【投資脳*海外株】金融ショックがマカオ翻弄

木下 晃伸さん
木下 晃伸さん
■みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
経済アナリスト、木下晃伸(きのした・てるのぶ)です。

■14日の香港株式市場でハンセン指数は4日ぶりに反発しました。
終値は前日比321.31ポイント(2.43%)高の1万3542.66。
前日の米株の急反発や14日の上海総合指数が1カ月ぶりの高値を付けるなど
同日のアジアの主要な株式相場の上昇を好感しています。

■その中国株式市場で上海株式相場は大幅に3日続伸。
上海総合指数は前日比58.825ポイント(3.05%)高の1986.438と、
10月15日以来、約1カ月ぶりの高値を付けています。

12日に明らかにされた輸出促進策など
中国の景気刺激策を好感した買いが続いた格好になります。

■それでも、上昇しても市場に安堵の気運が見られないのが、
今の市場環境の難しいところ。

特に、明日より米ワシントンで開催予定である
金融サミットの動向を注視したいという向きも多く、
迫力のある相場展開とはなりませんでした。

■ただし、14日朝のロンドン株式相場は大幅反発して始まっており、
FTSE百種総合株価指数は午前9時15分現在、
前日終値比150.14ポイント(3.6%)高の4319.35で推移しています。

米株式市場も高い流れで推移するか、金融サミット前の相場展開を眺め、
週明けに臨みたいと考えます。

本日もどうぞよろしくお願いいたします。


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●【香港】金融ショックがマカオ翻弄[観光]
●【台湾】消費信頼度の落ち込み、台湾がア太で最大[経済]
●【ドイツ】第3四半期、0.5%のマイナス成長に[経済]

※ニュース提供/NNA(http://www.nna.jp/)
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●【香港】金融ショックがマカオ翻弄[観光]


資金調達に成功しなければ、事業継続に疑問が生じる-。
米ラスベガス・サンズは先週、米証券取引委員会(SEC)に提出した報告で
経営破たんの可能性に言及した。
本体が倒れれば、同社が巨額を投じて進めているマカオ開発事業も水泡に帰す。
カジノに依存するマカオ経済に計り知れない打撃を与えることは必至だ。
米国資本の導入でこの世の春を謳歌(おうか)していたマカオが、
米国発の金融危機に揺さぶられている。

マカオ政府は2002年、それまで1社独占だったカジノ市場を複数の企業に開放。
同社は04年5月のサンズ・マカオの開業で、
外資系の先陣を切ってマカオ上陸を果たすと、
どこか陰鬱なイメージがつきまとっていた“賭場”を
誰もが入りやすい“アミューズメント施設”に生まれ変わらせて見せた。
続いて何もない埋め立て地に建設したザ・ベネチアンでは、
本場ラスベガス式のカジノ総合リゾートの概念を本格的に導入。
02年から昨年までの5年間に、マカオのカジノ収入は3.7倍、
域内総生産(GDP)は2.8倍に拡大した。

そのサンズを金融危機が襲った。外電などによると、同社は6日のSECへの報告で、
第4四半期(10~12月)に銀行の財務制限条項に抵触する恐れがあり、
新たな資金調達に成功しなければ債務の繰り上げ履行を求められ、
事業継続に疑いが生じると明らかにした。

サンズはマカオで1万5,000人を雇用しており、
倒産すれば社会的な影響も極めて大きい。
マカオ日報などによると、エドムンド・ホー行政長官は
11日に行った施政報告(施政方針演説)後の記者会見で、
「絶対に1社たりともカジノ企業の営業停止は認めない」と強調。
サンズの名指しは避けながらも、
「もしどこかの企業が倒産したなら、直ちに事業を政府管理下に置く」と述べた。

金融危機によってカジノ企業は軒並み打撃を受け、
マカオで事業展開しているラスベガス系の株価(11月12日終値)は、
52週高値との比較でサンズが95.8%、ウィン・リゾーツが67.6%、
MGMミラージュが89.2%、それぞれ暴落している。

【木下コメント】
今回の危機で分かった事は、借金をベースに事業を行ってきたビジネスは、
まやかしの成功に酔っていたということだ。
日本で破綻が続く不動産市場は、典型的な分野だ。

特に、エンターテインメントは、まやかしの成功が如実に体現される。
最近では著名音楽プロデューサー小室哲哉氏が
詐欺の容疑で逮捕された事は記憶に新しい。
外資系金融機関の高給取りと食事をしているときに
マカオの話題になったことは何度もあった。

借金をして大きな成長を遂げる。それもまたひとつの考え方。
しかし、ここはジッとこらえて現金の強さを実感する企業がしぶとく生き残る。
不況もまたよし、松下幸之助翁の言葉を噛みしめ、
経営者の視点で投資を考えていくタイミングだ。


●【台湾】消費信頼度の落ち込み、台湾がア太で最大[経済]

マスターカード・ワールドワイドがこのほど発表した、
2009年上半期のアジア・太平洋地域における景気動向に関する消費者意識調査で、
台湾は14カ国・地域の中で消費者信頼度の落ち込みが最も大きかったことが分かった。
この調査は9月1日から29日にかけて14カ国・地域の6,019人を対象に実施した。
「雇用」「景気」「固定収入」「株式市場」「生活の質」の5項目について、
今後半年間の経済状態をどう見ているかを聞き、指数化した。
最も悲観的が0、最も楽観的は100で、指数が高いほど信頼度が高いことを示す。

14カ国・地域の消費者信頼度の総合指数は47.4ポイントで、
半年前の55ポイントから下落。
国・地域別で下落幅が最も大きかったのは台湾で、
半年前の71.3ポイントから32.1ポイントに下げた。

【木下コメント】
台湾の消費者態度が半年前から急速に悪化した事に、
ここ半年でどれほど景色が変わったかが分かる。
特に、台湾の景況感悪化は、北米と密接に結びついていることからも注目度が高い。

100年に一度の恐慌と呼ばれる2008年だが、
その恐慌がいかに突然やってきたか、ということが分かる。
そして、突然やってきた事で、皆が急いで冬ごもりを始めている。
一人一人、各社にとってはプラスでも、
それが全体で急に動き出すと経済に大きなマイナスインパクトが起こる。

しかし、いずれ、その動きが逆回転を始める。
冬ごもりからそろりと一歩抜け出そうとする企業や、
一足早く筋肉質な経営に転換させ打って出る企業等が出てくるためだ。

それがいつになるか分からない。
だからこそ、日々経済状況について、企業を通して観察していく必要がある。
なかでも北米消費を考える上で、台湾は非常に重要な国だ。


●【ドイツ】第3四半期、0.5%のマイナス成長に[経済]

ドイツの景気減速が予想以上に深刻化している。
連邦統計庁が13日発表した第3四半期(7~9月)の
実質国内総生産(GDP、季節要因・稼働日数調整済みの速報値)は
前期比で0.5%減少し、0.2%減との市場予想を大幅に上回る落ち込みを見せた。
独経済は第2四半期も0.4%(改定値)縮小しており、
今回リセッション(景気後退)入りが確認された格好だ。

年率換算のGDP成長率(稼働日数調整済み)は0.8%。
第2四半期の1.9%から半分以下に縮小した。
なお統計庁は今月25日にGDP統計の詳細を明らかにする予定。

経済技術省のワルター・オトレンバ次官は今回の結果を受け、
「各種マクロ指標を見ると、第4四半期も経済の縮小傾向は変わらないだろう」
とコメント。
第3四半期のデータには米大手投資銀行リーマン・ブラザーズ・HLDの破たんを
きっかけとした金融危機の深刻化の影響は反映されていないと指摘したうえで、
「(ドイツは)非常に困難で長期的な経済危機に直面している」と
今後に悲観的な見方を示した。

欧州中央銀行(ECB)は10月に世界の主要中銀と協調して
ユーロ圏の政策金利を0.5ポイント引き下げた後、
今月にも0.5ポイントの金融緩和を実施し、
3.25%と過去2年で最低の水準とした。
市場ではさらに12月に少なくとも0.5ポイント引き下げるとみられている。

【木下コメント】
利下げは株価上昇要因と思われがちであるが、
実際にはそうではない。むしろ、これ以上利下げがない、と考えられる局面に、
少しずつ反転の兆しと共に株価底固めの動きが見られ、
利上げされるタイミングにおいて株価は上昇となる。

そう考えていくと、ドイツにおいて
12月に再び利下げが行なわれる可能性があるということは、
株式市場の下落に関して慎重な姿勢を維持しなければならない。
また、12月には米においても、
FOMCが開催されるタイミングで利下げが期待されている。

世界の大国がまだ利下げに動いているタイミングは、
強気に転じる事は難しいだろう。しかし、利下げによっていずれマネーは拡大する。
結果として、数年以内に、マネーは再び世界の投資市場に戻ってくる。

何がキッカケとなるか分からない。
ただし、その一つの予兆として、もうこれ以上利下げが行なわれない、
という判断が生まれるタイミングは、反転するキッカケとなりうる。
株価と密接な関係を持つ金利動向には細心の注意を払いたい。


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 編集後記
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ネタ切れ、という声がマスコミから聞こえてきます。
恐慌を大変だ、と騒いでいることに疲れてきた、ということかもしれません。

今までは恐慌を、誤解を恐れずに言えば煽った方が、媒体も売れるでしょう。
ただ、一般人も慣れてきた、という部分は見過ごせません。

仮に、金融サミット後に、再び安値を目指したとしても、今度は2回目。
耐性ができています。

投資家の精神力が鍛え上げられていくことは、ネタになりにくい。
その見えない部分が、いずれパワーを発揮してくることになると考えています。

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