半値戻しを達成したが、これからが正念場

優利加さん
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昨日の米国株式相場は小幅安となった(DJIA -62.42 @31,438.26, NASDAQ -83.07 @11,524.55, S&P500 -11.63 @3,900.11)。ドル円為替レートは135円台前半の前日比円安水準での動きだった。本日の日本株全般は上げる銘柄が多かった。東証プライムでは、上昇銘柄数が1,498に対して、下落銘柄数は292となった。騰落レシオは108.33%。東証プライムの売買代金は2兆8093億円。

TOPIX +20 @1,907
日経平均 +178円 @27,049円

米国株式相場は小幅安となったが、円安・ドル高が進み自動車株が買われ、さらに不動産や鉄道などの内需関連株も買われた。また、資源高を反映して鉱業株が買われ、鉄鋼株も上げた。また、本日は6月末決算企業の権利付き売買の最終日だったため、配当狙いの買いも入ったはずである。

米長期金利の上昇は一服して来た。しかし、円安・ドル高基調は継続している。主な原因は1985年のプラザ合意以降、日本の経済構造が大きく変化したために貿易赤字(国内製造業の空洞化により輸出が大きく減少し、エネルギーなど輸入が大きく増加)が増加し続けていることである。ただでさえ高かった原油価格は、ウクライナ危機によりさらに高くなり、日本の輸入額は急増している(東日本大震災をきっかけに日本中の原発を停止しているため、特に巨額の原油・LNG等を輸入するしかない)。その結果、今年5月の貿易赤字は2兆3800億円超となり、1979年以降で2番目に大きな貿易赤字となった。このペースが1年続けば、過去の遺産である巨額の累積海外直接投資から来る配当や利息などの純受取額である第1次所得収支が吹き飛び、経常収支も赤字転落し、新興国のように経常収支赤字が常態化する悪夢さえ排除できない。そうなれば、円安・ドル高を止めるのはますます困難になる。ただ救いがないわけではない。円安になればなるほど、海外から見ると日本の物価は非常に安くなるので、インバウンドの旅行者が大挙して日本にやってくる。その際、円買い・自国通貨売りをするので、円安にブレーキがかかる。

実需の売り買いは外国為替の全出来高の約1割しかないが、輸出業者はドルを売り切り、買い戻すことはなく、反対に輸入業者はドルを買い切り、売り戻すことはない。その結果、実需はドル円為替相場の中長期的なトレンド作る。この貿易赤字による円安・ドル高の基調に便乗して投機筋が日米金利差を材料に円売り・ドル買いを仕掛けている。ただ、投機筋は短期間で利益する必要があるために円売り・ドル買いのポジションを持っても短期間で円買い・ドル売りの反対売買をするため、中長期のトレンド形成にはニュートラルである。また、キャリー・トレード(低金利通貨を借りてそれを売って高金利通貨を買い、その高金利通貨で利息を稼ぐ取引)の影響もあるが、リーマン・ショックの時のように、何かのきっかけてキャリートレードの巻き戻しが急激に起り、猛烈な円高・ドル売りとなる可能性は低くない。円安・ドル高になればなるほどその可能性が高くなるので要注意である。巷では、国際金融・国際経済学の知識に乏しい一部政治家や知識人の間で円安・ドル高を食い止めるために日銀は金利を上げるべきだとの安易な解決法をすべきだと論調があるが、それは単なる対処療法で一時的には効果があるが(景気を必ず悪化させるので国益を損なう)、中長期的にはその効果は長続きしない。根本的な解決法は、日本の製造業を日本に呼び戻すこと以外にない。これはグローバル化の流れに逆らうことを意味する。

日経平均の日足チャートを見ると、25日及び60日移動平均線の上に再浮上してきた。6月9日高値と6月20日安値の値幅の半値戻しを達成した。これからが正念場である。強い戻りなら直近高値辺りまで戻るが、それほど強くない場合は半値戻し、精々2/3戻しで力尽きる。結果的にどうなるかは事前には誰にも分からない。魔法の占い師でない限り、未来は正確には読めない。だからチャート・リーディングのスキルだけでは不十分で、チャートリーディングの誤差を建玉操作で補い続ける必要がある。しかし、こんなことを言っているのは私だけかもしれない。

33業種中32業種が下げた。上昇率トップ5は、鉱業(1位)、不動産(2位)、石油・石炭(3位)、電機・ガス(4位)、保険(5位)となった。

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