いなーい3 4年9月1日(木)14時18分

堅実さん

(どうも、前回まででは、中途半端なので、続けました。) 


次の朝になりました。辺りを見ると、彼女が横で寝ているではありませんか。彼女も目が覚めて、私に抱きつきました。わたしは言いました。「死んだんじゃ、なかったのか。」


「何、言ってるの、こうやって昨日から、いるじゃないの。」


「そうか、夕べ、首を絞められた。」


「首なんか、絞めないわ。馬乗りになって、腰を動かしたけれど。それは、修一さんの望む事でしょう。」「そうか、そうだったのか。」


わたしは、彼女の身体が冷たくないのを確かめると、少し安心した。そして、彼女は帰っていった。


それから、しばらくの間、彼女からは何の連絡も無かった。それなので、電話してみると。「お客様の、おかけになったこの電話は、現在使われておりません。」のメッセージが聞こえた。


 やはり、そうだったのか。彼女は、死んだんだ。そう思った。しかし、奇妙な出来事だ。この話をしても、誰も信じないだろう。死んだ人が、何故出てきたのか。幽霊か。しかし、朝になって身体は温かかった。幽霊でも温かいのか。


それから、数十年の歳月が流れた。相変わらず単調だが、仕事だけは、きちんとした。職場では、日常的に共産党員の集団の、嫌がらせや、いじめが続いたが。そんな日は、焼酎でも飲んで寝てしまう。そんな日々だった。


 そして、時々、彼女の夢を見る。彼女は言う。「苦労していることは、分かります。しかし、ここは、我慢してください。」「いざとなったら、わたしが、助けますから。」大体、そんな同じような夢であった。


そして、更に歳月は流れた。もう仕事もなくなって年金生活である。そんなある秋の午後、私は彼女の事を考えた。


あの「いなーい」という日。何故、彼女は来たのだろうか。もしかしたら、そうでもないかもしれないが、彼女は阿弥陀如来の化身で、わたしのために来てくれたのでは。私の気持ちを察して、励ましに出てきたのでは。


夢で、時々出てきている。夢の中に出てきて、私を励ましたのでは。そう思えば、そう思う節もある。夢の中で常にわたしを励まし、応援してくれた。いろいろ考えると、彼女の優しさに、いつしか、涙が流れた。もうすぐ、行くから。その時は、しっかりと抱きしめてやるよ。


そんな事を夢想していると、あまり遠くない木の枝で、もずが、けたたましく鳴いた。秋の午後である。空には、ひとつ、ふたつ、雲が浮かんでいた。


その夜、また彼女は出てきた。

「しっかりと、この世を生きてください。そして、今まで、有ったことを、話してください。ちゃんと、聞きますから。」


 (完成)


 

6件のコメントがあります
1~6件 / 全6件
堅実さん
りす栗  さんへ

ありがとう、ございます。
9月3日、13時30分


りす栗さん
こんばんは。

一寸、がっかりです。

おや。これを放置していては少し気の毒な気がするので、フォローしておきましょう。

みなさん、センスも勘もよいので、堅実さんの文章の趣旨は速やかにくみ取ることでしょう。んでも、そのことを素直に感想として書かないのが癖のようなものですね。天邪鬼なのでしょう。

ということだと思うのでどんまいです。
堅実さん
りす栗 さんへ
この話、恐怖物語も、考えたのですが、人の優しさを、中心としました。
しかし、読者は、作者の意図とは、別の処に、関心が、あるようです。
一寸、がっかりです。

堅実さん
風車の弥吉  さんへ

「気が付けば、阿弥陀如来の、ご加護かな」

りす栗さん
こんこん。  17のこも24も60年たてば みな婆さん

とはいえ、今回は大作になりましたね。
こんこん。

  気が付けば 抱いた美魔女は しゃれこうべ  季楽庵
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