防衛財源確保に国債の「60年償還ルール」見直しが浮上
政府は、防衛費増額について、歳出削減策などとともに増税策を含む財源確保を昨年末に閣議決定した。岸田首相は1月23日の施政方針演説で、増税実施の決意を改めて述べるとともに、増税実施への理解を広く国民に呼びかけるとみられる。
しかし閣議決定されたにもかかわらず、増税実施への反対意見は与党自民党の中で根強く残る異例の事態となっており、財源議論は未だ決着していない。実際、自民党は19日に、防衛費増額の財源について増税以外の確保策を検討する特命委員会の初会合を開いた。その中では、一段の歳出改革や税外収入などが検討されたが、さらに、国債の「60年償還ルール」を見直すことも議論されたのである。これは国債償還費を減らし、それを防衛費増額の財源に回すことを狙った措置であるが、財政健全化の観点からは大いに問題だと増税あり気の財務省の考え方でしょう。
「60年償還ルール」の80年への見直しで防衛費4兆円積み増し分を賄うことは可能
政府が発行した長期国債を、60年かけて完全に償還するという「60年償還ルール」がある。例えば10年国債を6兆円発行すると、10年後の満期には1兆円を完全に償還した上で、残り5兆円分については、10年の借換債を発行して借り換えるのである。仮に「60年償還ルール」を「80年償還ルール」に変更すれば、10年後の償還額は7,500億円と、25%減少することになる。その分を防衛費増額の財源に回すことは可能である。
政府は国債発行残高の1.6%にあたる償還費を一般会計に計上し、債務を管理する「国債整理基金特別会計」に繰り入れることが、現在法律で求められている。23年度予算案では16.3兆円の償還費が計上された。
仮に「60年償還ルール」を「80年償還ルール」に変更される場合、償還額は25%分の4兆円程度減る計算となる。その分、政府の一般会計に計上される償還費を減額するようにルールが改められる場合には、歳出を4兆円分抑制することができる。
2027年度までに、政府は防衛費を4兆円積み増し、同額の財源が必要になるが、国債の償還ルールを仮に80年に延長すれば、防衛財源すべてを賄うことができる計算となる