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明豊ファシリティワークスのニュース
*14:52JST 明豊ファシリ Research Memo(2):「フェアネス」と「透明性」を企業理念とするCM業界のパイオニア(1)
■事業概要
1. コンストラクション・マネジメントとは
コンストラクション・マネジメント(CM)とは、米国において普及した建設生産・管理システムである。具体的にはコンストラクション・マネジャー(CMr)が技術的な中立性を保ちつつ、発注者の代行者または補助者となって発注者側に立ち、基本計画作成や工事発注方式の検討、設計者選定支援、設計マネジメント、施工マネジメント等各種マネジメント業務を通じたコスト管理、工事進捗管理などを行う発注者支援サービスのことを指す。明豊ファシリティワークス<1717>はCM事業(発注者支援事業)を専業とした国内の先駆け的な唯一の東証上場企業である。
同社のサービス契約形態の主流である「ピュアCM方式」とは同社と発注者がCM業務委託契約(マネジメントフィー契約)を結ぶ方式で、設計や施工会社との契約は発注者が直接行う格好となる。同社の売上高に計上されるのはマネジメントフィーのみとなり、売上原価としてマネジメントに関わるコストなどが計上される。
2019年3月期までは売上高の一定割合を「アットリスクCM方式」※で占めていたが、2021年3月期以降はほぼすべてが「ピュアCM方式」の案件に切り替わっている。売上高は2015年3月期をピークに「アットリスク方式」の案件が減少したことにより減収傾向を辿ってきた一方で、利益ベースで成長が続いていたのは「ピュアCM方式」の売上が順調に増加してきたことが要因となっている。今後についても「ピュアCM方式」での契約が主流になると見られる。
※「アットリスクCM方式」とは同社が発注者に代わって施工会社と直接、工事請負契約を結ぶ方式で、売上高はマネジメントフィーに工事管理フィー、建設工事の実費額(コスト)が加算されることになる。売上原価にはマネジメントフィーや工事管理フィーにかかる社内コストと、発注者が承認した建設工事の実費額(オープンブック方式)が含まれる。工事実費額が売上高と売上原価に同額で計上されるため、「アットリスクCM方式」の売上総利益率は低くなる。
2. 「明豊のCM」の特徴
同社は経営理念に「フェアネス」と「透明性」を掲げ、プロが供給側に偏在するなかで、発注者側に立つことに徹した発注者支援をメイン業務としている。CM方式の最大のメリットは、一般的な一括請負方式と比較して、発注プロセスと工事項目別コストを発注者と可視化されたなかで共有し、複数の選択肢から顧客が納得する最適な方法を選択、実行できることにある。同社は20数年にわたる数多くの事例から得られた実勢コストを社内でデータベース化しており、発注者側に立って適正な費用の査定が行えることを強みとしている。
「明豊のCM」方式では基本計画や、建築、電気・空調・情報通信・AV機器などの設備工事に至るまであらゆる分野の専門家を社内に配置し、顧客側に立った適正な基本計画づくりやコスト管理・査定を行っている。このため、過大に見積られた費用があれば発注者へ説明し、発注者が元請け業者に指摘し改善させる。また、顧客が事業の検討を開始した基本構想段階で精緻な予算を作成し、これを顧客の予算の上限(CAP)として管理し予算内での「プロジェクトの早期立ち上げ」に貢献するなど、顧客目標を確実に達成することで高い信頼を獲得し、高い継続受注率につなげている。
3. 同社の強み
CM事業者にとって競争力の源泉は人材である。特に大規模プロジェクトに対応するためには、発注者側に立ち、設計要件の整理やコスト管理・精査ができる専門家や工期管理などトータルマネジメントができる人材、大手施工会社や設計事務所などとの交渉において対等に渡り合える経験やノウハウを持ち合わせた人材をどれだけそろえているかが重要となる。
同社は、建設会社や施工会社、設計事務所など実際の現場を経験した人材を中途採用により厳選して獲得しており、建設プロジェクトの基本計画策定からコスト見積り・工期管理まですべての工程をカバーするプロフェッショナル集団とも言える。CM事業を先駆けて展開してきたことで、業界内でのブランド力も向上しており、こうした専門的なスキルを持つ人材を多数そろえていることが同社の強みとなっている。特に、公共分野のプロポーザル方式※1によるCM案件では、評価基準の1つとしてCCMJ(認定コンストラクション・マネジャー)の保有資格者をどの程度配置しているかが含まれており、重要な指標となっている。同社は2023年5月末時点で96名と2022年4月末比では1名減となったものの5年間では1.7倍に増加しており、独立系CM事業会社としては最大規模となっている。このほかにも、一級建築士83名(同2名増)や、需要の増加が見込まれる環境分野に関連した資格となるLEED AP(LEED認定プロフェッショナル)※2が3名(同横ばい)、CASBEE建築評価員※3が49名(同2名増)在籍するなど、多数の有資格者が揃っている。
※1 プロポーザル方式とは、発注者が業務の委託先を選定する際に、入札を希望する事業者に対して目的物に対する企画を提案してもらい、そのなかから優れた提案を評価項目別にポイント化し、総合点数が最も高かった事業者を選定する入札方式。
※2 LEEDとは、米国グリーンビルディング協会(USGBC)が開発・運用している環境に配慮した建物に与えられる認証システム。LEED認証に関する知識・経験年数によってGA、AP、Fellowと3種類の資格に分かれている。
※3 CASBEE(建築環境総合性能評価システム)とは、建築物が地球環境・周辺環境にいかに配慮しているか、ランニングコストに無駄がないか、利用者にとって快適かなどの環境性能を客観的に評価するシステム。
同社の成長の原動力となってきたのは、社員一人ひとりが経営理念である「フェアネス」と「透明性」を心掛け、高品質なサービスを提供することで、顧客からの信頼を獲得してきたことにある。社員数254名(2023年3月末時点)の企業規模において、新規顧客の開拓、特に大規模案件の開拓は一般的に困難だが、同社は既存顧客のうち9割近くがメーカーや金融機関、学校・医療法人、地方自治体を含めた大企業や公共体で占められており、新規顧客もその大半を既存顧客からの紹介によって獲得している。受注金額に占める既存顧客の比率はここ数年、70%台で推移しているが、これは同社のCMサービスを利用した企業から継続してプロジェクトの依頼を受けているためで、顧客からの信頼性の高さの裏付けともなっている。また、LEGOLAND Japan(同)やSAPジャパン(株)、ロシュ・ダイアグノスティックス(株)、タイコエレクトロニクスジャパン(同)など大手外資系企業の日本拠点の案件を多く手掛けていることも特徴となっている。
一方で、同社は信頼関係の構築に関して、顧客だけでなく利害関係者となる元請けの建設会社とも良好な関係を構築している。最近では、着工後における施工者からの改善提案など、発注者側が理解し難い専門的な検討事項についても、同社が間に立って発注者に丁寧に説明することでスムーズに話が進むといった点が高く評価されている。利害関係者からであっても真に顧客の役に立つ提案については真摯に向き合う「フェアネス」「透明性」の経営理念が、顧客に対してだけでなくすべての関係者に対して実践されている証左と言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. コンストラクション・マネジメントとは
コンストラクション・マネジメント(CM)とは、米国において普及した建設生産・管理システムである。具体的にはコンストラクション・マネジャー(CMr)が技術的な中立性を保ちつつ、発注者の代行者または補助者となって発注者側に立ち、基本計画作成や工事発注方式の検討、設計者選定支援、設計マネジメント、施工マネジメント等各種マネジメント業務を通じたコスト管理、工事進捗管理などを行う発注者支援サービスのことを指す。明豊ファシリティワークス<1717>はCM事業(発注者支援事業)を専業とした国内の先駆け的な唯一の東証上場企業である。
同社のサービス契約形態の主流である「ピュアCM方式」とは同社と発注者がCM業務委託契約(マネジメントフィー契約)を結ぶ方式で、設計や施工会社との契約は発注者が直接行う格好となる。同社の売上高に計上されるのはマネジメントフィーのみとなり、売上原価としてマネジメントに関わるコストなどが計上される。
2019年3月期までは売上高の一定割合を「アットリスクCM方式」※で占めていたが、2021年3月期以降はほぼすべてが「ピュアCM方式」の案件に切り替わっている。売上高は2015年3月期をピークに「アットリスク方式」の案件が減少したことにより減収傾向を辿ってきた一方で、利益ベースで成長が続いていたのは「ピュアCM方式」の売上が順調に増加してきたことが要因となっている。今後についても「ピュアCM方式」での契約が主流になると見られる。
※「アットリスクCM方式」とは同社が発注者に代わって施工会社と直接、工事請負契約を結ぶ方式で、売上高はマネジメントフィーに工事管理フィー、建設工事の実費額(コスト)が加算されることになる。売上原価にはマネジメントフィーや工事管理フィーにかかる社内コストと、発注者が承認した建設工事の実費額(オープンブック方式)が含まれる。工事実費額が売上高と売上原価に同額で計上されるため、「アットリスクCM方式」の売上総利益率は低くなる。
2. 「明豊のCM」の特徴
同社は経営理念に「フェアネス」と「透明性」を掲げ、プロが供給側に偏在するなかで、発注者側に立つことに徹した発注者支援をメイン業務としている。CM方式の最大のメリットは、一般的な一括請負方式と比較して、発注プロセスと工事項目別コストを発注者と可視化されたなかで共有し、複数の選択肢から顧客が納得する最適な方法を選択、実行できることにある。同社は20数年にわたる数多くの事例から得られた実勢コストを社内でデータベース化しており、発注者側に立って適正な費用の査定が行えることを強みとしている。
「明豊のCM」方式では基本計画や、建築、電気・空調・情報通信・AV機器などの設備工事に至るまであらゆる分野の専門家を社内に配置し、顧客側に立った適正な基本計画づくりやコスト管理・査定を行っている。このため、過大に見積られた費用があれば発注者へ説明し、発注者が元請け業者に指摘し改善させる。また、顧客が事業の検討を開始した基本構想段階で精緻な予算を作成し、これを顧客の予算の上限(CAP)として管理し予算内での「プロジェクトの早期立ち上げ」に貢献するなど、顧客目標を確実に達成することで高い信頼を獲得し、高い継続受注率につなげている。
3. 同社の強み
CM事業者にとって競争力の源泉は人材である。特に大規模プロジェクトに対応するためには、発注者側に立ち、設計要件の整理やコスト管理・精査ができる専門家や工期管理などトータルマネジメントができる人材、大手施工会社や設計事務所などとの交渉において対等に渡り合える経験やノウハウを持ち合わせた人材をどれだけそろえているかが重要となる。
同社は、建設会社や施工会社、設計事務所など実際の現場を経験した人材を中途採用により厳選して獲得しており、建設プロジェクトの基本計画策定からコスト見積り・工期管理まですべての工程をカバーするプロフェッショナル集団とも言える。CM事業を先駆けて展開してきたことで、業界内でのブランド力も向上しており、こうした専門的なスキルを持つ人材を多数そろえていることが同社の強みとなっている。特に、公共分野のプロポーザル方式※1によるCM案件では、評価基準の1つとしてCCMJ(認定コンストラクション・マネジャー)の保有資格者をどの程度配置しているかが含まれており、重要な指標となっている。同社は2023年5月末時点で96名と2022年4月末比では1名減となったものの5年間では1.7倍に増加しており、独立系CM事業会社としては最大規模となっている。このほかにも、一級建築士83名(同2名増)や、需要の増加が見込まれる環境分野に関連した資格となるLEED AP(LEED認定プロフェッショナル)※2が3名(同横ばい)、CASBEE建築評価員※3が49名(同2名増)在籍するなど、多数の有資格者が揃っている。
※1 プロポーザル方式とは、発注者が業務の委託先を選定する際に、入札を希望する事業者に対して目的物に対する企画を提案してもらい、そのなかから優れた提案を評価項目別にポイント化し、総合点数が最も高かった事業者を選定する入札方式。
※2 LEEDとは、米国グリーンビルディング協会(USGBC)が開発・運用している環境に配慮した建物に与えられる認証システム。LEED認証に関する知識・経験年数によってGA、AP、Fellowと3種類の資格に分かれている。
※3 CASBEE(建築環境総合性能評価システム)とは、建築物が地球環境・周辺環境にいかに配慮しているか、ランニングコストに無駄がないか、利用者にとって快適かなどの環境性能を客観的に評価するシステム。
同社の成長の原動力となってきたのは、社員一人ひとりが経営理念である「フェアネス」と「透明性」を心掛け、高品質なサービスを提供することで、顧客からの信頼を獲得してきたことにある。社員数254名(2023年3月末時点)の企業規模において、新規顧客の開拓、特に大規模案件の開拓は一般的に困難だが、同社は既存顧客のうち9割近くがメーカーや金融機関、学校・医療法人、地方自治体を含めた大企業や公共体で占められており、新規顧客もその大半を既存顧客からの紹介によって獲得している。受注金額に占める既存顧客の比率はここ数年、70%台で推移しているが、これは同社のCMサービスを利用した企業から継続してプロジェクトの依頼を受けているためで、顧客からの信頼性の高さの裏付けともなっている。また、LEGOLAND Japan(同)やSAPジャパン(株)、ロシュ・ダイアグノスティックス(株)、タイコエレクトロニクスジャパン(同)など大手外資系企業の日本拠点の案件を多く手掛けていることも特徴となっている。
一方で、同社は信頼関係の構築に関して、顧客だけでなく利害関係者となる元請けの建設会社とも良好な関係を構築している。最近では、着工後における施工者からの改善提案など、発注者側が理解し難い専門的な検討事項についても、同社が間に立って発注者に丁寧に説明することでスムーズに話が進むといった点が高く評価されている。利害関係者からであっても真に顧客の役に立つ提案については真摯に向き合う「フェアネス」「透明性」の経営理念が、顧客に対してだけでなくすべての関係者に対して実践されている証左と言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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