TOPIX -32 @1,836
日経平均 -468円 @25,963円
米連邦準備制度理事会(FRB)とEUの欧州中央銀行(ECB)は既に金融引き締めを開始していたが、これに英国イングランド銀行(BOE)とスイスのスイス国立銀行も明確に加わった。BOEは5会合連続の利上げを決めた。スイス中央銀行も政策金利を従来のマイナス0.75%からマイナス0.25%へ引き上げることを決定した。スイス中央銀行の利上げは実に約15年ぶりとなる。欧米先進国が軒並み金融引き締めに舵を切っている。原油価格や穀物価格、労働需給の逼迫など世界的に高まるインフレを抑え込むことが主な目的だが、世界経済を減速させることは確実で、場合によってはオーバーキル(やり過ぎ)となることも十分考えられる。世界の中央銀行は景気を犠牲にしてもインフレ退治をするという気概さえ感じられる。しかし、このオーバーキルを懸念して米国株は大幅下落した。次は日銀も金融引き締めに転換するのではないかという心配が一挙にマーケットに高まった。このため本日の日本株全般は自動車株や鉄鋼株をはじめとする景気敏感株を中心に幅広く大きく売られ、日経平均の下げ幅は一時700円を超えた。年初来安値を更新した銘柄数は東証全体で526銘柄に達し、全体の14%を占める。午後に入り日銀政策決定会合の「大規模金融緩和を維持する」との結果が伝わると安心感から下げ渋った。「ブルータス、お前もか!」とはならなかった。
これで短期的にはトレーダーは安心して円売り・ドル買いを仕掛け、円安・ドル高がさらに進行しそうだ。但し、トレーダー(為替売買の約90%を占める)は短期で利益を出そうとするので、円売り・ドル買いを仕掛けてもそのポジションをそう長くは維持できず、割と短期間で反対売買をする。したがってトレーダーの売買は差し引きニュートラルとなりトレンドを形成することはできない。トレンドを決めるのは「売り切り」または「買い切り」をする輸出・輸入という実需(為替売買の約10%を占める)の力の差である。具体的に言えば、貿易収支が黒字拡大なら輸出で稼いで有り余るドルを売る、つまり、ドル売り・円買い需要が増加して円高・ドル安基調が続く。反対に黒字縮小か赤字拡大なら輸入代金支払いのために不足しているドルを買う、つまり、ドル買い・円売り需要が増加して円安・ドル高基調が続くのである。今はまさに後者である。仮に日銀(為替政策に対する権限はそもそも日銀になく、財務省にあるが)が円安・ドル高を止めようとして金融引き締めを実施したとしても、その効果は短期的であり、ただでさえこの30年間経済成長が止まっている半病人の日本経済を回復不能なくらいの重病患者に落とし込む可能性すら高い。では何が正しい政策であろうか。正攻法は製造業の国内回帰である。1985年のプラザ合意後の円高基調に対する反応として日本の製造業はその生産力を海外へ移転させ、その後、バブル崩壊により国内需要が低迷し、中国が世界の工場として台頭する中でグローバル化が進展してして来た。このような世界経済の構造変化に対応して日本の製造業はますます海外へ生産力を移転して来た。その当然の結果が、現在の貿易収支の悪化およびその副産物である円安・ドル高を引き起こしているのである。円安が進んでも輸出が増えないばかりか、原発を全面的に止めたために以前よりも遥かに原油輸入に大きく依存した経済構造に陥っており、そのため現在の原油価格や穀物価格の上昇により輸入は急増している。当然、輸入代金支払いのためにドル買い需要が「買い切り」で増加するため、トレンドとして円安・ドル高になるのは当然である。長くなるのでこれくらいで止めときます。
日経平均の日足チャートを見ると、大きくギャップダウンして始まり5月12日安値@25,688円目前までザラバ安値では迫ったが、結局、上下に長いひげを引いた十字線となり明確に下げ渋りを示した。さらに大きな悪材料が出てこない限り、来週月曜日は自律反発狙いの買いにより反発して始まりそうだ。
33業種中27業種が下げた。下落率トップ5は、精密機械(1位)、輸送用機器(2位)、金属製品(3位)、鉄鋼(4位)、ガラス・土石(5位)となった。