栗本鐵工所、24年3月期は過去最高益 2030年の売上1,500億円に向けて新中計は変革成長準備期間、株主還元を強化
1-1 会社概要
菊本一高氏(以下、菊本):栗本鐵工所代表取締役社長の菊本でございます。本日は足元の悪い中、そしてお忙しい中、クリモトグループの決算説明会にご参加いただき誠にありがとうございます。クリモトグループの2024年3月期決算と、5月14日に発表した新中期3ヵ年経営計画についてご説明します。よろしくお願いします。
まずは会社概要です。当社は1909年に水道用の鋳鉄管を祖業として創業し、今年で115年になります。グループ連結の従業員数は約2,100名です。
1-1 会社概要
事業所は工場・物流拠点を含め13ヶ所、国内営業拠点は大阪を本社として全国に8ヶ所、海外拠点は2ヶ所あります。
1-1 会社概要
当社グループの経営理念は「私たちは、すべてのステークホルダーの期待と信頼に応え、常に最適なシステムを提供し、『夢ある未来』を創造します」で、社会インフラ・産業インフラ分野への最適なシステムの提供を行います。
1-2 事業部門の構成と主な製品
当社グループは、社会インフラ向け事業と民間産業設備向け事業の売上比率がほぼ半分ずつとなっています。この比率は近年ほぼ変わらず、官需と民需のバランスがよく、好不況の波に強い事業基盤を持っています。
ライフラインセグメントに属する鋳鉄管製造が祖業であり、現在も当社グループの安定収益事業の中核です。機械システムセグメントは、主に民間向けの産業設備や鋳物製品を製造・販売しており、産業建設資材セグメントは、主に建設資材やFRP製品を製造・販売しています。
それぞれのセグメントで、今後の成長牽引が期待される商材およびサービスを多く抱えています。
2-1 決算概要
新宮良明氏:財務担当の新宮です。私からは、2024年3月期の実績についてご説明します。
当連結会計年度は、為替相場の変動や資源価格の高騰、物価上昇等の影響がありました。その一方で、新型コロナウイルス感染症の第5類移行後は、社会活動の正常化が進んで雇用や所得環境が改善し、景気は緩やかに回復してきました。
しかしながら、昨今の不安定な国際情勢や地政学上のリスクもあり、依然として経済情勢は不透明な状況が続いています。その中で、民需である産業設備分野は、前会計年度に売上が集中した反動もあり減収となりました。一方で、官需である社会インフラ分野は、業績が堅調に推移しています。
結果として、当グループの2024年3月期決算は、売上高が前年比10億9,700万円増の1,259億2,500万円、営業利益が前年比6億2,000万円増の74億6,000万円、経常利益が前年比9億4,700万円増の78億1,600万円となりました。当期純利益は前年比7億4,300万円増の54億7,000万円で、増収増益となり、過去最高益を更新しました。
なお、期初予想比では、売上高が約59億円、営業利益が約14億円上回る着地となっています。
2-2 売上高・営業損益比較
売上高および営業利益について、スライドのウォーターフォール図を用いてご説明します。
売上高は、ライフラインセグメントで35億6,000万円の増収、機械システムセグメントで約50億円の減収、産業建設資材セグメントで約25億円の増収となりました。営業利益は、販管費の増加があったものの、売上構成の変化や粗利率の高い物件、原価改善活動の結果が粗利率の上昇につながり増益となりました。
2-3 セグメント別業績
各セグメントの売上高と営業利益における、前年ならびに期初予測値との比較です。スライドに「B-A」と示した前年比では、ライフラインセグメントと産業建設資材セグメントが増収増益となりましたが、機械システムセグメントが残念ながら減収減益となっています。
2-4 事業セグメント別概況
事業セグメント別の概況をご説明します。まずはライフラインセグメントについてです。
売上高は、バルブ部門で大型案件が順調に推移したことや販売子会社の売上が増加したことなどにより、前年比35億6,000万円増の644億3,900万円となりました。
営業利益は、増益に加えてバルブ部門の価格改定が浸透したことや、原価改善活動ならびにコストダウン活動により、前年比約8億円増の44億9,400万円となりました。
期初予測値からの売上増加および営業利益増加は、販売価格の見直しについて想定よりも早くお客さまにご理解いただき、浸透したことなどによるものです。
2-4 事業セグメント別概況
機械システムセグメントです。素形材部門は、破砕機や部品の売上が堅調に推移しました。機械部門は粉体機器が堅調に推移した一方で、プレス機器やプラント関連が落ち込みました。その結果、セグメント売上高は前年比約50億円減収の291億4,400万円となりました。
営業利益は、粗利率が改善したものの今お伝えした減収の影響が大きく、前年比約7億円減の約15億円となりました。
期初予測値からの売上高および営業利益の減少は、主に機械部門において受注時期が遅れ、工事進行基準の売上を先送りしたことによるものです。
2-4 事業セグメント別概況
産業建設資材セグメントです。建材部門では消音製品と空調製品の売上が、化成品部門では電力向けおよび小水力発電向け製品の売上が堅調に推移し、セグメント売上高は前年比約25億円増の323億4,000万円となりました。
営業利益は、原材料価格高騰の影響があったものの、増収の影響と粗利率の高い高付加価値製品の売上が増えたこともあり、前年比8億5,100万円増の22億5,500万円となりました。
期初予測値からの売上増加は都市部における建設市況が想定よりも堅調に回復したため、営業利益増加は出荷が増加したためです。
2-5 財務状態の概況
財務状況の概況です。2024年3月期末の資産は前期末から約60億円増加し、1,511億7,600万円となりました。負債は約37億5,000万円減の684億4,600万円です。期末の純資産は、当期純利益やその他有価証券の評価差額金の増加により97億6,700万円増加し、827億3,000万円となりました。
有利子負債はこの10年ほどで大幅に減少し、自己資本比率も54.1パーセントに向上しています。
2-6 連結キャッシュフロー
連結キャッシュフローの状況です。営業活動によるキャッシュフローは、税金等調整前当期純利益や仕入債務の増加等により、前年同期比約52億円増のプラス102億7,800万円となりました。
投資活動によるキャッシュフローは、固定資産の取得による支出は前年度並みだったものの、スライド表中の「その他」に定期預金の増加が含まれており、前年同期比約9億5,000万円減のマイナス26億9,000万円となりました。
財務活動によるキャッシュフローは、借入金の返済や配当金の支払額の増加により、前年同期比41億900万円減のマイナス86億400万円となりました。
期末の現金及び現金同等物残高は193億600万円と、年間で約9億7,000万円減少しました。一方で、借入金の返済が進み、期末の有利子負債残高は約141億円と、年間で65億6,500万円減少しています。
2024年3月期決算についてのご説明は以上です。
目次
菊本:私からは、2024年度から2026年度のクリモトグループ新中期3ヵ年経営計画についてご説明します。
本日の流れはスライドのとおりです。まずは前中期経営計画を振り返り、クリモトグループの経営理念、ありたい姿、経営方針やビジネスモデルをご紹介します。その後、新中期3ヵ年経営計画の概要と、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応についてご説明します。
全社定量目標の振り返り
前中期3ヵ年経営計画の全社定量目標値と、その結果についてご説明します。
前中期経営計画では、既存事業を中心に競争力の強化を図り、収益性のさらなる改善に注力しました。新型コロナウイルスの影響が残る中でのスタートとなりましたが、初年度の売上高を除き、すべての項目で目標を達成しました。
特にこだわった収益性の改善については、価格改定やコストダウン活動により計画値を上回る結果となっています。
セグメント別定量目標/重点施策の振り返り ライフラインセグメント
ライフラインセグメントは、価格改定やコスト削減への取り組みに加えてグループ会社も好調であり、目標値をすべて達成しました。
特にパイプシステム部門は、設計と施工を一括で受注する管路DB(デザインビルド)の受注実績が着実に積み上がっています。バルブシステム部門は、大型バルブの引き合いも多く、化学プラント向けのバルブを取り扱うグループ会社の本山製作所も好調で、業績に貢献しました。
セグメント別定量目標/重点施策の振り返り 機械システムセグメント
機械システムセグメントは、売上高が若干計画を下回ったものの、コロナ禍後における企業の設備投資の順調な回復を受け、利益面では目標値を大きく上回りました。
機械システム部門は、高機能樹脂や二次電池用途で好調な粉体部門が業績を牽引しました。鍛圧機部門の業績も堅調です。素形材部門は、破砕機分野の好調が続き、ラインナップの拡充も着々と進んでいます。また、新たにリサイクル分野への進出準備も順調に進んでいます。
セグメント別定量目標/重点施策の振り返り 産業建設資材セグメント
産業建設資材セグメントは、新型コロナウイルス感染症の影響などによる建設市場の落ち込みもあって売上高は目標値を下回ったものの、道路・橋梁補修市場での営業強化により、利益面では目標を達成しました。
建材部門は、建設市場の落ち込みの影響も受けましたが、都市部を中心に回復基調にあり、業績は改善傾向です。化成品部門は、原材料価格の高騰もありましたが、価格改定やコストダウンで吸収しました。また、電力会社や高速道路会社などのインフラの維持・補修需要を取り込み、好調を維持できました。
投資計画/株主還元策の振り返り
投資計画と株主還元策について振り返ります。投資計画は3年間で140億円を計画していましたが、実績は約105億円となりました。未発注となったシステム投資や設備の維持・更新の一部は、2024年度からの新中期経営計画期間へ投資時期を繰り越しています。
株主還元は、3ヵ年計画における株主還元方針である「3年平均で配当性向30パーセント超」を実施しました。また、投資未実施部分の一部を株主還元の原資とし、総還元性向の向上に努めました。
コーポレート部門の重点施策の振り返り
コーポレート部門の振り返りです。各項目とも役員会議等を重ね、着実に対応してきました。資本収益性の向上やDX活用の面では、新中期3ヵ年経営計画においても継続的に注力していきます。
事業部門の構成と主な製品
クリモトの経営方針とビジネスモデルについてご説明します。当社グループの売上比率は、社会インフラ向け事業と産業設備向け事業がほぼ半分ずつとなっています。この比率は近年も変わらず、官需と民需のバランスがよく、コロナ禍のような不況の時でも影響を受けにくい事業基盤となっています。
事業変遷
こちらのスライドは事業変遷です。後ほどご覧ください。
クリモトの強み
当社グループの強みは、創業以来115年にわたって築き上げたお客さまとの信頼関係と豊富な納入実績に裏打ちされた、ソリューションや提案力です。
また、官民の売上比率がほぼ半分ずつということに加え、中規模のニッチ事業を複数保有することで、好不況の波に強く、ステークホルダーのみなさまに安心と信頼を持っていただける企業であると思っています。
経営理念/ありたい姿/経営方針
経営理念とありたい姿、それらを受けた経営方針についてご説明します。経営理念は先ほどお伝えしたとおりです。ありたい姿は、「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」の三方よしに、「未来もよし」を加えた「四方よし」の精神で、将来にわたって社会へ貢献できる企業グループを目指すとしています。
ありたい姿と経営理念の実現に向けて解像度を高める必要があり、「四方よし」をベースに、サステナビリティ基本方針やダイバーシティ方針、株主還元方針を策定しています。
クリモトのビジネスモデル
経営方針を踏まえたビジネスモデルについてご説明します。当社グループが目指すビジネスモデルは、循環型ビジネスモデルです。大量に生産・販売して終わるという時代は過去のものであり、今後のビジネスは、サーキュラーエコノミーをベースとしなければ市場から受け入れられません。
当社グループの強みを活かして最適な機能を提供することで、お客さまの価値をともに創る「共創」のビジネスコンセプトを推し進め、持続的成長につなげていきます。
新中期3ヵ年経営計画策定の考え方
新中期3ヵ年経営計画の基本戦略をご説明します。まずは、計画策定のテーマと考え方についてです。テーマは3点あります。1つ目はありたい姿からのバックキャスト、2つ目は資本コスト経営の推進、3つ目はサステナビリティ経営の推進です。
「四方よし」の精神に基づき、2030年にありたい姿からバックキャストし、株主や投資家をはじめとするすべてのステークホルダーの期待に応え、当社グループと未来・社会がともに発展するような経営計画としています。
「2030年にありたい姿」に向けた新中期3ヵ年経営計画期間の位置づけ
「2030年にありたい姿」についてご説明します。「将来にわたって社会へ貢献できる企業グループ」すなわち「社会課題の解決システムを提供するトータルソリューション企業」を目指し、定量目標は売上高1,500億円超、営業利益100億円超、ROE8パーセント以上としました。
ありたい姿を実現するには現状を変革する必要があるため、本中期経営計画期間である2024年度から2026年度は、「2030年にありたい姿」に向けた変革成長の準備期間と位置づけています。
循環型ビジネスモデルへの転換に向け、新たな価値創造モデルの探求や資本コストを意識した経営の実現に向けた事業ポートフォリオの見直しの検討を進めていきます。
全社定量目標
新中期3ヵ年経営計画の定量目標についてです。前倒しの売上や高利益率製品の売上比率が高かった影響により2023年度が好調だったことから、2024年度の売上高は1,240億円、営業利益は70億円といったん減収減益を計画しています。
2025年度は売上高1,250億円、営業利益75億円、2026年度は売上高1,300億円、営業利益80億円と、2025年度以降は増収増益を目標計画としています。変革成長準備期間であるため、売上高・利益とも大きく伸長する目標数値ではありませんが、新中期3ヵ年経営計画の期間においては、着実に3年間継続してROE7パーセント以上の達成を目指していきます。
事業ポートフォリオ戦略の明確化
事業ポートフォリオ戦略についてご説明します。明確化のため、成長性と競争優位性の観点から、現状の事業を整理・分類しています。市場成長が見込まれる事業群で、売上の拡大が想定される事業を「成長牽引事業」と位置づけ、積極的な投資対象として事業規模の拡大を目指していきます。
一方で、成長性は小さいものの、キャッシュを生み出す源泉である「安定収益事業」は、市場変化に対応したシステム販売の強化や周辺事業領域への進出、新製品開発に注力し、収益基盤をさらに強化することを目指していきます。
セグメント別定量目標
セグメント別の定量目標についてご説明します。ライフラインセグメントや産業建設資材セグメントの主体である官需や建設需要は、物価高などの影響で工事費全体が上昇しており、需要量の停滞が予想されます。
コスト面では、原材料高の他、労務費の上昇等も想定されます。そのため、好調であった2023年度の業績と比較すると、2024年度は機械システムセグメントのみ増収を見込んでいますが、そちら以外は減収減益となり、2025年度から回復する計画としています。
目標達成に向けた重点施策 事業別成長戦略
目標達成に向けた重点施策のうち、事業別の成長戦略についてご説明します。
ライフラインセグメントは、パイプシステム事業において設計から据付、メンテナンスまでを行うDBM(デザインビルドメンテナンス)要員の育成、強化に取り組みます。バルブシステム事業は、海外市場の開拓に注力します。
機械システムセグメントは、機械システム事業において、二次電池連続製造プロセスでお客さまのパイロットプラントを一緒に作り上げるなど、より近い存在になれるよう注力していきます。素形材エンジニアリング事業は、石炭火力発電所向け事業をはじめとした既存事業の見直しとともに、成長が見込まれる再生可能エネルギーやリサイクル市場に注力します。
産業建設資材セグメントは、建材事業において新規事業領域の事業化を推進していきます。化成品事業においては、道路・橋梁、インフラ向けのFRP検査路やFSグリッドなどの成長分野への積極的投資を通じて、売上拡大と高利益体質の実現を目指していきます。
目標達成に向けた重点施策 財務戦略(投資計画)
重点施策の財務戦略についてご説明します。投資計画における投資区分ごとの発注ベースの金額はスライドに記載のとおりです。M&Aなども含めた投資総額は180億円で、近年最大の投資を計画しています。
本計画は、コストダウン・収益性向上を目指した生産合理化への投資を強化するとともに、事業ポートフォリオ分析における「成長牽引事業」へ積極的に投資を進める内容となっています。また、前中期経営計画期間から先送りとなったシステム・DX投資の着実な実施を目指していきます。
目標達成に向けた重点施策 財務戦略(株主還元策)
財務戦略の株主還元策についてご説明します。新中期3ヵ年経営計画期間の資本政策として、株主への還元をより強化する方針を打ち出し、各年度の配当性向を50パーセント以上とすることを目標としました。
また、期間中の資本構成やキャッシュフロー等を注視しながら、自社株買いも適宜実施したいと考えています。
目標達成に向けた重点施策 財務戦略(キャピタル・アロケーション)
財務戦略のキャピタル・アロケーションについてです。安定収益事業をベースとした3ヵ年の営業キャッシュフローは、約220億円と試算しています。
期間中のキャッシュアウトは、成長牽引事業への投資、M&A、DX投資を含む設備投資で約185億円、株主還元関連で約95億円と試算しています。こちらは業績や他のキャッシュフロー項目の状況に応じて、自社株買いも適宜実施していきます。
残りのキャッシュイン約60億円については、政策保有株式の縮減による株式売却のキャッシュインや、借入枠に余裕があるコミットメントラインなどの有利子負債を活用することでカバーする計画です。
目標達成に向けた重点施策 ESG戦略
重点施策のESG戦略については、スライドに記載の6項目にまとめています。後ほど項目別にご説明します。
研究開発
新中期3ヵ年経営計画の達成に向けた取り組みについてご説明します。研究開発では、新規事業創出のための開発と主力事業における製品開発の両立を図ります。新規事業化を目指して継続開発中の主な製品は、コンポジットや磁気粘性流体「SoftMRF」、鉛フリー銅合金などになります。
特に、コンポジット分野での成果としては、IHIインフラ建設と共同で「FSグリッド」を開発しました。これは傷んだ鉄筋コンクリート床坂の延命工法として利用が進むと見込んでいます。今後は高速道路を中心に床坂の補修工事が大幅に増加していく中で、交通規制期間の大幅低減、渋滞の緩和、CO2排出量の抑制といった社会課題の解決に貢献します。
既存の事業部門においても、環境配慮や効率化につながる研究開発をそれぞれ進めており、今後も研究開発で持続的成長を促進していきます。
DX戦略
DX戦略についてご説明します。変革成長に向けた事業ポートフォリオの見直しにおいては、事業部が個別に保有している基幹業務システムを統合し、全社統一のプラットフォームを再構築することや、抜本的な業務の見直しによる業務効率化および働き方改革の推進が重要になります。
また、弊社の既存商品や新製品にデジタル技術を活用し、製品・サービスの付加価値を高めていくことも重要になります。持続成長の実現のため、これらのDX戦略を推進していきます。
取締役会の実効性を支える仕組み
ESG経営の推進についてご説明します。まずは、取締役会の実効性を支える仕組みについてです。
2022年度に実施した実効性強化の実績としては、取締役会の3分の1以上を社外取締役で構成して独立性を強化したこと、取締役会のスキルを一覧化したこと、指名・報酬委員会における社外役員の割合を50パーセントから75パーセントに変更したことが挙げられます。
今後の取り組みについては、客観性や透明性の向上を目的とし、取締役会の実効性評価手法の変更を検討していきます。
役員報酬制度 株式報酬制度の拡充
役員報酬制度についてご説明します。企業価値向上への動機付けの強化を目的に、株式報酬比率を5パーセントから10パーセントに拡大します。
株式報酬については、株主総会で決議されることを前提として、給付株式に退任までの間の譲渡制限を付す「BBT-RS」を導入するなど、ガバナンスのさらなる強化に取り組みます。
サクセッションプランの策定と運用
サクセッションプランについてご説明します。前中期3ヵ年経営計画でサクセッションプランを作成し、戦略的に経営人材を輩出する仕組みを作っています。
このプランに基づき、次世代の経営を担う人材の確保と育成を計画的に実施し、それに取締役会が積極的に関与することで、持続的な企業価値の向上に努めていきます。企業価値向上には、人的資本への投資も重要な要素と認識しています。
従業員エンゲージメント
従業員エンゲージメントについてです。従業員の会社への愛着や仕事への思い入れ度合いを定期的に調査し、エンゲージメントスコアを定量的に測定しています。その結果をもとにしたエンゲージメント状況を各部門にフィードバックし、必要な対策を講じるとともに、役員間でも情報共有を行い、さらなるエンゲージメント向上につなげています。
多様性に関する取組み
多様性に関する取り組みについてご説明します。2024年4月にダイバーシティ方針を策定し、多様な人材の積極的な採用、多様な人材が活躍できる環境の整備、女性活躍の推進に取り組んでいます。
目標としては、女性基幹職比率の向上、定期採用者に占める女性の割合の増加、定期採用者の入社10年後の継続雇用割合の上昇を掲げています。
CO2削減目標と取組み
CO2削減目標と取り組みについてご説明します。当社は2050年にカーボンニュートラルに挑戦するため、2030年度の2013年度比で50パーセント以上のCO2削減を目指します。2022年度の実績としては、CO2排出量を2013年度比で約45パーセント削減しました。
CO2削減に向けた取り組みとしては、生産性向上とCO2排出削減を両立する生産方法および燃料転換などの推進と、再生可能エネルギー由来のカーボンフリー電力の調達などに取り組みました。
2030年に目標を達成できるよう、今後はScope1における各事業領域での生産合理化によるCO2の削減、Scope3におけるCO2削減を視野に、製品開発の目標やサービス提供方法の見直しを推進していきます。
政策保有株式の縮減実績と今後の縮減方針
政策保有株式の縮減実績と今後の縮減方針についてご説明します。当社グループは、従来継続的に政策保有株式の縮減を進めてきましたが、株価上昇により時価額が上昇し、連結純資産に対する保有株比率が上昇しています。
保有に伴う便益やリスクの検証も継続しつつ、資本効率の向上を目指し、本中期3ヵ年経営計画期間中に保有株の30パーセントから40パーセントを売却し縮減することを目指しています。中長期的には、連結純資産の10パーセント未満まで縮減することを目指しています。
現状分析と企業価値向上に向けた対応方針
新中期3ヵ年経営計画の重点政策と対応方針につながる、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応についてご説明します。
スライド左側には、現状の市場評価と資本収益性のまとめを記載しています。それに対してスライド右側には、企業価値を向上させ株価に反映させるための対応方針を記載しています。主な対応方針は3つで、新中期3ヵ年経営計画の重点施策および戦略としています。
1つ目の「資本収益性の改善」では、事業別重点施策の取り組みと事業ポートフォリオ経営の推進により利益率向上を目指します。
2つ目の「成長牽引事業への注力」では、事業ポートフォリオ戦略を明確化し、市場規模の拡大が見込まれる事業領域への資本配分を実施します。
3つ目の「資本コストの低減」では、負債の活用による資本構成の最適化、自己株式の取得と政策保有株の縮減、積極的なIR活動およびESGに関する取り組みと情報開示の推進などで対応していきます。
これらの取り組みにより、新中期3ヵ年経営計画期間内のROE7パーセント以上の継続と、早期のROE8パーセント以上の実現を目指し、PBRとPERの向上に結びつけたいと考えています。
ステークホルダー・エンゲージメントの強化
ステークホルダー・エンゲージメントの強化についてです。資本コストの低減を図るため、現在進行形で、株主や機関投資家との対話体制の整備や情報開示の充実化に取り組んでいます。主な取り組みは、IR推進体制の整備、情報開示の充実、IR活動の社内フィードバック強化で、具体的な内容はスライドに記載のとおりです。
株主等との対話の実施状況
スライドの表は、2023年度における株主との対話の実施状況をまとめたものです。対話・面談の実績は年々増加しており、IR説明会などでは経営陣が積極的に対応し、経営戦略・事業戦略・財務情報について開示しています。
また、対話などの内容は取締役会や経営会議などでフィードバックし、社外取締役も含めた経営層で共有しています。
以上で、2024年度から2026年度のクリモトグループ中期3ヵ年経営計画のご説明を終わります。最後になりますが、今後も株主さまや機関投資家さまの対応に応えるべく、中長期的な企業価値の向上に努めていきますので、引き続きご高配を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。長時間のご清聴、ありがとうございました。
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