*12:35JST スマサポ Research Memo(5):「totono」のビジネスモデルの変革により、中長期的な成長を目指す
■中長期の成長戦略
1. 今後の成長戦略
スマサポ<9342>は、2025年9月期以降も引き続き基幹サービスである「スマサポサンキューコール」の顧客基盤をベースとしつつ「totono」の事業育成に注力し、中長期的な収益成長を目指す。主な成長戦略は、「スマサポサンキューコール」の拡大による安定収益の強化、「totono」の管理世帯数の増加による収益基盤の拡大、「totono」の他社提携などによる収益機会の拡大、の3つである。
(1) 「スマサポサンキューコール」の拡大による安定収益の強化
「スマサポサンキューコール」については、大手不動産管理会社への導入、電子申込システムの連携により収益拡大を目指す。2023年8月より、賃貸管理戸数が約126万世帯の大東建託パートナーズへの導入を進めている。大型案件の安定稼働に注力しながら、さらなる大型受注もねらう。また、2023年12月にリクルートの電子申込システム「申込サポート by SUUMO」との連携を開始した。掲載物件数が日本最大規模であるポータルサイト「SUUMO」からの集客により、一層の取引先の拡大と安定収益の強化を図る。
(2) 「totono」の管理世帯数の増加による収益基盤の拡大
「totono」を拡販するため、各種展示会への出展やセミナーの開催など積極的な広告宣伝、営業人員の増強による認知拡大とアフターフォロー体制の強化を図り、2024年9月末時点の導入社数は89社となった。また、開発人員の増強により充実した機能の開発を継続する。不動産管理会社と入居者のコミュニケーションを円滑にするプラットフォームとなるシステムを構築し、業務をより一層効率化できるサービスを開発することにより、管理世帯数を増やし、安定的な収益確保を目指す。
(3) 「totono」の他社提携などによる収益機会の拡大
「totono」の利用者である入居者に必要な情報や商品をタイムリーに提供するために、他業種との提携を強化する。たとえば、家具のサブスクリプションサービスを提供する会社や自転車の購入時における自転車保険への加入など、くらしに密着したサービスを提供することにより、サービス提供会社から収益を得る仕組みの拡充を進める。また、「totono」の利用者である入居者から不動産管理会社へのチャットによる問い合わせへの対応業務に関して、不動産管理会社から業務委託で請け負うことにより、利用料以外の収益機会を構築する。
2. 「totono」のビジネスモデル変革
「totono」はリリース以来、不動産管理会社から毎月サービス利用料を収受するSaaS※モデルで提供しており、入居者側は無償でアプリをダウンロードし、掲示板・チャット・クレーム対応のほか、契約更新などの機能が利用できる。同社はこれを「totono」Phase1.0(以下Phase1.0)と呼ぶ。
※ Software as a Serviceの略であり、インターネットを経由してソフトウェアを利用することができるクラウドサービスのこと。
同社は「totono」Phase2.0へとビジネスモデルの変革を計画している。不動産管理会社は、物件の獲得が収益に直結するため少ないリソースで物件を獲得する必要があるが、物件の獲得に伴って管理する物件も増えることに加えて、物件は徐々に老朽化していくため、入居者からの問い合わせやトラブル・クレーム対応は増える一方である。Phase2.0では、「totono」は単なる不動産管理会社と入居者のコミュニケーションの窓口ととしてのITサービスに留まらず、不動産管理会社の入居者に関する業務全般をアウトソーシングするサービスを付加し、「アウトソーシング×SaaSモデル」=「BPaaS※」としてのサービス提供を目指している。入居者とのチャットのやり取りなどの対応業務、入居者サポートの代行業務、問い合わせ内容のデータ分析業務などを同社が巻き取り、不動産管理会社がコアビジネスに集中できる環境を提供する。
※ Business Process as a Serviceの略であり、業務プロセスをクラウド上で提供するアウトソーシングサービス。
料金面については不動産管理会社から毎月サービス利用料を収受する流れは変わらないが、利用料の課金体系が変わる。Phase1.0では、管理戸数などにより個社ごとに算出した固定金額を収受していたのに対し、Phase2.0では入居者のアプリのダウンロード(以下、DL)数に応じて利用料を支払う。すなわち「totono」の売上高は、DL数×単価(2024年11月時点の1DL当たりの月額単価は120円)により計上される。
売上原価は、チャットのやり取りなどの対応は当面同社が手動で行うことに伴い人工(にんく)がかかるため、売上原価はチャット数×単価により算出される。今後はアプリ上で多く見られているチャットを分析し、問い合わせが多い項目については動画やFAQであらかじめ解決策を提示し、全体の問い合わせ数を減少することでコスト削減し、収益性を高める。また、チャットの返信においては入居者の属性データや不動産管理会社の運用データなどの整備を進め、AIの活用などにより業務効率化を図る。
Phase2.0では、入居者のアプリDL数に応じて売上高が計上されるため、新規導入時には不動産管理会社の管理戸数に対するDL数の比率が低く、1社当たりの利用料の収受金額はPhase1.0と比較して一時的に低くなる可能性がある。しかし、「totono」のDLを促進する施策によって同比率が高まっていけば、Phase1.0より多額の収受金額が見込まれる。また、「totono」は入居者側の日々の生活に密接に結びついており、不動産管理会社側の業務効率化にも重要な役割を果たしていることから高い顧客エンゲージメントが見込まれるため、解約率は低水準で推移するだろう。2024年9月期末時点のDL数は前期末比1.8倍の28.0万DLと順調に拡大しており、Phase2.0の浸透により中長期的な収益成長が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林拓馬)
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1. 今後の成長戦略
スマサポ<9342>は、2025年9月期以降も引き続き基幹サービスである「スマサポサンキューコール」の顧客基盤をベースとしつつ「totono」の事業育成に注力し、中長期的な収益成長を目指す。主な成長戦略は、「スマサポサンキューコール」の拡大による安定収益の強化、「totono」の管理世帯数の増加による収益基盤の拡大、「totono」の他社提携などによる収益機会の拡大、の3つである。
(1) 「スマサポサンキューコール」の拡大による安定収益の強化
「スマサポサンキューコール」については、大手不動産管理会社への導入、電子申込システムの連携により収益拡大を目指す。2023年8月より、賃貸管理戸数が約126万世帯の大東建託パートナーズへの導入を進めている。大型案件の安定稼働に注力しながら、さらなる大型受注もねらう。また、2023年12月にリクルートの電子申込システム「申込サポート by SUUMO」との連携を開始した。掲載物件数が日本最大規模であるポータルサイト「SUUMO」からの集客により、一層の取引先の拡大と安定収益の強化を図る。
(2) 「totono」の管理世帯数の増加による収益基盤の拡大
「totono」を拡販するため、各種展示会への出展やセミナーの開催など積極的な広告宣伝、営業人員の増強による認知拡大とアフターフォロー体制の強化を図り、2024年9月末時点の導入社数は89社となった。また、開発人員の増強により充実した機能の開発を継続する。不動産管理会社と入居者のコミュニケーションを円滑にするプラットフォームとなるシステムを構築し、業務をより一層効率化できるサービスを開発することにより、管理世帯数を増やし、安定的な収益確保を目指す。
(3) 「totono」の他社提携などによる収益機会の拡大
「totono」の利用者である入居者に必要な情報や商品をタイムリーに提供するために、他業種との提携を強化する。たとえば、家具のサブスクリプションサービスを提供する会社や自転車の購入時における自転車保険への加入など、くらしに密着したサービスを提供することにより、サービス提供会社から収益を得る仕組みの拡充を進める。また、「totono」の利用者である入居者から不動産管理会社へのチャットによる問い合わせへの対応業務に関して、不動産管理会社から業務委託で請け負うことにより、利用料以外の収益機会を構築する。
2. 「totono」のビジネスモデル変革
「totono」はリリース以来、不動産管理会社から毎月サービス利用料を収受するSaaS※モデルで提供しており、入居者側は無償でアプリをダウンロードし、掲示板・チャット・クレーム対応のほか、契約更新などの機能が利用できる。同社はこれを「totono」Phase1.0(以下Phase1.0)と呼ぶ。
※ Software as a Serviceの略であり、インターネットを経由してソフトウェアを利用することができるクラウドサービスのこと。
同社は「totono」Phase2.0へとビジネスモデルの変革を計画している。不動産管理会社は、物件の獲得が収益に直結するため少ないリソースで物件を獲得する必要があるが、物件の獲得に伴って管理する物件も増えることに加えて、物件は徐々に老朽化していくため、入居者からの問い合わせやトラブル・クレーム対応は増える一方である。Phase2.0では、「totono」は単なる不動産管理会社と入居者のコミュニケーションの窓口ととしてのITサービスに留まらず、不動産管理会社の入居者に関する業務全般をアウトソーシングするサービスを付加し、「アウトソーシング×SaaSモデル」=「BPaaS※」としてのサービス提供を目指している。入居者とのチャットのやり取りなどの対応業務、入居者サポートの代行業務、問い合わせ内容のデータ分析業務などを同社が巻き取り、不動産管理会社がコアビジネスに集中できる環境を提供する。
※ Business Process as a Serviceの略であり、業務プロセスをクラウド上で提供するアウトソーシングサービス。
料金面については不動産管理会社から毎月サービス利用料を収受する流れは変わらないが、利用料の課金体系が変わる。Phase1.0では、管理戸数などにより個社ごとに算出した固定金額を収受していたのに対し、Phase2.0では入居者のアプリのダウンロード(以下、DL)数に応じて利用料を支払う。すなわち「totono」の売上高は、DL数×単価(2024年11月時点の1DL当たりの月額単価は120円)により計上される。
売上原価は、チャットのやり取りなどの対応は当面同社が手動で行うことに伴い人工(にんく)がかかるため、売上原価はチャット数×単価により算出される。今後はアプリ上で多く見られているチャットを分析し、問い合わせが多い項目については動画やFAQであらかじめ解決策を提示し、全体の問い合わせ数を減少することでコスト削減し、収益性を高める。また、チャットの返信においては入居者の属性データや不動産管理会社の運用データなどの整備を進め、AIの活用などにより業務効率化を図る。
Phase2.0では、入居者のアプリDL数に応じて売上高が計上されるため、新規導入時には不動産管理会社の管理戸数に対するDL数の比率が低く、1社当たりの利用料の収受金額はPhase1.0と比較して一時的に低くなる可能性がある。しかし、「totono」のDLを促進する施策によって同比率が高まっていけば、Phase1.0より多額の収受金額が見込まれる。また、「totono」は入居者側の日々の生活に密接に結びついており、不動産管理会社側の業務効率化にも重要な役割を果たしていることから高い顧客エンゲージメントが見込まれるため、解約率は低水準で推移するだろう。2024年9月期末時点のDL数は前期末比1.8倍の28.0万DLと順調に拡大しており、Phase2.0の浸透により中長期的な収益成長が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林拓馬)
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