているのでは??
    とか思いましたよ。
  • イメージ
    青若葉さん
    2007/9/15 12:38
    いい話をありがとうございます。
    私も競馬暦だけは長いですが、最近はかなり購入頻度が減りました。以前は年間収支100%に限りなく近い年もありましたが、もう年単位で風が来ていない気が…。

    相場もやはり賭事的な要素を無視することは出来ませんので、風を見ようとする努力は続けたいものです。
    情報の密度や量ではプロに勝てる可能性はないですが、個人としては「途中で抜けてノーリスクの場所から眺めることが出来る」権利をフルに生かしたいところです。
  • イメージ
    まささん
    2007/9/16 21:00
    おじさん、かっけぇ~~~~^^

    そんな言葉言ってみたいです。
    「風」ですか。
    やっぱり数打ちゃ当るじゃダメなんですよね・・・。

    そのおじさん今でも競輪やってるんですかね^^
  • イメージ
    私はデイトレ派なんですが、何か今日やったら負けそうな
    気がするなんて思う日あります。
    おじさんの粋に達すれば理屈もわかるのかなぁ?
  • イメージ
    金の延べ棒さん
    2007/9/16 22:02
    そんなおじさんに話かけたヨッシーさんにも、そのとき何かの風が吹いていたのかもしれませんね。

    数打って当たることもあるかもしれませんが、闇雲ではだめだということでしょうか。きちんと場を読むのかな?

    株相場の場も嗅覚を持って捉えられるようになりたいです。
  • イメージ
    ウランママさん
    2007/9/17 00:20
    なにが、どうかってわかりませんが、その昔私の父親も、競馬をしていて、かなり儲かっている時に勝負に勝つって事は、何をどうしても勝つんだよ!

    私は子供ながらも、何で?勝てるの?ほんとにヨッシーさんが、云ってる言葉と同じです。風が吹いてるんだ。

    今鳥肌立ってます。勝負の風は、いつでも吹いてるわけじゃない。しかし一度吹いたら、見逃さず、風の乗る、
    まるで、映画の世界のような?話ですが実際
    風に乗るて言うのは、時を待つて、云うか?なんて言うのか
    分りませんが、ヨッシーさんの今日の日記を拝読させて頂いて、10年前に亡くなった父親を、思い出しました。
  • イメージ
    ヨッシーさん
    2007/9/17 16:25
    みなさん、コメントありがとうございます。連休で実家に行っていたものでお返事が遅くなりました。

    株育成計画2さん

    勝つ確率が低い、負ける公算が高いと読んだときには、じっと我慢して好機が来るのを待つ。その辺からも「休むも相場」と言われる所以なのでしょうね。
    風は誰にでも吹いてくるものです。それを五感で感じる感性を磨いていきたいと思っています。


    みやまなさん

    ある程度自分の考えに自信が持てるときというのは、風が吹いてきているときなのでしょうね。競馬でも相場でもいつでもダラダラと勝負をしていると、そういうのを感じる感性が鈍るのでしょうね。競馬は馬券買ったらゴールまで逃げられませんけど、相場はダメだと思ったらいつでも逃げられますから、そういう意味では大損をしないチャンスを与えられているのだと思います。


    Tanpanさん

    勝負の女神がいるなら貢物でもたくさん持っていって、気にいられたいですよね。でも、自分には勝負の女神がついているんだと信じることも大切だと思います。前向きな考え方が相場には必要ですもんね。その方が、迷いなく勝負が出来るでしょうからね。でも、迷ったら近寄らない、これが一番ですね。


    青若葉さん

    おっしゃるとおり、個人投資家には参加する、しない、ホールドを続ける、早々に下りる、など機関投資家などにはない特権がありますからね。それをフル活用しながら、風に乗るということができれば利益もついてくるでしょうね。でも、ノーポジでのんびり風が吹いてくるのを待つのも特権としては最高級のものですから、たまにはそうするのもいいでしょうね。


    まささん

    そのおじさん、見た目は普通なんですけど、やっぱりオーラというか、アンテナ張りっぱなしという感じはありましたね。勝負師というのはあういう姿なのかなと思いました。
    おじさん、今でも競輪やっているのかな。久しぶりに会って見たい気がしました。


    笑福来 三枝さん

    そういうのありますよね。何となく今日は駄目そうだなとか。逆に力がみなぎっていて、やることなすこといい方向に転がっていく時もありますからね。デイトレでも長期でも同じ感覚はあると思います。銘柄によっては全然相性が良くないってのもありますし。これなんか風が合わないって感じなんでしょうね。


    金の延べ棒さん

    その時は、何か今日、それも今、話しかけなきゃという思いがしたのを覚えています。そうでもなきゃ、競輪場なんかで知らない人に話しかけるのなんか怖いですもんね。
    そのおじさんは競輪でも全レース買いたきゃ買ってもいいけど、きちんと強弱をつけろ、分からないレースは見学料として100円でもいいだろ、ということも話していました。相場に置きかえれば銘柄の勝負度合いによってポジの大きさにメリハリをつけろというところでしょうか。


    ウランママさん

    ウランママさんのお父様も勝負師だったのですね。その辺の感覚が肌で分かっていたのでしょう。ウランママさんもお父様の血を引かれているんですから、相場師として大成する素養をお持ちなんでは。
    相場は毎日やっていますけど、今日の相場は私のための相場じゃない、今日の相場こそ私のための相場だということを感じられるようになることが風を感じるということなんでしょうかね。
  • イメージ
    円満さん
    2007/9/20 15:59
    風を読むなんて!オジさんかっこよすぎです。
    ヨッシーさんの日記読んでると、ピンチがくると助け舟が来るという福福しい体質のような気がしてきました。
    背後に守護神でもいらっしゃる??
  • イメージ
    ヨッシーさん
    2007/9/20 16:02
    円満さん

    本当はピンチが来ないのが一番いいんですけどね。いつも、みんなに助けられたり、勝負の神様、相場の女神などいろいろな方々に守られているようです。でも、これがいつまで続くか分かりませんので、自力で何とかできるようにしていこうと思っています。
コメントを書く
コメントを投稿するには、ログイン(無料会員登録)が必要です。