TOPIX +14 @2,720
日経平均 -12円 @40,098円
米国では、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言と2月雇用統計など重要な経済統計の発表を週内に控えているため様子見ムードが強まった。エヌビディアやAMDなどの半導体銘柄は引き続き上げたが、アップルは独占禁止法違反によりEUから2,900億円の罰金を科され、テスラはEV販売不振のため新たな値下げと販売インセンティブを発表したため、両者とも株価は下げた。3営業日ぶりに主要3株価指数は揃って下げた。
本日の東京市場では、半導体関連銘柄が利食い売りで押され気味な中、建設、銀行、証券などの割安株が買われた。建設株上昇のきっかけは大林組が年間配当を引き上げると株主還元の強化策を発表したことだったが、同業他社にも買いが波及した。銀行株は日銀が早晩金融政策を正常化することは必至であり、金利が徐々に高くなっていくという見通しから利ザヤの拡大を通して上昇基調が継続するであろうという読みが背景にある。日経平均が史上初めて4万円台を付けるほど上げて来ており、活況化する株式市場とその副産物である証券会社の収益改善に期待して証券株が上がるのは当然である。8604野村HDは昨年12月中旬から、8306三菱UFJは今年1月初旬から共に「株価サイクル3」に入っており、且つ、「上げる材料」もあった。「株価サイクル3」x「上げる材料」=継続した株価上昇、は鉄板の銘柄選択と言える。
確かに日経平均に代表される株価は回復して来た。しかし、給与所得だけが収入のほぼすべてとなっているほとんどの日本人はこの恩恵に与れない。なぜなら株主ではないからである。今の時代、意識さえ変えれば5万円くらいの当面は使う予定の無い僅かなお金があれば誰でも株主になれるのに。他方、大学生でも5~10万円くらいを投資して株主になっている者も時々いる。しかし、大多数の日本人は自らの意思で株主にはなっていない。だから株式相場が活況を呈しても、他人事であり、取り残された気分になり、ルサンチマンに憑りつかれている人もいるだろう。
なぜ株価がこの10年間ほど趨勢として上げているのか、そして自らの意思で株主にならない労働者がなぜ取り残された気分になるのか、その構造を簡単に整理しておこう。
この10年ほど企業業績は改善する中、グローバリゼーションの波に押されて高まる投資家の要求収益率(=株主資本コスト)に応えるべくより高いリターンを求めて海外市場の開拓を進めて来た。利益の伸び率と比べて人件費の伸び率を抑えて来た結果、労働分配率(付加価値(=営業利益+支払利息+人件費+賃借料+租税公課)に占める人件費の割合)は徐々に低下している。それとは対照的に株主還元策(配当金や自社株買いなど)を厚くして、リスクを取り資金提供をしてくれる株主に報いて来た。それでも余った資金は海外での事業拡大に充てて来た。これはグローバリゼーションが深化している現代では上場企業にとっては生き残りを賭けた当然の経営戦略であり、決して非難されるべきことではない。
日経平均の日足チャートを見ると、ギャップダウンして始まったが依然として先高観が強く、切り返して陽線で終えた。
33業種中24業種が上げた。上昇率トップ5は、建設(1位)、証券(2位)、鉱業(3位)、銀行(4位)、機械(5位)となった。