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酉島製作所、上期は大幅な増収増益で着地 海水淡水化市場におけるポンプ需要を捉え、北アフリカを中心に受注拡大

投稿:2023/11/27 19:00

目次

原田耕太郎氏:株式会社酉島製作所代表取締役の原田耕太郎です。本日はお忙しいところお越しいただき、誠にありがとうございます。どうぞよろしくお願いします。

それでは、2023年度第2四半期の連結決算についてご説明します。

最初に2023年度第2四半期決算実績と2023年度通期決算見通しについてご報告します。その後、「トリシマの成長戦略」について、重点的にお話ししたいと思っています。

2023年度 中間決算のポイント

まずは実績です。ご注目いただきたいのは、2020年、2021年、2022年と3年連続で増収増益を達成し、過去最高を更新しているところです。2023年度についても、売上と利益、双方の過去最高更新を計画しています。

受注高に関しては、2021年度の600億円台から2022年度は890億円へと大幅な成長を遂げています。そのため今年度は、昨年並みの実績を出すことが難しいのではないかという見通しでした。

ところが、今のところ、受注高は前年同期と同レベルを維持しています。今回の決算で一番大きなポイントは、受注残が994億円で過去最高を更新していることです。受注残は、現在1,000億円に迫るところまできています。

それに基づき、今年度も4年連続となる売上と利益の過去最高更新に向かって順調に進んでいます。今のところサプライズは全くなく、通期計画どおりに進捗しています。そこで本日は、「トリシマの成長戦略」についてお話ししていきたいと思っています。

2023年度 第2四半期決算概略

受注高は昨年とほぼ変わりません。売上高は2022年度上半期と比べて大幅に伸長し、利益も順調に推移しています。

2023年度 第2四半期連結決算実績(連結)

2023年度の通期計画です。受注高は700億円と、前年の890億円から見ると、コンサバティブというわけではありませんが、通常ベースでの計画を立てています。受注の進捗率に関しては、半年ですでに3分の2にあたる約65パーセントを達成している状態です。売上高は750億円という計画を立てており、それに向かって順調に進んでいます。

2023年度 第2四半期連結決算実績(単体・子会社別)

決算実績をトリシマ単体と子会社に分けています。それぞれが計画どおりに進み、売上、利益を積み重ねています。

2023年度連結決算見通し

繰り返しになりますが、2023年度通期計画に対しては、売上、利益ともに順調に進んでいます。今のところ見直す予定はなく、確実に計画を達成していきたいと思っています。

トリシマのマテリアリティ(重要課題)

今年の5月に2022年度の決算発表を行い、その際にみなさまにお話しした「トリシマの成長戦略」について、進捗状況を中心にもう一度ご説明したいと思っています。

トリシマが抱える重要課題は、世界の課題につながります。地球温暖化が進み、エネルギーの転換が求められ、目先では異常気象による被害が多く出ています。

先進国ではこれから人口が減っていく中でインフラが老朽化していき、新興国ではこれから人口が伸びていくという状況です。

そして、一番由々しき事態として、昨年はウクライナ問題が勃発し、今年の10月にはパレスチナとイスラエルの問題が発生しました。このように地政学的なリスクが非常に高まっていることから、水や食料が偏在し、非常に不安定な状態となっています。加えて、先進国のインフラ老朽化と同じように、スキルドワーカーが減少してきています。

このような状況の中、新たな時代のインフラをどのように作り上げ、守っていくかという課題に対し、ポンプをしっかりと作ることで、問題の解決に寄与することができます。

また、夏はこれまでより非常に暑くなり、今年は歴史上最も暑く、長い夏となりました。その影響で、雨が降らずに酷暑になる、あるいは雨が降りすぎる事態が起きています。今年で言うと、中国やリビアなど、通常は起こり得ない場所で水害が発生し、多くの人が苦しんでいます。このような社会に対し、ポンプでどれほどの貢献ができるかということです。

そして、スキルドワーカーがいなくなり、世界中に広がるインフラをこれからどのように管理し、サービス網を構築していくかについて、データやAIによる新しいモノづくりと合体させて運営していきたい、これらの取組みが「トリシマのマテリアリティ(重要課題)」です。

5月の時点ではカーボンニュートラルに向けたエネルギー課題への取組みとして、2点をお話ししました。

カーボンニュートラルと言うと、CO2を出さない新しいエネルギーとして、アンモニアや水素が挙げられます。こちらも重要ですので、計画に盛り込み着実に進めているところです。一方で、ポンプはエネルギーを大量に消費する機械のため、2030年、あるいは2050年までのトランジションの時までに、省エネを徹底的に進めることをトリシマの使命としています。今期は、その取組みから「スーパーエコポンプ」を発表するとお伝えしました。

さらに、水不足・食料不足に対するポンプの役割や、多くの被害が起こっている気候変動対策向けポンプをみなさまに使っていただき、世の中の減災・防災に役立てていくということを中心にお話ししました。

以上の内容をお伝えした5月からこの11月でちょうど6ヶ月経ちましたので、進捗状況をお話ししたいと思います。

1.脱炭素社会実現に向けたエネルギー課題への取組み

まず、カーボンニュートラル社会の実現に向けたエネルギー課題への取組みです。スライドには、5月の時点でみなさまにお話しした2つの取組みを記載しています。

1つ目は、今期に省エネを推進するための「スーパーエコポンプ」をリリースすることです。

2つ目は、アンモニアを新しい燃料として取り扱うポンプに着手し、開発を進めていくことです。

さらに、先の話になりますが、水素を大量に使う世界が来ると予想しています。来なければカーボンニュートラルは達成できないだろうと考え、まだ世の中に存在しない、大量の水素を高圧でハンドリングするポンプの開発を着々と進めています。

2023年10月

1つ目の取組みである「スーパーエコポンプ(SEP)」を、2023年の10月にリリースしました。

ヨーロッパやアメリカでは、MEI(Minimum Efficiency Index)というインデックスの「0.7」以上の数値を出すポンプでなければ、今後使ってはいけないという規制が始まっています。「0.7」とは、世の中で動いている最高効率のポンプを上から5パーセントくらいに絞った数値で、それを達成しています。つまり、省エネを徹底したポンプです。作り方も変えて、世の中に貢献していこうと考えています。

あるいは、エネルギー資源として水素やアンモニアの採用が進む中において、ポンプはインフラとして必要とされ、新しいプラントの中にもどんどん入っていきます。新しいプラントはもちろんのこと、既存のプラントにも使っていただき、現在排出しているCO2を削減してもらいたいと考えています。そのために、「スーパーエコポンプ(SEP)」を世の中に勧めることが、トリシマの使命であると認識しており、こちらも10月から本格的に動き始めました。

2023年10月

2つ目の取組みである、燃料アンモニア用ポンプの開発・製造について進捗をご報告します。

アンモニアは毒性が高く、都市部で大量に使うには、高い安全性が求められます。5月の時点では、アンモニアを安全かつ大量に扱うために、ドイツのHERMETIC社と業務提携を行ったことをお話ししましたが、進捗状況をお話します。

NEDO、JERA、IHIが中心となり、来年の4月から5月にかけて、石炭火力発電所でアンモニアを20パーセント混焼することになっています。当社は現在、石炭火力発電所にポンプを出荷して、据え付けています。

そのため、来年5月の2023年度決算発表の時には、このポンプがどのように動き、どのような成果を出しているのかをご報告できるのではないかと思います。こちらも順調に進んでいます。

2023年10月

ドイツのHERMETIC社と提携し、10月に両社で東京・大阪でセミナーを開催しました。電力会社を中心とした発電会社、プラントを建てるEPCのコントラクター、あるいはユーザーである、アンモニアの取り扱いが今後増えていくと思われる化学会社や石油会社、一般の工場を省エネ化しようという方々など、非常に多くの方にご参加いただき、活発な議論を交わしました。

安全性の高い水素が普及するまでのトランジションの間、アンモニアを使用することに、現在は日本政府も力を入れています。一方で、それだけアンモニアを使うということは、アンモニアが足りなくなります。

そのため、岸田首相が中東を訪問され、UAE、サウジアラビアと合意して、まずはブルーアンモニアやCH4という化石燃料、炭化水素から水素を取り出してアンモニアを作り、日本に持ってこようというプロジェクトが中東やオーストラリアで進んでいます。

そのような上流の作るところや運ぶところ、そして実際にアンモニアを大量に使う石炭火力発電所に、安全性の高いこのポンプを使っていただこうという取組みも、徐々に進めています。

2023年5月

一番注目度が高いのは水素です。水素昇圧ポンプの開発は順調に進んでおり、今年度中に、秋田にあるJAXA能代ロケット実験場で試験を行うことを5月に発表しました。その後NEDOから、現状の水素の価格ではまったく競争力がないため、競争的な水素サプライチェーンを作ろうという動きがあり、国を挙げたファンドができました。

それに基づき、水素を大量に運ぶために液化して、ポンプを高効率化・大流量化・高圧化して、水素を運ぶコストを下げようという構想をNEDOに採択していただいたため、国を挙げてそのポンプの開発を始めています。

2023年6月

採択された詳細が出てきたのは6月です。スライドは、NEDOのホームページに掲載されている当社の資料です。

トリシマが中心となり、JAXAと一緒に実液試験を行います。さらに、京都大学、あるいは山口東京理科大学、また、国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)と共に、まったく新しい材質で、液体水素を気化させて、ロスしないような画期的なモーターをポンプに組み込むための開発を行うことになり、その第1弾が始まります。

2023年11月

2週間ほど前のトリシマの工場の写真です。まずはマイナス253度ではなく、マイナス196度の液化窒素で試験を行う設備が整いました。そして、今週マイナス196度で試験を行い、12月には実液試験に入ります。

実液試験については、注目度も高いため、いろいろな国、大手企業、あるいは電力会社からも問い合わせが殺到しています。今後はみなさまに逐次情報を提供していこうと思います。

トリシマのマテリアリティ(重要課題)

カーボンニュートラルに向けたエネルギー課題への取組みでは、「スーパーエコポンプ」という、省エネを徹底的に達成するポンプの導入と共に、アンモニア、水素という次世代エネルギーを大量に「動かす・使う」ために必要なポンプの開発を進めていることについてご説明しました。

次に、安全・安心な社会の構築についてです。世界中で、雨が降らないことによる水不足や食料不足、あるいは雨が降りすぎたことによる災害が起こっており、これに対してさらによいポンプを作って普及させていこうという取組みを行っています。

2.安全・安心な社会の構築(かんがいプロジェクト向けポンプの提供)

スライドに記載しているのはエジプトの衛星写真です。5月の時点でお話ししましたが、2017年には砂漠だったところにポンプが入り始めて、貯水池ができています。この小さな丸の1つ1つが農場です。

ウクライナから食糧が入らないという中で、かなりの食糧増産が始まっており、そこにトリシマのポンプが非常に寄与しています。これからまだまだポンプの受注は進む見込みであり、順調に進んでいます。

2023年7月

大量かつ大型のポンプ場が建設されたため、「エジプトでメンテナンスを行ってほしい」と、エジプト政府からスエズ運河経済特区庁の工業団地の中に、3万平方メートルの土地を割り当てていただきました。現在、工場の建設が順調に進んでいます。こちらは、7月にJETROやエジプト政府から発表されています。

トリシマとしては、たくさんのハイテクポンプや大型ポンプが採用され、それを長期間使っていただくためのサービス網を構築する、あるいはメンテナンスができる工場を作っていく取組みが、中東からエジプト、アフリカとだんだん西に向かって広がり始めたことが画期的だと思っています。

2.安全・安心な社会の構築(海水淡水化プラント向けポンプの提供)

海水淡水化プラント向けポンプの提供についても、5月の時点で、世界で動いている海水淡水化プラントには、トリシマの大型ポンプがほぼ入っているとお話ししましたが、こちらもさらに進んでいます。

先ほどエジプトから西へと言いましたが、リビアを通り越したチュニジアで建設中のプラントや、アルジェリアにも大型のプラントがかなり出てきています。今年の上半期には、そのすべてにトリシマのポンプを使っていただくことが決定し、モノづくりが始まりました。

冒頭にお伝えしたように2022年度の890億円という大型受注から、2023年度はある程度ペースが落ちると推測したものの、このような背景から今のところ順調に進んでいます。

砂漠地帯では、再生可能エネルギーである太陽光のコストが非常に下がっています。アルジェリアは資源国ですが、今まで資源国ではなかったモロッコやチュニジアなどでも太陽光を利用した社会の構築が始まっています。そのために必要となるのは、電力と水ですが、電力への投資は終了し、現在は水への投資を開始しています。

日本政府は、アフリカに力を入れており、特にモロッコからサブサハラにかけてのエリアでは、これから海水淡水化プラントが増えてくるのではないかと思っています。

トリシマにとっては、北アフリカをこの上半期の大きなトピックと捉えており、まだまだこれからも海水淡水化を継続して進めていきます。

2023年8月

もう1つの大きなトピックは、静かに進行していました。海水淡水化にはものすごくエネルギーがかかります。今はRO膜という逆浸透膜に高圧の海水を注入していますが、近海から取った海水は不純物が多いため、まずはフィルタリングできれいにし、注入できる水質にしてから高圧ポンプで膜に入れます。

スライドにも記載していますが、水を作るコストの大半は、ポンプを駆動する電気の量によって決まってくると言われます。1立米当たり3キロワットアワーから4キロワットアワーの電力が必要となるのが、現状の陸上の海水淡水化システムですが、これを深海で実施するWateriseという画期的なスタートアップ企業が今ノルウェーから出てきており、世界的な特許を押さえ始めています。

ノルウェーがなぜこのようなことに取組むかというと、北海を中心に海底油田をかなり進めており、化石燃料の石油産出に代わり、海底で水を作ろうとしているからです。水深500メートルの海底は、常に水圧が50バールかかり、太陽光も届かないので、温度も安定して水質も非常にきれいです。

この技術を海水淡水化に使おうということになると、前処理の化学薬品処理やフィルタリングがなくなり、深海で水を作って陸地に持ってくることにより高圧ポンプもいらなくなるので、電気代だけではなく地球に対する環境負荷も下げられます。

深海で作った水を地上に運ぶための電気代のみで比較すると、約40パーセント、あるいはそれ以上のエネルギー消費量が下がるだろうと試算されています。

エネルギー消費量が下がり、土地も必要なくなって、次世代のゲームチェンジャーとしての海水淡水化が出てきそうな研究が始まっているところに、トリシマはパートナーとして入っています。

2023年8月

この研究を進めている、米国のデュポン社、世界的エネルギー企業のWorley社、海底油田では世界最大のエンジニアリング会社であるslb社のグループに参加して、ポンプの開発を始めています。

当然のことながら、生活のための水は依然として必要となりますが、これから必要となるのは水素とアンモニアだというお話をしました。グリーン水素やグリーンアンモニアを作ろうと思うと、水を電気分解するしかありません。

海水を電気分解すると、塩素が大量に発生します。塩素は非常に危険な物質で、処理が難しいため、まずは真水にしてから電気分解をする必要があります。そのため、従来の生活用水からグリーン水素、グリーンアンモニアを作るためのマーケットが大きくなるだろうと言われています。

この分野でエネルギーコストを下げ、地球環境への負荷が低い真水を作る方法が非常に注目されており、そことトリシマが8月に提携しました。すでにそれに向けた深海用、海底用のポンプ開発が始まりました。

スライドに記載しているのは、これからの技術なのですが、トリシマの世界No.1の市場分である海水淡水化を、将来さらに堅固にする提携事例だと思います。

2.安全・安心な社会の構築(気候変動対策向けポンプの提供)

こちらも何度も紹介している、気候変動対策向けポンプです。ゲリラ豪雨時に排水を早期に行い、街や農業施設を守れることから、国土交通省や農林水産省にかなり取り上げていただき、受注が増えています。実はこの耐水モーターは、ポンプとモーターを一体化させています。

2023年7月

今まであまりお話ししてきませんでしたが、耐水モーターに関しては、大型モーターで日本一のTMEIC(東芝三菱電機産業システム)社との共同で開発しています。TMEIC社は、東芝と三菱のモーター部門が合併してできた企業です。

同社が2023年の10月で20周年を迎えるため、世の中や環境に対して貢献していること、そのためにトリシマと共同で開発を進めていることを世の中に発信していきたいと、「日経クロステック(×TECH)」の記事に掲載してくれました。このようなかたちで、世の中へのトリシマの浸透度がどんどん進んでいます。

すべてのマテリアリティ(重要課題)に対する経営計画が順調に進行中

トリシマの重要課題に対して、それぞれが順調に進んでいるというご説明をしてきました。3番目のデータ・AIの活用による新しいモノづくりや、これから入れたポンプあるいはプラントをどのように管理していくのかについても進んでいます。

危険な場所での需要が高いことから、防爆というコンセプトで新しい製品を発表し、試作が終わって、本格的な生産に入ろうというところまできています。こちらも来年の5月の時点でお話しできると思っていますが、いずれにせよ全部が順調に進んでいます。

世界中で当面のポンプ需要をうまく捉え、円安の追い風を受けながら、新しい取組みも含めて順調に進めています。その結果が9月末の受注残994億円と、1,000億円に迫る数字です。

当面は4年連続の増収増益を目指していきますので、みなさまにはぜひ、引き続き応援していただきたいと思います。トリシマの現状についてご説明しました。ありがとうございました。

配信元: ログミーファイナンス
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