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Testimony of George Soros #2
#1
http://minkabu.jp/blog/show/100680
不幸にも当局は常に後手に回った。IMFは、財政が健全な新興国に、事情にかかわらず出資額の5倍までを融資する制度を新たに設立したが、それは小さすぎたし遅すぎた。市場を救うためには、もっと巨額の資金が必要とされている。そしてもしトップレベルの新興国(periphery countriesを新興国と訳しています。正確には新興国、発展途上国など先進国以外の国という意味だと思います)が救われれば、その下のレベルの新興国には何が起こるだろか?国際的な金融システムを救う競争は進行中である。たとえそれが成功しても、国家や投資家やビジネスは、トラウマになるような、未だ感じたことのないような世界経済への衝撃を経験をしていく。深刻なリセッションは今や不可避であり、恐慌の可能性も排除できない。我々は1930年代以降で最悪の金融危機に直面すると今年の初めに私が予想した時には、私は状況がこれほどまでに悪化するとは思わなかった。
この異常な出来事の連続は、市場の振る舞いに関する一般的な理論を放棄することによってのみ理解されうる。私は、金融市場を説明する方法として、現在のものとは二つの点において異なる代替パラダイムを提案しよう。第一に、金融市場は一般的な状況を正確には反映していない。それらは、常に偏った、もしくは歪んだ光景を提供する。第二に、市場参加者によって助長され、市場価格によって表現された歪んだ視点は、ある環境下において、市場価格が反映すべきいわゆるファンダメンタルズというものに影響を及ぼしうる。市場価格とその基礎となる現実の間にある、双方向の循環的な結合を、私は再帰性と呼ぶ。
双方向の結合が常に存在する一方で、それが特殊な環境において金融危機にまで発展するのは、ごく稀なことである。通常は市場は自らの間違いを訂正するが、稀に、すでに存在する傾向(トレンド)を自分自身でさらに強化する誤認(間違い)が存在する。この自己強化プロセスは、市場を均衡状態とはかけ離れた状況にする可能性がある。再帰的な相互作用を停止させる何かがすぐに起こらなければ、その誤認が認識されるほど目立つようになるまでそれは存続し続ける。それが起こった時、そのトレンドは持続不可能になり、それが反転した時、自己強化プロセスが逆回転を始め、鋭い下向きの動きを引き起こす。
典型的なブーム&バーストの動きは、非対称の形をしている。ブームはゆっくりと成長し次第に加速する。バーストは、それが起こった時は、短時間で鋭い傾向がある。その非対称性は、信用(クレジット。信用創造などの信用のこと。)が担う役割に起因する。価格が上昇するに従い、担保はより大きな量の信用を生み出せるようになる。価格の上昇は、楽観を生み出し、投資目的でのより大きなレバレッジを促進する傾向がある。ブームのピーク時において、担保の価値とレバレッジの程度はピークに達する。価格のトレンドが反転した時、市場参加者はマージンコールに脆弱であり、我々が2008年に見たように、担保の強制的な清算は、下方向への壊滅的な加速を導く。
このようにバブルには二つの要素がある。つまり、実際に主流であるトレンドと、そのトレンドに関係する誤認である。もっとも単純でもっとも普遍的な例は、不動産に見い出される。トレンドは、増加する貸出意欲と価格の上昇から構成される。間違いは、不動産の価値と貸出意欲は独立しているということだ。その間違いは、価格の上昇とローン支払い停止の減少に伴い、銀行のより放漫な貸出姿勢を助長する。これが、最近の住宅バブルを含めて、不動産バブルの生まれ方だ。不動産バブルとその崩壊には長い歴史があるにも関わらず、さまざまな形態で間違いが再発し続けることは注目に値する。
バブルは金融市場における再帰性の顕現というだけではなく、もっとも壮大なものでもある。バブルは常に信用の拡張と収縮を伴い、それらは壊滅的な結末を迎える傾向がある。金融市場はバブルを生み出す傾向がありバブルは問題を引き起こすため、金融市場は金融当局によって規制されるようになった。米国において、金融当局はFed、財務省、SEC、その他多くの機関を含む。
監督機関は、マーケット参加者と同じくらい、いやもしかしたらそれ以上に歪んだ視点に基づいて決定を下すということを認識するのは重要なことである。なぜなら彼らは人間であるだけではなく、官僚的でもあり、そして政治的影響を受けやすいからである。それ故、監督者とマーケット参加者の間の相互作用もまた再帰性を持っている。バブルとの対比では、バブルは稀におこるのに対し、監督者とマーケットのいたちごっこは、途切れることなく続いている。結果として、再帰性は常に働き、その影響を無視することは間違いである。しかし、それこそ金融市場の一般的な理論が行ったことであり、結局はその間違いに現在の重大な危機に対しての責任がある。
#3へ続く
http://minkabu.jp/blog/show/100731
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