【QAあり】マツオカコーポレーション、ASEAN諸国への工場シフトが早期に進展 中計最終年度の経常利益目標を7億円引き上げ

投稿:2024/12/26 17:00

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金子浩幸氏(以下、金子):みなさま、こんにちは。株式会社マツオカコーポレーション取締役の金子浩幸です。よろしくお願いします。

本日は、資料に従い、当社グループの紹介、当社グループの強みおよび成長戦略についてご説明します。

1-1. 会社概要

金子:はじめに当社グループの概要です。会社名称は株式会社マツオカコーポレーション、代表者は代表取締役社長執行役員の松岡典之です。本社は広島県福山市に構え、1956年の創業で70年近い歴史があります。

中国、ミャンマー、バングラデシュ、ベトナム、インドネシアの5ヶ国でアパレル縫製品を製造する縫製工場を展開しています。加えて、中国とベトナムではラミネート加工による生地加工を行う工場も展開しています。

縫製工場の特徴として、多くの従業員に支えられていることが挙げられます。2024年9月末の当社グループ総従業員数は1万8,786人です。

1-1. 会社概要

金子:当社グループは、お客さまのブランドや企画された衣料品の縫製加工を行うアパレルOEMメーカーです。

取り扱っている品目は、みなさまがふだん着られるようなカジュアルウェア、インナーウェアから、作業服、制服などのワーキングウェアまで多岐にわたっています。

一部の子会社では、ポリエステルやナイロンの生地にラミネート加工を施し、透湿防水機能を付加する生地加工の事業も行っており、アウトドアやスポーツウェアのブランドのお客さまへ納品しています。

1-1. 会社概要

金子:当社グループは、みなさまがよくご存じのカジュアルウェアの大手SPA企業をはじめ、国内約50社、海外約20社の企業、有名ブランドなどから受注をいただき、衣料品を生産しています。

kenmo氏(以下、kenmo):上場時の記事などを拝見すると、ユニクロとの取引が非常に多いとのことですが、創業からの御社とユニクロとの関係についてお聞かせください。 

金子:創業からしばらく経ってからではありますが、2000年以降のユニクロ急拡大の時期と、我々の事業拡大の時期がマッチし、そこからのお付き合いになります。

以来緊密な関係を築き、たくさんのオーダーをいただきながら、現在、当社グループには、ユニクロのニーズに特化した工場や、一部ではありますが出資いただいている工場もあります。

kenmo:スライドのとおり、国内約50社、海外約20社と上場後も取引企業数を拡大されていますが、具体的にどのようなかたちで取引先を増やしてきたのでしょうか? 

金子:さまざまな手法がありますが、例えば、我々のアパレル業界内のネットワークを大事にしながら、トップ営業や幹部営業など意思決定をいただける方々との商談により、取引を始めることが多くなっています。

また、我々はシーズンごとに展示会を開催しており、その場のプレゼンテーションで新しいオーダーをいただくケースもあります。さらに近年は、コロナ禍で生産地に苦慮しているお客さまが非常に多く、そのようなお客さまから引き合いをいただくことも増えています。

1-1. 会社概要

金子: 2025年3月期第2四半期の品目別売上高構成比についてご説明します。主力のカジュアルウェアが全体の66パーセントで、みなさまがご存じの大手SPAもこちらに分類されています。

ワーキングウェアは6パーセントで、カジュアルウェアとはまた別の動きをするため、当社グループのポートフォリオでは重要な一部と考えています。

インナーウェアは10パーセントです。バングラデシュの工場で、糸を購入し、生地を編んで染める工程から縫製まで一貫して生産しています。

生地加工は19パーセントです。生地加工のみ、縫製とは異なる事業ではありますが、近年、売上・利益ともに大きく伸長しており、当社グループの中でも存在感が増してきています。

1-2. OEMとは

金子:みなさまもよくご存じとは思いますが、当社グループのようなアパレルOEMメーカーのビジネスモデルについてご説明します。アパレルメーカー・ブランドや、大手SPAなどのお客さまが直接企画された衣料品の縫製加工を受託して生産しています。

単なる生産受託だけではなく、当社グループの持つ多元的な、5ヶ国に展開する生産背景や、生地素材メーカーを含むサプライチェーン、長年にわたる海外生産に裏付けられた技術力などから、お客さまにとって最適なコスト、品質、納期対応を提案し続けることで、安定的な受注の獲得と信頼関係の構築につなげています。

1-3. 当社の歩み

金子:当社グループの歩み、歴史です。1956年に広島県上下町で創業後、国内の工場で縫製を行っていましたが、1990年に競合他社に先駆けて中国に進出しています。90年代の中国での事業拡大・成功が、現在の当社グループの基礎となっています。

中国事業の成功から、1998年には国内工場を閉鎖しています。一方で、中国もすでに経済発展が見えていたことから、新たな生産拠点を求め、2004年にミャンマー、2008年にはバングラデシュへ進出しています。両国とも、競合他社に先駆けての進出という点では中国と同じと捉えています。

すでにミャンマーで20年、バングラデシュで16年の歴史があります。近年は新たにこのような国への進出を目指す会社も増えていますが、先行した工場経営で培ったノウハウが、当社グループの差別化要素と考えています。

その後、2015年にベトナム、2018年にインドネシアに進出しました。2017年には、縫製事業としては初めて東京証券取引所に上場しています。

2-1. グローバルな工場展開

金子:続いて当社グループの強みについてご説明します。はじめに当社グループの工場展開、生産拠点網です。日本国内には本社機能のみがあり、生産拠点、工場はすべて海外にあります。

スライドの地図に示すとおり、中国、ミャンマー、バングラデシュ、ベトナム、インドネシアの5ヶ国に協力工場を含め14の工場があり、より短いリードタイム(納期)を求めるお客さまには、物理的に近いベトナムや中国で生産しています。

より安価なコスト、リーズナブルな加工費用などを求めるお客さまには、バングラデシュやミャンマーでの生産と、お客さまのニーズに合わせて柔軟に対応できることが当社グループの強みの1つと考えています。

また、近年リスクが高まっている政変や貿易摩擦などの地政学的な問題に関しても、一定程度回避、対応することができると考えています。

より競争力の高い地域での生産能力を拡大するために、中国からベトナムやバングラデシュへ生産地のシフトを進めており、一昨年にはその両国で3つの新工場が完成しています。現在は徐々に生産ラインを増やし、生産能力を拡大中です。

2-2. 高効率な工場運営(1)–新しい設備の導入-

金子:それぞれの工場の生産性の高い運営も当社グループの強みの1つです。新しい生産設備や自動機の導入をすべての工場で積極的に進めています。スライド左の写真は、スラックスなどにあるポケットの玉縁を自動で縫うミシンです。こちらに限らず、さまざまな自動機を導入しています。

例えば、私が今着ているようなシャツの襟やカフ(袖口)の部分を縫うパターンシーマや、スラックスのベルトを通すベルトループを縫う機械などもあります。このような自動機はすべての工場で積極的に導入し、生産性向上を図っています。

スライド右の大きな機械は自動裁断機と呼ばれるものです。縫製の手前の工程で発生する生地の裁断を早く正確に行う機械です。加えて、パーツ間の隙間を最小化できるため、材料のロス削減にもつながっています。

2-2. 高効率な工場運営(2)–IoTの導入-

金子:IoTなどの新技術についてご説明します。ミシンメーカーから販売されているIoT機能付きミシンなどを積極的に導入しています。

スライド中央と右側の写真は、ハンガーラインと呼ばれる縫製ラインと、その管理端末です。これは、狭い意味でのインターネットにつながるIoTとは少し違いますが、縫製スタッフが座っているステーションと呼ばれる席ごとにセンサーが設置されており、IoTと同様に、正確に生産状況のデータを把握できます。

したがって、1日の終了を待つことなく必要に応じていつでも、生産状況の集計結果が得られ、タイムリーにボトルネック工程を解消して生産性向上を図ることができる仕組みです。管理端末のデータ内容は、日本の本社からでも確認できます。

2-2. 高効率な工場運営(3)–労働環境の整備-

金子:ここからは、当社グループの工場内の労働環境や地域社会とのつながりについてご説明します。効率的な工場運営の一部と考えていますが、同時に、当社グループのサステナビリティ経営の大きな柱でもあります。

はじめに労働環境の整備です。縫製工場は多くの従業員の労働により成り立っています。工場によって1,000人、2,000人、大型工場では3,000人、4,000人の方々が働いています。

清潔で快適な労働環境を提供し、従業員が活き活きと働けることが工場の生産性向上につながり、さらには収益力向上にもつながっていると考えています。

福利厚生にも力を入れています。スライドの写真のように、安全な食事の提供、託児所や医務室の設置により、従業員の方々に安心して働いていただけるよう努めています。

2-2. 高効率な工場運営(4)–社会とのつながり-

金子:当社グループは、いわゆる新興国、開発途上国に進出し、縫製工場を建設して運営しています。

最初はなにもないジャングルのような土地や、できたばかりで他社がどこも入っていないような工業団地に工場を建設しますが、そこに通勤する人たちが増えていくと、露店や商店、飲食店が立ち並び、近くに移り住む人たちも増えて少しずつ町になっていきます。

このように、工場周辺の地域社会とつながり、良好な関係性を築くことも効率的な工場運営には不可欠と考えています。

2-2. 高効率な工場運営(5)–従業員とのつながり-

金子:続いて人材登用、人材活用についてです。当社グループの海外工場では、現地人材を積極的に管理職ポストに登用しています。外国人の工場長や子会社社長もいます。工場内の管理職のほとんどはその国の方々で、現地女性の管理職もたくさんいます。

工場内の教育はもちろん、優秀な人材を日本に呼んで、縫製技術習得や日本語習得のための長期研修も実施しており、多くの方々が帰国後もリーダーとして活躍しています。

スライド左の写真で右側手前に座っている男性は、現地社長でミャンマーローカルの方です。

2-3. 新工場紹介(ベトナム・アンナム工場)

金子:ここからいくつかのスライドを使い、現在進行中の中期経営計画に沿って建設拡大を進めているベトナムとバングラデシュの新工場を紹介します。こちらの写真は、ベトナム・アンナム工場の空撮外観写真です。約10万平方メートルの土地に建つ、当社グループの中でも最大規模の工場です。

敷地面積は、よく比較対象としていわれる東京ドームでは約2個分、あるいはそれ以上に相当します。工場の奥に民家が、入り口付近にはトラックが写っていますので、大きさの目安にしていただければと思います。

2-3. 新工場紹介(ベトナム・アンナム工場)

金子:スライドの写真は、アンナム工場の内部です。大型工場であるため、大ロットのオーダーを高効率で生産することに特化したライン配置や、工場構成となっています。

写真からご確認いただけると幸いですが、他の工場と同じく、明るく清潔で空調の効いた快適な労働環境を提供しています。従業員が活き活きと生産性高く働けるように配慮しています。

照明が非常に明るく、現地でも空調がしっかりと効いています。当社グループの工場は、ベトナム、インドネシア、バングラデシュなど比較的暑い国に展開することが多いですが、従業員が快適な室温で働けるよう配慮しています。

2-3. 新工場紹介(ベトナム・アンナム工場)

金子:スライドは、同じくベトナムのアンナム工場の別の写真です。先ほど、高効率な工場経営についてご説明しましたが、そのハンガーラインを撮影した写真です。

先ほどご説明したとおり、ボトルネック工程の解消に役立ち、生産性向上に貢献していますが、実は縫製スタッフ一人ひとりの生産性向上についてもメリットがあります。

以前のハンガーライン以外の工場においては、スタッフが工程ごとに受け渡しを行う際、自分の作業が終わるたびに席を立ち、隣の方に製品(仕掛品)を渡す必要がありました。しかし、ハンガーで自動的にハンドリングされるため、スタッフにとっても目の前の縫製作業に集中できるという大きなメリットがあります。

2-3. 新工場紹介(ベトナム・タンチュオン工場)

金子:スライドの写真は、ベトナムのタンチュオン工場です。アンナム工場に比べると規模は小さいですが、高い技術力で高付加価値の商品を求めるお客さまのニーズに特化した工場となっています。

お客さまとしては、いわゆる百貨店ブランドや、セレクトショップからのオーダーをいただいています。

2-3. 新工場紹介(ベトナム・タンチュオン工場)

金子:スライドの写真は、タンチュオン工場の内部です。アンナム工場と同様に、非常に照明が明るく空調も効いており、快適な労働環境を整備しています。

2-3. 新工場紹介(バングラデシュ・IMBD工場)

金子:スライドの写真は、バングラデシュのIMBDという工場です。IMBDの「I」は、イシュワルディという現地の地名の頭文字になっています。

イシュワルディは、バングラデシュの西の方にあり、インド国境まで約50キロと国境に非常に近い場所にあります。逆に、首都のダッカからは車で約5時間かかる距離にあります。

我々は、ふだん広島県にいますので、例えば広島県からイシュワルディ工場に行く場合、飛行機を乗り継いで現地に到着し、その後車で5時間移動するため、移動にはだいたい24時間、あるいはそれ以上の時間がかかります。しかし、そのように日本から遠く離れた場所であっても、最近では中国などに代わる生産拠点を探しているお客さまが増えており、国内外のアパレルメーカーの来訪が増加しています。

2-3. 新工場紹介(バングラデシュ・IMBD工場)

金子:こちらの写真もIMBD工場です。IMBDもハンガーラインを導入しています。先ほどもご説明したとおり、バングラデシュやミャンマーなどの国では、より低価格でのものづくりを求めるお客さまからのオーダーが多いのですが、そのようなオーダーに対して、高効率かつ効率的に生産するためにも、このハンガーラインは貢献しています。

2-4. 安定成長を続ける生地加工事業 -事業概要-

金子:ここまでは、当社グループの主力である縫製事業に関するお話が中心でしたが、近年大きく業績を伸ばしている生地加工事業についてもご説明します。

当社グループにおける生地加工事業は、外部の繊維素材メーカーから調達したナイロンやポリエステルの生地に、自社で生産した透湿防水のフィルムを張り合わせることで、高い防水機能と蒸れを抑える透湿機能を両立させ、付加価値を高めるラミネート加工を行う事業です。

透湿防水生地は非常に汎用性が高いため、アパレル製品向けが主力ですが、メディカル用品や、最近では介護用品の分野にも需要があります。このようなメーカーにも納品しています。

2-4. 安定成長を続ける生地加工事業 -売上高-

金子:生地加工事業は、中国の「嘉興徳永紡織品有限公司」と、ベトナムの「JDT VIETNAM」の2拠点があります。現在は中国が主力工場ですが、ベトナムの工場も徐々に生産量と収益性を向上させています。

スライド下部のグラフは、四半期会計期間、3ヶ月ごとの販売ヤード数と売上高を示しています。前年同期比で販売量、売上高ともに増加しています。

2-4. 安定成長を続ける生地加工事業 -成長性-

金子:生地加工事業の成長性についてお話しします。はじめに、マーケットの状況です。生地加工事業の主要なお客さまは、アウトドアやスポーツウェアのメーカーですが、近年ではそのようなお客さまが販売する製品がもともとのアウトドアでの利用だけではなく、タウンユースが定着してきています。

また、Eコマースを中心とした販売網の拡大や普及により、四半期ごとの販売量や売上高に差が見られた部分が少しずつ緩和され、年間を通じて生産の平準化と売上伸長が実現しやすい環境が整ってきています。

主要なお客さまとしては、売上高1兆円企業であるフランスのDECATHLONをはじめ、lululemon、Columbiaなどの欧米の大企業が中心で、縫製事業とは異なる販売網を築くことができています。

非常に大きな会社であるDECATHLONは日本にも進出していますが、日本に住んでいると、あまり馴染みがないかもしれません。しかし、ヨーロッパでは非常に多くの店舗網を築いており、身近なところでは中国にも多くの店舗を展開しています。

また、これらのお客さまと緊密に連携することで、求められる高機能素材の開発や環境規制を遵守した生産方法の研究を進め、その成果を実際にお客さまに提供、提案できていることが、信頼獲得につながっていると考えています。

3-1. 外部環境の変化と顧客要請の高まり

金子:当社の成長戦略について、現在取り組んでいる中期経営計画を基にお話しします。

当社グループは、2022年3月期から2026年3月期までの5年間を対象とする中期経営計画を進めています。現在の進行期が4年目になります。少し前の話になりますが、主にコロナ禍をはじめ、地政学的な問題やサステナビリティに関する対応ニーズから、ビジネス環境や消費者のみなさまの動向が大きく変化しています。

コロナ禍や政変などの影響で、世界のサプライチェーンは一時的に大きく寸断されました。それにより、当時、当社グループのお客さまであるアパレルメーカーでは、企画された商品の入荷が大幅に遅れたり、生産地の変更を余儀なくされることが多発しました。

そのため、「欲しいときに欲しいものを欲しい量、調達したい」というニーズが、これまで以上に高まってくると感じていました。

3-2. 中期経営計画「ビジョン2025」

金子:そこで当社グループは、中期経営計画「ビジョン2025」として、「あらゆる服づくりの舞台裏に私たちがいる」を掲げています。当時、コロナ禍でしたが、不確実性の高い環境下においても、お客さまのすべてのニーズにお応えするべく、積極的な工場投資とさまざまな改革を推進しました。

3-3. 中期経営計画の位置付け

金子:中期経営計画の基本方針は、スライドのとおりです。2023年3月期までの2年間をアフターコロナへの準備とした第1期としており、この期間は昨年の3月に終了しました。

現在は第2期に移行しています。第1期の2年間では、コロナ禍においても工場建設による生産能力の拡充を進め、計画どおりに完成させることができました。現在は2026年までの3年間の第2期が進行中です。

アパレル需要は当初の想定どおり、コロナ禍も収束して回復してきています。現在は拡大した生産能力を実際の需要にマッチさせ、新たな成長を実現していくことを進めています。

3-4. 基本戦略

金子:基本戦略と重点的な取り組みおよび課題です。3つ掲げており、最も大きな柱は、「サプライチェーンの更なる多元化推進と、『良質なものづくり』の一層の強化」です。

柔軟で強靭なサプライチェーンを整備、拡大すること、すなわち新たな工場建設と生産地のシフトによってお客さまのニーズにお応えしようとしています。中国からASEAN諸国等へ生産地をシフトすることで、コスト競争力の強化と収益力の向上も目指しています。

第1期で予定していた工場投資と工場建設は完了しており、収益性の向上に向けた準備は整っています。昨年、今年とその成果が徐々に出てきていると考えています。

また、生地加工事業を中心に、新素材開発および新たな製品開発への取り組みを推進しています。主力の縫製事業では、OEM事業における営業力の強化も進めていきます。

3-5. サプライチェーンの更なる多元化推進と、「良質なものづくり」の一層の強化

金子:「サプライチェーンの更なる多元化推進と、『良質なものづくり』の一層の強化」という一番大きく掲げている目標に向けて、建設が完了したベトナムおよびバングラデシュの工場を基盤とし、競争優位性のあるASEAN諸国等への生産地シフトを進めながら、生産能力の拡大に取り組んでいます。また、生産国別の売上高比率をKPIとして捉えています。

2022年3月期では、中国生産における売上高とASEAN諸国等での生産による売上高が、ともに50パーセントであり、約半分ずつという状況でした。これが今回の中期経営計画当初の数値です。

この比率を、最終年度である2026年3月期には、ASEAN諸国等での生産を71パーセントまで拡大し、中国の生産を一定程度維持しつつ、29パーセントに縮小したいと考えています。現在は計画の中間地点にあたる2024年3月期ですが、おおむね順調に進んでいると認識しています。

kenmo:生産拠点のシフトに関して、いくつかご質問したいのですが、足元はベトナムが増加しており、今後はバングラデシュが伸びていく計画のように見受けられます。こちらは人件費などのコスト的な要因が大きいのか、品質や人材確保といった他の要因もあるのか、その点についてお聞かせいただけますでしょうか?

金子:当社グループの縫製事業は、多くの従業員に支えられています。おっしゃるように人件費の影響もありますが、それ以前に労働力をしっかりと確保できることが非常に大きな要素となっています。

そのため、縫製工場で働いていただける人材を確保できる国を探すと、やはりベトナムやバングラデシュが中心となっています。

さらに最近では、貿易摩擦などの問題も影響しています。これまで縫製工場や縫製事業の主力であった中国で生産した製品を北米地域に送り込むことが次第に難しくなってきています。

その結果、お客さまのニーズとしても、以前は中国生産のものが多かったのですが、今は次の生産拠点として、ベトナムやバングラデシュにお声がけをいただくことが多くなっています。そのニーズとマッチして、生産力が増えている状況になっています。

kenmo:「海外、特にASEAN諸国に工場を立ち上げるにあたって、日本から人材を送り込むことは、どのぐらいされていますか?」というご質問をいただいています。

金子:まず、工場の立ち上げのタイミングでは、現地の工場の社長や経営者、あるいは幹部を数名、送り込んでいます。ただし、基本的にはローカルの幹部や経営者を育てていく施策をどんどん進めているため、少しずつ人数を減らしていくのが通常となっています。

縫製技術の指導員としては、日本人の技術指導員もまだいますが、我々は90年代から中国で工場を運営しているため、実は中国にも技術指導ができる優秀な人材がたくさんいます。したがって、そのような人たちの力も借りながら、新興国での工場立ち上げを進めています。

3-6.定量目標売上高700億円、経常利益42億円の実現

金子:こちらは、これまでお話しした中期経営計画の定量目標です。2022年の計画数値発表当初は、最終年度2026年3月期の目標を売上高700億円、経常利益35億円としていました。

これに対して当社グループは、今年2024年の5月14日に、最終年度の経常利益の目標を、スライドのとおり、当初の35億円から42億円に引き上げるかたちで変更しました。

こちらの経緯としては、もともとの中期経営計画では、ASEAN諸国に工場をシフトしながら、収益性、利益性を改善していく施策を進めていましたが、この成果が思ったより少し早く出始めているため、利益目標を引き上げています。

なお、現在はグラフの右から2番目の進行期にあり、発表済みの2025年3月期の業績予想は、売上高670億円、経常利益44億円としています。

ただし、このままですと、経常利益ベースで来期減益になってしまうため、来期2026年3月期の計画、業績予想については現在、社内で作成、検討中です。変更がある場合には適時にご報告したいと考えています。

3-7. 配当方針

金子:最後に配当方針です。今年2024年の11月13日に、当社グループの取締役会にて、配当方針の変更と、それに伴う配当予想の変更を決議しました。

新たな配当方針では、事業の持続的成長のための新規投資や、財務の健全性、あるいは経営環境の変化に耐え得る経営基盤充実のための内部留保とのバランスを、総合的に考慮し、連結配当性向30パーセントを目安に、経営成績に応じた配当を行うことを基本方針としました。

これまでも、増収増益に合わせ、徐々に増配を検討していくことを発表していましたが、前期、今期と、増収増益が実際に数字として表れ始めたことから、このタイミングで、配当性向30パーセントを目安とする配当方針に変更しています。

新たな配当方針により、今期2025年3月期の配当については、従来の1株当たり60円から30円増配の90円として、最新予想を発表しています。

私からのご説明は以上です。以降のスライドはAppendixとなっており、別途ご確認いただければと思います。

質疑応答:コストの足元状況と今後利益を確保していくための施策について

kenmo:やはり一番気になるのは足元の人件費の高騰や原材料価格の高騰です。まずコストについて、足元の状況と、そのような高騰がある中で、今後利益を確保していくための施策について教えていただけますか? 

金子:私どもはいわゆる新興国に工場を建設し、そこで工場を経営しているため、人件費が徐々に上がっていくことは避けることが不可能で、常について回る課題と認識しています。

対策としては、先ほどスライドでもお見せしたように、生産性向上のための機材は、常に新たなものが開発されています。そこでそのような最新の機材を積極的に導入して、生産性を高めることで、コストをいくらかでも吸収できる体制を常に目指しています。

原材料費についても、ご指摘のとおり、世の中でいろいろな場面で原材料の価格が上がっており、その状況は、我々のアパレル業界や縫製事業でも同じです。

その中で、我々の事業にはビジネスモデル上、アパレルOEMといった特性があります。いったん原材料、生地素材を購入しますが、この購入する生地素材はお客さまの企画によって「この生地を買ってくださいね」とご指定いただくという、実はある意味、指定代理購買のようなかたちで購入しています。

したがって、この生地自体の価格が上がった時には、基本的にはお客さまがそれを負担される構造となっており、我々自身のリスクは非常に低いものとなっています。

そのような構造があるため、反対に我々も、連携している生地素材メーカーなどとよりいっそう情報交換を進めながら、お客さまが求める品質であり、かつ、もう少し安い生地や、さらにはより機能性の高い付加価値のある生地を、こちらから企画提案しています。

そうすることによって、お客さまにとっても非常にメリットがあるかたちで受注をいただいたり、値決めが少し有利に働いているという状況が生まれています。そのような活動もしながら、利益を確保しています。

質疑応答:競合他社の状況とマーケット環境について

kenmo:スライドの26ページに、「環境変化への対応力があり、信頼できる縫製工場へのニーズが高まっている」という記述がありました。そこであらためてのご質問ですが、御社の競合として、どのような企業があるのでしょうか?

また、マーケット環境全体では寡占化が進んでいる状況なのか、それともプレイヤーがまだまだ増えている状況なのか、そのあたりについてもお聞かせいただけますか? 

金子:競合他社としては、例えば、日本のアパレルブランドやメーカーがどこに縫製品の発注を出すかを考えると、我々のような縫製事業を専業で行っている会社は、国内では他に大きなところは、あまりありません。

商社にお願いされて、商社のネットワークの中の縫製工場に二次請けで作られるようなケースが多くなっています。

そのため世界に目を向けると、例えば中国やアジア圏内には、我々より大きな縫製工場、縫製事業もあり、当社グループとしては、そのようなところが競合相手になってきます。

もう1つのご質問にあるマーケット環境については、データでお示しできるものではないのですが、コロナ禍によって一時的にサプライチェーンが非常に混乱したため、長年縫製工場を経営していた企業が、ある意味で辞める、廃業するというケースが、実は徐々に出てきています。

そのため、そこを勝ち残った、生き残った企業に対する引き合いが増えてきている状況ですので、「寡占化ですか?」というご質問に対しては、少しずつプレイヤーが減ってきている状況だと認識しています。

質疑応答:アパレルメーカーからの要求に品質面やコスト面で対応できている理由について

kenmo:アパレルメーカーからは、品質面やコスト面について、さまざまな要求があると思います。その中で御社がアパレルメーカーの信頼を勝ち得ている理由、あるいは、そのような要求に十分に対応できている強みについて、もう少し教えていただけますか? 

金子:こちらはやはり我々のネットワーク、生産拠点網の対応力があり、コンテンツが多いといったところが、いろいろなお客さまにご支持いただいている理由ではないかと考えています。

当社グループは、5ヶ国で協力工場を含め14の工場を運営しています。そのため、国によっては当然、さまざまなコストに対応できる環境があり、いろいろな工場でシャツ、ジャケット、パンツなどあらゆるアイテムに対応できる複数のラインを取り揃えています。

これにより、アパレルメーカーからの要望に応じられるだけのメニューの多さ、あるいは対応力の柔軟性があり、これが、支持していただける理由だと認識しています。

質疑応答:地球温暖化による季節変化のずれが及ぼす影響とその対策について

荒井沙織氏(以下、荒井):「アパレル業界で共通した問題として、地球温暖化による季節変化のずれが衣料品の売上に影響を及ぼすようになったと感じています。これについて御社ではどのように分析されているでしょうか? 対策についても教えてください」というご質問です。

先ほど「ECが取り入れられたことにより、ばらつきがならされてきた」というお話はあったのですが、それを踏まえても、「夏が長いです」というような季節変化のずれがかなりあると思いますので、どのように考えていらっしゃるのか教えてください。

金子:この問題は、我々縫製工場よりも、どちらかというとお客さまが考えられている部分もあるかと思います。季節のアイテムの取り揃え方、あるいは販売のボリュームを変えているお客さまも、すでにいくつか出てきています。

従来アパレル業界では、春夏より秋冬のほうが、アイテムの数も多く単価も高く、商売的には販売量、ボリュームが大きい傾向がありました。

それが、ご指摘のとおり非常に暖冬で、冬がないような状況になってきているため、例えばすでに大きなお客さまでは、できるだけ春夏で売上を取るようにボリュームを変えていこう、季節性の変動を平準化していこうという動きが出てきています。

我々縫製工場としては、その中でも共通のアイテムといったものはあります。例えばボトムスやシャツは、秋冬と春夏で素材が違っても作るものは同じですので、そのようなところには十分に対応できるものと考えています。

質疑応答:PBRを今後改善していくための対策について

荒井:「PBRは1倍を大きく割れていますが、今後改善していくための対策について、時間軸を含めて教えてください」というご質問です。

金子:PBRについては、現在0.5倍台で、投資家のみなさま、株主のみなさまに大変ご心配をおかけしているものと認識しています。時間軸まではっきりお伝えできない部分もありますが、PBRをROEとPERに分解して考えると、我々は今回の中期経営計画で工場建設を実施して、現在一時的に投下資本が非常に大きく膨れ上がっている状況です。

そのため、当社グループとしては、この資本を活用し、リターンの部分、すなわちROEの「R」を大きくしていくことによって、収益率を改善していきます。こちらがまず本業においての1番の課題と考えています。こちらを進めることで、前期から当期にかけて、少しずつ改善ができてきていると認識しています。

一方でPERが現在6倍台で、我々の従前の数値に比べても残念ながら低迷している状況です。

こちらについては、特に為替変動が激しいここ数年の環境下において、我々の連結PLの数字の見え方について、「少しわかりにくくなっている」「ビジネスモデルが難しく感じられている」といったお声をいただくことも増えてきています。

そのため、本日このような機会に参加させていただいたように、今後も積極的なIR活動をとおして、我々のビジネスモデルや、あるいは将来の利益をどれだけ積み上げていけるかといった見通しをしっかりと丁寧に説明させていただくことで、PERを引き上げていきたいと考えています。

1つだけ補足で説明すると、例えば今、新たに設立したベトナム、バングラデシュの工場については、最大生産能力の半分程度の稼働にとどまっており、増産余力をまだ持っています。

したがって来期、再来期にわたって、売上と利益を積み重ねていけると考えています。そのような新設工場のポテンシャルも十分にご説明し、実績として積み重ねていくことで、PBR1倍に向けて邁進していく所存です。

荒井:個人的には最初に見せていただいた工場の写真がとても快適そうな環境で、消費者として安心し、うれしいと思いました。

金子:ありがとうございます。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:今後の生産拠点として着目している国や地域はあるのでしょうか?

回答:現在、新たな生産拠点として具体的に進出を検討している国はありませんが、マーケットの状況や将来予測、お客さまのニーズ等から検討していきます。

直近の状況としては、一昨年新設したベトナムとバングラデシュの工場を、最大生産能力での生産に向けて拡大している途上であり、それを優先しています。

<質問2>

質問:工場のラインの整備は現地の社員が行っているのでしょうか? それとも日本から専門の社員を派遣しているのでしょうか?

回答:工場立ち上げの際は、日本や中国から人材を派遣してラインを整備しています。先行して稼働しているベトナムやミャンマーの既存工場の拠点長や幹部社員が指導に入ることもあります。

工場現地人材の教育が進んだ後は、徐々に派遣人材を減らしたり、常駐から巡回指導に切り替えたりしています。

<質問3>

質問:現地人材の採用をかなり積極的に行っていますが、管理職まで現地人材にすると、教育にかなり手間がかかると率直に思いました。日本人を管理職として海外に行かせることは考えていないでしょうか?

回答:現在、ほとんどの工場には、日本人の社長や経営幹部が派遣されており、工場経営や日本の上場企業としてあるべき管理監督を担っています。一部、ミャンマー子会社の社長は現地人材ですが、当社社歴が長く、これらを任せられる人物です。

一方で、現場の管理職については、ほとんどが現地人材です。これは、当社工場進出国には日本とは異なる文化や宗教、慣習など、現地特有の環境や事情があり、これらを理解している現地人材を登用することが、円滑な労務管理やモチベーション向上に有効であるためです。

<質問4>

質問:チャイナリスクを考慮して生産拠点を少しずつ他の国に移す計画はあるのでしょうか?

回答:既に中国からASEAN諸国等への生産拠点シフトを進めています。スタートは2004年のミャンマー進出であり、20年以上かけて実施しています。さらには現在の中期経営計画でベトナムおよびバングラデシュに新工場を建設し、移転を加速させました。

<質問5>

質問:工場のある国で政変等が起こった場合、有事の際の対策はできているのでしょうか?

回答:当社グループでは、生産拠点を中国、ミャンマー、バングラデシュ、ベトナム、インドネシアの5ヶ国に分散させ、一国でのリスクが全体に及ばないようにしています。有事の際には、生産国の振り替えを行うことで生産活動を維持できる体制が整っています。

また、従業員の安全管理に関しては、工場と日本本社とが、連絡網と複数の連絡ツールで常時連携しており、迅速に対応できる体制を整備しています。加えて、現地の政府機関や他の企業との連携を強化し、情報共有と協力体制を築いています。

配信元: ログミーファイナンス

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