オーハシテク Research Memo(5):2026年3月期は円高を織り込んだ前提に基づき、減収増益を見込む

配信元:フィスコ
投稿:2025/12/19 10:05
*10:05JST オーハシテク Research Memo(5):2026年3月期は円高を織り込んだ前提に基づき、減収増益を見込む ■今後の見通し

オーハシテクニカ<7628>の2026年3月期通期の連結業績は、売上高で前期比1.3%減の39,500百万円、営業利益で同9.4%増の1,950百万円、経常利益で同1.6%増の2,400百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同33.3%増の2,030百万円と、減収増益の見通しである。

売上高は、新規受注品による売上寄与はあるものの、日本及び中国を中心に主要販売先自動車メーカーの減産に加えて、円高進行によるマイナス影響により減収を見込む。一方、利益面では価格改定や製造部門における生産性向上の取り組みを継続し、営業利益・経常利益の増加を見込んでいるほか、親会社株主に帰属する当期純利益は大幅な増益となる見通しである。為替前提については、期中平均で1米ドル=145円などを想定しており、前期比では円高方向への推移を織り込んだ前提に基づいて業績予想を策定している。



■中長期の成長戦略

営業利益4,150百万円、ROE8.0%以上、ROA10.0%以上を目指す

1. 中期経営計画「Mission2025+2」の概要
同社グループは、事業環境の大幅な変化に対応するため、2022年3月に策定した4ヶ年の中期経営計画「Mission2025」の計画を見直し、2028年3月期を最終年度とする「Mission2025+2」を展開している。背景には、為替の大幅な変動、各種コストの上昇、中国市場の激変、地政学リスクの顕在化など、事業を取り巻く前提条件の変化がある。特に為替は、当初1米ドル=108円程度を前提としていたが、現行計画では130〜150円レンジで想定している。

基本方針は、自動車業界の発展と同社の業績拡大に資する「経済的価値の追求」と、社会・環境課題への取り組みによる「社会的価値の創造」の両立である。最終年度となる2028年3月期の数値目標は、売上高45,000百万円、営業利益4,150百万円、経常利益4,450百万円、親会社に帰属する当期純利益3,100百万円としており、資本効率についてはROE8.0%以上、ROA10.0%以上を掲げている。

6年間の投資計画として、設備投資95億円、研究開発費9億円、ESG関連投資7億円を予定している。設備投資には、国内外での生産対応能力の拡大、設備更新、省人化投資などが含まれ、現在進行中の米国での工場拡張や、計画中のオーハシ技研工業鈴鹿工場における第二工場建設も含んでいる。これらの投資を通じて事業基盤を強化し、中長期的な成長に向けた体制整備を進める方針である。


開発・製造・調達・グローバルの4つの基本機能を一体的に強化

2. 主要な施策
「経済的価値の追求」を実現するため、以下4つの基本機能を一体的に強化することに重点を置き、中長期的な成長と企業価値向上を図る。

(1) 開発機能
電動化に対応する新たな加工技術開発を進めるとともに、独自特許である「圧入プロジェクション接合技術※」の進化と適用領域の拡大を図る。同技術を活用した高機能部品の開発を通じて、新たな需要への対応を進める。

※ 同社が特許を保有する接合技術であり、電動化により生じる部品の軽量化、高強度化、高精度化等のニーズに対応する技術として、自動車メーカー各社に採用され、グローバル車種への採用が拡大している。

(2) 製造機能
内製率の拡大に向けて設備投資を推進し、売上高に占めるグループ製造部門比率を現状の26%から40%へ引き上げることを目指す。この達成にはさらに5年程度を要する見通しながら、特にグローバル車種向けの部品ではグループ内での自社生産体制が求められ、さらなる拡充を計画している。そのための手段として、自力での拡充のみならず、高度な技術力を有するメーカーとの新たな資本提携やM&Aも選択肢の1つとなる。

(3) 調達機能
約400社の協力メーカーとの連携により、広範な加工技術領域を活用し、得意先の多様なニーズに対応している。さらに、協力メーカーとの共同での技術開発や、必要に応じて製造設備の貸与などの支援も行う。これらを通じ、調達基盤の一層の強化を目指している。

(4) グローバル機能
日本・米国・タイ・中国の4極において、冷間圧造・精密プレス・切削の3つの加工技術に対応できる生産体制を構築し、顧客のグローバル生産に対応した世界ベストQCD体制※の実現を目指す。

※ Quality(高品質)、Cost(コスト競争力)、Delivery(供給)を併せ持つ体制。



■株主還元策

積極的な株主還元を実施、2028年3月期まで毎期増配を計画

同社は中長期的に、企業価値の向上と、その成果を株主に還元することを重要な経営課題の1つと位置付けている。数値目標としてDOE2.8%以上、配当性向35%以上を掲げており、DOE目標は、2024年11月に従来の2.5%以上から上方修正された。また、現中期経営計画期間中の配当額及び配当性向も開示しており、2027年3月期は80.0円(配当性向39.5%)、2028年3月期は90.0円(同36.3%)と、継続的な増配を見込んでいる。2025年11月には累進配当方針も表明した。

2025年3月期の年間配当金は68.0円(配当性向58.6%)であり、2026年3月期は前期比6.0円増配となる年間74.0円(同46.7%)を予想している。

さらに、2025年12月31日を基準日として普通株式1株につき2株の割合で株式分割を実施し、株主優待制度も分割前の対象条件を継続する方針である。投資単位当たりの金額を引き下げることで、株式の流動性向上と投資家層の拡大を図る。

また、株主優待制度として、100株以上保有の株主※に対し、保有株数に応じて「おこめ券」を贈呈している。

※ 株式分割後も、株主優待制度は年2回「1単元(100株)以上保有」の条件を維持する。

自己株式の取得については、財務状況などを総合的に勘案し、適時・適切な規模での取得を継続検討する方針であり、2024年11月~2025年6月に385,300株を取得し、2025年11月には300,000株を消却した。また、IR活動の強化にも取り組んでおり、個人投資家向け説明会動画の配信などを通じて投資家層の拡大を推進している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉 俊輔)

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