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*12:35JST テックポイント Research Memo(5):車載カメラシステム向けは増収を見込みさらなる成長へ
■テックポイント・インク<6697>の今後の見通し
1. 2024年12月期業績の見通し(米国基準)
2024年12月期業績(米国基準)は、売上高72,206千米ドル(11,630百万円:前期比10.0%増)、営業利益17,321千米ドル(2,789百万円:同3.9%減)、税引前当期純利益19,321千米ドル(3,112百万円:同4.1%減)、同社株主に帰属する当期純利益17,196千米ドル(2,769百万円:同3.4%減)、Non-GAAP指標18,620千米ドル(2,999百万円:同2.9%減)と期初の業績予想を据え置いている。
半導体に関する世界の需要は、AI関連を除き、大半の市場セグメントにおいて引き続き在庫調整が継続すると予測されており、市場は横ばいか微増に留まる可能性が高いと同社では見ている。このような環境下、車載カメラシステム向け半導体部門において2023年12月期に量産移行した製品により、2023年12月期比12.5%から15.0%の増収を見込んでおり、車載カメラの売上比率は約70%程度まで上昇するなど2024年12月期全体の業績押し上げに大きく寄与すると予想している。これについては、新製品を含まない既存半導体製品のみで全体売上高の10%増収に相当する。顧客との全体取引の95%を代金前払いという条件で契約しているため、受注から売上計上への確度は総じて高い。これらの前提に立てば同社の予想は実現可能と考えられる。なお同社によれば、2024年12月期第3四半期の予想について、売上高は51,590千米ドル(前年同期比9.9%増)、営業利益は12,862千米ドル(同0.9%増)を見込んでおり、通期計画に対しては、それぞれ71.4%、74.3%の進捗率となる。同社は第4四半期に売上高や利益が集中する傾向があり、これを踏まえれば、業績予想達成の確度は高いと弊社では見ている。
一方で監視カメラシステム向け半導体部門については、2024年12月期も在庫調整の影響が尾を引きそうだが、世界全体の半導体需要の動向を受けて、2023年12月期比同水準から4.4%の増収を見込んでいる。この結果、同社の予想売上高に占める車載カメラシステム向け半導体の比率は、2023年12月期の68.8%から70.0%程度まで上昇する見通しである。
利益面では大型の研究開発投資を予定していることもあり前期比で減益を見込んでいる。2024年12月期は、将来の成長を見込んで積極的な新製品試作のテープアウトを計画するとともに、ISPの原価低減を目的とする製造プロセス微細化・車載向けやCIS(CMOSイメージセンサー)開発のためのテープアウト費用、SoC開発のための投資を行う。さらに、既存半導体製品の価格競争力強化や、将来の成長エンジンとなる製品開発により、競争優位の拡大を狙う。人件費を除く研究開発費は最大5.0百万米ドル(2023年12月期は2.5百万米ドル)に達する見込みで、研究開発投資によって前期比減益となるものの、増収効果により影響は限定的としている。
なお、2024年12月期の業績予想には、市場投入前の新製品(ISP新製品やドアフォン向け半導体)は、需要家の在庫調整の進捗によって採用時期や採用率が左右されるため見通しが困難であるとして織り込まれていない。ISP新製品については現時点で出荷時期は未定であり、採用時期等が明らかになった時点で開示するとしている。今後の成長余地のある商材として弊社は動向に注目している。
2. 研究開発の進捗状況
同社は将来に向けたビジョンとして、監視カメラ、車載カメラの両部門においてトータルソリューションを提供することにより販売を拡大し、成長を図る方針を採っている。監視カメラに関してはカメラ本体及びDVR(映像記憶装置)で使用する半導体やセンサーを一気通貫で供給することを目指している。車載カメラに関してはリア・ビューカメラやサラウンド・ビュー用をはじめ、ドライブレコーダーや電子ミラーまで用途を拡大し、自動車の先進運転支援機能の進化に対応したソリューション提供を計画しており、研究開発を着々と進めている。
2024年12月期の研究開発費は10,266千米ドルと前期比3,086千米ドル(同43.0%)増を計画している。主な内訳は、テープアウト費用やライセンス費用が5百万米ドル(最大)で、残りを研究開発のための人件費等が占める。テープアウト費用の増加分はISPやCMOSイメージセンサーの原価低減を目的とする製造プロセスの微細化に使われ、ライセンス費用及び人件費の増加分はSoC開発に向けられている。
現在は2024年以降の自社の成長エンジンとなり得る戦略商品の開発に注力しており、これにより他社との競争優位性を高める狙いだ。注力する研究開発として、1点目は、車載・監視カメラ側と映像記憶装置側それぞれで実装するデータ送受信用の半導体について、原価低減により価格競争力を強化するため、ISP製造プロセスの微細化に取り組んでいる。現状では、カメラ側に実装される送信側半導体については、後発の安価な競合品があるため、受信側半導体と比較して1/10程度しか売れていない。この状況を改善するため、製造プロセスを微細化してコストダウンと高性能化を図り、競争力を高めて売上増加を狙う。
さらにこのISPは、従来片道送信のオーディオを高機能な双方向送信にすることで、車載カメラや監視カメラのハイエンド化を実現し、高収益が期待できる。同社はISPの成長余地はかなり大きいと予測しており、出荷が待たれるところだが、現在は引き続き設計中で生産委託先との協議を進めているところだ。収益寄与のタイミングは現時点では明らかではないが、少なくとも2025年12月期には実現できると踏んでいる。2点目は車載カメラシステム向けのSoCの開発である。将来の車載カメラへのトータルソリューション提供に向けた開発で、2025年12月期のサンプル出荷を目指しており、現在は顧客との間で仕様調整の段階にある。3点目はCMOSイメージセンサーの開発である。同分野は日本国内のメーカーが大きなシェアを握っているものの、円安局面が逆風となっている。
ドル高・円安の動向は一時期に比較して落ち着いてきたが、まだ本格競争できる水準には至っていない。現在は既存の監視カメラシステム向けCMOSイメージセンサーをベースに車載カメラシステム向けを開発しており、製造は日本国内の工場において行うことを検討している。車載カメラシステムでは、バックカメラ(1個)からドライブレコーダー(前後2個)、サラウンドビュー(前後左右4個)と搭載数を増やしており、今後はルームミラーやサイドミラーの電子ミラーへの移行による搭載カメラ数の増加も予見されている。CMOSイメージセンサーが完成すれば、2点目のSoCと合わせ、車載分野での同社の考えるトータルソリューションが完成することになる。4点目は、車載カメラシステム向けの新しいTVI規格の開発である。通信時のノイズ耐性を向上させる規格改良で、日米欧の自動車メーカー純正品への参入を目指す。現在生産委託先でサンプルを制作中。ノイズ耐性の高い新TVI規格は、測定基準が厳しい集合住宅用ドアフォン向けにも展開が可能となり、マーケットのさらなる広がりが期待できる。その他、機器メーカーの需要が多様化する液晶ディスプレイコントローラーの開発等、新製品の投入に向けた開発についても着々と進めている。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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1. 2024年12月期業績の見通し(米国基準)
2024年12月期業績(米国基準)は、売上高72,206千米ドル(11,630百万円:前期比10.0%増)、営業利益17,321千米ドル(2,789百万円:同3.9%減)、税引前当期純利益19,321千米ドル(3,112百万円:同4.1%減)、同社株主に帰属する当期純利益17,196千米ドル(2,769百万円:同3.4%減)、Non-GAAP指標18,620千米ドル(2,999百万円:同2.9%減)と期初の業績予想を据え置いている。
半導体に関する世界の需要は、AI関連を除き、大半の市場セグメントにおいて引き続き在庫調整が継続すると予測されており、市場は横ばいか微増に留まる可能性が高いと同社では見ている。このような環境下、車載カメラシステム向け半導体部門において2023年12月期に量産移行した製品により、2023年12月期比12.5%から15.0%の増収を見込んでおり、車載カメラの売上比率は約70%程度まで上昇するなど2024年12月期全体の業績押し上げに大きく寄与すると予想している。これについては、新製品を含まない既存半導体製品のみで全体売上高の10%増収に相当する。顧客との全体取引の95%を代金前払いという条件で契約しているため、受注から売上計上への確度は総じて高い。これらの前提に立てば同社の予想は実現可能と考えられる。なお同社によれば、2024年12月期第3四半期の予想について、売上高は51,590千米ドル(前年同期比9.9%増)、営業利益は12,862千米ドル(同0.9%増)を見込んでおり、通期計画に対しては、それぞれ71.4%、74.3%の進捗率となる。同社は第4四半期に売上高や利益が集中する傾向があり、これを踏まえれば、業績予想達成の確度は高いと弊社では見ている。
一方で監視カメラシステム向け半導体部門については、2024年12月期も在庫調整の影響が尾を引きそうだが、世界全体の半導体需要の動向を受けて、2023年12月期比同水準から4.4%の増収を見込んでいる。この結果、同社の予想売上高に占める車載カメラシステム向け半導体の比率は、2023年12月期の68.8%から70.0%程度まで上昇する見通しである。
利益面では大型の研究開発投資を予定していることもあり前期比で減益を見込んでいる。2024年12月期は、将来の成長を見込んで積極的な新製品試作のテープアウトを計画するとともに、ISPの原価低減を目的とする製造プロセス微細化・車載向けやCIS(CMOSイメージセンサー)開発のためのテープアウト費用、SoC開発のための投資を行う。さらに、既存半導体製品の価格競争力強化や、将来の成長エンジンとなる製品開発により、競争優位の拡大を狙う。人件費を除く研究開発費は最大5.0百万米ドル(2023年12月期は2.5百万米ドル)に達する見込みで、研究開発投資によって前期比減益となるものの、増収効果により影響は限定的としている。
なお、2024年12月期の業績予想には、市場投入前の新製品(ISP新製品やドアフォン向け半導体)は、需要家の在庫調整の進捗によって採用時期や採用率が左右されるため見通しが困難であるとして織り込まれていない。ISP新製品については現時点で出荷時期は未定であり、採用時期等が明らかになった時点で開示するとしている。今後の成長余地のある商材として弊社は動向に注目している。
2. 研究開発の進捗状況
同社は将来に向けたビジョンとして、監視カメラ、車載カメラの両部門においてトータルソリューションを提供することにより販売を拡大し、成長を図る方針を採っている。監視カメラに関してはカメラ本体及びDVR(映像記憶装置)で使用する半導体やセンサーを一気通貫で供給することを目指している。車載カメラに関してはリア・ビューカメラやサラウンド・ビュー用をはじめ、ドライブレコーダーや電子ミラーまで用途を拡大し、自動車の先進運転支援機能の進化に対応したソリューション提供を計画しており、研究開発を着々と進めている。
2024年12月期の研究開発費は10,266千米ドルと前期比3,086千米ドル(同43.0%)増を計画している。主な内訳は、テープアウト費用やライセンス費用が5百万米ドル(最大)で、残りを研究開発のための人件費等が占める。テープアウト費用の増加分はISPやCMOSイメージセンサーの原価低減を目的とする製造プロセスの微細化に使われ、ライセンス費用及び人件費の増加分はSoC開発に向けられている。
現在は2024年以降の自社の成長エンジンとなり得る戦略商品の開発に注力しており、これにより他社との競争優位性を高める狙いだ。注力する研究開発として、1点目は、車載・監視カメラ側と映像記憶装置側それぞれで実装するデータ送受信用の半導体について、原価低減により価格競争力を強化するため、ISP製造プロセスの微細化に取り組んでいる。現状では、カメラ側に実装される送信側半導体については、後発の安価な競合品があるため、受信側半導体と比較して1/10程度しか売れていない。この状況を改善するため、製造プロセスを微細化してコストダウンと高性能化を図り、競争力を高めて売上増加を狙う。
さらにこのISPは、従来片道送信のオーディオを高機能な双方向送信にすることで、車載カメラや監視カメラのハイエンド化を実現し、高収益が期待できる。同社はISPの成長余地はかなり大きいと予測しており、出荷が待たれるところだが、現在は引き続き設計中で生産委託先との協議を進めているところだ。収益寄与のタイミングは現時点では明らかではないが、少なくとも2025年12月期には実現できると踏んでいる。2点目は車載カメラシステム向けのSoCの開発である。将来の車載カメラへのトータルソリューション提供に向けた開発で、2025年12月期のサンプル出荷を目指しており、現在は顧客との間で仕様調整の段階にある。3点目はCMOSイメージセンサーの開発である。同分野は日本国内のメーカーが大きなシェアを握っているものの、円安局面が逆風となっている。
ドル高・円安の動向は一時期に比較して落ち着いてきたが、まだ本格競争できる水準には至っていない。現在は既存の監視カメラシステム向けCMOSイメージセンサーをベースに車載カメラシステム向けを開発しており、製造は日本国内の工場において行うことを検討している。車載カメラシステムでは、バックカメラ(1個)からドライブレコーダー(前後2個)、サラウンドビュー(前後左右4個)と搭載数を増やしており、今後はルームミラーやサイドミラーの電子ミラーへの移行による搭載カメラ数の増加も予見されている。CMOSイメージセンサーが完成すれば、2点目のSoCと合わせ、車載分野での同社の考えるトータルソリューションが完成することになる。4点目は、車載カメラシステム向けの新しいTVI規格の開発である。通信時のノイズ耐性を向上させる規格改良で、日米欧の自動車メーカー純正品への参入を目指す。現在生産委託先でサンプルを制作中。ノイズ耐性の高い新TVI規格は、測定基準が厳しい集合住宅用ドアフォン向けにも展開が可能となり、マーケットのさらなる広がりが期待できる。その他、機器メーカーの需要が多様化する液晶ディスプレイコントローラーの開発等、新製品の投入に向けた開発についても着々と進めている。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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