コスモスイニシア、アパートメントホテル「MIMARU」で事業拡大を加速 2030年に3,000室体制へ
第121回個人投資家向けIRセミナー
髙智亮大朗氏(以下、髙智):株式会社コスモスイニシア代表取締役社長の髙智です。これより、当社の事業概要と事業戦略についてご説明します。
私は1990年、当時のリクルートコスモス(現・コスモスイニシア)に入社しました。バブル真っ盛りの時期で、少し事件が起きている最中でもありましたが、先輩方がおもしろい方々ばかりで、勢いで入社を決めました。ここまで長く勤め、代表取締役社長に就任するとは当時は想像していませんでした。本日はよろしくお願いします。
会社概要

髙智:当社のミッションとして、「Next GOOD ~お客さまへ。社会へ。一歩先の発想で、一歩先の価値を。」を掲げています。
既存のものではなく、「こういうところが困っている」「こういうものがあったらいい」というニーズを捉え、お客さまより先に発想し、それを形にして提供していきたいと考えています。そのため、従業員一同、日々さまざまなことに興味関心を持ちながら、事業に取り組んでいます。
これまでの歩み

髙智:これまでの歩みです。私たちは1974年、51年前に分譲マンションの開発事業からスタートしました。それ以降、10万戸以上のマンションを供給してきました。
長年分譲マンション供給を行ってきましたが、人口がなかなか増えず、供給戸数が減少していく中、お客さまのニーズは多様化していきました。そのような状況を受け、私たちは事業を収益不動産事業、リノベーションマンション事業、そして最近では宿泊事業へと少しずつ拡大しながら成長してきました。
スライド右下に見える高層マンションは、ベトナムのホーチミンで現地パートナーとともに分譲しているものです。約2,000戸の規模ですが、日本と違い人口増加のボーナス期にあるホーチミンでは販売が非常に速いペースで進んでおり、すでに約9割が販売予約済みです。
昨年、創業50周年を迎えました。この節目に、これまでの事業を振り返りつつ、次に向かって進むために各種イベントを実施しました。
また、それに先立ち、大和ハウス工業株式会社や株式会社共立メンテナンスとの資本業務提携も行いました。両社とのシナジーを活かし、さらなる成長を目指していきます。
これまでの歩み 実現してきた「Next GOOD」、一歩先の価値

髙智:「Next GOOD」を標榜していますが、マンション業界における先駆的な取り組みとして、何を行ってきたのかをご説明します。
例えば、長期修繕計画は現在では一般的ですが、当時はまだ存在しませんでした。将来の修繕金が不足する懸念から、業界に先駆けて長期修繕積立金を導入しました。
また、品質管理として「QIT(クオリティ・インスペクション・トライ)」を採用し、安心・安全な住まいを提供するため品質管理を徹底しています。これは、ゼネコンのOBを採用し、現地で厳格な二重チェックを行う仕組みです。
間取りについても、現在さらに増えているフレキシブルリビングなど、住まい手が楽しく暮らせる間取りを検討しています。
マンション分譲は販売が重要視されますが、販売するだけでなく、その後の住まい方もイメージしながら商品を展開してきました。
また、昨今のさまざまな事業展開の中で、アパートメントホテル「MIMARU」は日本ではあまり見られなかった形態です。4名から6名程度のグループやご家族、主にインバウンドのお客さまをターゲットに滞在できるホテルとして供給しています。
さらに、新型コロナウイルスの影響で集まって働くことが難しくなった状況を受け、「MID POINT」という商品名でシェアオフィス事業を開始しました。加えて、多くの人が緩やかなつながりを持てるシェアレジデンス「nears」など、さまざまな商品を展開しています。
これまでの歩み 近年の業績推移

髙智:これまでの業績推移です。当社は2013年3月に事業再生ADRの手続きを終了し、大和ハウス工業との資本業務提携を開始しました。その後は、増収増益の傾向で歩んできました。
しかし、2020年から流行した新型コロナウイルスの影響を受け、アパートメントホテル事業のメインターゲットであるインバウンド顧客が訪日されない状況となり、大変苦労しました。
その後、市場回復に向けた準備を着実に進め、現在では、宿泊事業は成長エンジンとして機能しています。2026年3月期の業績予想としては、売上高1,520億円、営業利益110億円を見込んでいます。
これまでの歩み ポートフォリオ変遷

髙智:売上は順調に増収基調で推移しています。ただし、単に数を増やしているわけではありません。スライドのグラフ下部、青色の部分がマンション分譲を中心としたレジデンシャル事業です。この分野自体はそれほど売上高としては拡大していません。
一方、ソリューション事業や、新型コロナウイルスの収束以降に紫色で示したホテル事業が積み重なり、多様な事業ポートフォリオを構築することで全体の売上成長を達成しています。
なお、レジデンシャル事業の主力はマンション分譲ですが、その割合は減少傾向にあります。
当社はリノベーションマンションの事業を拡大しています。これは1戸ずつ購入してリノベーションを施し、販売する事業です。都市のストックを有効活用するという観点でも意義深いものとなっています。そのような取り組みも積み重なり、レジデンシャル事業でもわずかながら売上が増加しています。
中期経営計画2026の見直し(2025年3月期決算発表より)

髙智:中期経営計画については、現在「中期経営計画2026」を進行中です。当初は来年度に達成する予定でしたが、新型コロナウイルスの収束に伴う業績回復を受け、1年前倒ししました。
今期中に「中期経営計画2026」を達成することを目指しています。
具体的には、営業利益110億円、自己資本比率30パーセント、営業利益率は当初目標の6パーセントから7.2パーセントへ上振れさせ、前倒しでの達成にむけて取り組んでいます。
中長期経営方針と次期中期経営計画について(2025年3月期決算発表より)

髙智:次期中期経営計画については、世の中の変化が激しい中で、長期の目標を設定すると変更が続いてしまうため、定量目標は約3年でローリングしていく方針です。
一方、会社が目指す方向については、少し先を見据えて全員で着実に取り組むべきだと考えています。2025年3月期の決算発表でも公表しましたが、10年先を見据えた中長期の経営方針を打ち出し、その中で第1段階、第2段階、第3段階と目標を具体化してローリングしていく計画です。
重点的に検討すべきテーマとして掲げた内容は、引き続き「Next GOOD」という新しい価値の創出によって、当社が成長していくことです。
また、強固な財務基盤の確立を重視しています。不動産事業では多額の投資を行うため、財務基盤や収益基盤の整備を着実に進めます。そして、新しいものは人の発想から生まれるため、人的資本への注力をこれまで以上に強化していきます。
さらに、生成AIの急速な発展と広がりを受け、テクノロジー活用にも積極的に取り組む方針です。
これらを基に、確実な企業成長を図りながら、ステークホルダーへの還元充実を目標として掲げていきます。
1UP投資部屋Ken氏(以下、Ken):次期中期経営計画を作成する上で、ステークホルダーへの還元を充実させるという観点から、株主還元方針の変更などを社内で議論されている可能性があると思いました。そのあたりはいかがでしょうか?
髙智:まずは会社として事業を着実に成長させることが基本だと考えています。次のページをご覧いただけますか?
株主還元

髙智:現中期経営計画では、配当について継続的かつ持続的な増配方針を掲げ、利益成長を図りながら配当を着実に増やしてきました。
これは引き続き、当社の経営課題における重要なテーマの1つです。配当を十分に検討するだけでなく、それ以外にもステークホルダーのみなさまに評価してもらえる取り組みはないかと議論を進めています。
この内容については、次期中期経営計画として来年5月に発表する予定です。
Ken:わかりました。もう1点ですが、足元の不動産市況と金利上昇の影響について教えてください。不動産市況についてはニュースなどでも好調という話を耳にしますが、現状はいかがでしょうか?
髙智:足元の不動産市況は全般的に好調だと思います。一方で、販売価格上昇が続いており、新聞などでも報道されていますが、取得が難しくなっている側面もあります。
その一方で、ローン期間が長く設定されるケースや税制面でのフォローがあります。また、現在「DEWKS」と呼ばれる、小さなお子さまがいる共働きの夫婦が増えています。ダブルインカムで計画的に返済を進めていける状況が整っており、多くの方に検討していただいています。
私たちから見て、不動産価格はかなり高くなった印象がありますが、お客さまから高く評価され、購入していただいている状況です。
また、当社が取り扱う投資用不動産についても、金利の先高観などの影響を多少受けています。しかし、投資家のみなさまの間では日本の不動産に対する関心が引き続き高く、キャップレートも上昇していないなど、海外の投資家や国内ファンドから高いニーズがあり、堅調に推移しています。
Ken:そのような背景があって、先ほどお話しされたような中古物件を購入してリノベーションするケースも増えているということですか?
髙智:そうですね。現在、中古マンションもリノベーションマンションも価格がかなり高くなっていますが、新築マンションの供給戸数が絞られているため、「希望する場所に住みたいが、欲しいと思えるマンションがない」という状況も生じています。
そのため、価格だけではなく、リノベーションマンションならではの、新築マンションでは表現できない個性あるデザインや機能を提案する機会も増えています。このような取り組みにも十分に注力していきたいと考えています。
Ken:金利の状況についてもお聞かせください。今月、利上げがほぼ確実という話も出ています。髙智さんの当初の想定と比べて、利上げは早いと感じていますか、それとも遅いと感じていますか? また、利上げが会社に与える影響をどのように考えているのか教えてください。
髙智:以前から「金利ゼロという世界のほうが異常だ」ということで、いずれ金利のある世界になっていくだろうと考えていました。したがって、想定の範囲内といえます。一方で、金利が上がるだけだと経済が腰折れしてしまう可能性があると思います。
当社も同様ですが、初任給を含めた給料を上げていくことが重要です。不動産だけでなく物価も上昇していますが、みなさまが確実に購買できるよう、全体として成長の足並みを揃えて進めていくことが大切ではないかと考えています。
Ken:よくわかりました。続きをお願いします。
髙智:先ほど少しご説明しましたが、継続的に増配方針を検討してきました。新型コロナウイルスの流行時には、一気に拡大したホテル事業の動向が不透明だったため、配当は無配にならなかったものの、低調な時期がありました。
しかし、その後着実に回復し、今期は1株当たりの年間配当金38円、配当性向としては約20パーセントとなる増配を実施する見通しです。
セグメント情報

髙智:当社の事業内容についてです。当社は、レジデンシャル事業、ソリューション事業、宿泊事業、工事事業の4つの事業を展開しています。
レジデンシャル事業では、新築マンションや一戸建て、リノベーションマンションの販売に加え、一部海外での住宅販売も行っています。
ソリューション事業では、収益不動産の販売や不動産の賃貸管理運営、コンサルティング、仲介なども手掛けています。
宿泊事業は、主に都市型アパートメントホテル「MIMARU」を展開しています。インバウンドのお客さまをターゲットに、4名から6名程度での中長期滞在ニーズに応えています。この事業は近年、一気に拡大しました。
「MIMARU」を中心とご説明したのは、これ以外にアウトドアリゾート「ETOWA」の企画運営も行っているためです。千葉県木更津市の小学校跡地を利用したグランピング施設などを展開しています。
今後もアパートメントホテル「MIMARU」を主軸に展開していく方針に変わりはありませんが、それ以外にも宿泊事業のさらなる拡大や新しい取り組みについて検討を進めています。
工事事業は、もともとGOOD PLACEという子会社が、マンションギャラリー、いわゆるモデルルームの制作を皮切りに立ち上げました。その後、マンションギャラリーの需要が徐々に減少したため、現在は主にオフィスの内装工事における設計・施工を手掛けています。これまでのノウハウを活かし、働きやすい環境づくりを目的に展開している事業です。
事業の強み・特徴 | レジデンシャル事業

髙智:各事業についてご説明します。レジデンシャル事業では、祖業である新築マンション事業を引き続き展開しています。
当社は製販一体で商品を供給しており、お客さまのニーズを川上に持ち帰って反映しながら商品を作っています。また、お客さまからの直接的な声だけでなく、一歩先の発想として「こんなのがあったらいいんじゃないの」という提案も行い、創意工夫に基づいた商品づくりに挑戦しています。
スライド右上に表示しているものは、マンションのエントランスホールや集会スペース、くつろげるラウンジのようなスペースです。奥にはコインランドリーが6台ほど設置されています。
当初は「ラウンジにこんなにランドリーがあったらうるさいのではないか?」という懸念もありましたが、非常に便利だと多くのお客さまに喜ばれました。その後のマンションでも「もう少し見えないほうがいい」といった工夫を重ねながら展開しています。
また、奥行き3メートルのバルコニーを設け、もう1部屋あるようなスペースを作り出しました。この商品は、そのような創意工夫を重ねたもので、京都の桂エリアで企画・販売しました。
事業の強み・特徴 | レジデンシャル事業

髙智:レジデンシャル事業では近年、リノベーションマンションの販売を増加させています。市場グラフをご覧いただくと、中古マンションの成約件数は横ばいか若干の微増を示している一方、新築マンションの発売戸数は大幅に減少しています。
今後は新築マンション市場よりも中古マンション市場が伸びると予想されます。この中で、効率的に進めつつ、個性的な商品を展開していきます。
スライド右下の写真は、湯島でリノベーションした商品です。先日、「リノベーションオブ・ザ・イヤー」というアワードにおいて、施工費1,500万円未満で商品化された部門で最優秀賞を受賞しました。詳細は「リノベーションオブ・ザ・イヤー」のサイトをご覧ください。
このように多くの企業がリノベーションマンションに取り組む中、当社はその一歩先を行く提案で差別化を図り、より良い商品の提供に取り組んでいく方針です。
当社は都心を中心に展開しており、右側のグラフを見ると、販売価格5,000万円以上1億円未満の商品が増加しています。また、1億円以上の商品も全体の3分の1程度を占め、高額化が進んでいます。この状況で、当社はバランスを保ちながら高価格帯の商品へシフトし、全体の事業効率向上に取り組んでいます。
事業の強み・特徴 | ソリューション事業

髙智:ソリューション事業についてです。この事業では、収益不動産の販売や賃貸の管理運営を行っています。不動産を開発して販売する場合、通常の賃貸マンションやオフィスだけでは、どの企業が運営しても同じような収益になってしまいますが、当社では企画商品を加えて差別化を図っています。
スライド右側の「MID POINT」というオフィスでは、最近増加しているコワーキングオフィスやシェアオフィスの形態を取り入れています。自宅と会社の中間地点という位置づけで、日々ここで仕事をしたり、必要に応じて自宅に戻ったり、会社にも行きやすいという利便性を提供する商品です。さらに、これを個別契約にすることで、全体としてNOI、つまり収益性が向上すると考えています。
次に、左側に記載している「nears」というシェアレジデンスについてです。一見すると普通のマンションのようですが、2階部分に共用スペースがあります。リビングやダイニング、立派で大きなキッチン、大型モニター、さらには少し作業ができる空間などを設けています。住人の部屋は上階にあり、面積は14平米と非常にコンパクトです。
14平米は、一般的なワンルームマンションの約半分の広さですが、就寝、仕事、勉強といった最低限のライフスタイルを支えるためのものとし、シャワーブースやトイレも備えています。一方、くつろぐ際は2階の共用スペースを利用できる設計となっています。この設計により、非常に高い賃料効率を実現しました。
このように、収益不動産の運営に工夫を凝らしながら培った開発能力を活かし、収益化モデルとして取り組みを拡張しているところです。
事業の強み・特徴 | 宿泊事業 アパートメントホテルMIMARU

髙智:宿泊事業は、みなさまに最も注目されている事業ではないかと思います。2015年8月に事業検討を開始しました。
当時、海外から家族で来日されるお客さまは、2人部屋がほとんどのため、別々に宿泊せざるを得ない状況でした。「家族で一緒に泊まれるホテルが少ない」という課題を解決するため、このホテルの開発に取り組んだ経緯があります。
当初、ホテル業界の方々からは「そういうホテルは日本では受け入れられない」という意見が多く、なかなか理解を得られませんでした。しかし、新型コロナウイルスの状況が収束し、インバウンド需要が増える中で、非常に高い人気を得ることができました。
また、効率も良いということで、多くの不動産会社やベンチャー企業の方々から「真似してもよいか」というお話をいただくようになり、私たちは「どうぞ」と答えました。このようなホテルが日本全体で増えれば、海外のお客さまを受け入れる体制がさらに広がるため、市場が拡大中の現在は良いことだと思っています。
「アパートメントホテル」という名前も、当時私たちが命名したものです。この業界が広がる中で、私たちは先行者として堅実にブランディングを行い、リーディングカンパニーになりたいと考えています。
事業の強み・特徴 | 宿泊事業 アパートメントホテルMIMARU

髙智:こちらは、アパートメントホテルの運営状況と、どのようなお客さまにご利用いただいているかの説明です。スライド左側の折れ線グラフをご覧ください。稼働率は76パーセントですが、他のホテルは90パーセント程度に達することが多いため、少し低いのではないかと指摘をいただくことがあります。
当社では海外からのお客さまが週末をはさんで4泊、5泊と連泊されることが多く、どうしても間の1泊や2泊分が空いてしまいます。これはやむを得ない部分ですが、その中でも効率的な運営を目指しています。
当社はADR(平均客室単価)を高める戦略を進めており、現在は当初想定していたADRよりもかなり高まり、通期予想では1部屋当たり5万2,000円程度で計画を立てられるようになりました。
宿泊者国籍別の内訳はスライド右側に掲載しています。2025年、2026年予想のデータでも、日本のお客さまは5パーセント程度で、ほとんどが海外のお客さまです。
最近の出来事としては、7月に日本で地震が起こるという予言や、中国からの渡航制限といった影響も見られます。ただし、当ホテルへの影響は限定的です。中国からのお客さまが全体の6パーセント、香港からのお客さまが4パーセントと、全体に占める割合は非常に小さいためです。
一方で、増加しているのは米国、カナダ、中南米、特に北米地域、またオーストラリアからのお客さまです。これらの地域では、日本旅行が引き続きブームであり、円安の影響も相まって、非常に伸びています。そのため、中国地域のお客さまの減少分は十分に補えると考えています。
Ken:ここで質問です。中国人観光客の減少について、他のホテルでは影響が大きいという話も聞いています。一方で、御社の場合、それほど大きな影響はないという状況なのでしょうか?
髙智:ホテルごとにターゲットとするお客さまが異なるため、状況はさまざまだと思います。当社の場合、先ほどご説明したようにポーションも少ないため、影響は大きくありません。
ただし、日本の観光業全体で見ると、お客さまが減ることでホテル価格全体が下落する可能性があります。これは業界全体に好ましくない影響を与えるため、当社もその影響を完全に避けられるとは限りません。引き続き動向を注視し、迅速に対応していきます。
Ken:御社の場合、欧米系のお客さまが多い印象がありますが、建物の外観が和風であることなどが関係しているのでしょうか? 理由について教えてください。
髙智:お客さまによる部分もあると思いますが、1つには、米国を中心に北米から日本を訪れるお客さまが非常に増加していることが挙げられます。
また、オーストラリアについては季節が日本と逆であるため、日本でスキーを楽しむことを目的として旅行されるお客さまも多いです。向こうが夏で日本が冬というタイミングで訪れることがあります。例えば、オーストラリアでは夏のクリスマスを迎えますが、それに合わせて日本を訪れることもあります。このように、日本への観光人気が高まっていることが大きな要因だと考えています。
その中でも、遠方からお越しになる方が多いです。韓国からであれば日帰り旅行や1泊程度で訪れることも可能ですが、北米からの場合は約10時間をかけて飛行機で訪日されるため、4泊から5泊の連泊となることが一般的です。そのような中で、当社のアパートメントホテルは暮らしやすさを提供できているのではないかと思います。
実際にそのような声も寄せられています。スライド右下のグラフをご覧いただくと、ほとんどが子ども連れのご家族です。特に北米からお越しの子ども連れのご家族は、お子さまが旅疲れをしてしまうことがあるため、アパートメント形式の部屋でくつろげる点が好評です。キッチンや電子レンジ、洗濯機なども備わっており、快適にお過ごしいただけます。
生活するように過ごしていただけます。「もう外食はしんどいね」となれば、近所のスーパーやコンビニでおいしい食材がたくさん手に入るため、「今日は部屋で食べよう」とすることも可能です。
このような過ごしやすい環境が評価されているのではないかと思います。実際、「Google」の口コミを統計した企業もありましたが、アパートメントホテルの中でも1段上の評価を得ています。
事業の強み・特徴 | 宿泊事業 アパートメントホテルMIMARU

髙智:さらに、当社の特徴の1つとして、フロントスタッフのほとんどが外国人である点が挙げられます。彼らは日本が好きで住んでいる方々で、日本語も英語も話せます。
現在、30数カ国から来たスタッフが在籍しており、それぞれの母国語も話せます。そのため、海外からのお客さまに対し、日本人スタッフがきちんと対応するよりも、フレンドリーな雰囲気で対応しています。
旅行で訪れたお客さまに対しても、友人のような感覚でフレンドリーにコミュニケーションを取れています。その結果、口コミでも高く評価されており、観光を終えたお客さまがお土産をスタッフに買ってきてくださることもあります。
街の観光だけでなく、スタッフとの触れ合いや人との出会いなど、旅の体験全体を楽しんでいただけているのではないかと考えています。
そのような取り組みが評価され、トリップアドバイザーの「2025 トラベラーズチョイス ベスト・オブ・ザ・ベスト ホテル」で、日本のホテル人気部門第2位を東銀座のホテルで取得しました。2018年のMIMARUブランド誕生以来、毎年入賞しており、7年連続でランキングに選ばれています。口コミ評価も非常に高く、リピーターも増えて、良い循環が生まれている状況です。
Ken:わかりました。続きをお願いします。
髙智:スライド下部に「Luggage Delivery by MIMARU」の記載があります。大きな荷物を持って来られる方やお子さま連れの方が多く、「荷物の移動が大変だ」ということで、空港からホテルまで、あるいは東京から大阪のホテルまで、当社が代わりにカバンをお送りします。このサービスが非常に好評で、みなさまが身軽に移動できるようお手伝いしています。
このように、先行者として少しずつ付加価値を加えながら、体験価値向上とブランディング強化を進めていきたいと考えています。
事業の強み・特徴 | 宿泊事業 アパートメントホテルMIMARU

髙智:質を高めていく中で、これだけ高い評価を受けているホテルの数をさらに増やしていこうと考えています。具体的には、2030年に向けて3,000室まで拡大することを公表しています。
現在2030年まで約5年ありますが、5施設約380室がすでに建設中または確定しています。それ以外にも、約400室について内定を受け、プランニングを進めている状況です。そのため、現在、約2,200室から2,300室までの目途が立っています。
当社は、東京や大阪・京都が連泊に非常に適したエリアであると考え注力しています。一方で、宿泊したお客さまから「『MIMARU』は福岡にないの?」「北海道にないの?」といった声も寄せられることがあり、地方展開に向けた検討をしています。
Ken:建設費用がかなり高騰している中で、他社では開発を途中で中止する事例も出てきているかと思います。御社への影響はいかがでしょうか?
髙智:建築費については、ホテルだけでなくマンションやビルを含め、業界全体の重い課題です。しかし、当社では常に建築費を注視し、その時点で適正な建築費でプランニングを進めています。
また、長年お付き合いのある建設会社や設計事務所など、パートナー企業と連携しながらコストコントロールを行っています。そのため、事業を中止するという状況には至っていません。
事業の強み・特徴 | 工事事業 株式会社GOOD PLACE

髙智:工事事業については、当社子会社のGOOD PLACEがオフィスの内装設計・施工を担当しています。
「A' Design Award」や「iF Designアワード」といった世界的なオフィスのアワードにおいて、オフィス内装工事のデザインや機能面が評価され、受賞を果たしています。
デザイン性が非常に高く評価されており、コンペティションでも高い確率で工事を受注しています。特にリクルートさまのオフィス工事の多くを担当している状況です。
ここまでが事業のご説明となります。ここからは、サステナビリティとデジタル推進について、当社の取り組みをお話しします。
サステナビリティ経営方針について(2025年3月期決算発表より)

髙智:当社のサステナビリティ経営方針では、中長期的なMissionの実現と持続的な企業成長に向けて、重点的に取り組むべきマテリアリティを整理し、重要なサステナビリティ項目を定めています。
スライドにも記載していますが、当社は新たな不動産価値の創出と、先ほどお話しした「Next GOOD」、新しい価値を創出する取り組みに加え、次世代を担う若者や子どもが健やかに成長できる都市環境づくりにも力を入れています。
子どもたちは将来のお客さまであり、都市を構成する重要な要素でもあります。そのため、子どもたちが健康で健全に育つことに貢献できる方法を追求しています。
また、従業員についても、多様な発想を活かし活躍できる働き方を実現するため、このようなテーマを掲げています。ダイバーシティを重視し、多様な人材が自分らしく輝き、活躍できる職場づくりにも取り組んでいます。
サステナビリティに関する現状の取り組み

髙智:サステナビリティに関する取り組みについて、スライドにいくつか具体例を記載しています。新たな不動産の価値創出として、千葉県茂原市で犬と人が自由に過ごし宿泊もできるドッグパーク「Ruff-Laugh」を企画しており、2026年春にオープン予定です。ぜひご注目ください。
また、サステナビリティや環境への取り組みとして、若者や子どもが健やかに成長できる環境を目指し、環境教育も含めて、逗子湘南の海岸でプラスチックゴミを回収し、リサイクルする活動を行っています。
スライドの1番下に記載のとおり、ジェンダーフリーを考えるプロジェクトやその他の研修等にも積極的に取り組んでいます。
デジタル推進

髙智:最後にデジタル推進についてです。冒頭でもお話ししましたが、これは欠かせないテーマであり、注力していくため、3つの取り組み領域を定めました。
「デジタルを活用し、当社のプロセスとビジネスを変革することで、お客さまへ、社会へ、『Next GOOD』を生み出し続ける」という方針のもと、業務の効率化はもちろん、デジタルを活用した新たな価値の創造にも取り組んでいます。
また、生成AIツール「Microsoft 365 Copilot」を全従業員対象に導入し、活用を推奨しています。さらに、基礎知識として「ITパスポート」の取得を奨励し、インセンティブを提供しながら全員で学習を進めています。まずは実際に使いながら学び、明日の価値創造につなげていきたいと考えています。
以上で私のプレゼンテーションを終わります。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:国内人口減少に対応した不動産事業の戦略について

飯村美樹氏(以下、飯村):「人口減少など先行き不安もある中で、中長期的に会社を成長させていくための考え方を簡単に教えてください」というご質問です。
髙智:まず、国内の人口減少についてですが、新築マンションの供給戸数が減少している中で、1つの取り組みとして、先ほど少しお話ししたベトナム・ホーチミンでのマンション供給など、海外への進出が挙げられます。
また、都市には多くの不動産ストックが存在しています。リノベーションマンションだけでなく、ビルやその他の施設も含めて、再生して活用する、いわゆるリボーンさせる取り組みが必要だと考えています。このように、取り組むべき課題は多いのではないかと思います。
質疑応答:海外ブランドの展開について
飯村:海外での開発等についてもお話がありましたが、例えば国内で日本に遊びに来て御社のホテルに宿泊し、その後海外に戻られた際に「あ、見たことがあるかも」となるようなポイントについて、なにか接点はあるのでしょうか?
髙智:現時点では残念ながら、それほど接点はありません。
質疑応答:中長期経営方針と宿泊事業の拡大計画について

Ken:「2026年5月に公表予定の次期中期経営計画において、これまで以上に成長ドライバーとして注視する事業領域はどこになる想定でしょうか?」というご質問です。
髙智:まず、10年を見据えた中長期経営方針の中で、次期中期経営計画では、現在最も伸びしろのある宿泊事業を確実に伸ばしていきたいと考えています。
先ほどもお話ししましたが、現在約1,500室の客室を展開しており、これを2030年までに3,000室に増やす計画です。次期中期経営計画だけでなく、さらにその次の計画でも着実に取り組んでいきたいと考えています。
アパートメントホテル「MIMARU」は10年前に「実現できたらおもしろいのではないか?」と考えて始めた事業です。10年先を見据え、第2の「MIMARU」のような新しい事業を構築できるよう、新たな価値の創造に着実に取り組んでいきます。
質疑応答:「MIMARU」の開発方針と土地利用について

Ken:「『MIMARU』については、2030年に向けて運営客室数3,000室を目標とされています。今後は自社開発、運営受託、施設売却のうち、どのモデルを最も重視して拡大していく方針でしょうか?」というご質問です。
髙智:特に区別することなく対応しています。私たちはもともと不動産開発を主業としており、自社で用地を取得して開発する土地もあれば、土地を保有されている方から「ここでホテルを運営したい」といった有効活用のご要望を受けて開発を行うケースもあります。この2つを両輪で進めています。
また、先ほど少し触れましたが、建築費の大幅な上昇に加え、当社が開発したいエリアでは土地代もかなり高騰しています。そのため、最近では「ホテルを運営したいが、収益性が高そうで、おもしろそうだから、インバウンド向けの『MIMARU』で進めてほしい」といったお話をいただくことが多く、同業他社から受託する機会もあります。
今後もこの両輪の体制で進めていく方針ですが、有効活用の案件が少し増えていくのではないかと感じています。
質疑応答:アパートメントホテル市場での競合動向と今後の戦略について

Ken:競合のアパートメントホテルやベンチャー企業などが増えていると思いますが、その影響についてはどのようにお考えですか?
髙智:現時点では、それほど増えているとは感じていません。ただ、現在はアパートメントホテル関連の開発プロジェクトが相当数進行中だと思われます。当社の予想では、今後1年から3年で同様の形態の競合がかなり増えてくると考えています。
当社としましては、先ほど「Luggage Delivery by MIMARU」の話がありましたが、それ以外にも、お客さまにさまざまな旅行体験を提供できる仕組みをデジタルと組み合わせて展開できないかと考えています。
また、ホテルのタイプについては、これまで4名用の客室が主流でしたが、マーケティングの結果、「このエリアでは6名用の客室のほうが、人気がある」ということがわかってきました。先行して得たノウハウを活用し、有利に事業を展開したいと考えています。
質疑応答:リノベーションマンションの差別化ポイントについて

Ken:「新築分譲で培った商品企画力を活かし、今後リノベーション領域で差別化できるポイントはどこにあるとお考えですか?」というご質問です。足元でもさまざまな取り組みを進めていると思いますが、差別化のポイントはありますか?
髙智:先日「リノベーション・オブ・ザ・イヤー」で最優秀賞を受賞しましたが、新しい提案について、すべてが新築マンションで培ったものというわけではありません。むしろリノベーションマンションでチャレンジしている取り組みのほうが多いと思います。
一方で、新築マンションで培ったノウハウもあり、特に収まりや性能面の精度は大きな強みです。中古マンションのリノベーションでも品質と性能を十分に担保できる点が重要だと考えています。デベロッパーである当社が供給するリノベーションマンションには、そのような価値があると感じています。
Ken:リノベーションにおいても、湯島の物件のように、多様性が求められる時代だからこそ流行しそうだと感じています。社内でそのようなトレンドを敏感に察知して企画されているのでしょうか?
髙智:20代の若い社員が生活者の視点で企画に関わっており、「こういうのがあったらいいのではないか」という提案をしています。もちろんすべてが成功しているわけではありませんが、さまざまなチャレンジの中から新しい価値が生まれてくると考えています。
髙智氏からのご挨拶
髙智:本日はご視聴いただき、ありがとうございました。プレゼンテーションでお話ししたとおり、当社は新しい価値を着実に創り出しながら、事業や企業を成長させ、ステークホルダーのみなさまからご評価いただけるよう努めていきます。引き続きご注目いただければ幸いです。
中長期経営方針については来年5月に公表予定ですので、ぜひご期待ください。本日はありがとうございました。
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