子供の頃、田舎にある祖母の家には怖くて怖くて入れない部屋がありました。
その部屋は北向きで、日当たりが悪いので日中でも薄暗く、
鬼の面が飾っており(今思えば般若だったのかも)、
いつも何者かが潜んでいるかのように思えました。
台所には十分な役目を果たした竈(かまど)。
お風呂は湯船に入る時に板を沈めて入る、五右衛門風呂。
トイレは母屋から離れた別棟にあり、汲み取り式で俗に言う、ポットン。
あらためて見回すと、
部屋のひとつひとつに
調度品のひとつひとつに
何者かの気配を感じたものです。
昔はどの家にも守っている神さまが居たという。
敷地内に住んで家を守るのは屋敷神
台所には竈神
井戸には水神
トイレには厠神
そして
床の間には祖霊が降りる場所とされていたそうです。
祖母の家や先月宿泊した農家民宿のたらいち邸には、
家を守るためのたくさんの神さまがいたのでしょう。
たくさんの神さまに守られた家。
そういう家に私たちはもう住めないのかもしれません。