この世には、物体がある。しかしそれは、霊魂かもしれない。物体は常に変化し、他の物体と衝突しそして融合してゆく。まあ、ここでは霊魂とか物体とかは、よいとして、胡蝶の夢を見てみよう。
昔のまたその昔、中国の宋の時代に、ある男がいた。彼は木の下で休んでいると、寝てしまった。そして夢の中で、男は自分が蝶になって飛び回っていた。夢から覚めて考えた。はて、夢で自分はチョウチョになって飛んでいたが、もしかしたら、このチョウチョが、本当の自分かもしれない。そして、今ある自分は夢の中の自分で、これは自分ではないかもしれない。一体、どちらが本当の自分なのかと考えた。
影と物体。それは、どちらが本当の実態なのか。両者は常にぶつかり合い、反発したり結合したりする。世にいう無常の世界である。これといった定まった形などない。物体は常に、生成流転する。正に、混沌としたカオスという世界である。
さあ、これを見ている読者は、はたして本当の実体なのか。もしかして、それは影で、窓の外に影が見えたら、それが本当の、あなたなのかもしれない。
(おわり)