【QAあり】エクシオグループ、都市インフラおよびシステムソリューション事業を成長させ連続増配も継続 更なる企業価値向上へ
(1)会社概要(2024.3.31時点)
佐藤善通氏(以下、佐藤):個人投資家のみなさま、エクシオグループ株式会社経営企画部、コーポレート・コミュニケーション室長の佐藤です。
本日は、みなさま方に当社を知っていただけるよう、会社概要、事業紹介、中期的な成長戦略、そして株主還元方針などをご説明します。
まず、会社概要を簡単にご紹介します。当社の創立は1954年5月です。おかげさまで今年、創立70周年を迎えました。
2023年度の連結売上高は6,140億円、従業員数はグループ全体で約1万7,000名です。本社は渋谷にあります。近年はM&Aにも積極的に取り組んでおり、連結子会社は140社を超えます。国内はもとより、海外でも幅広く事業を行っています。
(2)沿革
佐藤:こちらのスライドは、当社の創業以来の歩みです。1954年、通信建設会社の協和電設として創業し、日本の通信設備の建設・維持に貢献してきました。事業領域の拡大に合わせて1991年、協和エクシオに社名を変更しました。
社名のエクシオはラテン語で「自ら殻を破る」という意味があります。新たな領域に挑戦し、一層の飛躍を目指そうという気持ちを込めて名付けたものです。
2000年代に入ってからは、大小さまざまなM&Aを行いました。グループを構成する会社数が増え、事業の領域も拡大してきました。協和エクシオとなって30年目の節目となる2021年に、「自ら殻を破る」というエクシオの心は大事にしながら、グループ会社とともに大きく成長したいという思いを込めて、エクシオグループ株式会社に商号を変更しました。
みなさまのご支援もあり、現在、連結売上高が6,000億円を超えるところまで、事業規模を拡大してきています。
(3)パーパスとビジョン
佐藤:2021年の社名変更を機にブランドの再定義を行い、エクシオグループの社会における存在意義を表すパーパスを策定しました。策定に当たっては、グループ全社員へのアンケート、お客さま・パートナー企業へのインタビューなど、ステークホルダーのみなさまのエクシオグループに対する思いや期待の声を集約しました。
半年にわたる議論を経て、「“つなぐ力"で創れ、未来の"あたりまえ"を。」というグループパーパスを策定しています。
当社グループが創業以来培ってきたさまざまな技術と、当社の事業に関わる人をつないで未来のプラットフォームを作り、社会に貢献することが、エクシオグループの使命だと考えています。このパーパスをグループ社員一人ひとりの志として、事業を進めていきます。
(4)事業概要
佐藤:当社グループの事業を大別すると、エンジニアリングソリューションとシステムソリューションに分けられます。事業の仕切りとしては、通信キャリア事業、都市インフラ事業、システムソリューション事業の3つのセグメントに分類しています。
2023年度末の事業ごとの売上規模は、スライドの右下に掲載した表のとおりです。おおむねの数値で、通信キャリア事業が約40パーセント、都市インフラ事業とシステムソリューション事業がそれぞれ約30パーセントの比率となっています。
都市インフラ事業およびシステムソリューション事業の成長により、創業以来のコア事業である通信キャリア事業の比率は、すでに50パーセントを切っている状況です。
スライドには、事業の概要のイメージ図を掲載しています。ご覧いただくと、当社の事業がさまざまな分野で営まれていることがご理解いただけると思います。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):セグメントの状況では、NTTグループさまの部分の仕事が少し減り、他の部分が伸びているというお話がありました。伸びているセグメントはどこか教えてください。
佐藤:都市インフラ事業とシステムソリューション事業が伸びており、今後も成長が期待できると思っています。あらためて、事業のポートフォリオもお見せします。
通信キャリア事業が伸びていないわけではありませんが、国内の通信事業ですので、あまりパイが増えていません。そのため、伸びている他の事業と比べて比率が変わってきている、というのが正確な状況です。
都市インフラ事業では、みなさまご存じのように、最近はデータセンターが非常に伸びています。当社もそこに関わっており、そのような意味では大きく伸びています。
また、システムソリューション事業でも、最近はDXも含めて、生成AIのデータ量が非常に増えており、大きく伸びています。データセンターの事業は、これら両方に関わっています。
(4)事業概要-通信キャリア
佐藤:セグメントごとに事業をご紹介します。まずは、通信キャリア事業についてです。このセグメントは通信キャリア向けの各種通信インフラ、通信設備の工事を行っています。家庭やオフィス、あるいは携帯電話の端末から、電話局や基地局、さらにその先へと通信でつなぐことがミッションです。
固定から無線まで、あらゆる通信関連工事を行っています。みなさまも時々見たことがあるであろう街中の電柱の上の工事は、この事業の領域です。この中には、もちろん光ファイバーがあります。今、携帯では5Gが主流になってきていますが、ゆくゆくは6Gへと進化を続けます。そのような通信技術に対しても、当社は常に研鑽をしながら通信インフラを支え続けています。
近年ではSNSや動画配信などの普及によって、データが非常に多くなっています。通信トラフィックと言いますが、通信量が飛躍的に増加している傾向にあります。
データ通信量の増加の影響は、通信設備だけではなく、次にご紹介するデータセンターの増加にもつながっています。
(4)事業概要-都市インフラ
佐藤:都市インフラ事業では、通信キャリア事業で培った技術力を、電気、環境、都市土木の領域に応用して、発展を続けてきました。具体的な領域としては、建物内の電気・空調の工事、太陽光発電などの再生可能エネルギー、上下水道などの都市土木工事、ゴミ処理などのプラント、と多岐にわたります。
最近の目玉は、先ほどからお伝えしているデータセンターの関連事業です。通信量の増加、さらには生成AIの登場に伴い、データ処理を行うデータセンターの需要が、近年非常に高まっています。この需要に対してどう応えていくかが、当社においても重要な課題です。
非常に多岐にわたる領域で事業活動を行っていますので、これから先も成長が期待できるセグメントです。
(4)事業概要-システムソリューション
佐藤:3つ目のシステムソリューション事業についてです。通信設備の構築に関連して、電話交換機のソフトウェア開発などに携わる中で蓄積してきたITソリューションの技術を活かして、発展させてきた事業です。
近年では、生産性向上や付加価値の向上、付加価値を創造するためのDXの推進サポート、教育や医療の現場におけるIT環境の整備など、さまざまな領域で引き合いをいただいています。
特にシステムソリューションの領域でいうと、GIGAスクールです。数年前に、多くの自治体のお手伝いをしました。その更改時期が間もなく迫っていることから、来年以降、大きく期待しています。
坂本:けっこう大きな仕事でしたよね?
佐藤:全国の自治体からご注文いただきますので、おっしゃるとおり、大きな仕事です。
坂本:その仕事は、トラフィックが増えて、新しく速いものに替えるような感じなのでしょうか?
佐藤:前回の仕事では、主には、生徒1人に1台ずつ端末を行き渡らせました。それに伴って、学校内の通信設備などのインフラなど、当然作らなければなりません。あるいは、電子黒板や電子教科書といったような仕事まであるため、裾野がけっこう広い、大きな仕事です。
坂本:御社はどちらかといえば国内の仕事が多いイメージがあります。グローバルの仕事も最近は増えているのでしょうか?
佐藤:2010年代後半頃から、グローバルを少しずつ増やしており、2022年度で562億円でした。2023年度で少し下がりましたが、443億円です。今のところ、売上の10パーセントを目指して取り組んでいます。
通信インフラの事業を行っているところや、鉄道や電力、空調のような工事を行っているところもあります。システムソリューションも、国内と同様の事業を行っています。
システムソリューションの事業には、グローバル事業も入っており、最近では500億円規模のビジネスに成長しています。ただ、事業の取捨選択や、効率性を含めて、収益性にどう貢献するかという点から、拡大をここでいったん止めて、現在、事業改革に取り組んでいます。
(5)グループ体制
佐藤:エクシオグループは近年、M&Aで子会社を増やしてきており、約140社の企業を傘下に収めています。グループ各社がそれぞれの技術や強みを持っていますので、それらを活かした事業を行っています。
複数の事業の会社でプロジェクトを組んだり、他の会社の商品を他の会社で売るクロスセルも行ったりしながら、シナジーを活かしてグループ運営を行っています。
坂本:御社では、一時期、通信キャリア系の会社を子会社として取り入れる動きがあったと思います。最近の子会社化の状況と、地域の偏りのようなものがあれば教えてください。
佐藤:おっしゃるとおり、以前は通信事業の再編で、多くの会社が全国にありました。
坂本:それらを合理化していくような感じでしたね。
佐藤:それらをどんどん吸収して、今は、おおよそ3つのグループに集約されているかたちです。ただ、最近はM&Aも当社が伸ばしている成長事業のところを中心に考えています。
坂本:スライドに記載されている、通信キャリア系の下にある2つの事業ですね?
佐藤:都市インフラ系やシステムソリューション系の事業で、M&Aを多く行っています。
坂本:地域的なものは関係ないということですね?
佐藤:そのとおりです。全国で行っています。最近、各地域にも良い会社が多くあります。そのようなところにも目利きをしながら、一緒にグループ事業を行っています。
海外事業では、シンガポールにグローバルの本社を置き、東南アジアを中心に世界各国で事業展開を行ってきています。積極的なM&Aによってグループの会社数も増えており、グループ運営の重要性がどんどん増しています。
エリアごとの事業再編なども行いながら、フォーメーションを変更したり、システムを統一して見える化を図ったりしています。140社を超えると、ガバナンスの強化もかなりしっかりと行っていかなければいけないので、グループ総体で発展していくことを目指しています。
(6)近年の業績推移
佐藤:スライドのグラフは、近年の業績の推移を表しています。M&Aを含めて事業成長してきており、現在、売上高が6,000億円を超えるレベルまで伸ばしてきています。2023年度の営業利益は341億円でした。一過性の要因で不採算などもありましたが、構造改革をしながら国内事業を着実に伸ばしていき、対前年では増益という結果になりました。
2024年度の計画では、売上高は6,300億円、営業利益は360億円としています。データセンターが非常に好調な都市インフラ事業と、DXなどを行うシステムソリューション事業の成長を軸に、中期経営計画で6,300億円という売上高目標を目指していましたが、1年前倒しで達成する計画としました。現在は、順調に計画を上回るかたちで推移しています。
坂本:スライドの2025年度の目標数値は、中期経営計画のものだと思います。今後の成長戦略のご説明に含まれるかもしれませんが、営業利益470億円の達成に向けての御社の考えを教えてください。
佐藤:当初、5G、モバイルが相当伸びてくるだろうと考えて、中期経営計画を作りました。ところが近年、収益がけっこう厳しいという理由から、通信キャリア各社は投資をかなり絞っています。
坂本:スピードも遅いです。
佐藤:その影響で、思ったほどモバイル事業の利益は伸びていません。営業利益470億円というのは、非常にハードルが高くなっていると思います。
ただ、都市インフラでデータセンター事業などが伸びています。それをどこまで確実に伸ばしていけるかというところです。来年度は、中期経営計画の最終年度です。なんとか470億円に近づけていきたいと思っています。
坂本:しかし、どちらかというとそれは特殊要因ですね。一時的な需要で達成するよりも、積み上げて達成したほうがきれいな収益だと思います。
佐藤:おっしゃるとおりです。データセンターは息の長い事業で、構築に時間もかかります。受注が上がり、その後に売上などの利益が出てくるように、時間差が発生するため、着実に増やしていきたいです。
(1)2030ビジョンについて
佐藤:長期ビジョン・中期経営計画についてご説明します。当社は2021年に、2030ビジョンと2025年までの中期経営計画を発表しました。これまでの事業を通じて培ってきた多様なエンジニアリングをつないで、社会課題の解決を図っていくことを使命としています。
工事現場では、エンジニアリングの現場力を持っています。また、ソフト開発を含めたソリューション力も持っていますので、その2つの強みを生かして、社会貢献・社会課題の解決に挑戦し続け、国内外問わず社会から必要とされる企業グループであり続けたいと考えています。
そのような思いを込めて、「Engineering for Fusion~社会を繋ぐエンジニアリングをすべての未来へ~」というエクシオグループの2030ビジョンを作成しています。この、あるべき姿を定義した上で中期経営計画を立て、着実に取り組みを進めています。
(2)2030年に向けたエクシオグループの果たす役割
佐藤:こちらのスライドは、2030年に目指すべき社会が、どのような社会なのかをイメージしている図になります。「カーボンニュートラルな社会」「健康で生き生き暮らせるスマート社会」「グローバルで多様性を享受する社会」「貧困・格差が解消される社会」という4つの社会を定義し、当社が持つハード、ソフト両面での力を融合しながら、目指す社会の実現に向けて貢献していきたいと考えています。
(3)2030年に目指すポートフォリオ
佐藤:このスライドは、今述べてきた目標・認識のもと、2030年に目指すべきポートフォリオを考察したものです。前回の中期経営計画を策定した2015年の時点では、通信キャリア事業が全体の3分の2を占めていました。その後、都市インフラ事業やシステムソリューション事業の成長により、通信キャリア事業からの売上は、すでに全体の半分を下回るところにまで来ています。
今後も、成長分野である都市インフラ事業やシステムソリューション事業が伸長し、概ね3分の1ずつになり、景気や通信キャリアの動向などに左右されないような、力強い会社にしていきたいと考えています。
坂本:都市インフラが伸長するというお話がありました。2030年は、この都市インフラがさらに伸びるかたちになっていますが、市場環境や、御社に求められる技術など、全体感を教えてください。
佐藤:日本のインフラはかなり老朽化しており、作り替えなければならないところが、まだあると思います。最近伸びているのは、データセンターです。こちらは2030年度くらいまで需要が続くと思っています。それ以外のところでも、我々がお手伝いできる事業がたくさんありますので、社会の期待に応えられるよう、人財育成も含めて取り組んでいます。
坂本:インフラを作るにしろ、作り替えるにしろ、修繕するにしろ、通信技術・容量が必要です。非常に増えていますので、需要は必ずあると思います。
佐藤:例えば高速道路にしても、データの塊になっています。みなさまご存じのETCもそうですし、高速道路の途中にある多くのカメラや工事の照明なども、すべて線をつないで作っています。社会が高度化していくと同時に、さまざまなニーズが出てきています。我々は、そのようなところのお手伝いもしています。
(4)中期経営計画の目標
佐藤:中期の数値目標です。2025年の目標として、売上高6,300億円、営業利益470億円、営業利益率7.5パーセント、そしてROE9パーセント以上を目指しています。売上高については、今年度、1年前倒しでの計画達成を目指しています。
2025年度が、中期経営計画の最終年度となりますが、成長分野へのリソースシフトやDXによる生産性向上、事業統合を含めたグループ経営の強化を行い、目標達成に向けて「稼ぐ力」をしっかりと向上させていきたいと思っています。
(5)セグメント別戦略
佐藤:セグメント別の戦略です。従来のコア事業である通信キャリア事業では、DX化、オフショアの活用、グループ統合等により、引き続き収益性・生産性をしっかりと向上させ、安定した収益を獲得していきたいと思っています。NTTさまが構想しているIOWNなど、新たな技術動向にもアンテナを高くし、我々の技術を磨いていきます。
都市インフラ事業では、通信・電気・土木・プラント技術等を融合させたかたちでの成長を目指します。再生可能エネルギーや老朽化インフラ再生等の社会課題に、積極的に対応していきます。また、データセンターのような需要旺盛な事業に対し、しっかりと応えられる体制の構築も推進していきます。
システムソリューション事業は、高付加価値事業への挑戦とともに、保守運用などのリカーリングのビジネス拡大に、積極的に取り組んでいきたいと思っています。そして、セキュリティや教育・医療等の分野で強みのあるサービスの提供を行い、ワンストップで対応できるソリューションプロバイダとして、着実に成長させていく考えです。
(6)取り組み状況(都市インフラ:エネルギー)
佐藤:ここで、都市インフラ事業におけるデータセンター関連の取り組みをご紹介します。
データセンターについては、スライド左側のグラフのとおり、市場が大きく拡大してきています。米国の大手クラウド事業者が4兆円を超える国内データセンターへの投資を表明するなど、今後もマーケットの活況が想定されます。
以前から、NTTグループさまを含めたデータセンターの構築を、数多く行ってきました。当社は、たくさんのハイパースケーラーからの引き合いをいただいています。機会損失にならないように、他の事業セグメントや、グループ会社からもリソースシフトを行い、体制を強化して対応しています。
これまではデータセンター事業建屋内の電気設備工事等、いわゆる「Fit Out工事」が中心でした。しかし、建物自体の工事やラック・サーバ等の設置工事、その先の保守といったところにまで領域を広げ、ワンストップで事業ができればと考えています。
坂本:データセンター事業について、4兆円を超える投資のお話もありました。今後もこの好調な環境は続くと思います。こちらは長いビジネスだとお聞きしましたが、何年先まで続いていくとお考えですか?
佐藤:実は今、引き合いが来ているものの、我々を含め、通信業界・電気業界全体のリソースが不足しています。ですので、「いつになったらできますか?」という状況です。もちろん、順番に対応していますが、1つのデータセンター構築には2年から3年ほどかかります。ですので、データセンターの建築ラッシュは2030年くらいまでは続くと見ています。
坂本:需要が多いため、常識的な範囲での価格改定も行いつつといった状況でしょうか?
佐藤:作り手が不足していますので、交渉しやすいと言いますか、利益を獲得しやすい事業になっています。
坂本:利益率は、通信工事よりも高いかたちですか?
佐藤:通信インフラ工事は長い歴史があり、効率化していますので、利益が確保しやすくなっています。また、お客さまも限られており、利益率は一番高くなっています。キャッシュ・カウ(Cash Cow)という言葉のとおり、安定的に利益を上げる事業になっているということです。
都市インフラは、データセンターが伸びており、当初は経験値の観点で利益率が低かったのですが、今は利益を獲得できる事業になってきています。
坂本:今後も効率化していくことにより、利益を獲得できるということでしょうか?
佐藤:おっしゃるとおりです。技術者が不足しているため、技術者を育成して対応できるようにしていきたいと思います。
坂本:通信の技術者をデータセンターにシフトすることも可能ですか?
佐藤:はい。NTTさまの局舎で、電力工事・電気工事を数多くしている方にお願いしています。
坂本:資格を持っている方ですか?
佐藤:そのとおりです。そのような意味では、もともと技術を持っている方がいるため、そのような方を、まずはデータセンターにシフトします。
(6)取り組み状況(都市インフラ:エネルギー)
佐藤:都市インフラ事業の取り組みですが、再生可能エネルギーの1つである木質バイオマス発電についてご紹介します。
木材チップを燃料とする木質バイオマス発電所として、本年3月に栃木県足利市の「あしかがエコパワー発電所」、8月には福島県古殿町の「ふるどの論田エコパワー発電所」が本格稼働を開始しました。
近隣の山林などから出る未利用材を資源として有効活用し、発電するもので、再生可能エネルギーとしての自社発電を行っています。地元の自治体とも連携して地域の林業振興等にも貢献するとともに、サステナブルな社会の実現に貢献したいと考えています。
(6)取り組み状況(システムソリューション)
佐藤:システムソリューション事業の取り組みです。スライドの絵は、システムソリューション事業の目指す方向性を表しています。ここ数年力を入れてきた上流コンサルチームが着実に力をつけてきており、システム開発系のエクシオ・デジタルソリューションズ、保守運用系のエクシオ・システムマネジメントの中核の2社を中心に、グループ横断でトータルソリューションを提案・提供できる体制になってきています。
医療、文教などの分野やローコード開発、生成AI、セキュリティ系のSASE(サシー)、中古PC等を再利用するリファービッシュビジネスなど、テーマを明確にし、お客さまのDX支援のお手伝いをしています。
(6)取り組み状況(システムソリューション:グローバル)
佐藤:システムソリューションに含まれている、グローバルの取り組みの一例です。海外に、dhostというグループ会社があります。こちらは、インドネシア国内における、モバイルの屋内インフラシェアリング事業のリーディングカンパニーとなっています。大型商業施設などの屋内に、共用のアンテナ設備を作り、各通信キャリアから利用料金をいただくモデルで事業を行っています。
dhostは今年度、NTTグループのドコモ・ベンチャーズさまが運用するファンドから出資いただいています。さらには、NTT東日本グループさまとパートナーシップに関する基本合意書を締結し、対象国の拡大を含め、さらなる事業展開を進めていきたいと考えています。
(1)ESG経営の実践(マテリアリティ)
佐藤:ESG経営についてです。先ほど、目指す4つの社会に言及しましたが、2030ビジョンでは、ESG経営を挑戦の1つとして掲げています。その一環で、持続可能な事業運営を行っていくためのマテリアリティ(重要課題)の特定を行っています。
エクシオグループのパーパス「“つなぐ力”で創れ、未来の“あたりまえ”を。」を合言葉に、社員一人ひとりがESGに関しての理解を深めるために、サステナビリティ研修を行うなど、全従業員で、このようなマテリアリティの課題項目を意識しながら事業運営を行っています。
(2)ESG経営の実践(取り組み)
佐藤:気候変動対策については、2021年12月に、温暖化防止のためのTCFDの提言への賛同を表明し、コンソーシアムにも加盟しました。また、専任組織である「サステナビリティ推進室」およびガバナンス機関としての「サステナビリティ委員会」を設置し、取り組みを加速するとともに、当社コーポレートサイト内に「サステナビリティサイト」を新たに開設し、情報開示も積極的に進めています。
「サステナビリティサイト」については、ぜひご覧いただければと思います。今後も持続可能な社会の実現のために、当社グループも地に足のついた取り組みを着実に行っていきます。
(3)ESG経営の実践(外部評価)
佐藤:これらESGの取り組みに関しては、外部機関からも評価をいただいています。国際的な気候変動対策の枠組みであるCDPから、2023年度に上位から2つ目の位置づけである「A-」評価をいただきました。今後も積極的な取り組みを行っていきます。
(1)ROEの向上
佐藤:企業価値向上に向けては、ROEツリーを作り、東京証券取引所からの資本収益力向上の要請に、しっかりと応えていきたいと考えています。項目ごとに課題を設定し、「稼ぐ」基盤を作っていきたいと思います。
(2)キャッシュアロケーション方針
佐藤:キャッシュの活用方針についてです。2025年までの5年間、中期経営計画の期間内に生み出されるキャッシュが、EBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却費)ベースで2,000億円を超える規模感になると想定しています。
そのキャッシュを、成長投資と株主還元へバランスよく配分し、企業価値向上を目指していきます。
もちろん、M&Aはその時の縁によるところがありますが、大きな案件でEBITDAでは不足する部分については、有利子負債を適切に活用しながら実行していきますし、不要資産や政策保有株式の売却も引き続き進め、成長投資の原資として有効に活用していく方針です。
(3)M&Aの取り組み
佐藤:M&Aの取り組みです。過去にかなりのM&Aをしてきていますが、引き続き、積極的に活用していきたいと思います。グループ入りしていただいた会社は、大きな強みを持った、シナジーが期待できる会社だと思っていますので、グループ総体でしっかりと利益貢献していこうと考えています。
今後も、特に成長分野である都市インフラ事業、システムソリューション事業を中心に、グループの事業と親和性のある会社さまとのご縁がありましたら、積極的にM&Aを実施していきたいと思っています。
坂本:M&Aだけではなくて、業務提携も増やしながら広げていくイメージですよね。
佐藤:そうですね。我々はパートナーと呼んでいますが、非常に多くのパートナーさまと事業を展開しています。
海外事業のところでNTTさまの話をしましたが、農地の上で太陽光発電を行う営農型太陽光発電では東急不動産さまと組んだり、電力線をつなぐ事業ではSWCCさまと提携したり、いろいろな事業者と一緒に事業を進めています。
(4)株主還元
佐藤:最後に、株主還元です。当社は、株主のみなさまへの利益還元を経営の重要課題に位置づけています。配当金は従来、DOE基準を採用していますが、2023年度より基準を4パーセントに引き上げました。これにより、2024年度は「1:2」に分割していますが、62円の配当となる計画で、13期連続増配の予定です。
当社は2023年度まで、連続19年減配なしで配当しており、「日経累進高配当株指数」の構成銘柄にも選定されています。
また、自己株取得と消却についても、資本効率と株主利益の向上を目的に、継続的・機動的に実施しています。
さらに、今年4月には「1:2」での株式分割を実施しました。より多くの投資家のみなさまに当社の株式を取得いただき、応援していただけるよう、あるいは流動性を高めることで株主さまの利便性を向上させる観点から、分割を行っています。
坂本:13期連続増配予定ということで、配当についてはかなり積極的にお考えなのですね。減配がないこともすばらしいと思いますが、今一度、配当金についてのポリシーを教えていただけますか?
もちろん、できる限り増配したり、安定的に配当が出せるようにDOEを採用したり、現在取り組んでいることはあると思いますが、それに加えて今後に向けた意欲やイメージがあれば教えてください。
佐藤:我々は、一番安定的に株主さまに還元できる手段は配当であり、株価が上がることが大切だと考えています。
坂本:自社株買いにおいても、株価やタイミングが大切ですね。
佐藤:そのような点で、我々はかなり前からDOE基準を採用していました。最近は、採用される企業もかなり増えています。
坂本:そうですね。増えていますよね。
佐藤:当社の場合、当初は3パーセントから始め、3.5パーセントを経て、2023年度から4パーセントに引き上げました。
逆に言えば、稼ぐ力をもっと増やして、事業をきちんと拡大・成長させていくというプレッシャーを、自分たちにもかけることにもなります。DOE基準を4パーセントに引き上げたことで、さらなる事業成長を目指していきたいということです。
坂本:確かに、御社も、ビジネスを長期的に安定させることが大事ですよね。配当性向にしてしまうと、少しおかしくなってしまいますね。
佐藤:そうですね。配当性向にしても結果的に高くなると思いますが、基本的には、弊社社長の舩橋が「増配のバトンを落とさない」という言い方をしているように、株主さまへ安定的に還元していきたいと思っています。
坂本:DOE基準を4パーセントまで引き上げたとのことで、収益と資本のミックスの部分もあると思いますが、これからさらに伸びる可能性はあるのでしょうか?
佐藤:そうですね。みなさまからも「さらに伸ばす予定はありますか?」とご質問いただきますので、「がんばります」とお答えしています。
災害支援
佐藤:社会的責任という観点から、我々のコア事業である通信キャリア事業では、通信インフラを担うということで、災害支援の取り組みをしています。
今年1月、大変残念なことに「令和6年能登半島地震」が起こってしまいました。それに続き、8月には九州で「台風10号」の被害も発生しました。このような被災地に対して、当社グループ全社を挙げて支援活動を行っているところです。
能登半島地震においては、延べ6,000人の規模で支援を実施しています。災害が起こらないことを切に願うばかりではありますが、起こってしまった際には、通信設備を含めた社会インフラを支えることが我々の使命です。そのためにできる限りの活動を行っていきたいと思っています。
これからも投資家のみなさまからご評価いただけるような取り組みを続けていきたいと思っていますので、ご理解とご期待を持って、応援いただければ幸いです。
(宣伝)当社「公式Youtubeチャンネル」、「Web CM」について
佐藤:最後に宣伝をさせてください。当社「公式YouTubeチャンネル」にて、当社社員の働く姿や、木質バイオマス発電などについて発信していますので、ぜひご覧いただければと思います。
その他にも、実は「Web CM」などもやっています。テレビ等では放映されませんので、なかなか目に触れる機会がないかもしれませんが、こちらも公式YouTubeチャンネルにてご覧いただけますので、ぜひ検索してみてください。
質疑応答:バイオマス事業の稼働施設について
荒井沙織氏(以下、荒井):「バイオマス事業について、現在、稼働・管理している施設を教えてください」というご質問です。
佐藤:これまでバイオマスの処理事業は、どちらかと言うと建設に携わってきました。お客さまからご要望いただき、ゴミ処理施設や、糞尿などを処理して発電する設備を作ってきました。
現在は、栃木県足利市のバイオマス発電所と、山林の中の廃校になった小学校を利用して作った福島県古殿町の発電所の2ヶ所で自社発電を行い、売電しています。
坂本:これは非常に大事なことだと思いますが、なぜいきなり自社発電に取り組んだのでしょうか? 通信と電気はかなり密接だから、ということですか?
佐藤:そうですね。
坂本:施設を作れる技術がもともとあったのでしょうか?
佐藤:はい。青森県の外ヶ浜町や滋賀県などにも、そのような発電施設やゴミ処理施設を何ヶ所も作っています。
坂本:今後も、自社発電はある程度増やしていくのですか?
佐藤:そうですね。今すぐにバイオマス発電所を追加する計画はありませんが、我々が自社発電することで、他社さまや自治体さまが「うちもやりたい」となれば、応用して作ることもできます。
坂本:なるほど。実験施設と言ったらあれですが、もともと持っていた技術を使って展開している事業ということですね。
佐藤:そうですね。我々も、バイオマス発電は新しい取り組みでもあります。
質疑応答:データセンター増築やAI活用における市場開拓と業績の見込みについて
荒井:「都市インフラとしてのデータセンターの増築や、生成AIの普及による基盤整備について、今後の市場開拓と業績への反映の見込みを教えてください。データセンターの構築には2年から3年かかるというお話がありましたが、どのぐらい業績に反映されてくるのでしょうか?」というご質問です。
佐藤:データセンターへの需要は非常に旺盛な状況です。引き合いをいただいている新規の案件もたくさんありますし、生成AIなどの活用に伴って、今後もデータ量はさらに増えてくると考えています。
そのため、データセンターへの需要が落ちることは当面ないと思っています。また、データ量が増えてくると、発熱の問題も出てきます。
坂本:そうですね。施設を冷やす技術も必要ですよね。
佐藤:実はデータセンターというのは、電気もそうなんですが、空調が非常に重要です。
坂本:そのために寒冷な北海道にセンターを作っているというところもありますよね。
佐藤:現在は空気で冷やすのが一般的ですが、今後は液冷です。サーバー自体を液の中にどぶんとつけて冷やします。そうすると非常に効率がいいので、そのような高度な技術にも対応していきたいと思っています。
ただ、1つのデータセンターを構築するのに2年から3年かかると見込んでいます。今年も500億円から600億円くらいのご注文をいただく見込みですが、来年、再来年と建築が進んでいくと、その分が売上や利益に反映されてきます。そのため、これからしばらくは、データセンターの売上が着実に数字に反映されていく見込みです。
坂本:データセンターを作りながら、液冷などの新技術を積み上げていくということですね?
佐藤:そうですね。
質疑応答:一時的に利益が上振れた場合の株主還元について
坂本:株主還元について、安定した配当を続けていく方針には非常に共感しています。資産売却が直接的な株主還元の原資になるかどうかは別ですが、利益が上振れた場合、一時的に大幅な増配などを実施すると、その後減配になる可能性が出てくると思います。
これまで増配を続けてきた中で、そのように一時的な利益が出た場合の株主還元のイメージを教えてください。やはり自社株買いなのでしょうか?
佐藤:我々はDOEを基準にしていますが、毎年、利益を重ねてきたとしても、純資産に積み上がっている金額は利益剰余金だけです。
配当性向等を採用していると、利益が大きく出たら配当を大きく上げることになると思いますが、我々は毎年安定的に配当したいと考えています。ただ、「資産を積み上げたくない」という気持ちもあります。
坂本:ROEが下がるなど、いろいろな影響がありますよね。
佐藤:はい。その意味では、一時的に大きな利益が出た場合には、自社株買いを機動的に実施したいと思っています。
質疑応答:データセンターへの電力の安定的な供給体制について
荒井:「データセンターが注目されているということですが、データセンターは電力が不可欠かと思います。電力を安定的に、途切れなく供給できる体制はできているのでしょうか?」というご質問です。
佐藤:我々が電力を供給するわけではないので、直接的な回答はできませんが、おっしゃるとおり、データセンターにおいては電力需要が鍵になっています。
そのため、今、北海道庁さまなどの自治体は、再生エネルギーや洋上風力を増やして発電に取り組んでいます。今までの工場立地と比べて、データセンターにかかる電力量は非常に大きいです。
坂本:ものすごいらしいですね。
佐藤:今のところ、各電力会社さまも自治体さまも、電力をどう供給するかという点で苦心されています。逆に言えば、電力を安定的に供給できれば、データセンターの誘致につながります。
例えば、多くのデータセンターがある千葉県の印西地域は、東京電力さまがデータセンターを誘致するために、早くから電力供給体制を整えてきたのですね。
坂本:そうなんですね。
佐藤:現在は、北海道の千歳や苫小牧エリアなどにどのように電力を供給するかがポイントです。
データセンターの需要は今後も伸びる見込みですので、自治体さまや電力会社さまも、数年単位の計画で、いかに電力の供給を増やすかということに苦心されていると聞いています。
坂本:大変ですよね。「原発を動かせばいいじゃないか」と言えればいいですが、そのような話でもないですからね。
佐藤:その意味では、我々も洋上風力発電に携わっていきたいと思っています。洋上風力の発電所から電力会社につなぐまでの電力線を引かなければいけないのです。
我々は長年、通信線をつないできました。電気も扱っていることもあって、現在は電力線をつなぐ事業も進めているところです。そのような領域にも、我々にとってのチャンスが出てくるかもしれないと思っています。
坂本:洋上風力だと、線自体も長くなりそうですね。
佐藤:まず海底を這わせて、陸揚げして、そこから地上を這わせることになります。現在は電力線をつなぐためのジョインターという資格を積極的に取っているところです。SWCCさまと組んで、ジョインターの育成なども進めています。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
質問:将来的に、従業員1人あたり利益(付加価値)が増える可能性はありますか?
回答:もちろん、従業員1人あたりの付加価値向上に努めているところでありますし、今後も追求していきます。現在、当社としては「稼ぐ力」を向上することに課題があることは認識しており、成長分野へのリソースシフトや、DXによる生産性向上、事業統合を含めたグループ経営の強化などに取り組んでいます。
引き続き改革・改善に取り組みながら、2025年度の中期経営計画最終年度、さらにはその先の2030年度に向けてさらなる成長を実現していきたいと考えています。投資家のみなさまには、引き続き応援いただければ幸いです。
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