UTグループ:配当利回り5%超、28年度までの下限設定で際立つ還元姿勢

配信元:フィスコ
投稿:2025/12/23 11:24
*11:24JST UTグループ:配当利回り5%超、28年度までの下限設定で際立つ還元姿勢 UTグループ<2146>の株主還元が注目される。11月13日に第5次中期経営計画を見直し、2029年3月期までは配当性向100%、一株当たり配当金10円(2026 年1月1日を効力発生日とした1:15の株式分割考慮後)の下限確約を設定した。5.3%の配当利回りが明示され、利益の状況次第では上乗せされる。モーター・エナジー事業での想定を下回る需要、採用単価の上昇など期初の計画は下回ったものの、同社の利益創出力は高い。中計最終年度のPER15倍は、時価総額1,350億円となる(現在1,114億円)。株価は下値が堅く、かつ高いインカムゲインを享受しながら、アップサイドを狙えるということになろう。

製造業に特化した人材派遣・請負・人材紹介事業を展開する持株会社であり、UTエイムを中心に複数のグループ企業を擁している。主な取引先は半導体、自動車・半導体関連の大手メーカーであり、製造業派遣分野において業界トップの地位を確立している。無期雇用を軸とした安定的な雇用モデルを採用している。離職率は4%台と同業他社と比べ低水準で、社会保険100%加入を目指す姿勢も、顧客企業からの信頼を獲得する要因となっている。

事業構成は「モーター・エナジー(自動車関連)」「セミコンダクター」「エージェント(人材紹介)」「ネクストキャリア」の4領域である。モーター・エナジー事業とセミコンダクター事業、エージェント事業を主要3事業と位置付けている。モーター・エナジー事業は自動車・エネルギー関連企業向けに大規模人材派遣を行い、就業サポートや期間社員紹介を強化。大規模な採用力を背景に数十人規模のチーム派遣が可能で、顧客からの大ロット需要に応える仕組みを確立している。セミコンダクター事業は単価交渉力の向上や高単価案件への配置、エンジニア育成を進める。エージェント事業は地域特化型の人材紹介や製造業集積地での営業強化を実施。ネクストキャリア事業は売上比率1割未満だが、富士通や日立などの大手企業を顧客に持ち、安定的な収益貢献を続けている。

通期業績予想は売上高1,680億円(前期末に売却した事業の影響を除くと前期比1.4%増)、営業利益95億円(同31.9%増)を見込んでいる。モーター・エナジー事業での想定を下回る需要、採用単価の上昇、採用計画の未達で下方修正されたものの、利益創出力の高い状況を見て取れる。

中期経営計画では、2029年3月期に売上高1,850億円、営業利益150億円を目標に掲げている。人的資本投資を通じて持続的な事業成長基盤の構築を目指す。モーター・エナジー領域では期間社員の人材紹介を強化し、セミコンダクター領域では教育体制を整備して顧客ニーズに応える体制を拡充する。派遣会社のM&Aについては当計画に織り込んでいないが、好案件であれば積極的に取り込む方針で、規模拡大を加速させる姿勢を示している。また、中期経営計画では主要3事業において派遣事業の安定的な成長に加え、顧客企業に正社員を紹介する人材紹介事業を本格的に展開していくことで利益率の向上を図る計画となっている。

株主還元については、2026年3月期に年間配当162.72円(株式分割前)を予定し、配当性向100%を超える見込みである。第1四半期と第2四半期では40.19円と44.61円を実施済みで、直近株価ベースの配当利回りは約5.8%と高水準である。2029年3月期までは配当性向100%、一株当たり配当金10円の下限が明示され、業界内でも際立った還元姿勢を打ち出している。2025年8月からは当期純利益の30%に相当する自己株式を取得し、これを原資として社員に労働時間に応じたポイントを付与、条件を満たした社員に株式を交付する株式報酬制度を導入した。これにより長期就業の促進と定着率向上を図る。

同社は製造業派遣におけるトップシェアと高い採用力を武器に、安定的かつ高成長のビジネスモデルを築いている。中期的には人的資本投資を軸に持続的成長を目指しており、半導体・自動車分野の需要拡大により、今後も企業価値の向上と株主還元の両立を実現していくことが期待される。

<NH>
配信元: フィスコ

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