Laboro.AI、生成AI・最適化の技術的な強みを軸に二本柱を先鋭化 「AGT-X」立ち上げで成長エンジン構築
会社情報

椎橋徹夫氏(以下、椎橋):株式会社Laboro.AI代表取締役CEOの椎橋徹夫です。2025年9月期の通期決算についてご説明します。
まず企業の概要とビジネスモデルについてご説明します。当社は2016年4月に設立し、2023年7月に東証グロース市場へ上場しました。現在、従業員数は90名から100名規模となっています。
事業内容についてです。スライド左下に「カスタムAI」という言葉で表現しているとおり、大手企業を中心に、オーダーメイドでAIソリューションの開発を行っています。また、こうしたAIソリューションを活用して企業のビジネスを変革するため、コンサルティングというかたちで伴走支援する事業も展開しています。
経営陣紹介

椎橋:当社の経営陣についてご紹介します。当社は代表取締役2人で構成されており、私とCOO兼CTOの藤原で運営しています。さらに、スライド右側に記載の経営陣とともに事業を運営しています。
私自身は、大学で理系分野を専門として学んだあと、コンサルティング領域に進みました。その後、東京大学でAI分野の産学連携の仕組み作りに取り組んだ後、当社を創業しました。
Laboro.AIのミッション

椎橋:当社は2つのミッションを掲げています。1つは「すべての産業の新たな姿をつくる。」、もう1つは「テクノロジーとビジネスを、つなぐ。」です。
現在、AI業界は大変盛り上がっており、AI関連企業が非常に増加しています。その中でも当社は、AIのプロダクトを作り、販売して利益を上げるというビジネスモデルではなく、さまざまな業界の企業の「イノベーションパートナー」になることを目指しています。
連結決算への移行

椎橋:当社はカスタムAIソリューション事業を展開してきましたが、株式会社CAGLAのグループ化に伴い、2025年9月期から連結決算へ移行します。今後はグループとしてポートフォリオを活用しながら、さらなる事業拡張を積極的に進めていく考えです。
現在、Laboro.AIがもともと手がけていたカスタムAIソリューション事業と、AI開発を通じた企業への導入支援に加え、AI関連のシステム開発事業の領域にもサービスを広げていこうと考えています。
「カスタムAIソリューション事業」の全体構造

椎橋:カスタムAIソリューション事業全体の構造についてご説明します。ビジネスモデルとしては、提供サービスであるカスタムAIを、「バリュー・マイニング(VM)」「バリュー・ディストリビューション(VD)」という形態で提供していきます。
AIの領域では、新しい活用方法や用途が次々に現れています。当社では、まだ世間にも先例のない、AIを使った新しい価値の創出を目指しています。このように、答えがまだ明確には見えていない領域やテーマに取り組むのがバリュー・マイニングです。
同時に、ある程度「このような使い方をすると、この業界ではAIはこのような価値を生み出し、このようなビジネスの転換が可能になる」というかたちが見えてきた場合に、それらを型化して、速いスピードで横展開できる仕組みを整えています。こちらがバリュー・ディストリビューションです。
このような取り組みにより、当社は「バリューアップ型AIテーマ市場」を狙っていきます。この点については後ほど触れたいと思います。
「カスタムAIソリューション」とは

椎橋:カスタムAIソリューション事業とは、「カスタムでAIを提供する」というものです。今や企業のあらゆる領域においてAIが活用されており、これによりビジネスを変革していける可能性があります。
私たちはその具体的な可能性を見いだし、AIによるソリューションを実際に構築して、それを活用してビジネスを変革する取り組みを支援しています。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):このカスタムAIソリューション事業について、創業後からずっと手掛けてきたのでしょうか? それとも、最初は別の事業を手掛けていたのでしょうか?
椎橋:創業以降、さまざまな探索を行う中で、基本的にはカスタムAIに軸を定めて活動しています。
AIというと、プロダクトを作成したり、SaaSを展開するスタートアップ企業が多いかと思います。それ自体も重要ですが、一方で、大企業がAIを活用して事業やビジネスモデルを変革しようという場合に、他社も利用しているSaaSのプロダクトやソリューションを導入することに矛盾を感じていました。
そこで当社は、企業の強みを活かし、競合との差別化を図るようなAIを開発し、企業を変革するための支援に注力しています。これを実現するためにはプロフェッショナルな集団であることが必要であると考え、カスタムAIを提供しています。
坂本:これまでは大企業がオンプレミスでシステムを構築することが主流でしたが、コストが非常にかかり、改修するにも多大な費用が必要でした。そこにカスタムAIが登場したことで、かなり使いやすくなっている印象があります。この点でニーズは非常に高いと思うのですが、御社ではいかがでしょうか?
椎橋:直近の生成AIの進展に伴い、ニーズはさらに増加しています。また「AIを活用して経営をどう変革すればよいのか」といった問題意識を持つ経営者の方が増えてきており、そのようなご相談も多く寄せられています。
「カスタムAIソリューション」提供の流れ

椎橋:私たちはカスタムAIでAIソリューションを作っていますが、クライアント企業に「このようなAIを作って」と言われた場合でも、それを単に言われたとおりに作るわけではありません。
AIソリューションは、AIの技術を深く理解した上で、「ビジネスにおいてどの部分に取り入れるべきか。そしてどのようなかたちで成果を最大化できるか」といった、上流の企画構想や設計が非常に重要であり、これが最も難しい領域でもあります。
そのため当社では、大手クライアント企業と一緒に経営の視点に立って、「AIをどのように経営に取り入れるべきか」というディスカッションからスタートします。「AIを活用した成長戦略をどのように構築するべきか、またビジネスモデルをどう変革していくべきか」といった議論から、企画の構想や定義をスタートします。
次に、プロトタイプを作成したり、AIを使ったPoC(概念実証)を実施します。これを通してAIが狙った効果を実際に生み出せるかを検証し、その後、実際に導入する仕組みを構築します。
さらに、導入後も従来のITシステムとは異なり、AIを継続的に改善していく必要があります。再学習やチューニングを重ねることで精度を引き上げ、性能を最大化していきます。
そのため、戦略策定や構想といった最上流から、導入後の継続的な進化まで、一貫して長期的に支援しています。
坂本:カスタムAIについて、かなり理解が深まりました。一方で、「どのような課題を抱え、どのように解決していくのか」という点は、企業ごとに異なるかと思います。こちらについて事例があればお聞かせいただけますか?
例えば、売上目標や、ひとつのプロジェクトで上流から最後のチューニングまでにどのくらいの期間を要するのか、またチームの規模感など、そのあたりを含めてご紹介ください。
椎橋:当社のミッションは「すべての産業の新たな姿をつくる。」であり、特定の業界に限らず幅広い分野で取り組んでいます。その中でも特に研究開発型産業、つまり最先端の高付加価値な製造業などのモノ作りの領域を重視しています。
象徴的な事例として、最近ではAIの波もあり、半導体の分野が非常に注目されています。日本でも国策としてRapidusという半導体メーカーが立ち上げられたほか、設計段階でも半導体領域で強みを持つ日本のメーカーがいくつか活躍しています。当社も、この分野には以前から注力して取り組んできました。
例えば、半導体を製造する新しい工場を作ることになった場合、最先端の半導体を短期間に、早いサイクルで生産することが重要になってきます。またAIの進展に伴い、多品種の半導体を生産する必要が出てきた場合、生産工程やスケジューリング、生産計画がより複雑化していきます。これにより、従来の人力による計画立案では間に合わなくなりつつあります。
そこで、AIがリアルタイムで生産プロセスや計画を最適化し、迅速で緻密な生産を可能にしていきます。
こうした取り組みは半導体に限らず、スマートファクトリーといわれるようなさまざまな工場において、製品ごとに生産プロセス全体をAIで最適化することが重要になってきます。その一例として、我々は半導体工場内で使用されるAIエンジンの開発を進めています。
また、半導体の設計は非常に難易度が高い分野ですが、ここにもAIが進出しています。一部では汎用設計AIがプロダクトを提供していますが、それぞれの半導体設計メーカーの持つノウハウを十分に活かすためには、各企業に特化したカスタム設計AIが必要です。同様に、工場も個別のカスタム生産計画AIが求められます。当社ではこうしたAIの開発にも取り組んでいます。
「バリューアップ型AIテーマ」とは

椎橋:先ほど「バリューアップ」というワードを出しましたが、この「バリューアップ」に該当しないものとしては、コストカットや業務効率化型のAIです。
現在、日本国内の大手企業では、AIにまったく取り組んでいないという企業はほとんどありません。多くの企業が、なんらかのかたちでAIに取り組んでいます。
しかしその取り組み内容を見てみると、アメリカや中国などの海外に比べて、日本ではAIを使って人が行っていた作業を代替し効率化するという、いわゆる業務効率化やコスト削減にフォーカスしている取り組みが多いように感じます。これらの取り組みはわかりやすいため、日本でもかなり進展していると感じています。
しかし本来であれば、AIを活用してまったく新しいサービスや製品を創出したり、ビジネスモデル自体を変革したりすることもできるはずです。
例えば製造業で言えば、従来は装置を製造・販売するだけだったところから、装置納入後に得られるデータを活用して、装置の稼働を最適化するといった取り組みもAIで可能になります。これは「モノからコトへ」のような例ですが、新たにサービスモデルを構築して、ビジネスモデルそのものを変革することができます。
そのような取り組みは、コスト削減ではなく、売上拡大や企業の価値を上げるものです。このようなバリューアップ型のテーマこそが、最もインパクトが大きいと考えています。
しかしながら、日本ではまだそのような取り組みが少ない状況です。そこで当社では、あえてこのようなテーマを「バリューアップ型AIテーマ」と名付け、取り組みを増やしていこうと考えています。
バリューアップ型AIの市場規模予想

椎橋:バリューアップ型AIテーマの市場規模予想です。スライドに示すとおり、引き続き成長を続けていくと考えています。
「システム開発事業」とは

椎橋:システム開発事業についてご説明します。2025年9月期に株式会社CAGLAを買収し、グループに加わっていただきました。
CAGLA社は、グラフデータベースという、AIの基盤となるデータを扱う領域で多くの知見を持つ会社です。同社は愛知県豊田市に拠点があり、自動車産業のシステム開発にも大きな強みを有しています。
このCAGLA社がグループに加わったことを契機に、AIだけでなく、AIを長期間にわたって活用するためのシステム開発、さらにはデータ基盤の領域など、カバーする範囲を広げていきたいと考えています。
2025年9月期通期の総括

椎橋:2025年9月期の通期業績についてご報告します。まず通期連結業績の総括です。売上高は19億円、売上総利益は12億7,200万円、営業利益は1億9,100万円、当期純利益は1億4,600万円となりました。事業自体は2024年9月期と比べて順調に成長し、良好な進展を見せています。
ただし8月時点で公表した予想に対しては、わずかに下回る着地となりました。これは、カスタムAIソリューション事業の一部プロジェクトの進行計画の変更により、2026年9月期第1四半期に売上計上がずれ込んだことによるものです。
各事業で見ると、カスタムAIソリューション事業の売上高は18億9,200万円、営業利益は2億5,000万円となりました。前年比では売上高が25パーセントの成長、営業利益では37パーセントの成長となっており、狙いどおりの成長が実現できたと考えています。
システム開発事業の売上高は1,200万円、営業利益は5,900万円の赤字となっています。売上高については想定どおりです。こちらは案件の検収タイミングに応じて売上を計上する関係から、今期については限定的な寄与となっています。
また営業利益が赤字となっていますが、これはM&A(買収)に伴う一時的な費用によるものであり、こちらも想定どおりです。
これらを踏まえ、2026年9月期の通期連結予想についてご説明します。売上高は24億8,600万円、営業利益は2億9,400万円、当期純利益は2億100万円を見込んでいます。売上高については、3割を上回る成長を目指しています。
坂本:今期は売上・利益ともに大きく成長する予想となっています。その取り組みについて、業界環境や注力している部分などを含めて教えてください。
椎橋:まずはカスタムAIソリューション事業とシステム開発事業の二本柱として、領域を広げていきたいと考えています。ポートフォリオを活用してさまざまなサービスラインアップを拡充し、成長を目指しています。
カスタムAIソリューション事業の中では、当社が強みとする技術的な軸や、市場で特にニーズが高い技術領域である生成AIやAIエージェントと呼ばれる分野、そして最適化と呼ばれる分野に注力しています。これらを深掘りすることで、一段と大きな成長を実現したいと考えています。
2025年9月期 通期 損益計算書

椎橋:2025年9月期通期の損益計算書です。売上高が19億円、当期純利益が1億4,600万円となっています。背景については先ほどご説明したとおりです。
(参考)合弁契約解消とそれに伴う特別利益計上

椎橋:当期純利益については、8月に開示した通期予想を上回る結果で着地しています。その背景として、システム開発のCAGLA社とは別に、より上流の部分、例えばAI戦略や企画を立案するコンサルティングファームやコンサルティング企業と提携しながら事業を広げる取り組みを、2025年9月期から進めています。
その取り組みにおいては、グロービング株式会社というコンサルティングファームと合弁企業を立ち上げて取り組みを行ってきました。今後はこの合弁企業での活動からさらに一歩進み、グロービング社と当社の本体同士で業務提携を進めることとなりました。それに伴い合弁解消を行った結果、特別利益が発生したという事情があります。
コスト構造

椎橋:コスト構造についてです。当社では従前から、人材が非常に重要な価値を生む最大の資産と位置付けています。そのため、人件費や研修採用費がコストの多くを占めています。
貸借対照表サマリー

椎橋:貸借対照表です。先ほど触れたとおり、合弁企業の株式を売却したことで流動資産が増加しています。引き続き、強固な余力を確保した財務基盤となっています。
カスタムAIソリューション事業における注力領域

椎橋:事業の進捗および今後の成長戦略についてお話しします。まず、カスタムAIソリューション事業についてです。当社はこれまで、カスタムAIによる「すべての産業の新たな姿をつくる」ことが重要であると考え、特定の領域に絞らず幅広いニーズに応えることに積極的に取り組んできました。
これからも領域を絞るつもりはありませんが、事業を進める中で、当社が得意とする部分や、方法を進化させることで拡張させていける部分の見通しが立ってきました。そこで、今後はカスタムAIソリューション事業において、メリハリをつけながら事業を進めていこうと考えています。
スライド左側に記載している「生成AI」「最適化」「その他」は、当社の技術の軸を示しています。現在大きく進展している生成AIの領域は、間違いなく主要な柱の1つになると考えています。
また、他のAI企業と比較して当社が特に力を入れている最適化の領域も重要視しています。この領域は先ほど触れた半導体や製造業などにも広く利用されており、この2つが技術的にも非常に大切な軸となっています。
さらに、当社はこれまでフルカスタムに注力してきましたが、その次のステップとして、セミカスタムへも歩みを進めていきます。プラットフォームや技術的な基盤となっているものを部分的にカスタマイズすることで、カスタムならではの価値を保ちながら、より迅速かつスケーラブルな提供を実現していきます。
そのためにも、引き続きコア領域として知見を蓄積していくために最も重要な柱の1つとなるのは「AIソリューションデザイン(AI-SD)」です。このAIソリューションデザインは、これまでに当社が行ってきたカスタムAIと同様の取り組みです。
加えて、成長領域として「エージェントトランスフォーメーション(AGT-X)」にも力を入れていきます。AIエージェントが技術として急速に発展している中で、AIエージェントを組織に組み入れ、会社を変革していくことを集中して支援するという新しいサービスラインナップを立ち上げていきます。ここではセミカスタムを採用することで、もう一段速いスピードでの成長を目指していきたいと考えています。
加えて、中期的な投資領域候補として、エージェントや生成AIの部分を、SaaSやプロダクトに近いかたちで展開していこうと考えています。こちらは事業として成り立つ可能性が出てくると思っており、現在プロダクトの立ち上げに向けたチャレンジと探索を行っています。
また、最適化の領域でもセミカスタム化が可能であると考えており、このような新たな分野に取り組むチャレンジを進めています。これらを三段階で計画的に考えているところです。
坂本:今後の成長の肝となる部分で、フルカスタムよりもセミカスタムのほうが工数が少なく対応も早いということから、利益と売上が爆発的に成長するひとつの源泉になると思っています。
この最適化のベースとなる技術、いわゆる型化についてうかがいます。これまでフルカスタムを長年行ってきた中で、ある程度「この業界ならこのパターン」というものが蓄積されてきて、現時点でこの型化が加速できる状況にあるのでしょうか?
椎橋:冒頭のビジネスモデルの紹介で、バリュー・マイニングやバリュー・ディストリビューションについてお話ししましたが、これまでもさまざまなプロジェクトを通じて、できるだけ共通化できる部分を型化し、スケーラブルにしていこうというチャレンジをしてきました。
その中で、まず生成AIのエージェント領域では共通化がかなり進んでいます。実際に、開発プラットフォームやソフトウェアとして共通化できるものを社内で開発し、進めてきています。このことから、エージェントトランスフォーメーションとして、セミカスタムのサービスモデルの立ち上げに至っています。
さらに最適化についても、それにつながるようなさまざまな技術基盤が整いつつあります。ここをさらに整備した上で、セミカスタムのサービスラインナップを展開していくことを検討していきたいと考えています。
当社における各領域の位置づけ

椎橋:先ほどご説明したとおり、引き続き最先端のAIソリューションや、世の中でまだ先行例のないようなテーマに果敢に取り組むAIソリューションデザインをコア領域として位置付けています。
さらに我々は、セミカスタムによってもう一段成長を加速させる方針です。その新しいサービスラインナップとして、エージェントトランスフォーメーションを展開していく予定です。
その他にも、よりプロダクト化に挑戦する取り組みも進めていくという、三段階の構成で今後を考えています。
注力領域を踏まえた組織体制の拡充の方針

椎橋:エージェントトランスフォーメーションについては、新たなチームを作って成長させていきます。このセミカスタムの取り組みに伴い、チームや組織を拡大させるため、従来当社のカスタムAIを担ってきたソリューションデザイナのチームよりも、一段と採用を加速していきたいと考えています。
ソリューションデザイナはAI技術に深い知見を持ち、かつビジネスにも精通しているという点で、非常に価値のある人材です。しかしながら、そのようなスキルを備える人材は限られています。
一方で、エージェントトランスフォーメーションは、AIエージェントや生成AIについての知識も必要であるものの、よりビジネスコンサルタントのようなバックグラウンドや適性を重視しています。
お客さまの企業内に入り込み、変革を支援・推進するという点にフォーカスしているため、そこまで深い技術の知識を持っていないビジネスプロフェッショナルの方々も参加しやすいということで、このチームの拡大を目指しています。
坂本:御社のリリースがありましたが、伊藤忠商事とBCGの合弁であるI&Bコンサルティングとの業務提携について教えていただけますか?
椎橋:リリースで開示したとおり、現在は提携の検討を進めている段階であり、具体的な内容はまだ確定していません。
コンセプトとしては、エージェントトランスフォーメーションなどを推進する際、AIを活用して全社規模で組織やビジネスを大きく変革することを目指しています。まさに、DX(デジタルトランスフォーメーション)が、AX(AIトランスフォーメーション)やエージェントXになってきている状況です。
AIの技術実装をして提供することも重要ですが、例えば「AIが導入された際に組織設計をどうするか」、また「経営の体制や意思決定のあり方をどう変えるべきか」といった課題は、技術的なテーマではなく組織論や経営ガバナンス論になってきます。
こうしたテーマに対しては、当社の技術に精通したメンバーだけでなく、コンサルティングファームと連携し、それぞれの得意分野を活かしながら共同でプロジェクトを推進することが今後さらに重要になってくると考えています。
坂本:この10年ほどで、例えば人事や組織関連でよくあるサブスクリプション型のサービスを提供している企業広告などを見かけます。これらがすべて、このようなAIを活用したサービスに置き換えられる可能性もあるのではないかと考えています。
御社はカスタマイズが可能であることが強みだと思います。将来的にはそれを活かしてさらなる展開を目指しているのでしょうか?
椎橋:もちろん、特定の領域に特化したSaaSやツールのようなサービスは、今後も重要だと思います。しかしながらそれ以上に、企業の根幹や経営自体が変わっていくことがこれからどんどん起こってくると考えています。そのような部分は、ツールだけでは対応できません。
坂本:ツールはあくまで意思決定を補助するものですが、それ以上に助言などで判断を支える部分まで踏み込むようなサービスが、将来的に実現するということですか?
椎橋:おっしゃるとおりです。そのような方向性を目指す場合、技術もそうですが、企業を変えるために伴走していくには、当社や協力いただくコンサルタントの方々など、プロフェッショナルなサービスとカスタムアプローチが重要になると考えています。
売上高/営業利益の四半期推移

椎橋:カスタムAIソリューション事業の売上・利益の四半期推移です。第4四半期の売上は5億2,200万円で、過去最高水準に達し、順調に成長しています。利益については、第3四半期で一時的に落ち込みましたが、回復しています。
2025年9月期 第4四半期/通期 損益計算書

椎橋:単体の数字については、スライドのとおりの着地となっています。通期では売上高が25パーセント成長し、営業利益は37パーセント成長での着地となりました。
顧客ポートフォリオ(1/4):業界別顧客構成(通期累計)

椎橋:顧客のポートフォリオについてです。当社は幅広い分野で事業を展開していますが、大きく分けると、研究開発型産業や高付加価値な製造業の領域と、社会基盤や生活者産業といったコンシューマーに近い領域の2つがあります。これらの分野をおよそ半々の割合で手がけています。特に半導体の領域には、非常に力を入れて取り組んでいます。
顧客ポートフォリオ(2/4):売上規模別の構成

椎橋:スライドは顧客ポートフォリオを売上規模別に示したものです。年間売上高1億円以上の企業が4社という構成です。当社ではバランスを取った構成を目指しており、その方向に進んでいます。
顧客ポートフォリオ(3/4):上位3社の売上構成比の推移

椎橋:当社では顧客ポートフォリオが大手企業に一極集中しないように取り組んでいます。上位3社の企業が占める売上比率も徐々に下がってきており、良いかたちで分散した構造が実現できています。
顧客ポートフォリオ(4/4):既存/新規顧客売上成長率

椎橋:新規顧客と既存顧客について、昨年取引があった既存のお客さまについてはほぼそのまま今年も継続しており、全体としては変わらない規模の売上を維持しています。
その上で、新たに2025年9月期にお取引を開始したお客さまの分が、そのまま成長に加わっている構造となっています。
社員数の推移

椎橋:社員数の推移です。2025年9月期末で96人となっています。これは期初の計画には少し届いていない部分がありますが、この点については後ほどご説明します。
2025年9月期 通期の事業進捗(サマリ)

椎橋:事業進捗のサマリーです。柱①は顧客企業の安定した収益成長です。ここは新規顧客・既存顧客ともに良いかたちで進展しました。
ただ、既存顧客に関しては「△」で示しているように、今期に期ずれが発生した部分があり、収益の見通しの精度をさらに高める必要があると考えています。この点は引き続き、課題として取り組んでいきます。
柱②の体制面については、先ほど人員計画が通期計画を若干下回ったとお話ししました。特にソリューションデザイナの採用が計画どおりに進まなかった点が課題となりました。一方で、育成や組織のエンゲージメントに関しては、非常によい進展が見られた一年となりました。
柱③は、M&Aや新領域についてです。グロービング社との提携やCAGLA社のグループ入りを含め、良いかたちで進展しました。
採用 / 育成:採用/育成の進捗状況

椎橋:採用/育成の進捗状況です。ソリューションデザイナの採用課題については、先ほどご説明したとおりです。
M&A:グロービング株式会社との合弁契約解消

椎橋:グロービング社との合弁契約解消についても、先ほどご説明したとおりです。
26年9月期以降の成長戦略

椎橋:成長戦略です。柱①は、先ほどご説明した最適化や生成AIに関する取り組みです。その中で、エージェントトランスフォーメーションという新しいサービスラインナップも構築しつつ、さらなるスケールアップに向けて舵を切る方針です。
26年9月期の取組みの方針

椎橋:取り組み方針については、スライドに記載のとおりです。柱②の採用・育成に関して、2026年9月期は通期で約50人の人員拡充を計画しており、組織のさらなる成長と加速を目指しています。
これまでの経緯から一定のチャレンジも伴いますが、すでに良いかたちで進展している部分もあります。こちらも実現に向けて推進したいと考えています。
システム開発事業:事業進捗

椎橋:システム開発事業についてです。ここはCAGLA社の部分です。数字的な寄与は、今期は限定的でしたが、組織としてはPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)や人材交流といった面で、非常に良いかたちで進み始めています。
2026年9月期に事業成果を生むためにも、非常に順調な滑り出しとなっています。
26年9月期の取組みの方針

椎橋:事業の取り組み方針として、引き続き採用や組織の強化を進めながら、Laboro.AI本体との連携を通じて売上成長を実現していくことを目指していきます。
売上高及び営業利益の見通し

椎橋:2026年9月期の通期業績の見通しです。売上高は24億8,600万円、営業利益は2億9,400万円を見込んでいます。売上は前期比31パーセントの成長を目指しています。
カスタムAIソリューション事業を支える体制構築の見通し

椎橋:カスタムAIソリューション事業の体制構築についてです。約50名を追加し、大きく体制を強化していきます。
足元の体制構築に向けた進捗状況の見通し

椎橋:ソリューションデザイナについては、ここが最大のチャレンジではないかと考えています。2026年9月期には10名を追加する予定です。
現時点で2026年9月期の採用ターゲットの半分以上が進展しており、良いかたちで組織拡大を狙えるのではないかと考えています。
質疑応答:ストック型のリカーリング収益について

荒井沙織氏:「御社はカスタムAIを軸に、プロジェクト型で収益を上げている印象です。2025年9月期において、ストック型のリカーリング収益をどこまで高めていくお考えでしょうか? ビジネスモデルの将来像を教えてください」というご質問です。
椎橋:プロジェクト型で収益を上げているという点はそのとおりです。その上で、当社のプロジェクトはバリューアップ型であり、企業の成長のために長期的に伴走するというものです。
例えば、3ヶ月や半年の開発プロジェクトでも、それで終わりではありません。長いものではエンドレスに続いていくような伴走型の取り組みです。カスタムAIやAIソリューションデザインもプロジェクト型ですが、数年にわたって長期的に取り組みを継続していきます。こちらは引き続き強化していく予定です。
ストック型やリカーリング収益という観点での切り分けが難しいですが、まさにそこはセミカスタムというかたちで、よりわかりやすく明確に進めていくことを予定しています。
セミカスタムでは技術のベースがあるため、中期的には開発プラットフォームや技術基盤に対して対価をいただくというビジネスモデルに進化させていきたいと考えています。
具体的にどこまで高められるかは現時点では未定ですが、今期においてもセミカスタムの領域をかたちにしていきたいと考えています。
坂本:個人投資家が気にしているのは、ストックとリカーリングの割合を将来的にどの程度にしたいと考えているのかといった点かと思います。
ただし、AIの基盤技術がさらに発展することで、現在考えているものとはまったく違ったかたちになる可能性もあると思います。このあたりを含めて教えていただけますでしょうか?
椎橋:明確に定量的な割合をお伝えするのは難しいと考えています。スライドに「探索」と「深化」と書いているように、常に新しい探索を続けていくことと、一方でセミカスタムのかたちで展開していくことのどちらかに偏ることなく、両方が並行して進むのが理想的な姿だと思います。少なくとも半々のイメージで考えています。
質疑応答:AI技術の進化と業界の将来像について
坂本:AIの技術の発展について、ベースとなる技術がある程度できてから急速に進むと言われています。ここ数年で、まさにそのタームが訪れたと感じています。
今後さらにベースとなる技術が進展し、加速していくというイメージなのか、御社の成長と業界全体の将来像についてお聞かせいただければと思います。
椎橋:おっしゃるとおり、さらに何段階か進化していくと思います。まず現在はChatGPTやGeminiといったLLMや生成AIが登場した時に、1つのモデルと対話するという点においては非常に賢く、簡単なディープリサーチや調査などを非常に高い精度で実行できるようになっています。
一方で、AIを社員やチームメンバーとして導入し、複数のAIと人間がチームを組むことが現時点で可能かというと、それはまだ挑戦の段階です。これがまさに私たちが進めようとしているエージェントトランスフォーメーションです。
エージェンティックなAIについては、今年が元年と言われており、来年、再来年にかけてさらに波があると思います。その次には、最近「フィジカルAI」とも呼ばれているロボット分野において、もう一段大きな波が来ると予想されます。
AIが、エージェントやチームメイト、さらには組織の一員として活用される波、そしてロボットのように物理的な存在となる波など、これからいくつもの大きな変化が訪れると考えています。この変化に対応するため、当社のサービスラインナップもさらに拡充していく準備を進めていきたいと思います。
質疑応答:人材の採用状況について

坂本:人員に関するお話がありましたが、この部分が成長の基本となることもあり、「着実に採用できているのか?」「どのような施策を行っているか?」といった質問が寄せられています。
御社はかなり先端的な取り組みをされており、そこに興味を持つ学生や中途の方も多いと思います。現在採用している方の新卒と中途の割合や、またどのような方法で人材を集めているのか、そしてどのような人々が御社を志望しているのかについて、包括的に教えていただけますか?
椎橋:現状では基本的に中途採用を中心に行っています。しかし特にエンジニアについては、中期的には新卒採用も重要になると考えています。またビジネス側でも新卒の採用をすることで会社のフェーズが変わると考えており、それに向けた検討を進めています。
現在、中途採用でどのような方に来ていただいているかというと、例えばコンサルティングや金融などの分野で、プロフェッショナルとしてのキャリアを目指している方々がいらっしゃると思います。
当社が目指しているのは、AIを活用してイノベーションを起こすことに特化したプロフェッショナルになることです。戦略やファイナンス、法律など、それぞれの分野にプロフェッショナルな方はいらっしゃいますが、これから最も人材価値が高く、非常に重要となるのは、イノベーションプロフェッショナル、つまり次世代のプロフェッショナルであると考えています。
そのような次世代のプロフェッショナルを自ら体現し、チャレンジしていきたいという考えを持った方々に集まっていただいています。そうした方々とともに、新しい職種や職業を形作っていきたいと考えています。
椎橋氏からのご挨拶
椎橋:本日はご視聴いただき、誠にありがとうございます。当社は、わかりにくい部分も多い会社かもしれませんが、一言でいうと、このAIの大きな波の中で、日本発のイノベーションを通じて世界に大きな価値を提供することを目指しています。それを実現するために、さまざまな企業と連携しながら取り組んでいきます。
こうしたチャレンジや考え方に共感し、応援していただける方々には、株主になるということも含めて、さまざまなかたちで応援していただけると幸いです。本日はありがとうございました。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:第4四半期は過去最高水準の売上を達成していますが、案件規模の大型化と案件本数の増加、どちらがより寄与した結果なのでしょうか。
回答:いずれも寄与したと考えていますが、より要因として大きいものは案件増加に関わるものと認識しています。AI投資に関わる堅調な需要を踏まえ、多様な産業のお客さまとのAI開発に関するプロジェクトを協働しています。
<質問2>
質問:大きく人員規模を拡大するとなると、キャッチアップさせることも必要だと思います。どのような施策をとる予定ですか?
回答:新規のメンバーの採用および育成を所管する人材開発部という部署を設置し、フロント各部に伴走するかたちで採用や育成の企画を行っています。具体的には、採用後のオンボードを支えるためOJT/Off-JTの仕組みの整備や、新規参加メンバーを支えるメンター制度の導入/拡大を通じ、スムーズな入社後の立ち上がりを支援しています。
<質問3>
質問:上位3社の売上比率が29パーセントまで低下し、顧客分散が進んでいる点は好印象ですが、今後は既存顧客へのアップセルや継続案件をどのように強化していく方針でしょうか?
回答:現状、既存のお客さまからの売上は昨年対比でほぼ維持できており、今後もこうしたかたちを継続させることを目指していきたいと考えています。
具体的には、開発プロジェクトの対面部門以外のお客さまとの接点を持つようにすることで、異なる部署の開発テーマに関わる営業活動を行ったり、より上流のデータ活用戦略やAI活用戦略をご支援することで、後続の開発案件への理解を深めていく等、積極的な営業活動を行っていきたいと考えています。
<質問4>
質問:「AGT-X」はセミカスタム型のAI開発とのことですが、フルカスタム型(AI-SD)と比べて、営業から案件立ち上げまでのスピード感にはどの程度の違いが出るのでしょうか?
回答:「AGT-X」はエージェントAIに関わる開発の基盤となるフレームワークを活用し、早期にお客さまが使えるAIのデモを開発することを目指しています。
当社は3ヶ月から6ヶ月程度のプロジェクトを継続しながら開発を進めていくかたちが一般的ですが、「AGT-X」のプロジェクトにおいては、プロジェクトの前半のタイミングでお客さまに具体的なイメージを持つことができる初期版のAIデモを開発し、以降精度や機能を向上させていくことが多いです。
<質問5>
質問:生成AI分野は競争が激化していますが、価格競争に陥らずに成長できると考える理由や、貴社ならではの競争優位性をあらためて教えてください。
回答:AIの開発や実装においては技術的な強みに加えて、お客さまの事業や業務を深く理解し、お客さまの業務で使えるようなかたちでのAIソリューションの構想や、AIソリューションを前提にしたお客さまの業務や組織の在り方の再設計が重要になってくると考えています。
このためにはAI技術とお客さまの事業内容を深く理解した上で、組織変革の推進をリードできる人材が不可欠となりますが、市場においてもこうした人材は希少と認識しています。
当社はこうしたAIイノベーションを推進しリードできる専門人材を蓄積しており、競合優位性の源泉となると認識しています。
関連銘柄
| 銘柄 | 株価 | 前日比 |
|---|---|---|
|
5586
|
849.0
(15:30)
|
-18.0
(-2.07%)
|
関連銘柄の最新ニュース
-
ラボロAI(5586) 第10回 定時株主総会招集ご通知及び株主総会資料 12/02 08:00
-
ラボロAI(5586) 役員候補者の選任に関するお知らせ 11/21 16:00
-
【QAあり】Laboro.AI、カスタムAIソリューション事業は4... 11/19 08:00
-
Laboro.AI---25年9月期売上高19.00億円、堅調な事... 11/18 14:38
-
Laboro.AI---個別業績の前期実績との差異 11/18 14:32
新着ニュース
新着ニュース一覧-
今日 19:11
-
今日 19:01
-
今日 19:00
-
今日 19:00
