日銀の利上げx米FRBの9月利下げ示唆で、加速する円高が

優利加さん
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昨日の米国株式相場は上昇した(DJIA +99.46 @40,842.79, NASDAQ +451.98 @17,599.40, S&P500 +85.86 @5,522.30)。ドル円為替レートは一時148円に突っ込むほどの円高・ドル安となった。本日の日本株全般は下げた。東証プライムでは、上昇銘柄数が97に対して、下落銘柄数は1,541となった。騰落レシオは90.05%。東証プライムの売買代金は6兆831億円。

TOPIX -91 @2,704
日経平均 -975円 @38,126円

米国では、米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果が発表され、事前の予想通り、政策金利(=FF金利)は5.25~5.50%で据え置きとなったが、パルエルFRB議長が9月利下げの可能性を示した。この結果を受けて、米長期金(10年債利回り)は前日の4.14%から4.03%へ低下した。マーケットは年内に2~3回の利下げを期待し、外為市場ではすぐに円高・ドル安が加速して1ドル=148円台に突入し、時間外取引(日本時間では真夜中)で日経平均は1,200円を超える大幅安で推移していた。

本日の東京市場では、前日の日銀による利上げ決定(植田和男総裁は年内の追加利上げの可能性を否定しなかった)に引き続き、米FRBによる9月利下げの言及により、外為相場において1ドル=148円まで急速に円高・ドル安となった。これを嫌気して、株価は急落した。日経平均は1,300円以上の大幅安となり一時38,000円を割り込んだ。輸出関連銘柄が売られるのは当然だが、利上げにより今後は収益が拡大することがほぼ確実な銀行株まで自動車株と一緒こたに売られたことには笑えた。本日の急落の直接的原因として円高・ドル安ばかりに注目が行きそうだが、そもそもの原因は国内金利の上昇である。金利が上昇して収益が悪化する企業としてまず頭に浮かぶのが、事業継続のために多額の資金を借り入れで調達している住友不動産、野村不動産、三井不動産などの不動産大手であり、原理原則通りこれらの銘柄は軒並み大幅安となった。

日銀の予想外の金利引き上げにより、円キャリートレードの巻き戻しが急速に起っているため、今日は1ドル=148円台まで円高・ドル安が進み大騒ぎとなっているが、そもそも2024年の年初(1ドル=141円台)から見ればまだ円安・ドル高水準である。ただ、今年前半には円安・ドル高の原動力であり、有効だった円キャリートレード(金利が低い円で資金を借り入れ、円を売ってドルを買い、そのドルで金利が高いドル建て資産に投資して利幅を稼ぎ、上手く行けが為替益も稼げるとても美味しい手法)はもはや巧くできなくなった。

11月の米大統領選挙ではハリス副大統領が民主党の大統領候補として後継指名される前はトランプ前大統領が圧倒的に優勢と見られていたが、今は不透明感が増している。ただ、トランプ前大統領が返り咲いたときに為替相場がどうなるかを予め想像しておくことは賢明だろう。(1) 関税引き上げ、(2)不法移民の強制送還、(3)大型恒久減税の3つは同じ結果を招く。インフレである。(3)の大型恒久減税を実施すれば足りない財源を国債増発で賄うしかない。すると長期金利に上昇圧力がかかり、9月から始まるであろう利下げ効果を打ち消しかねない。するとトランプ氏が期待するほど円高・ドル安にはならず、ドル金利も彼が期待するほど下がらない。それに業を煮やしてFRB議長を解任すると脅迫すると、金融市場と為替市場が混乱するという一つのシナリオが描ける。逆に、民主党のハリス氏が勝利したとしても、民主党も大きな政府を標榜しており、積極財政を継続するはずなので、財政赤字は続き、長期金利に上昇圧力はかかり続ける。

日経平均の日足チャートを見ると、安く寄り付くと下げ幅を拡大して昨日の安値を一時的に割り込んだが、その後切り返して下ひげを引いた陰線で終えた。急速な円高・ドル安方向への揺り戻しに動揺しているが、この動揺は数日間は続きそうである。しかし、どんな悪材料でもやがてマーケットは慣れてくる。それがいつになるかは事前には正確に分からないが。

33業種中すべての業種が下げた。下落率トップ5は、不動産(1位)、輸送用機器(2位)、保険(3位)、その他金融(4位)、建設(5位)となった。

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