INPEXのニュース
【QAあり】INPEX、「Investor Day 2024」を開催 LNGビジネスの拡大戦略や脱炭素社会実現に挑戦
Investor Day 2024
上田隆之氏:みなさま、こんにちは。INPEX代表取締役社長の上田です。本日は、まだ残暑厳しい中ご出席いただき誠にありがとうございます。また、Zoomでご参加のみなさまにも、貴重なお時間をいただき心よりお礼申し上げます。
今回のInvestor Dayは、昨年に引き続き2回目の開催となりました。Investor Day最大の特色は、各プロジェクトの責任者が説明にあたることです。
イクシスLNGプロジェクト、アバディLNGプロジェクト、水素・CCUS事業の担当本部長から、プロジェクトの現状や将来性、現在起こっているさまざまなトラブルも含め、みなさまに直接ご説明します。
その他のプロジェクトや会社全体の方向性については、最後の総合Q&Aでお答えしたいと思います。よろしくお願いします。
イクシスLNGプロジェクト
大川人史氏(以下、大川):株式会社INPEX オセアニア事業本部長の大川です。昨年に続き、本日はイクシスLNGプロジェクトの現状と、これから待ち受ける未来について、テーマを5つに絞ってご説明します。
まず、プロジェクトの長期安定操業が私どもの使命です。この安定操業をいかにして達成するか、それに立ちはだかるチャレンジにはどのようなものがあるのかご説明します。
2つ目に、現在のプラトー維持のため、バックフィル・トレイン拡張など、どのような戦略を持って対応しているのかお話しします。せっかく大きな生産施設を持ったからには、これをアドバンテージにして、より事業の拡大を目指していくものです。
3つ目はクリーン化です。化石燃料の開発・生産を続けていくには、当然ながら二酸化炭素の削減が使命として義務づけられています。生産を拡大させながら、どのようにクリーン化を目指していくのか、これも重要な課題です。
4つ目はINPEXブランドの確立です。これほどの大きな事業を続けるためには、会社のブランドが非常に重要です。すなわち、INPEXに信頼感を持てるのか、また、INPEXで働きたいと思う人たちがいるのか、このようなことが非常に大切だと考えています。
これまでも、まったく看板のないところからINPEXのブランドを立ち上げてきました。現状はどのようになっているのかお伝えします。
最後に、豪州におけるエネルギー事業・投資環境については、昨年からどのような変化があったのか、豪州政府のスタンスに関する変化を中心にご説明したいと思います。
1. 強靭化
プロジェクトの長期安定操業には、4つのポイントがあります。
まず、安全操業の継続がキーになります。そして安全操業だけでなく、設備信頼性を向上させ、生産性を上げていきます。また、生産計画と配船の問題は重要な課題です。販売量を最大化するための最適化に取り組みます。最後は、先ほどお伝えしたCO2の排出量削減です。
今年度の生産状況についてご説明します。前半と後半に分けると、前半の第1四半期と第2四半期は非常に好調で、高い設備稼働率によって安定した生産実績を上げました。ここまでは良かったのです。
しかし、みなさまの中にはすでにご承知の方もいらっしゃると思いますが、7月、8月に生産上のトラブルが発生し、現在は生産量が35パーセント程度に落ち込んでいます。
本日は、まず事実関係を整理し、なぜこのような生産制限がなされたのか、現在はどのような状況で、今後どのタイミングで回復していくのかを細かくご説明していきます。
7月に入り、熱交換器から少量のガスのリークがありました。熱交換器とは、エタン、ブタン、プロパンなどの重質油部分を抽出し、最終的にメタンだけを残すプロセスにおいて重要な役割を果たすものです。
ガスのリークは火災につながる恐れがあるため、少量であってもしっかり検査しなければいけません。
ご承知のとおり、我々にはトレイン1・トレイン2と2系列のトレインがあり、それぞれに3系列ずつ、合計6基の熱交換器を持っています。トレイン2の3つの熱交換器のうちの1つに、少量のガスリークがあったのが事実です。
まず、検査のために8月に作業していたところ、3系列のうちのもう1つ、すなわち3分の2の系列に少量のガスリークが発見されました。さすがに2系列を止めるとなると、トレイン2はシャットダウンせざるを得ません。
2つ目のガスリークが見つかったことから、8月にトレイン2はシャットダウンし、トレイン1だけの稼働となることから50パーセントの生産を行ってきました。
しかし、みなさまもおわかりのように、トレイン1とトレイン2で同じ機器を使っているのであれば、トレイン1の安全はどのように担保できるのかという疑問が湧いてくると思います。したがって、安全性を確保するため、現在はトレイン1でも3つの熱交換器のうち1つを検査しています。
この検査を行っていると、トレイン1の生産量を30パーセントほど削減しなければならないため、トレイン1が70パーセント、トレイン2が0パーセント、トータル35パーセントの生産量で生産している状況です。
実際に機器を供給しているベンダーと協議し、すでにベンダーから派遣されたエンジニアが現地のダーウィンで作業してきました。その結果、トレイン2でトラブルがあった2つの熱交換器のうち1つは、すでに問題なしということになりました。
したがって、トレイン2に関しては、基本的には9月末には100パーセント生産できる体制が整う見込みです。トレイン1もかなり細かい箇所まで検査する必要があるため、おそらく10月末から11月にかけてさまざまな確認作業が終わり、11月初旬から100パーセント操業に復帰できるかと考えています。
ただし、実際に調査してみなければ何が起きるかわかりません。そのあたりをしっかりと見極めながら、安全を確認して生産再開に踏み切りたいと考えています。
ポイントとしては、なぜ熱交換器にトラブルが発生したのか、今後同じトラブルは起きないのかという不安が残ると思います。
原因については、いくつかのルートコーズがあります。現在はまだ特定できる状況にはありませんが、2つから3つには絞られてきているため、はっきりした段階で抜本的な対策をとりたいと思っています。
先ほどお伝えしたように、現時点では11月初旬から100パーセント生産に復帰できるだろうという見込みです。
HSEパフォーマンスは非常に向上しており、安全に対する意識がコントラクターサイドでもかなり上がってきました。コントラクターを集めて細かく指示を出してきたことがようやく実りつつあり、パフォーマンスに安心感が出てきています。
2. プラトー維持・バックフィル・トレイン拡張
今後のプラトー維持・バックフィル・トレイン拡張についてご説明します。
以前もお伝えしたとおり、このまま何もせずに生産を続ければ、2030年代後半には生産量が落ちていきます。したがって、イクシスがプラトーを維持していくには、補完のためのバックフィルを考える必要があります。
その1つとして、私どもは「Cash Maple」というプロジェクトを確保しました。Cash Mapleで、数年はプラトーを維持できます。ただし、数年だけでは足りないため、バックフィルに関してCash Mapleに続くものを考えなければいけません。
施策の1つに、近場の周辺鉱区の探鉱があります。みなさまにきちんとお伝えしておきたいと思いますが、周辺鉱区で2本の井戸を掘ったものの、残念ながらドライでした。今後については、足元を見直し、再度探鉱方針を作っていきたいと思っています。
前回もお伝えしたように、周辺鉱区に少量であってもガスの胚胎があれば、非常に簡単に事業化できます。近いという点は大変重要なポイントであり、大きなガス田が見つからなくても、少量で事業化でき、それがプラトーの維持につながることは明白です。
2本は外しましたが、探鉱方針について足元を見直し、再度戦略を練り直したいと思っています。
また、トレイン拡張に向けては、昨年の説明会で、実際に取得プロセスに入っているとお伝えし、「来年5月頃には当社の名前が表に出るかもしれない。その時に、みなさまはきっとINPEXがどこを狙っているかわかると思う。それまではご容赦願いたい」とご説明しました。
では、5月に当社の名前が出たかというと、出ていません。プロセス自体はかなり佳境に入っています。さまざまな意味で、技術的なアセスメントを行うところまで進んできていますが、技術的なアセスメントと実際の開発プランのアセスメントに時間を使っており、現段階では名前が出るのはまだ少し先かと思っています。
ただし、これから候補者が絞り込まれていくため、年内には当社が決勝ラウンドに進めるかどうかが見えてくると思います。
現段階では、私どもは自社の開発プランにそれなりに自信を持っており、なんとか決勝ラウンドに進めるのではないかと思っています。いろいろな要素から、まだここではお話しできませんが、近い将来、今度こそみなさまにお伝えできるようになるのではないかと思います。
3. クリーン化
CCS事業については、スライドでは「本年中に2坑の評価井掘削を完了する予定」とだけ記載していますが、実際に2本の井戸のうち1本はすでに掘り始めており、ほぼ終了に近い状況です。
1本目は7月25日に掘り始め、2本目は9月25日の予定です。したがって、1坑目はすでに掘削が終わり、2抗目に移ろうとしているところで、確実に作業は進んでいます。
この結果を踏まえ、Bonaparte CCSについてはGHGアセスメントをしっかり行い、我々のCO2をインジェクトできるのかどうか、インジェクタビリティ等についてもこれから調べていきます。したがって、年末頃にはBonaparte CCSがどの程度できるのか、はっきりしてくると思います。
ただし、その過程で同時並行で評価しなければならないのは、このプロジェクトをどの程度の規模で進めていくのかという点です。
イクシスは、年間約600万トンのCO2を排出します。ただし、600万トンで経済性が成り立つのかというとまだわからない部分があり、やはり1,000万トン規模のものを立ち上げなければならないと思います。
そのような場合、ほかの需要家を掘り起こさなければいけません。日本からCO2を運んでくることを含め、需要家とさまざまな協議を行っています。需要が固まったところで、全体でどの程度の規模でこのプロジェクトを進めていくのかがわかります。
現在は実際に掘削し、構造そのものが帯水層である場合、どの程度のCO2を吸収できるのか、それに合わせてどの程度の規模で事業を進めるべきなのか、需要家の掘り起こし等を行っており、順調に進んでいます。
また、北部準州政府が主導するダーウィンでのCCUSハブ構想に関しては、実は8月に政権が労働党から自由党に変わったため、今後どのような方針でプロジェクトを進めていくのかについて、新政権と協議していくことで新たにわかってくると思っています。
現在の取り組みについては、私どもが実際に運転している施設や設備そのものがディ・カーボナイゼーションを進めなければならない中で、再エネ電源を使った電化を検討しています。こちらも、そのうち実用化できるだろうと考えています。
また、西豪州でWheatbelt Connectプロジェクトという植林事業を行っています。ここからのオフセットも期待していますが、やってみなければわからないところがあり、土地の取得が非常に困難です。土地の取得がうまくいかない限り、我々の植林事業は進んでいかないため、現在苦戦しています。
4. INPEXブランド
ここ1年から2年の間に、INPEXブランドの認知度が飛躍的に向上したと言えます。昨年もご説明したと思いますが、どのようなところで実感できるのかというと、政府がなんらかの政策を変更したり、新たに作ったりする際に、私どもの意見が求められるのです。
それに対して、私どもが意見を伝えるということが普通に行われるようになりました。これはやはり、認知されたことになると思います。政策変更に対して物申すことは非常に難しいとお話ししていましたが、私どもが抑止力になれるくらいの存在になってきたと思っています。
2018年9月の生産開始から現在に至るまで安定操業を続けてきたことにより、オペレーターシップに対する信頼感と、豪州への貢献が正しく認知されてきたのだと思います。看板がゼロであった私どもが、オーストラリアでしっかりと看板をつけることができたということです。
この事業を今後も展開していく上で、3つのポイントがあると思っています。
1つ目は「Employer of Choice」です。昨年もお伝えしたように、選ばれる会社にならなければいけません。「INPEXで働きたい」と言われる会社にならなければいけません。やはり、プロジェクトは人です。優秀な人材をどれだけ集められるかが勝負になります。
そのような意味では、私どもの名前が認知され、他社を辞めてINPEXで働きたいという方が相当数出てきたため、「Employer of Choice」のブランド戦略はかなり進行してきたと思っています。
2つ目は「Partner of Choice」です。「INPEXと組んで仕事をしたい」と言っていただけるかどうかが重要です。昨年、再エネ分野における欧州最大の企業であるEnel社と50パーセントずつの出資で、オーストラリアに合弁会社を設立したことを発表しました。
この話が実現したのも「Partner of Choice」の効果であり、「INPEXと共に事業をしたい」と思う会社が現れたということです。1つの再エネ事業をきっかけに、INPEXがさらに評価されていく中でブランド力が確立されていっており、「Partner of Choice」については今後も取り組んでいきます。
3つ目は地域貢献です。地域の方々にどれだけの貢献ができるのかも、やはり非常に重要なポイントです。INPEXがどれほど事業を拡大したくとも、地域の方に反対されたら事業展開はできません。したがって、地域貢献についても、これまで以上にしっかり対応したいと考えています。
5. 豪州におけるエネルギー事業・投資環境
2023年の「Investor Day」では、豪州政府の政策変更にあたり、スライドに記載した5つをご説明しました。これは化石燃料の開発に対して、政府がかなり締め付けを強くしてきたことの表れでした。
その後は何があったかというと、実は2024年に大きな動きがありました。2024年5月に、豪州政府が「Future Gas Strategy」を公表しています。その中でも私どもは意見を求められ、十分に自分たちの意見を述べることができました。
それらをまとめたものが「Future Gas Strategy」として発表されました。ここで1番大きな点として、今回の労働党政権は、天然ガスの重要性をまったく意識していませんでした。
ヨーロッパと同様、石油や天然ガスの重要性が非常に軽んじられ、再エネに思いきり傾いた時代がありました。その後、流れが変わり、再エネだけでは生活がもたないという、正しい認識がなされました。
その結果、クリーンエネルギーとしての天然ガスが、再エネに替わるまでのトランジショナルなエネルギーとして再認識されたという経緯があります。彼らの言葉の中で「不可欠なエネルギー」として使われるようになったのです。
今まであまり意識されていなかったCCSが「不可欠な技術だ」と再認識されたことは、非常に大きな進展です。「Future Gas Strategy」には「不可欠なエネルギー(ガス)に対して追加投資が必要である」とも明記されています。
ただし、重要性が再認識されている割には、資金的な援助がなかなか出てきていません。言うのは簡単ですが、資金的な援助を含めて具体的な支援をしてほしいということを、今まさに豪州政府にお願いしているところです。
今後はこれまで積み上げてきた豪州政府との関係を活かしながら、言うべきところはしっかり言って、私どもの方針を積極的に働きかけていきたいです。この部分はこれまで長らく続けてきたことであり、方針が変わるところはありません。
アバディLNGプロジェクト
渡邉章弘氏(以下、渡邉):アバディLNGプロジェクトを担当している、アジア事業本部長の渡邉です。どうぞよろしくお願いします。
アバディLNGプロジェクトの現状や、実現に向けた取り組みにおける今後の道筋をご紹介したいと思います。スライドには、本日お話しする4つのテーマを記載しました。
1. アバディLNGプロジェクトの概要
アバディLNGプロジェクトの概要です。昨年もご紹介しましたが、特徴的なこととして4つご報告したいと思います。
1つ目は期限です。契約期間が2055年まであり、今後30年以上続くプロジェクトになっています。
2つ目は権益比率です。このプロジェクトは、弊社の他にプルタミナ社とペトロナス社という、東南アジアで最も力を持つインドネシアとマレーシアの国営石油会社が参画する、アジア勢によるLNGプロジェクトとなっています。
3つ目は生産量です。生産規模は、年産LNGで950万トンの計画です。スライド右下の図で示しているように、開発コンセプトとして、先ほどご説明があった弊社のイクシスLNGプロジェクトに極めて類似した開発方式を採用しています。
4つ目は、アバディLNGプロジェクトでもCCSを計画しています。しかも、最初からLNG生産とCCSを並行して行うということで、インドネシア政府の承認を得ています。
5つ目の作業における現在のステータスは、「FEED」と呼ばれる基本設計の準備作業を行っている状況です。詳しいスケジュールは、次のスライドでご紹介します。
2. スケジュール
2024年に行っていることをスライドにまとめました。プロジェクトの作業としては、スライドに「現在はFEED開始に向けた準備作業を実施中」としてインデントした3点です。
1点目に、陸上・海上での物理探査・地盤調査をしています。今後、設計作業をしていく上では地盤の強度などを正しく理解する必要があり、そのために地質に関する情報を収集する作業です。
2点目に、設計作業を担当いただけるエンジニアリング会社を入札によって選定します。これは基本設計作業をできるだけ早く始めるために行うもので、現在はその途中にある状況です。
3点目に、環境等の許認可、あるいはプラントを建設する土地の取得などについてです。特に現在は、インドネシア政府との間で許認可作業を行っています。
今年の大きな作業は、以上の3点となります。インドネシアと聞くと政府との関係が難しそうに思われるかもしれませんが、この3つの作業の中で最も順調に進んでいるのは3点目の許認可作業です。インドネシア政府の強力なサポートを得て、大きなトラブルもなく進んでいます。
また、このような準備作業と並行し、今後のLNGの販売に向けたマーケティング、あるいは開発資金確保のための資金調達の作業も行っています。
3. マーケティング・資金調達
先ほどお話しした、マーケティングと資金調達・ファイナンシングについての状況です。これらの作業を本格的に実施していくためにはFEEDを開始し、プロジェクトのコストやスケジュールがどうなるのかを正しく理解する必要があります。
例えばマーケティングでは、LNGの供給がいつ可能になるのかが販売活動において最も重要な情報です。資金調達では、プロジェクトにいくらかかり、市場からいくら調達する必要があるのかを正しく理解しなくてはなりません。
このような情報は、FEEDを進めながらアップデートされ、より正確な情報が見積もれるようになることから、現時点では、そのための準備の予備的な活動をしています。
LNGを買ってくれそうなお客さまと議論したり、あるいは、お金を貸していただけそうな金融機関に対して貸出意欲を確認している状況です。マーケティング、ファイナンシングのそれぞれについて、現時点では非常にポジティブでエンカレッジングなフィードバックをいただいています。
このようなポジティブな状況を、今後は契約などの具体的なかたちにしていく必要があります。しかし、そのためにはプロジェクトサイドがキャッチアップし、生産開始時期やプロジェクト実現までの資金額などの情報を得ていくことが必要です。
当面の課題としては、プロジェクトを進めながら、マーケティングやファイナンシングができる基盤を十分に固めていくことが必要だと考えています。
プロジェクト作業はまだ非常にプレリミナリーな段階であるため、この後ご紹介する内容は、具体的な作業内容というより、どのように進めていきたいのかという方針に関するものとなります。
4. 経済性・想定されるリスクと対応策
スライドの大半は「Investor Day 2023」でもご紹介した内容ですが、その方針にいささかも変更がないということが重要な点です。
アバディLNGプロジェクトで実現すべきものとして、IRR(内部収益率)10パーセント台半ばを目指すということが基本の考え方です。これを実現すべく、今後もプロジェクトをマネージしていきたいと考えています。
具体的な課題を3つに整理しました。プロジェクトの実行リスクをどのようにマネージしていくのか、当初の想定どおりのコストやスケジュールでプロジェクトを進められるのか、あるいは「インドネシア政府の強力な支援を得て、許認可関係はうまくいっている」とお伝えしたものの、やはりカントリーリスクはあるものです。
今後は基本設計作業と並行し、このようなリスクに対してのリスクミティゲーション・リスクマネジメントの方策を考えていきます。
実際にEPCフェーズに入り、建設作業が始まったところでリスクにさらされないよう、うまくマネージしながらプロジェクトを進め、先ほどお伝えしたような経済性のレベルを達成したいと考えています。
とはいえ、プロジェクトの実行には常に不確実性がつきものですので、最終的にうまくいくかどうかはわからない部分もあります。
そのため、FEEDが終わった時点で、アップデートされたより正確なコストやスケジュールの情報をもとに、経済性の再評価をする考えです。そこでプロジェクトの投資可能性をあらためて一緒に議論するということを、インドネシア政府とも約束しています。
スライド一番上にあるように、10パーセント台半ばのリターンを得られるように、プロジェクトを実行していくには何が必要なのかを議論の物差しとしたい考えです。場合によってはインドネシア政府から追加でなんらかの支援、あるいはインセンティブをいただくことも想定しており、基本的な考え方についてはインドネシア政府とすでに合意しています。
今後もこのような方針に従い、プロジェクトを着実に進めていきたいと考えています。その結果として、アバディLNGプロジェクトが我々の今後の成長の礎となり、また、株主や機関投資家のみなさまのご期待に応えられるものとなるようにがんばっていきます。
引き続きのご理解、ご支援をどうぞよろしくお願いします。ありがとうございました。
質疑応答:イクシスの変化点、およびアバディの資金調達について
質問者:イクシスLNGプロジェクトとアバディLNGプロジェクトについて、1問ずつ質問です。まず、イクシスで直近に起きているトラブルについて、非常に詳細なご説明をありがとうございました。マーケットでも、ご心配されている方が多かったところだと思います。
その上で、今後5年から10年のスパンでイクシスのキャッシュフローを見極める上で、ポイントとなる変化点はどのあたりにあるのかをおうかがいしたいと思います。
可能であれば、CAPEXの部分、例えばCCS、拡張、バックフィルに向けたさらなる探鉱活動といったところで、イクシスでメンテナンスCAPEXからプラスアルファで増えるようなタイミングがどのあたりで、どのぐらいの規模感で意識したらよいかについてお聞かせください。
営業キャッシュフローの側面では、タックスとインフレによるコスト上昇分をどのようにマネージするお考えでしょうか?
インフレ面では、おそらく2026年に労働者との協定がいったんの区切りを迎えるかと思いますので、その後のマネージをどのように考えているか補足がほしいです。タックスについてはPRRT(Pertoleum Resource Rent Tax、石油資源利用税)のインパクトをどのように見ているのか、そのあたりを踏まえたイクシスのキャッシュフローについてお聞かせください。これが1点目です。
2点目は、アバディLNGプロジェクトの目指すところはIRR10パーセント台半ばということですが、これはエクイティIRRという理解でよいでしょうか? 念のため、定義の確認をさせてください。
また、資金調達については、事業費がどのくらいになるかがわからない状況で気が早い質問ですが、デット側から想定以上の調達が見込めるという意味では、一定程度のレバレッジをかける柔軟性や余地もあるという手応えを感じているのでしょうか?
以上の2点、IRRの定義についてと、ファイナンスをエクイティとデットでどのような割合を設けるかに対して、今のマーケット状況や感触をお聞かせください。
大川:まず、今後5年から10年でどのようなキャッシュフローがあるのか、その中でどのようなCAPEXのフローが見込まれるかについて回答します。
今後5年から10年で例えば何をしていくかですが、少なくともプラトーについては、プラトーを維持できる体制を完全に作っていくことになると思います。プラトーを維持できて初めて我々が拡張に向かえるという、今はそのような大事なタイミングです。
そこでどのくらいの投資規模になるかについては、まずはプラトーの対象がはっきりと定まってからの話になります。プラトーははじめに探鉱活動があり、その上で他の既発見・未開発構造をどのように取り込んでいくのかという段階になりますが、現在はその対象を絞り込んでいるところです。
「Investor Day 2023」でもお伝えしたように、投資規模についてはまだ言いにくい段階ですので、そこはご勘弁いただければと思います。
そのような中での、PRRTや労働者との関係についてです。PRRTに関しては、間違いなく影響が出てきており、PRRTを払うポジションになってきました。
今、私の手元にPRRTがどのくらいのインパクトがあるのかを示す数字がなく、具体的な金額はお伝えできませんが、2026年頃からこちらが出てきて、税率は4割から5割ほど持っていかれるため、かなりのインパクトがあると思います。
(注記:オーストラリアの法人税率は30パーセント、PRRTを加算した実効税率は58パーセント。税効果を主因として年間200から300億円程度のPLへの影響を想定。そのうち、キャッシュアウト発生後3年程度は数十億円から100億円程度の税金費用キャッシュアウトを想定)
また、組合との関係が今後の課題になると思っています。ご存知のとおり、豪州の組合は強いです。最近では、他の会社が組合とある一定の合意に至りましたが、この合意が前例となれば、給与を大幅に上げなければなりません。さらに、特にオフショアでは、危険手当を上乗せしたり、4人一部屋を2人または1人一部屋にしたりといった措置があります。
その結果、海上の設備に乗る人員に制約が生じるため、我々が実際に計画している作業が順調に進まないリスクもあります。私どももこれから交渉を行いますが、前例は前例としながらも、実際に事業を遂行する上で、ある程度合理的な条件でなければ、我々ものむわけにはいきません。
現在、組合とは「我々の事業が潰れてしまったら、食いぶちもなくなるため、お互いに共存できる道を探そう」と話しており、このあたりの交渉はこれからです。
ただし、繰り返しますが、豪州は組合が強い国です。これは現在の労働党政権が組合をサポートしているという背景があることから、気を抜けない課題であると認識しています。
渡邉:アバディLNGプロジェクトについてご質問いただいた、IRRの基本的な考え方についてご説明します。「プロジェクトIRRなのか? エクイティIRRなのか? また、レバレッジがどのように効くのでしょうか?」というご質問かと思います。
これらについてお話しする前に、すでにご案内したかとは思いますが、「アバディで資金調達をすると、どのようにプロジェクトに反映されていくのか?」という基本的な部分について少しご説明します。
アバディLNGプロジェクトは、インドネシア政府との生産分与契約(PSC)という枠組みで実施しています。アバディの場合のPSCの基本的な考え方は、LNGの売上を産油国・産ガス国であるインドネシア政府と、私どもコントラクターがどのように配分するかということです。
通常の生産収入は、これまでに投下したコストの回収と、それを除いた残りの利益をインドネシア政府と私どもで配分し、その配分比率が契約上で決まっているかたちが基本形です。
コスト回収と利益配分の2つを挙げましたが、プロジェクトの枠組みで資金を調達すると、この2つのエレメントに加え、返済という別のストリームが配分に入ってきます。
実は、PSCの枠組みで資金を返済すると良いことがあります。通常、資金調達をする際には、金融機関に支払う金利はプロジェクト外で発生するため、私どもが負担しなければなりません。
しかし、生産物のストリームの中に返済を入れると、金利も含めて生産物売上から返済することが可能となるため、実質的に金利のコストも回収できます。これが、PSCの枠組みで資金調達をする際の大きなメリットの1つです。
現在、私どもはこのアプローチを目指し、インドネシア政府の協力も得ながら、先ほどご紹介した資金調達について打診しています。
通常は金利のコスト回収を含めたプロジェクト全体を見ることになるため、アバディLNGプロジェクトにおいてIRRとお伝えしている時は、この枠組みに基づいた資金調達を含めたものです。
これを「プロジェクトのIRR」と呼ぶか「エクイティのIRR」と呼ぶかという定義にはさまざまな考え方があると思います。先ほどお伝えしたとおり、私どもはインドネシア政府と共通の物差しを持ってプロジェクトの経済性を評価し、IRRが10パーセント半ば台に達していない場合は追加の支援を得たいと考えています。
したがって、インドネシア政府との共通の土台になっているプロジェクトの経済性評価あるいはIRRは、先ほどお伝えしたとおり、資金調達もPSCの枠組みに入れて金利のコスト回収を行うことが前提になっています。
この場合、すでにそこには一定のレバレッジが取り込まれたかたちでIRRを見ていることになります。ただし、そのレバレッジがどの程度効くかどうかは、資金調達をどのような範囲で実行するのか、また、金利がいくらになるのかによります。
当然ながら、安価に資金を借りることができればレバレッジは高くなります。今後、レバレッジは常に一定の部分が取り込まれたものを私どもも見ていきますが、その大小は今後の資金調達の取り組み次第です。そのため、IRRは10パーセント台半ばであるとお伝えしている状況です。
質問者:では、エクイティIRRに近いニュアンスだと理解してよいでしょうか?
渡邉:おっしゃるとおりです。ただし、インドネシア政府から見ると、これはアバディLNGプロジェクトのリターンであると捉えているため、同じ質問をインドネシア政府にすると、「いいえ、プロジェクトのIRRです」と答えると思います。
私どもは、レバレッジを含んだエクイティを見ていることもあります。どのように定義するかについては、このようなご説明をしなければおそらく若干ミスリーディングになってしまうと思ったため、冗長ではありましたがご説明しました。
水素・CCUS事業
加賀野井彰一氏(以下、加賀野井):水素・CCUS事業開発本部長の加賀野井です。よろしくお願いします。
2021年にINPEXとして脱炭素の新たな部署を立ち上げて3年半になりますが、国内外の至るところでさまざまな案件を検討し、議論してきました。本日は、その進捗についてご説明したいと思います。
スライドは、本日のアジェンダです。新たなビジネスなので、なかなか簡単ではありません。また、先ほどのご質問で「インフレ」というキーワードが出てきましたが、コスト面でチャレンジングな部分が出てきている状況もあります。
スライドの①②では、「支援」というキーワードに少しフォーカスしてお話しします。その後の③では、現状をいくつかピックアップし、当社が行っているプロジェクトの状況についてご説明します。
1. 水素・アンモニア案件の事業化に向けた支援策
水素・アンモニア案件です。今年5月に水素社会推進法が成立しました。この新しい法律の中では価格差支援や拠点整備支援が定義され、これから導入されていくかたちになります。
スライド下にある簡単なスキーマティックが、価格差支援の説明です。赤線の基準価格は、例えば当社が水素を供給する際、実際に供給できる価格です。青線の参照価格は、同等の既存の化石燃料を使った場合のパリティ価格です。
この上下の差が、価格支援として支援されることで、新しいビジネスがようやく立ち上がっていけることになります。ただし、ご承知のとおり、国の予算も限られているため、その予算をなんとか獲得していくために社内外で日々議論を重ねている状況です。
2. CCS案件の事業化に向けた支援策
CCSについても、同じく今年5月にCCS事業法が成立しました。この法律に則り、ようやく国内でCCSを事業として進めていけるかたちになりました。
ただし、日本はCO2の排出量が多いため、国内だけでなく海外に持っていくことについては、例えばスライドの2つ目の項目に記載のとおり、ロンドン議定書改正の批准が今年の国会で承認されています。
この承認により、CO2を海外へ持っていく下準備ができました。加えて国家間で合意が得られれば、CO2を正式に海外へ持っていき、そこで貯留することができるようになります。
スライド下の図は、左から右に向かって時間軸のような記載になっています。一番左の「操業前」が国の取り組みです。ここでは、どこでどのような事業者がCCSを行うかを決めています。
次の「操業中」では、実際に当社をイメージし、貯留作業と同時にCO2がきちんと貯留されているかを確認していきます。
さらに、貯留を終えた後も当社が責任を持ってCO2がきちんと貯留されているかを確認した後、今度は国に移管します。そこではJOGMECが代理となり、このモニタリングを将来にわたって継続していくかたちになります。
3. 主要案件のプロジェクト進捗
すでにプレスリリースしている、主要案件の進捗です。
スライドの一番上に記載しているのが、新潟県柏崎市で行っているブルー水素・アンモニアの実証試験です。その下に記載した長岡市で行っている世界最大規模のe-メタンのメタネーション設備については、建設が順調に進んでいます。
さらにその下の事業化における「先進的CCS事業」については、この後ご説明します。これら以外にも、海外からアンモニアをクリーンな燃料として持ってくるテキサスの案件や、国内では新潟県にフットプリントを持つ当社として、同県で低炭素・脱炭素事業ができないか検討している案件もあります。
3-I. 先進的CCS事業
先進的CCS事業です。今般、将来的にCCS事業を行っていく案件として、国が選んだ9件のうち、2件に当社が関連しています。
1つは日本海側東北地方CCS事業、もう1つは首都圏CCS事業です。後者については当社が取りまとめを行うことで、事業をリードしていくかたちになっています。
3-I. 先進的CCS事業/首都圏CCS事業
首都圏CCS事業の概念図です。千葉県は、全都道府県の中でも1位、2位と言われるCO2排出量があり、その中心が内房や東京湾岸です。
スライド左側の排出源からCO2を取りまとめ、CO2パイプラインで外房である東の太平洋側へ持っていき、1,000メートル以上の沖合海底下に貯留するかたちになります。
スライド右側に記載のとおり、例えば製鉄所や発電所などで分離回収されたCO2をパイプラインで輸送し、千葉県の外房エリアで昇圧して、井戸を経由して地下へ入れていくかたちになります。
こちらは2030年の開始に向け、まさにギアチェンジをしている状況です。正式契約も済み、先日プレスリリースも行いました。
この案件は、採択された9件の先進的CCS事業の中で最初に採択が決まり、国としてもかなり力を入れていると思っているため、当社としては全力で取り組んでいきたいと考えています。
3-II. 新潟県柏崎市 ブルー水素・アンモニア製造一貫実証 概要
こちらのスライドは事業ではなく、実証試験です。
小さいですが、左側の写真は昨年のInvestor Dayでお見せしたものになります。そして右側の写真では、かなりプラントのようなかたちになってきたことが見ていただけるかと思います。
例えば、写真左下にある「水素発電設備」では、すでに水素100パーセントの専焼のガスエンジンが設置されています。さらに、CO2圧縮設備や水素製造設備、CO2回収設備なども入っています。
また、写真右上に井戸を掘るやぐらが2本立っています。そのうちの1つは、CO2を地下に入れたり、それによって出てくるガスを回収するなど、CCSやCCUSに関連する井戸になります。
もう1つのやぐらの真下には、以前、INPEXがガスを産出していたガス田がありました。その古い井戸をきちんと埋め、余計なCO2が出てこないようにする作業も同時並行的に行っています。
このように、私どもの天然ガス、ガス田、技術を用いて、実際に2030年、そしてその先に向け、低炭素エネルギーでも同じように安定して供給していきたいという意気込みを、この実証試験を通じてお見せできればと考えています。運転開始は来年の夏頃を予定しており、みなさまに大々的にご案内できるようになればと思っています。
脱炭素・水素・アンモニアの現況についてお話ししました。これからもご理解、ご協力のほどよろしくお願いします。ありがとうございました。
質疑応答:水素・アンモニア案件の事業化に向け、支援を獲得できなかった場合の戦略について
質問者:水素・アンモニア案件について、「支援獲得は厳しい競争」というコメントがありましたが、御社のことなので、支援獲得ができることを期待しています。
一方で、リスクとして、支援が獲得できなかった場合はどのようなプランがあるのでしょうか? 獲得できなかったためにやめることはないかと思いますが、どのような方針や戦略が考えられるのか教えてください。
加賀野井:そちらは、まさに案件次第です。案件によっては取りやめることも考えられますが、エネルギーや脱炭素については、時間軸で考えなければならない部分があると思います。
例えばスローダウンするのも1つの手ですし、規模を縮小するというアイデアもあるかと思います。また、単体だと支援なしでは難しい場合も、他のものとくっつけることでメリットが出てくるなど、さまざまなオプションがあると思います。
ご質問のとおり、石油・ガスを開発している会社としてはすぐに旗を降ろすわけにはいかないため、何とか知恵を絞って前に進めたいです。こちらはケースバイケースであり、さまざまな場面が出てくるだろうと考えています。
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