TOPIX -31 @2,001
日経平均 -311円 @27,833円
2月の米雇用統計では失業率が予想以上に悪化し、且つ、平均賃金の伸びも予想を下回った。通常なら株式相場には悪い結果のはずだが今は、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で大幅利上げ(+0.50% )の見通しが後退したとして、これが株式相場に浮揚効果を与える。しかし、このプラス効果は完全に打ち消された。米金利上昇により投資していた債券が巨大な含み損を抱え、急速に預金が流出(1日で5兆円超)していたSVBファイナンシャル・グループ傘下のシリコンバレー・バンク(SVB)が経営破綻し、事業停止に追い込まれたからだ。資金に余裕のあるスタートアップ企業から相対的に高い金利で預金を集め、それを資金が一時的に不足するスタートアップ企業にさらに高金利で貸して儲け、余った資金は債券投資で儲けるというビジネスモデルが破綻した。「史上初のツイッターで煽られた取り付け騒ぎ」により、増資発表から2日後という非常に短期間で破綻した。これにより地銀株を中心に株価は急落し、米主要3株価指数は揃って大幅続落となった。シグネチャー・バンクは22.9%安、ファースト・リパブリック・バンクも14.8%と急落した。米金融当局はSVBもシグネチャーバンクも預金は全額保護すると発表した。
米国株安の流れを受けて、本日の日本株全般も大きく続落した。SVBに続いてニューヨークを基盤とするシグネチャー・バンクも破綻した。金融市場での混乱の連鎖を警戒して、メガバンク株と地銀株はじめとする幅広い銘柄が売られた。他方、リスクオフの様相が強まり、安全資産とされる米国債が買われて(米長期金利は下がった)日米金利差が縮小したことで円高・ドル安となり、自動車株にも売りが拡大した。日経平均の下げ幅は一時500円を超えた。ただ、鉄道や小売りなど内需株の一部は逆行高になった。
日経平均の日足チャートを見ると、大きな窓を空けて続落して上向きの10日移動平均線だけでなく、ザラバでは上向きの25日移動平均線も割り込んだ。ローソク足の形は長い下ひげを引いた短陰線(たくり線)となり、終値では下値支持線の2月6日高値@27,821円の少し上で踏み止まった。既に大きな窓を2回空けて「ニ空」となっているので、日本時間の今夜の米国株式相場が大きく反発すればこれ以上大きく下げることはないと思われるが、さてどう動くか。
「正確に予想しよう」とどんなに努力しても、結果は「当たるか外れるか」しかない。自分が持っている全知識と経験を総動員して今何が株価を動かす大きな力となっているのかを理解し、同時に株価チャートの定石も総動員して、少しだけ先の株価の方向性を「想像する」しかない。重要なことは、その想像した株価の方向性は間違っているかもしれないと常に意識していることである。その間違いが判明した時に何をどうすべきかを事前に決めておき(これが売買ルール)、且つ、逡巡することなく実行する自己規律が「できるトレーダー」には求められる。
33業種中31業種が下げた。下落率トップ5は、勿論、銀行(1位)、保険(2位)、証券(3位)、パルプ・紙(4位)、その他金融(5位)となった。