【QAあり】神戸天然物化学、有機合成、バイオ技術を強みに幅広い分野で顧客を支援 設備投資による売上高30%引上げを目指す

投稿:2024/12/26 17:00

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真岡宅哉氏(以下、真岡):神戸天然物化学代表取締役社長の真岡宅哉です。本日はご多忙の中、当社会社説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。

当社の事業内容や強み、今期の見通し、事業戦略や今後の成長方針についてご紹介します。

会社概要

真岡:まずは、会社概要と当社のビジネスについてご説明します。神戸天然物化学を一言で言うと、夢や希望のあるサイエンスを楽しむ「プロの科学者(サイエンティスト)集団」です。

当社は、有機合成化学技術やバイオ技術に強みを持ち、幅広い産業分野において、顧客の研究開発および量産ステージに合わせた、さまざまなソリューションを提供しています。

当社は、創業者かつ当社の最高顧問でもある広瀬氏を含む、有機合成の専門知識を有する3名の化学者によって1985年に創業されました。

「長年培った天然物合成や化学分野での知見を活かした化学の会社を創業したい」と考えた創業メンバーは、当時も日本でブランド力があった神戸を本社とし、「神戸天然物化学」という社名で事業をスタートさせました。

創業当初は、化学会社や製薬会社を訪問し、「何かお役に立てることや、お手伝いできることはありませんか?」と積極的に訪問・提案を行うことから始めました。

その中で、ある企業から「研究開発、特に化学合成分野のサポートをお願いできないか?」という依頼を受けました。それがきっかけとなり、現在まで続く、研究開発型の受託企業としてのビジネスモデルが確立されました。

神戸天然物化学の事業概要と特徴としては、有機合成化学技術とバイオ技術を活用し、電子材料や医薬品の研究開発および量産まで、幅広い範囲で顧客の支援を行う「モノづくり」企業であることです。

現在、従業員は300人を超えます。兵庫県の神戸市、市川町、島根県出雲市に研究所および生産拠点である工場を有し、神戸と東京には営業拠点を設置しています。

私たちの目標

真岡:経営理念である、私たちの目標についてです。先ほど、「当社を一言で言うと『プロの科学者集団』である」とお伝えしました。

1985年の創業時に、創業者の広瀬氏が掲げた経営理念である「私たちの目標」の第1条に「私達は科学技術を基礎とし、」と明記されていることも、そのゆえんとなっています。

また、昨年6月の社長就任時に、私は社員に向けて「『サイエンスを楽しむ企業』を目指す」と宣言しました。こちらも同様に、「私たちの目標」の第1条にある「私達は科学技術を基礎とし、」がゆえんとなっています。

神戸天然物化学のビジネス_1

真岡:当社のビジネスについてご説明します。「神戸天然物化学は何を行う会社?」「神戸天然物化学の仕事内容がよくわからない」と、少なからずご質問をいただきます。

当社は、有機合成技術やバイオ技術を利用し、電子材料や医薬品の研究・開発・量産ソリューションを提供している企業です。

有機合成技術とは、異なる有機物AやBを組み合わせ、新しい有機物Cを生み出す技術です。有機合成技術は、みなさまの身近な医薬品、電子材料、農薬、化粧品など、多くの分野で利用されています。

バイオ技術は、遺伝子組み換え微生物の培養・精製によって、たんぱく質、酵素、ペプチド、生理活性物質などを生産する技術です。グリーンケミストリーの代表であるバイオ技術は、今後ますます幅広い分野で利用されていくだろうと思います。

近年では、日本政府もバイオモノづくり分野に多額の投資を行っており、高い成長性が期待され、注目もされている分野です。

併せて、当社では、バイオ技術で得られた中間体から有機合成技術を用いてさらに新たな製品を生み出す、バイオ技術と有機合成技術を用いたコラボレーションサービスの提供も可能です。

国内の受託企業で両技術を保有する企業は少なく、当社のビジネスの特長となっています。

神戸天然物化学のビジネス_2

真岡:当社の顧客についてご説明します。

主要な取引先には、国内大手企業をはじめ、化学メーカー、製薬メーカー、繊維メーカー、ベンチャー企業、さらにはアカデミアなど、多岐にわたる業種が含まれています。また、さまざまな顧客の課題解決に、モノづくりを通じて貢献しています。

一般的に、これらメーカーの研究開発の課題には「ハイリスク・ハイリターン」「自社の強みを最大化」「資本効率を改善」などがあります。

例えば、顧客は自社で大型の専用設備や工場従業員などを保有することを避け、外部に委託する分業化の傾向が強くなっています。

このような分業化は、顧客の固定費を削減し、変動費化することで投資効率を改善させます。また、固定資産を圧縮することで資本効率も改善することを狙っており、外注委託のニーズは高まっています。

神戸天然物化学のビジネス_2

真岡:当社が提供しているソリューションビジネスについてご説明します。当社は、研究および開発から量産ステージまで、一貫したサポート戦略をとっています。研究および開発から量産までを一貫して対応できる体制が、顧客との長期的な関係構築につながってきています。

同業他社には、有機合成での研究ステージの受託のみを行う会社や、量産ステージのみを受託する会社などがあります。しかし、基礎研究のステージから量産ステージまで対応する受託企業は少ないです。

当社は有機合成技術のみならず、バイオ技術を用いた基礎研究から量産ステージまで対応できる受託企業であることが特徴です。有機合成およびバイオ技術を用いて研究ステージから量産ステージまで対応するのは、世界でも限られた企業のみとなっています。

また、研究ステージと量産ステージを結ぶ開発ステージでは、プロセスの開発やスケールアップといった、高度な技術と豊富な経験が必要です。プロセス開発やスケールアップは、量産ステージに進むために大変重要なステージとなります。

開発ステージでのスケールアップは、単に反応容器を大きくすればいいというものではありません。安全性、品質、コストに優れたプロセスで製品を製造し、関係する法令や規制に従う製造プロセスを作る必要があります。

スケールアップについては、総合力としての化学技術が求められます。開発ステージの良し悪しは、量産ステージでの品質および生産の安定性、コストなどにも影響します。

技術立社を目指す当社は、引き続き、研究および量産ステージのビジネスを拡大するためにも開発ステージの強化に努めていきます。

神戸天然物化学のビジネス_3(サプライチェーン)

真岡:スライドの図は、サプライチェーンでの当社のポジションを示しています。当社は電子機器や医薬品などの供給業者として、サプライチェーンの上流で活躍しています。

受託企業として、業界での知名度は上がってきていますが、一般の方には当社の知名度が低い要因は、このあたりにあると思われます。

神戸天然物化学のビジネス_4 (高付加価値の追求)

真岡:当社の高利益の源泉についてご説明します。スライドに記載したとおり、高付加価値を追求するために、価値創造へのこだわりを持っています。

高利益の源泉で注目していただきたいポイントは、当社が「プロの科学者集団」として、科学技術を通じて社会に貢献することを理念とし、成長している点です。

高い技術力を用いた生産力、顧客とのコミュニケーション、柔軟でスピーディな対応力、生産工程改善などを含めた提案力、納期厳守の徹底、厳しい品質管理体制の運用などです。

当然のことと思われるかもしれませんが、高いレベルでこれらを維持するのは、いずれも簡単なことではありません。高利益の源泉となるため、社員への教育も含めて今後も徹底していきます。

また、例えば医薬品の開発においては、患者の病気を支える仕事に携わり、低分子からペプチド医薬や核酸医薬と呼ばれる中分子、バイオ技術を活用した高分子まで、幅広くサポートを行っています。

機能材料分野では、私たちの日々の生活において必要不可欠な半導体やディスプレイなどの分野で、重要な役割を果たしています。バイオ分野では、これから国を挙げて取り組もうとしているバイオモノづくりに貢献する研究開発や、量産能力を保有しています。

このように幅広い業界に対して価値を創造し、提供を可能としているのは、タイムリーな設備投資および人的投資の実行であると考えています。

当社は、成長のため、ならびに高い付加価値を追求するための投資は惜しみません。そのような投資スタイルも、付加価値経営を推し進める上で重要だと考えています。

日根野健氏(以下、日根野):メーカーのリソースについて、基本的には「メーカー自身が研究開発に注力する」というお話がありました。一方で、御社に外注したり委託したりするニーズもあるのでしょうか? 

真岡:おっしゃるとおり、研究開発ステージにおける引き合いも非常に多くあります。メーカーはシード探索などに力を入れ、当社にはモノづくりのパートを依頼する、という棲み分けをしているため、研究開発のステージでも当社への引き合いは多い状況です。

それは、当社がこれまで培ってきたスピードと対応力、そして実績を評価していただいているからだと思っています。

日根野:量産化までを視野に入れると、比較的初期の段階から神戸天然物化学に関わってもらうほうが良い、というイメージですか? 

真岡:そのように思っていただいていると認識しています。

売上高推移

真岡:売上高推移についてご説明します。スライドのグラフでは、1985年2月の創業からの約40年弱の推移を示しています。

この中で転換期となったのは、創業から16年が経過した2001年です。それまで生産拠点は兵庫県に限定していましたが、島根県出雲市に出雲工場を設立しました。

BCP(事業継続計画)の観点から、他県での工場設置を検討する中、有機合成による量産可能な大規模な工場がなかった島根県から熱意あるオファーを受け、出雲工場の開設を決定しました。

出雲工場の設立により、研究開発のみならず、有機合成の量産体制を強化し、研究・開発・量産といった多様な顧客ニーズに対応できるようになりました。

また、新卒および中途で有機合成を専門とする化学者の新規採用を行ったり、出雲市の消防署から危険物訓練の依頼を受けたりするなど、地域全体に大きな影響を与えるプロジェクトとなりました。引き続き、地域密着型企業として、島根県出雲市との深い関係構築を図っていきたいと思っています。

2005年には、神戸市に「KNCバイオリサーチセンター」を設立し、有機合成化学技術に加え、バイオ技術を活用した分野にも進出しました。これにより、研究開発分野の幅を広げ、より多様な顧客ニーズに応える体制を整えてきました。

続いて、リーマンショックと上場についてご説明します。事業は順調に推移してきましたが、2008年に発生したリーマンショックの影響により、顧客が新規投資を控え、一時的に研究開発の受託が停止しました。

しかし、その時点で出雲第二工場の開設は進行していました。第一工場では医薬品の原薬および中間体、第二工場では機能性材料、具体的には半導体向けのフォトレジストやディスプレイ向けの材料の量産体制に向けて、準備を進めている段階でした。

リーマンショックでは、量産能力が不十分だったため、売上は3割も落ち込みました。しかし、社内組織の再編やコスト削減などの事業改革を行い、この危機を乗り越えることができました。

その後、さらなる事業拡大のために上場を目指し、社内では上場プロジェクトが立ち上がりました。当時は営業本部長であった私も、プロジェクトメンバーとして上場準備に奔走しました。

当社は研究開発型の受託ビジネスの成長を常に考えていたことから、東証マザーズ市場、現在の東証グロース市場での上場を選択しました。そして着実に業績を伸ばし、2018年に上場を果たすことができました。

昨年度は過去最高の売上高91億5,000万円を達成し、100億円の売上も目前となってきています。

強み_1 ステージアップグロースモデル

真岡:当社の強みについてご説明します。はじめに、事業における優位性「ステージアップグロースモデル」についてご説明します。

当社は、ステージアップグロースモデルというかたちで、顧客の研究開発の各ステージに合わせたビジネスを展開しています。

このユニークなビジネスモデルによる一貫したサポート体制を構築していることで、顧客の細やかなニーズに臨機応変に対応しています。

また、当社のようなビジネスモデルは業界内でも少なく、本ビジネスモデルを運用している上場企業はないことから、業界内でも独自のポジションを築いています。

強み_2-1 3つの事業領域(分野区分)

真岡:当社の強みの2点目です。当社の事業は、機能材料分野、医薬分野、バイオ分野の3つの主要領域で展開しています。

機能材料分野では、半導体製造プロセスに必要なフォトレジストや、ディスプレイ用の特殊な材料の製造を行うことが可能です。

医薬分野では、医薬品の研究開発や臨床試験に必要な原薬、中間体、上市品の製造を受託しており、これまでに多数の製薬会社に対して新薬の上市を支援してきました。

バイオ分野では、微生物等を利用した高分子材料の生産技術を活かし、バイオモノづくりの基礎研究から量産までサポートしています。

あわせて技術面では、有機合成技術とバイオ技術を有しており、両方の技術が必要なプロジェクトについては、当社の特徴が活かされることになります。

強み_2-2 3つの事業領域(分野リスク分散)

真岡:事業領域の分野リスク分散についての強みです。6年前の上場時の売上比率は、機能材料分野と医薬分野がそれぞれ5割弱、バイオ分野は1割未満でした。

新型コロナウイルス期を経て、バイオ分野や医薬分野は追い風に乗って成長しました。2023年度は医薬分野の製品構成の好調もあって全体の5割近い売上となり、バイオ分野は2割ほどまで成長しました。

この事実から、各事業部のリスク分散が進捗していると認識しており、後半にご説明する現在建設中の設備が稼働すれば、さらにリスク分散が進捗するだろうと考えています。

日根野:機能材料分野、医薬分野、バイオ分野と大きく3つの分野がありますが、特に医薬分野に注力してきた、あるいはこれからも注力していくと捉えて良いのでしょうか? あるいは、どの分野にもバランスよく注力していくのか、どのようにお考えですか?

真岡:もちろん、当社は医薬分野に力を入れていますが、本当の意味でのリスク分散としては、機能材料分野とバイオ分野にも当然ながら力を入れていきたいと思っています。

日根野:バランスよくリスク分散させていく予定であるということですね。

真岡:ご質問のとおり、当社としては、機能材料から医薬まで多様な分野に展開することで、ある分野が低迷しても他分野でカバーできる体制を築いています。併せて、各事業が極めて成長性の高い市場であることが、当社の優位性につながってきています。

強み_3-1 顧客との関係性強化(プロセス)

真岡:強みの3点目は、顧客との長期的な関係性を構築するプロセスの重要性についてです。

特に大手製薬企業や化学メーカー、電子材料メーカー等を中心に、多様な顧客との取引があります。当社は顧客ニーズに基づいたサポートを続けてきたことで、10年を超える取引関係は全社売上の8割以上となっています。

強み_3-2 顧客との関係性強化(顧客基盤)

真岡:顧客基盤での強みについてご説明します。

近年では、1社あたりの売上規模も拡大傾向にあります。先ほどご説明したステージアップグロースモデルの確立により、顧客との信頼関係の構築が深まり、国内トップ規模の化学・医薬品メーカーとの取引が大半を占める状況です。

このように、当社では顧客との信頼に基づく関係性を築くことで、安定的な受注を確保しています。

強み_4‐1 研究開発 (社外機関との共同研究など)

真岡:強みの4点目として、研究開発についてご説明します。研究開発について、国家プロジェクトへの参画、アカデミアや企業との共同研究、そして独自の研究開発など、研究開発にも積極的に投資しています。

そして、製造業の真髄である研究開発は、当社にとっての原点でもあり、長期的な成長において重要な役割を果たしています。

最近では、アカデミアと共同で開発した抗がん剤の臨床試験を進めるなど、アカデミアと企業の知見を融合させたプロジェクトが多数進行中です。

このように、アカデミアの先生方や国の機関と協力しながら研究開発を進めており、多くの特許取得にも成功してきています。

当社は、将来的にこれらの特許を利用し、製薬会社や化学会社とのライセンス契約を通じて収益を上げることが期待できますが、単なる受託会社ではなく、新たな価値を創造する夢のある仕事ができる会社として魅力的であると考えています。

創業者の広瀬氏が掲げた企業理念の中で「科学技術を基礎とする」と明確に定められているように、当社には科学に対する熱意があるメンバーが集まっています。

強み_4-2 研究開発(神戸天然物化学にとって研究開発とは)

真岡:当社の研究開発にかける思いについてご説明します。

当社では、「研究に強い、開発力のある神戸さんだから」と、モノづくりを通じて顧客の課題解決に貢献するために、また、新規案件や新規顧客とのご縁を多くいただけるように、社員一人ひとりが専門性を高めながら、サイエンスを楽しみながら、研究開発に積極的に取り組んでいます。

外部環境

真岡:外部環境についてご説明します。スライドのグラフのとおり、分業化の流れはより顕著になってきていることから、引き続き追い風を感じています。

また、今後、成長が大きい市場に対しては、チャンスを逃がさないためにも、設備投資および人的投資を積極的に進めていきます。

売上成長の長期トレンド(10年)

真岡:当期の見通しと中期的な見通しについてご説明します。はじめに、売上成長の長期トレンドについてです。

当社の成長において、設備投資によるキャパシティ拡大は必須です。当社は歴史的に、成長期とキャパシティ拡大期が交互に発生する特徴があります。今期は、生産能力拡大に重点を置いたキャパシティ拡大期の位置付けとなっています。

経営指標

真岡:経営指標のご説明です。当社は高付加価値の追求手法として、利益を採用しています。

先ほどご説明したとおり、2020年3月期、2021年3月期などのキャパシティ拡大期には、経常利益率を10パーセント程度まで下げることがありましたが、V字回復し、直近2年では30パーセントを超える高い数字となっています。

この背景には、新型コロナウイルスによる業績悪化を分岐点として、顧客の分業化がさらに進み、サプライチェーンの見直しが行われた結果、国内回帰が一部発生している追い風も受けたためと認識しています。

日根野:利益率の推移を見ると、非常に顕著になっています。先ほどのご説明のとおり、グラフ上で経常利益率10.2パーセントとなっている2020年3月期は、キャパシティ拡大期でもあったということですか?

真岡:そのとおりです。

日根野:償却が進んでいくと、利益率も上がっていくと理解してよろしいですか? 

真岡:そのとおりです。工場がフル稼働になっていくため、そこで再び売上利益が得られていくビジネスモデルになっています。

日根野:工場ができたからといって、すぐにフル稼働になるわけではありませんからね。

真岡:もちろん、最大限フル稼働を目指してがんばっています。引き続き、高い利益・利益率を維持していけるよう、社員一同、知恵を出し合い、対応していきたいと思います。

25/3期 見通し

真岡:2025年3月期の見通しです。今期の見通しは、残念ながら減収減益を見込んでいます。原因としては、医薬分野での分納や、医薬分野での設備増設に伴う溶媒タンクの新設による、製造ラインの一時停止が影響しています。

利益については、中長期的なキャパシティアップを狙った人件費や先行投資が損益を圧迫することとなります。

設備投資計画

真岡:設備投資計画についてご説明します。当社は成長戦略の一環として、継続的かつ計画的な設備投資を行い、各分野での競争力強化を図っています。

現在、KNCバイオリサーチセンターに約27億円をかけ、原薬製造棟を建設中です。同時に、出雲第二工場に約26億円をかけ、機能性材料の低金属対応製造棟を建築中です。

KNCバイオリサーチセンターにおいては、特定の顧客からの依頼に基づいたものであるため、2026年1月の稼働後は早期に売上増加につながることを期待しています。

また、出雲第二工場の設備投資は、特に半導体製造に欠かせないフォトレジスト材料の生産力強化を図っています。具体的には、2,000リットルから5,000リットルの大型反応釜を新設し、大量生産が可能な体制を整えています。

この新設備が高い純度と品質を確保し、量産化のニーズに応えられるようになっており、製造過程における金属含有量の厳格な管理など、業界基準を上回るppbオーダーの品質管理を実現することとなります。ppbオーダーとは、50メートルプールに1滴の目薬を垂らしても検出できる単位です。

なお、現在、機能材料分野における顧客は国内が中心となっています。今後はアジアなどを皮切りに、海外企業からの受託も視野に入れていきたいと思っています。

さらに、医薬分野では、拡散薬やmRNAワクチンの登場に見られるような新しいモダリティ治療法の研究への投資など、将来の市場ニーズを見据えた設備投資も検討しています。

このように、設備投資は当社が成長を続けるために欠かせないものであると考えているため、今後も計画的に資金を投じていく予定です。

日根野:かなり大きな新設備だと思いますが、実際の稼働は来期下期からというお話しでした。実際に業績として数字が確認できるのは、再来期からという認識でよろしいですか? 

真岡:当社も早期に業績化したいと思っていますが、現状はそのような認識を持っていただければと思っています。

日根野:顧客専用工場ということで、売上が上がることは間違いないですね。

真岡:そのように考えています。

日根野:うまく工場が動きさえすれば、どんどん売上が上がっていくということですね。

真岡:そのようなご依頼をいただいており、当社も大変ありがたく思っています。

中期見通し(売上)

真岡:中期的な売上見通しについてご説明します。

KNCバイオリサーチセンター原薬製造棟および出雲第二工場の低金属対応製造棟が立ち上がると、先ほどのご質問のとおり、20パーセントから30パーセントの売上増加を想定しています。

2つの工場のフル稼働が実現すると、売上100億円の壁を超えることになるかと思います。早期の売上100億円超えを数値目標として、営業部門の強化も図るなど、設備投資と同様に人材への投資も積極的に進めています。

配当実績と予想 配当方針

真岡:配当実績と予想、配当方針についてご説明します。株主配当に対して、DOE(純資産配当率)2.0パーセントを目安に、業績の浮き沈みに左右されない安定的な株主還元に努めています。

今期は、前期よりも3円増配の年間33円の配当を計画しています。このように、成長のための投資を積極的に行いながら、当社を支えてくださる株主さまへも還元する企業であるとご認識いただければありがたく思います。

当社はBtoB事業を展開しているため、一般のみなさまの目に触れる機会は少ないかもしれませんが、社会を支える技術を提供し、世の中に貢献する、なくてはならない企業であることに、社員一同責任と誇りを持っています。

これからも投資家のみなさまからのご意見を頂戴しながら、ともに成長していきたいと考えています。ぜひ投資家のみなさまには、厳しくも温かく見守っていただきながら、引き続きご支援をいただけると幸いです。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:研究・開発・量産各フェーズの売上の特徴について

日根野:スライド12ページについて、もう少し詳しく教えてください。お客さまには研究ステージ、開発ステージ、量産ステージがあるとのことですが、御社にとってはスポット的な売上や、リピートによる売上などがあると思います。各フェーズでどのような売上の上がり方になるのでしょうか? 

真岡:ご質問のとおり、我々の事業には研究・開発・量産ステージがありますが、研究ステージは金額的にもそこまで多くはありません。

日根野:比較的少額ということですね。

真岡:研究ステージの規模は数百万円、開発ステージは数千万円の前半となります。

日根野:金額が大きくなってくるということですね。

真岡:そのとおりです。量産ステージになるとさらに大きくなり、数千万円の後半から、大きいものであれば億単位となります。

日根野:大規模ですね。なおかつ、毎年リピートする可能性が高くなってくるのでしょうか?

真岡:量産ステージは、リピートが多いです。量産に進む中で、開発はスケールアップやプロセス開発を行う非常に重要なステージになります。したがって、開発ステージはある程度一定ですが、我々には40年の歴史があるため、量産ステージの数は増加傾向にあります。

日根野:では、会社の仕組みとしては、量産ステージが増えれば会社全体の売上も増えていくイメージでしょうか? 

真岡:おっしゃるとおりです。したがって、我々は工場建設という設備投資に注力しなければなりません。

ただし、量産ステージに進めるためには、研究ステージを取っていかなければならないことから、切れ目なくシームレスに対応できるステージアップグロースモデルを考えています。

日根野:一緒に研究開発してきたからこそ、量産もお願いしやすいということですか? 

真岡:そのとおりです。ここでは、信頼関係が重要だと思います。また、開発ステージではプロセス開発やスケールアップという特殊な技術が欠かせないため、経験と実績も必要になります。

したがって、量産ステージまで進む際、他社に依頼するとなると、開発ステージをもう一度越えていかなければならないハードルがあります。

日根野:テスト生産のようなかたちで別の外注先に頼むとしても、「再現できるのかどうか」ということですよね? 

真岡:おっしゃるとおりです。開発ステージでの処方は我々の反応釜で作り上げているため、他社が我々とまったく同じ装置であれば同じ処方を作れるかもしれません。しかし、やはり装置にも違いがあるため、そのあたりのハードルも高いのではないかと思っています。

質疑応答:海外の企業に仕事を奪われてしまう可能性について

荒井沙織氏(以下、荒井):「プロセス開発までを御社に依頼し、量産化は海外の会社へ」または「量産化までを御社で行い、それ以降は海外の会社へ依頼されないのか?」など、特に海外の会社に仕事を奪われてしまう可能性についてのご質問がありました。

先ほどのご質問に加え、海外の競合についてどのように考えていますか? 技術的に可能ではない可能性もありますが、このあたりについてはどのように捉えていらっしゃいますか?

真岡:先ほどの回答のとおり、国内であっても海外であっても、開発ステージから取り組むことになるため、そこでのハードルは高いだろうと思います。

あと1点お伝えしたいことは、「海外は安価な委託先である」と考えられるかもしれませんが、残念ながら、海外のリソースも以前ほど安価ではなくなってきていると思っています。

特に現在、我々は国内のお客さま中心の事業に取り組んでいます。海外に持っていくリスクも考えると、我々が対応しているような、かなりの技術力が必要となるモノづくりを海外に委託することは、なかなか難しい部分もあるのではないかと思います。

荒井:オリジナルの技術でそのまま御社にお願いしたほうが安全であり、確実だということですね。

真岡:そう思っていただければと思っています。

質疑応答:量産ステージまで依頼するメリットについて

日根野:企業からすれば、自社の敷地に工場を作って製造するという選択肢もあるかと思いますが、一方でBRC原薬製造棟などは一括して御社に依頼されています。メーカーにとっては、どのようなメリットがあるのでしょうか?

真岡:我々のプロフェッショナルな技術集団が工場で製造するというメリットもありますが、工場も、単にボタンを押すだけの今日明日すぐにできるようなお仕事ではありません。

化学合成は危険も伴うため、事故などのさまざまなリスクを考えると、自社で製造するのではなく、外部委託の可能性もあります。

今後、ベンチャーやスタートアップなどでは、モノづくりの機能を自社では持たない企業もより多く出てくると思っており、その受け皿として我々を活用いただけるのではないかと思っています。

日根野:あくまでメーカーは研究開発の分野に注力し、生産には難しいノウハウや設備が必要となるため、神戸天然物化学にお願いするという使い分けをされているということですね。

真岡:おっしゃるとおりです。その棲み分けを狙っています。

日根野:御社にとっては、研究開発で終わらず製造・量産まで進めることが重要な鍵になるかと思います。例えば、研究開発のプロセスでなにかライセンスを共同取得するなどして、御社で量産するしかないかたちでビジネスを展開することは可能なのでしょうか? 

真岡:もちろん可能です。我々もそのようなお話があればお聞かせいただき、お互いがWin-Winのかたちになれば、そのような展開も良いのではないかと思っています。

質疑応答:売上の季節性について

日根野:売上に季節性はありますか? 

真岡:当社には、比較的季節性があります。以前から第4四半期となる1月から3月の売上が非常に多く、第4四半期偏重型のようなかたちになっています。

日根野:どのような背景から、1月から3月に売上が大きく上がるのでしょうか?

真岡:例えば、医薬品関係などの大型案件は製造期間が長くなるため、納品までに6ヶ月から長いものは1年というスパンもあり、そのようなものの売上はなぜか1月から3月に計上されます。

ただ、我々もリスクを回避していきたいと考えています。そこで、先ほどご説明した出雲に建てる半導体関係の工場や、バイオの原薬工場の2工場は毎月売上が上がっていくものになるため、これらの稼働が始まれば少し分散され、目立たなくなります。

日根野:平準化していくということですか? 

真岡:そのとおりです。

日根野:研究開発ビジネスについては、おそらく検収が3月頃に上がりやすいために第4四半期に偏重するのだろうとイメージしていました。一方で、量産ステージは比較的平準化しているのではないかと思ったのですが、ここでも第4四半期に偏重する場合があるということですね?

真岡:おっしゃるとおり、なぜか第4四半期に偏重しています。したがって、おっしゃるとおり研究開発は毎月上がることもありますが、医薬分野の影響がかなり大きいですね。

機能性材料分野やバイオ分野では、毎月ある程度一定の売上が上がっていますが、医薬分野の大きなテーマはいつ納品され、いつ売上が計上されるのかといった影響が大きくなります。

質疑応答:配当政策の考え方について

日根野:配当と株価を非常に意識されているのではないかと思います。現状ではPBR1倍割れとなっており、さまざまな対策を行う中、IRに力を入れることもあるかと思いますが、配当政策についてどのようにお考えでしょうか?

真岡:先ほどもお話ししたとおり、基本的に、投資家からお預かりしている資金や銀行からお借りしている資金の有効活用方法については常に考えています。

配当について、現時点ではDOE2.0パーセントを目安にしっかりと株主還元を行っていきたいと思っています。

日根野:その上で、資本に対して2.0パーセント程度の安定した配当を行うということですね。

真岡:今期は年間で33円の配当を行う方針です。

日根野:この数年間では、毎年増配になっていますよね。

真岡:毎年増配としています。

日根野:選択肢としては、自社株買いもあるのでしょうか? 

真岡:もちろん、それも1つの選択肢だと考えています。先ほどもお話ししたとおり、投資家からお預かりしている資金や銀行からお借りしている資金は、有効活用しなければならないと思っています。

現在は、中長期的な成長因子である設備や人に投資し、さらに成長していきたいと思っています。もちろん今も検討していますが、設備投資や人的投資にお金を使っていきたいと思っています。

質疑応答:人材の採用や育成における強みについて

荒井:「研究スタッフの採用や育成における、御社の強みを教えてください」というご質問です。こちらは、積極的に投資をする分野ではないかと思います。お考えを教えてください。

真岡:当社は「サイエンスを楽しみ、モノづくりに関わりたい」という人材の採用に強みがあると考えています。

半導体やディスプレイ、医薬品など、有機合成技術やバイオの技術を使って今後のサイエンスの下支えとなるモノづくりに関わりたいという志を持った方々、もしくは技術はないものの今後は医薬・有機合成・バイオの技術を身につけ、業務を支えたいと考えている人々を採用していきたいと思っています。

したがって、幅広く該当しますが、共通のワードとしては「サイエンスを楽しむこと」と「モノ作り」ではないかと思っています。

併せてご質問いただいた育成の強みは、コンパクトな環境の中で、OJTを中心に、有機合成技術やバイオ技術の知識がさまざまなステージの目線で身に付けられる点にあると思っています。もちろんOJT以外でも、研修や独自の自己啓発などを通じて、社員教育に力を入れています。

また、社内だけでなく、さまざまな企業やアカデミアの先生方である顧客とも、お仕事を通じて意見交換を行い、お客さまからも学ぶことのできる点が、当社の育成の特徴であり強みでもあると思っています。

荒井:せっかく育てた人材であれば、離職率は低いほうがいいかと思います。このあたりについては、いかがでしょうか? 

真岡:決して離職率が高いとは思っていませんが、日本政府が推奨していることもあり、昔と比べると世の中の流れとして転職が少し増えていると思います。一方で、現時点では離職率も低いと思っています。

当社では、短期間で人が育つわけではないため、なるべく社員の方々には残っていただきたいと考えています。「神戸天然物化学で勤め上げてよかった」と言ってもらえるよう、経営陣や会社としても、働きがい、生きがい、やりがいを社員のみなさまに持っていただける政策を打ち出していかなければならないと思っています。

質疑応答:取引先の高いリピート率の要因について

日根野:先ほどの質問と関連するかと思いますが、10年以上お付き合いのある会社が8割超ということに驚きました。非常にリピート率が高いということかと思います。

その背景には、先ほどのお話にあった研究能力のある人材、あるいはそれだけでなく、顧客の研究者とコミュニケーションを取り、チームワークを発揮して働ける人材がいるからではないかと思います。他にもなにか要素があれば、教えていただけますか? 

真岡:我々の強みの部分でもお話ししたとおり、お客さまの研究員の方と対等にお話ししようと思うと、我々の能力も高くなければなりません。ご質問のとおり、コミュニケーション能力も高くなければ、相手が言っている内容が理解できないということになり、仕事ができません。

私も営業経験者ですが、技術者もお客さまと会話し、そのあたりを学ぶことができるという点では、受託事業は本当にありがたいビジネスではないかと思っています。

また、なぜリピート率が高いのかについて、外部委託というサービスでは当然ながら価格が重視される一方で、実績も重視される傾向があるため、お客さまの信頼を得られていることが一番重要な要素になってくると思っています。

真岡氏からのご挨拶

真岡:お時間をいただき、ありがとうございました。十分な説明ができたかはわかりませんが、ぜひ、神戸天然物化学をみなさまに温かく見守っていただければと思っています。

今後も、我々はなんとか成長していきたいと思っていますので、ぜひとも当社に興味を持っていただければと思っています。本日はありがとうございました。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:工場をいくつかお持ちですが、工場により担う役割が変わるのでしょうか?

回答:事業所は神戸に4つ、出雲に2つとなります。

機能材料分野は神戸工場に研究機能を有し、神戸工場と岩岡工場に開発品から量産品まで対応可能な製造工場を有しています。さらに、神戸工場よりも大量生産が可能な設備を出雲第二工場に有しており、全体で研究から量産まで対応可能な工場となっています。

医薬分野は神戸研究所に研究機能、市川に開発機能を中心に大量生産も可能な設備を有し、出雲第一工場にさらに大量生産が可能な設備を有しています。

バイオ分野はKNCバイオリサーチセンターに研究から製造の機能をすべて有しています。

<質問2>

質問:将来的にどのくらいまで工場を拡大したいと考えていますか?

回答:具体的な目標などは置いていませんが、当社にとって「発展」という言葉はキーワードの1つでもあります。今後も成長市場をいち早く察知し、工場建設など積極的に投資を行っていきたいと考えています。

配信元: ログミーファイナンス

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