【QAあり】K&Oエナジーグループ、販売量増加や為替相場の影響でヨウ素事業は増収予想 成長投資による企業価値の向上を図る
目次
緑川昭夫氏(以下、緑川):代表取締役社長の緑川です。どうぞよろしくお願いします。
私どもは、K&Oエナジーグループという会社です。あまり馴染みのない名前だと思いますが、千葉県で天然ガスとヨウ素を生産、販売しています。
あまりご存知ないかもしれませんが、今、日本でエネルギーが採れる場所は新潟と千葉などです。私どもは千葉県で採っています。
本日は、まずグループの概要と業績についてご説明した後、11月12日に発表した中期経営計画について簡単に触れたいと思います。
1-1会社概要
緑川:商号はK&Oエナジーグループ株式会社、本店所在地は千葉県茂原市という太平洋側に近い地域です。設立が2014年1月6日で、まだ10年しか経っていませんが、これはホールディングス制にしてからの年数です。実際は、90年の歴史がある比較的古い企業です。
代表は、私、緑川です。資本金が80億円、プライム市場の証券コードは1663ですが、これは「鉱業」の欄で、日経では「水産」などに近い左上の欄にあります。
事業目的は「ガス事業、ヨウ素事業などを行う子会社等の経営管理およびこれらに附帯または関連する一切の事業」ということで、K&Oエナジーグループの子会社に、天然ガスの生産、ヨウ素の製造・販売、ガスの販売をする事業会社があります。
売上高構成比としては、ガス事業が約79パーセント、ヨウ素事業が約14パーセント、「その他」は建設業などで、約7パーセントです。
決算期は12月31日で、いわゆる会計年度が1月始まりの12月終わりとなる会社です。株主総会は3月となります。発行株式数はスライドのとおりですが、連結の従業員が約650名という会社です。
増井麻里子氏(以下、増井):ご質問を挟みながら進めます。スライドに売上高構成比が記載されており、ガスが79パーセント、ヨウ素が14パーセント、建設などを含む「その他」が7パーセントということなのですが、営業利益の割合はこれに近いのでしょうか?
緑川:営業利益の割合は大きく異なります。ヨウ素が非常に好調で、売上ベースでは8割と2割なのですが、利益ベースでは、ヨウ素のほうが5割から6割程度、ガス事業が4割から5割程度です。
ヨウ素については後ほど触れますが、実は世界に輸出しており、為替レートがご存じのとおりの状態であるため、非常に利益が上がっています。
1-2当社グループの構成
緑川:事業会社が子会社です。スライドの一番左に記載した関東天然瓦斯開発で天然ガスの生産・販売とかん水の販売をしています。下にガス井の写真がありますが、千葉県で約500メートルから2,000メートルの深さのガス井戸を掘っています。「かん水」と呼ばれる古代の海水の中に、天然ガスとヨウ素が溶け込んでおり、その「かん水」をくみ上げている会社が関東天然瓦斯開発です。
また、かん水が地上に出てくるとガスが分離されますが、それを都市ガスとして販売しているのが大多喜ガスになります。大多喜ガスは国産の天然ガスだけではなく、実は東京ガスや東京電力から卸していただいたガスも販売しています。また、電気やプロパンガスも販売している総合エネルギー会社になっています。
その右側のK&Oヨウ素という会社は、かん水の中に含まれているヨウ素を生成して、販売している会社です。ヨウ素の製造・販売と、ヨウ素化合物の製造・販売をしています。下にある写真がヨウ素の製造設備です。ブローアウト塔という化学プラントのようなかたちで採取し、ヨウ素にして販売しています。
一番右側のWELMAという会社は、最近私どものグループに入っていただいたのですが、地熱井の掘削を専門とする工事会社です。下の写真に「櫓(やぐら)」とありますが、これは関東天然瓦斯開発が掘っている、天然ガスの井戸を掘るものとよく似ています。関東天然瓦斯開発の場合は、出てくるものが、かん水とガスです。WELMAが掘っている地熱井というものからは、地下にある熱水や蒸気のようなものが出てきます。
1-3当社グループのあゆみ①
緑川:先ほど、K&Oエナジーグループは設立からまだ10年ほどとお伝えしましたが、創業は古く、1931年です。戦前に天然ガス事業を始めています。その後、関東天然瓦斯開発という名前で、1949年に東証に上場しました。1996年には、関東天然瓦斯開発の子会社だった大多喜ガスが東証2部に上場し、親子上場というかたちになりました。
2014年に関東天然瓦斯開発と大多喜ガスがそれぞれ出資して作ったホールディングス会社がK&Oエナジーグループです。これをもちまして、関東天然瓦斯開発と大多喜ガスが上場を廃止しました。
1-4当社グループのあゆみ②
緑川:当時はまだ電気の販売はしていませんでしたが、2018年から電気の小売に参入、また同年に先ほどご紹介したWELMAという会社をM&Aによりグループ化し、地熱関連の建設業を手に入れています。
2021年には、福井県で完全閉鎖型植物工場を持ち始めました。その理由は、古代の海水の中に入っているフルボ酸という有機物を植物工場に使うことで、生産性を上げられるのではないかと考えたからです。実は私どもはそのようなものを作っており、その試験も兼ねて植物工場に進出しています。
最後は内部の話なのですが、2022年にグループ内の天然ガス事業とヨウ素事業の再編を行いました。以前は、グループ内の日本天然ガスという会社と関東天然瓦斯開発がそれぞれガスとヨウ素を生産している状況でした。それを、ガス事業とヨウ素事業に整理するため、日本天然ガスのガス部門を関東天然瓦斯開発に持っていき、関東天然瓦斯開発のヨウ素部門を日本天然ガスに持っていく再編を行い、これに合わせて日本天然ガスをK&Oヨウ素に社名変更しました。
1-5【参考】ガス井掘さくイメージ図
緑川:先ほど写真が出ていた櫓(やぐら)は井戸を掘る道具なのですが、ロータリー式削井機と呼んでいます。パイプを櫓につり上げて、パイプを何本もつないで地面の下に下ろしていきます。
今掘っている井戸では、約2,000メートルの深さのガス層の掘削を行うため、1本約10メートルのパイプをつないで下まで持っていきます。千葉県の地下には、天然ガスがかん水と言う地下の古代の海水の中に溶け込んでいるので、このようにして、天然ガスを水と一緒にくみ上げています。
増井:スライドの図からイメージしてみたいのですが、ロータリー式削井機は何台ぐらい設置されているのでしょうか? また、これ自体の大きさは、地上に出ている部分でどのぐらいのものなのでしょうか?
緑川:井戸を掘っている時だけ、鉄骨で組み上げたものを作っているのですが、高さがおよそ20メートルから30メートルぐらいの鉄塔のようなかたちで、その中に配管(鉄管)をぶら下げて地面の下に下ろしていきます。
先端には掘削のためのビットというものがついており、ぐるぐる回しながら掘っていくのですが、この削井機1台で井戸1本を掘ります。現在は1台動いており、年間2本から3本ほど掘るため、2台から3台は千葉県のどこかで立ち上がっていることになります。堀り終われば鉄塔のようなものは取ってしまうため、工事の時だけこの削井機を使っています。
1-6南関東ガス田①
緑川:地面の下に天然ガスがあると言いましたが、スライド左側の千葉県の図で、緑色で示した部分が天然ガス埋蔵地域です。ご覧のとおり、実は東京も掘れば天然ガスが出てくるところなのです。
これは「南関東ガス田」といって、国内最大の水溶性天然ガス田です。東京湾から太平洋まではおぼんのようなかたちで地層になっており、千葉県の外房ではガス層が浅く、東京側では深くなっています。浅いところで掘る方が効率的に掘れるということで、外房で中心的に掘っています。
左側の図で「B」と書かれたあたりが茂原市で、ここが私どもの本社になります。右側の断面図のとおり、ガス層は太平洋に近いほど地上に近くなっており、東京湾の下ではかなり深いところにあります。
左側の図の紺色の部分が「鉱区」と言って、当社グループで主にガスを掘っているエリアです。ここから採れたガスを、千葉県千葉市や八千代市にある吉橋プラントに送っているパイプラインを図の赤い色の線が示しています。
1-7南関東ガス田②
緑川:「南関東ガス田」のうち、当社グループ鉱区内におけるガス可採埋蔵量は1,100億立方メートルと言われています。現在の生産量で計算すると、600年分はあります。また、ヨウ素も現在の生産量で計算すれば、400年分ぐらいはあるということになっています。
スライドの下に、参考として国内の天然ガス年間生産量21億立方メートルと記載がありますが、私どもで生産しているのはおよそ2億立方メートルで、千葉県よりも新潟県で採れているガスのほうが多い状況です。
私どもはヨウ素を約1,600トン採っていますが、一番の大手ではありません。ヨウ素の国内生産量は1万トン、世界での生産量は3万5,000トンです。
ヨウ素は非常に偏在しており、世界でも採れるのはチリ、日本、またアメリカでほんの少し採れるという状況です。日本で生産したヨウ素も世界中に輸出しています。
資源小国では珍しく、資源が偏在している場所になります。
増井:スライドを拝見すると、ガスもヨウ素も豊富にあり、供給には不安がなさそうに見えます。もちろん生産に制限はあると思いますが、あえてリスクについて言うとすれば供給サイドに何かありますでしょうか?
緑川:水と一緒に出てくるため、揚水規制があります。日本中どこでもそうで、東京都内でも同様だと思いますが、水をくみ上げると地盤沈下の恐れがあるためです。千葉県の外房の一部では隆起している地域もあり、そこでは地盤沈下が少なく保たれている状況も見られます。
したがって、かん水のくみ上げと地盤沈下の関係は証明されていないものの、揚水規制があるため水を大量にくみ上げてしまうことはできず、一定量しか採れないため、今の生産量から例えば一気に10倍にすることはできません。
掘った水の一部は戻しているのですが、千葉県の地層は非常に柔らかいため、下手に戻すと地層構造を崩してしまうことになり、実はあまり戻せません。生産量を少しずつ増やしてはいるのですが、水量規制により一気には増やせないという事情があります。
1-8千産千消(地産地消)天然ガス
緑川:私どもは「地産地消」の「地」を、千葉県の「千」に変えて、「千産千消天然ガス」と言っていますが、天然ガスを千葉県で産出して、千葉県で消費するという意味です。
通常、都市ガスは、LNGというかたちで海外から輸入し熱量調整を行って、消費者のみなさまに送っていますが、そこには化学成分でいうとメタン以外にブタンやプロパンが入っています。
しかし、千葉県のガスはほぼ100パーセントがメタンで、Cの数が一番少ないCH4です。したがって、CO2排出量が一般的な都市ガスよりさらに少ないのです。
また、千葉県で採れているため、国際価格にあまり影響を受けません。数年前、国際情勢が不安定になりエネルギー価格が非常に高騰した時があったと思うのですが、あの時でも安定して価格を一定のまま送ることができています。
また、LNGは、例えばブルネイやマレーシアなどの現地で天然ガスを液体にして、液化したものを船で運び、日本でまた気化して熱量調整するため、輸送コストがかなりかかるのですが、私どもは千葉県で掘ってそのまま送っているため、輸送コストは少なく、環境に優しくて料金も安定しています。
大多喜ガスで送っているのは県産天然ガスが中心なのですが、大口工業用や発電用には県産天然ガスは使っておらず、東京電力や東京ガスから卸していただいたガスを大口のお客さまに売っています。
そのため、大口工業用や発電用は国際価格にリンクして、購入価格が高くなれば販売価格も高くして売っています。国産の天然ガスは家庭用が中心で、そちらは国際価格にあまり左右されないため、一定の価格で都市ガスの供給を続けています。
1-9当社グループのガスの流れ(簡略図)
緑川:スライドの図は、簡単なガスの流れです。左上の関東天然瓦斯開発で掘ったものを、大多喜ガスという私どもの都市ガス会社や、内房にある京葉ガスさんなどそのほかの都市ガス事業者や千葉県の公営ガス事業者に卸しています。千葉県には他にもガスを掘っている会社が何社かあり、大多喜ガスは、実は関東天然瓦斯開発だけではなく、そちらからもガスを購入しています。
青色の図で示したとおり、家庭用のお客さまには、国産の天然ガスを使っています。LNG輸入事業者は別の配管となっており、発電用や大口工業用のお客さまに送っています。
大多喜ガスのお客さま数はおよそ18万件です。発電用や大口工業用のお客さまは、件数はかなり少ないのですが、販売量は極端に大きいため、販売量ではLNGが7割程度、国産天然ガスが3割程度になります。
増井:あらためてもう少しお聞きしたいのですが、千葉県産の天然ガスというのは、競争優位性という点で一番の強みは何になるのでしょうか?
緑川:エネルギー価格は世界情勢によって乱高下してしまうものですが、国内で掘っているため、非常に安定しているところがメリットだと思っています。数年前は、茂原付近はガスが安いということで、テレビ局などもけっこう来ていただいたり、「NHKアーカイブス」にも実は国産の天然ガスの映像が載っており、それをご覧になった方が「X」でポストされてバズったりしたこともありました。
増井:世界でも、今は天然ガスがエネルギーの中でも一番注目されており、値段が上がるなど、いろいろあると思います。日本の場合はLNG船で海外から運んでくるため、高いイメージがありますが、御社の場合は、千葉県で採り、直接送っているため、天然ガスが採れる国のガス利用者の状況になれるという感じなのでしょうか?
緑川:おっしゃるとおりです。CO2が悪者になってきていますが、そのトランジション期としては、2050年までの間にはできるだけCO2の少ない天然ガスが注目されて、なおかつ最近になると、ヨーロッパなども、もう1度天然ガスを見直そうという動きになってきて、EVなども一段落しています。
そのため、天然ガスはまだまだ注目され続けると思っています。さらに私どもは、一緒に出てくるヨウ素が貴重な資源ですので、この生産は2050年以降も続けていきたいと思っています。そのために、いろいろなことを手掛け始めているところです。
1-10ヨウ素の用途
緑川:ヨウ素というと、喉にスプレーする薬がおなじみだと思いますが、実はそれは医薬品の中では10パーセントほどしか用途がなく、一番使われているのはX線造影剤です。通常の健康診断では使われませんが、CTなどを撮る時にはだいたいこのX線造影剤が使われていると思います。
重い病気になるとCTで細かく検査したりすると思いますが、X線造影剤はそのような時に使われるもので、需要が非常に伸びており、世界中でそのニーズが大変高まっています。発展途上の国々の方たちが少し高度な医療を使われるようになると、これがどんどん伸びてきます。
次が、殺菌防かび剤や工業用の触媒です。工業用触媒と並んで液晶関連というのがありますが、ヨウ素はハロゲンといい、非常に反応性が高いため、そのようなところ向けの触媒や、液晶のエッチングという加工をするための原料としても使われています。
最近話題になっているのは、ペロブスカイト太陽電池です。東京都で使いたいと言っていただいていますが、この主要原料がヨウ素と鉛となっています。実際、ペロブスカイトにどのくらい使うのかはよくわからないのですが、これが世界中に使われるようになれば、さらにヨウ素の需要は伸びていくと思っています。
増井:実際にニュースを見た時に、御社が連想されました。株価はかなり上がったのですか?
緑川:そうですね。おかげさまで、ペロブスカイト太陽電池の記事が出ると反響があります。ヨウ素を生産している上場企業は、私どものほかにもう1社、千葉県にヨウ素ほぼ専業の会社があるのですが、そちらの株価も凄まじい上がり方をしました。私どももおかげさまで少し高くなりました。ヨウ素の需要はまだまだ伸びていきますし、さらなる生産もできるため、ご期待に添えるようにしたいと思っています。
増井:スライドには今おっしゃった以外にもたくさんの用途が並んでいますが、伸びそうな用途は何かありますでしょうか?
緑川:「液晶関連」の中でも、液晶だけではなく有機ELにも使います。有機ELもどんどん増えてきますので、世界中に有機ELのパネルが増えていけば、ヨウ素の用途もまたさらに増えていくと考えています。
しかし、一番大きいのはやはりX線造影剤で、これは今のところ代替物がありません。殺菌防かび剤は実はアルコールで代替できたり、違うものもあったりするため、少しずつヨウ素の値段が高くなってくるとそちらに替わったりはしています。しかし、X線造影剤や、人間が甲状腺の中にヨウ素が必要であるようにヨウ素が必要な動物がいるため、飼料添加物は代替することができません。
1-11世界のヨウ素生産量
緑川:スライド左側のグラフはヨウ素の生産量を示しています。世界のヨウ素生産量は、日本とチリがほとんどを占めます。チリが7割、日本が約2割5分、残りはアメリカで、世界中のヨウ素の大部分を生産しています。
スライド右側は、ヨウ素が製品として出荷する状態の画像です。プリル品やフレーク品というのは形状の違いだけなのですが、このようなかたちで出荷されます。
ヨウ素については、おそらく中学校の理科などで習ったり、ヨウ素デンプン反応の実験などに使ったりしたことがあるかもしれませんが、これは特殊なもので、固体から液体にならずにダイレクトに気体になる、つまり昇華する物質です。
増井:以前、ヨウ素そのものに差別化はそこまでないというお話をうかがったのですが、生産地が違うことによって、例えばチリの会社やアメリカの会社と日本の会社で、棲み分けというか、販売地域など、そのようなものはあるのでしょうか?
緑川:これは元素ですので、添加物などもまったく入っていないため、性質の差はありません。チリのものと日本のものも、同じヨウ素という元素で、まったく同じものです。
棲み分けなどは特にはありませんが、チリと日本の生産の仕方はそれぞれ違います。チリの場合は地面に埋まっている硝石と同じ層を土の中で掘り崩して、そこに水をかけて生産していますが、何かのきっかけで、その会社がヨウ素ではないものも欲しくなってしまうと、ヨウ素の生産量を急激に落としたりするため、生産量が一定しないのです。
過去のグラフでわかるように、チリの生産量は上下動しています。それに対し、日本の生産量は非常に安定しているため、お客さまからは、その点を信頼していただけているかと思います。
増井:長期契約のようなかたちなのですか?
緑川:長期はなく短期ですが、お客さまには継続してずっと契約していただいています。
1-12当社グループのヨウ素生産量
緑川:当社グループのヨウ素生産量についてです。世界におけるヨウ素生産量は、日本がおよそ3割です。その中で、南関東ガス田の中にヨウ素が溶け込んでいるため、千葉県には当社のほかにもヨウ素を生産している会社が何社かあり、国内生産量の8割を占めます。私どものK&Oグループは、結果として世界の5パーセントほどのシェアを占めています。
1-13ヨウ素販売量とヨウ素輸出価格
緑川:スライドのグラフは、ヨウ素生産量とヨウ素輸出価格を示しています。ヨウ素販売量はほぼずっと変わっておらず、約1,600トンです。
生産量は天然ガスの溶けている水をどれぐらい汲むかによるのですが、この量を採り続けています。実はヨウ素を採らずに戻してしまったり、海に流したりしているところがまだ少し残っているため、そこから今後ヨウ素を採ろうとしています。これにより、生産量をこれからもう少し増やし、1,800トン、2,000トンを目指していきたいと思っています。
赤い線が示すのが輸出通関統計価格をもとに当社で算出したヨウ素の輸出価格です。ドルベースでの輸出価格は上がっています。これにさらに為替レートが乗ってくるため、さらに売値としては高くなっています。
増井:本当によく聞かれることなのではないかと思いますが、ヨウ素の輸出価格が2018年以降上昇し続けていますが、この理由は何なのでしょうか?
緑川:実際のところは、はっきりわかりません。しかし、日本とチリのヨウ素でマーケットの価格が出来ているため、需要と供給のバランスで今のところ上がっているのではないかと思います。ヨウ素の価格はかなりボラティリティが高く、このグラフより前ではもっと安かったり、急に上がったりというのがあります。
需要側は一定していますが、供給側がばらつくとそれに合わせて価格が乱高下してしまいます。今上がっているのは、おそらくチリの増産計画が間に合わないところが大きいのではないかと思いますが、はっきりとした理由はわかりません。
増井:今後生産量が少し増えた場合は、この価格はもう少し落ち着いてくるのでしょうか?
緑川:先ほどお伝えしたとおり当社のシェアは5パーセントですので、今の1,600トンや1,700トンから2,000トンぐらいまで増やしても、価格への影響はほとんどないと思います。
増井:チリの動きが大きいということですね。
緑川:そうです。
2-1売上高の実績と予想
緑川:売上高の実績と予想です。2024年の売上高は若干減る見込みです。ガスの売上高では大口工業用の販売量は増加しますが、価格が下がっています。LNGの価格で売っているものがほとんどですので、全体の売上高として、そちらのいわゆるCIF価格という国際価格が下がったことによる影響を受けています。このため、販売価格の低下により1.8パーセント減少の売上高となっています。
2-2 2024年業績予想 【ガス事業:売上高】
緑川:ガス事業の売上高の主な増減要因としては、大口工業用向けの販売価格によるものです。国産の天然ガスは安定した価格で売っていますが、大口工業用向けはCIF価格が下がるれば売値も下がり、売上高が下がります。卸値も売値も下がるため、利益にはあまり影響はないのですが、売上高としてはこのような動きになっています。
2-3 2024年業績予想 【ヨウ素事業:売上高】
緑川:ヨウ素事業は、売上が120億円から130億円程度に上がると見込んでいます。販売量をわずかに増やしていることと、為替レートが2023年よりも円安の151円程度と予想すると、このようなかたちで上がっていくだろうと考えています。
輸出建値は一段落して、上がり基調がいったん止まっています。下がってはおらず、あくまで上昇が止まっているかたちです。
2-4経常利益の実績と予想
緑川:ヨウ素販売量の増加やヨウ素販売価格の上昇が見込まれますが、今後を見据えて地熱の発電に着手したことで、一般管理費が増加しています。この投資分が経常利益を圧迫しており、約16パーセントの減少と見ています。
地熱は非常に長期的な事業で、投資してからキャッシュ化するまで約10年かかってしまいます。天然ガスの開発も同様で、ガス井戸を掘って生産し始めるまでには約5年から10年かかります。似たような事業ではありますが、その影響で一般管理費が増加しています。
増井:地熱井の掘削事業はどのあたりから受注されているのでしょうか? お答えできる範囲で教えていただけますか?
緑川:私どものWELMAという会社が地熱井の掘削をしています。地熱に熱心なのは電力会社や、エネルギーでは出光さんなどが地熱を手掛けており、そこからの受注があります。
2-5配当金
緑川:配当金については、先日発表した中期経営計画でも来期は増やすとお伝えしていますが、今期も増配し、年間配当は42円となっています。スライドをご覧いただくとわかるように、当社はこれまで配当金を下げたことはありません。
中計2027
緑川:私どもは3年ごとに中期経営計画を作っており、「中計2024」は今年で最後になります。これからの3年間の計画について、11月12日に「中計2027」を発表しました。
「コア事業戦略」として、従来の資源開発、エネルギー、ヨウ素をコア事業と位置づけています。
「未来事業戦略」としては、再エネ事業、CCS事業、森林保全事業なども少しずつ手掛けていきたいと考えています。CSSとは、二酸化炭素を地下に貯留する取り組みです。
さらに「中計2027」では、「経営基盤戦略」として人材・DX・ガバナンスを充実させていくことを述べています。
主要KPIや株主還元方針は、スライドの6番に記載のとおりです。
2 中計2027 中計2027の重点戦略
緑川:中期経営計画では、私どもにとって重要な社会課題として8つのマテリアリティを決め、それを解決するための戦略として、コア事業戦略、未来事業戦略、経営基盤戦略を定めました。
まず、私どものメインの事業であるコア事業戦略では、資源開発を通じてガス・ヨウ素の増産を目指していきます。また、需要家ニーズに応じた総合的なエネルギーサービスも展開します。エネルギー事業では都市ガス、プロパンガス、電気を扱うほか、ヨウ素事業もコア事業に含まれます。
次に、未来事業戦略として、再生可能エネルギーやCCSに関する事業へ挑戦します。CCSとは炭酸ガスを地下に貯留する取り組みです。政府が行っている事業に参画しており、INPEXさんと日本製鉄さんと私どもの3社で、国から補助をいただきながら進めています。主に製鉄で発生するCO2を、太平洋側の地下に貯留させることを検討している最中です。
再エネ事業について、まず太陽光発電はすでに行っています。それ以外にも、三井物産さんや大阪ガスさん、そしてRWEというドイツの電力会社の仲間に入れていただき、太平洋側での洋上風力発電を手掛けたいと思っています。そのような再エネ事業が、未来事業戦略に含まれています。
最後に、経営基盤戦略では、ダイバーシティの推進やDX・人材戦略を展開する計画です。
増井:未来事業戦略について、すでに他社との協業などもされていますが、これから御社がより主体的に事業を展開することになると、M&Aなどもされる予定なのでしょうか?
緑川:良いところがあればぜひしたいとは思っていますが、再エネ事業はかなり規模が大きいものです。それを手がけている会社は、私どもよりはるかに大きいところが多いため、そう簡単ではありません。
再エネ事業の中でも地熱は比較的規模が小さいため、今のところは協業しています。実力がついてくれば単独で展開したいと思っています。
今のところ公表しているのは、宮城県で1ヶ所、何社かで協業して地熱発電を手掛けていますが、それ以外にも一緒にできるところを探しています。現在は4ヶ所とお話ししている状況です。
6 主要KPI/株主還元方針 財務・非財務目標
緑川:「中計2027」の主要KPIについては、天然ガスの生産量は年間1億8,000万立方メートルとしています。天然ガスの井戸は、徐々に生産量が落ちてきますので、減った分をきちんと掘って生産を続ける方針です。ガス販売獲得量も増やしていきます。
また、ヨウ素の販売量は、今は約1,800トンですが、3年後には約1,900トンまで増やしていきたいと考えています。
お客さまのアカウント数について、大多喜ガスの都市ガス・プロパン・電気のお客さまを合わせると今は約20万件ですが、3年後には21万件にしたいと思っています。
6 主要KPI/株主還元方針 キャッシュ・アロケーション
緑川:営業キャッシュ・フローとして、2025年から2027年の3年間で、成長投資に175億円、デジタル化やシステム系の投資に30億円を配分しています。
レジリエンスは、ガス管を地震に強くし、安定供給するために90億円程度を投資しています。このように投資したキャッシュの残りを、株主のみなさまに還元したいと思っています。
6 主要KPI/株主還元方針 株主還元方針
緑川:「中計2027」と一緒に発表していますが、1株当たりの配当金について、今年は42円の予定です。2025年からは継続的な安定配当ということで、累進配当の導入とDOE1.5パーセントを株主還元指標とします。
DOE1.5パーセントは低いと思われるかもしれませんが、安定して配当していくのが私どもの株の特徴と思っていますので、着実に配当していきたいと考えています。
私からの説明は以上です。
質疑応答:洋上風力発電における今後の予定と三井物産との関係性について
荒井沙織氏(以下、荒井):「洋上風力発電について、今後の予定と三井物産との関係性について、詳しく教えていただけないでしょうか?」というご質問です。
緑川:洋上風力発電は事業規模が非常に大きく、私ども単独ではできません。ヨウ素の販売を三井物産さんともう1つ、大きな商社にお願いしていますが、そのような関係で、三井物産さんとは以前よりお付き合いをさせていただいています。そのようなこともあってお声掛けいただきました。
場所が太平洋側ということで、私どものエリアに非常に近いです。三井物産さんも、私どもが地域に強い会社であることに期待していただいたのではないかと思います。そのようなきっかけから、環境影響評価などにも一緒に名前を出しています。
質疑応答:ヨウ素の海外販売における地域別の販売状況について
荒井:「ヨウ素の海外販売について、地域別の販売状況を教えてください」というご質問です。
緑川:主な販売先はヨーロッパとアメリカです。インドも一部ありますが、ヨーロッパが一番多いです。
荒井:今後、ここの地域を強化していこうという方針や、引き合いが強まるなどの見通しはあるのでしょうか?
緑川:X線造影剤そのものを作っているのは、もっと巨大な薬業メーカーですが、中間品を作っているメーカーがヨーロッパに多いため、ヨーロッパは今後も増えていくだろうと思っています。
荒井:インドは人口も多いですし、医療機関のニーズも大きいのではないかと思いますが、いかがでしょうか?
緑川:インドは人口が増えて1人当たりGDPが伸びていけば、レベルの高い医療が増えてくると思います。インドでもそのような薬剤を使うメーカーさんがありますので、そちらも多少は増えていくだろうと考えています。
荒井:現状はヨーロッパに納入するということですね。
緑川:そうです。
質疑応答:社名の由来について
荒井:「『K&O』とは何の略ですか? 関東天然瓦斯開発のKと、大多喜ガスのOでよろしいでしょうか?」というご質問です。
緑川:おっしゃるとおりです。創業時は主要な会社が関東天然瓦斯開発と大多喜ガスだったため、その頭文字を使って「K&Oエナジー」としています。
質疑応答:ヨウ素事業における強みについて
荒井:「ヨウ素事業について、他社も生産していると思いますが、その中であえて御社のヨウ素を買う理由になるのはどのようなポイントでしょうか? あらためて強みを教えてください」というご質問です。
緑川:ヨウ素は天然ガスとともに産出されますが、天然ガスを掘ることのできる地域を「鉱区」と言って、国から権利を与えられている範囲で独占的に生産できます。南関東ガス田における私どもの鉱区は紺色に塗られた地域ですが、一番広いエリアを持っています。
荒井:採取できるエリアは案外限られているように見えますが、ここで一番広い権利を持っているのですね。
緑川:はい。実際に掘れるのは、千葉県の太平洋側に限られます。断面図に示したように、さらに北のほう、銚子のほうに行ってしまうと、ガス層が浅すぎて突き抜けてしまいます。このように限られた範囲において一番広く掘削する権利を持っている点が、私どもの強みです。
緑川氏からのご挨拶
緑川:私どもは、天然ガスとヨウ素を掘り、エネルギーとして供給しています。もしかすると2050年には天然ガスが悪者になってしまうかもしれませんが、そうなっても、しっかりとクレジットを使って掘り続け、ヨウ素も生産していきたいと思っています。
エネルギーを安定供給すると同時に、資源を採り出した後は、CCSで炭酸ガスを地下に貯留したり、森林で吸収させる仕組みを作ったり、再エネを取り込むことで事業自体の発展と継続を目指します。みなさまからのご支援を、ぜひよろしくお願いします。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問>
質問:天然ガスとは、地元のさまざまなところで地中に噴出しているガスのことでしょうか。地元住民はガスが無料と聞きましたが、そちらについても詳しく教えてください。
回答:当社がガスを採取している南関東ガス田は、国内最大の水溶性天然ガス田で、千葉県を中心に茨城県、埼玉県、東京都、神奈川県におよぶ南関東地域一帯に広がっています。千葉県内でも、場所によっては天然ガスが自然に地上へ湧出している様子を確認できることがあります。
ご自宅で天然ガスを無料で利用している方はいますが、ごく少数です。ご自身で費用をかけてガス井戸を掘削・メンテナンスしており、あくまでも自己責任で利用しています。
関連銘柄
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1663
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3,200.0
(12/24)
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-35.0
(-1.08%)
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週間ランキング【業種別 騰落率】 (12月20日) 12/21 08:30
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<12月18日の5日・25日移動平均線デッドクロス銘柄> 12/19 07:30
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