*14:03JST 極東貿易 Research Memo(3):2024年3月期業績は増収増益、過去最高益の水準に戻りつつある
■極東貿易<8093>の業績動向
1. 2024年3月期及び2025年3月期第1四半期の業績概要
(1) 2024年3月期通期業績概況
原材料価格やエネルギー価格の高騰、円安による物価の上昇、ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の緊迫化といった地政学リスクの高まりなど不透明かつ不確実な事業環境が続くなか、同社では新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の業績ショック(2021年3月期営業利益362百万円と前期比6割減)を脱し、営業利益は2期連続の10億円超えとなり、2016年3月期の過去最高益水準(2016年3月期営業利益1,203百万円)近くまで戻り、完全回復した。
収益の完全回復のポイントは2つある。まず第1に、同社の基幹事業である産業設備関連部門の売上高・利益の回復である。産業設備関連部門は、国内プラント向け、海外プラント向け機器・設備とも好調で、特に国内プラント向けは直近3期連続受注増である。長らく続いた低迷期を脱し回復期に移行したとみてよい。これは、同社の得意先である国内大手鉄鋼・化学メーカーの設備更新やCO2削減対応の設備最新鋭化に伴う設備投資の増強がプラス要因として働いたものであり、この状況はしばらく続くものと思われる。次に、業績不振が続いた特殊スプリング関連事業(機械部品関連部門)が「構造改革」を断行し、コストカットはもちろんのこと、不採算商品・顧客からの撤退、陥没価格の是正など合理化・リストラ対策は全て実行したようである。
2024年3月期の連結業績は、売上高は3事業セグメントとも増収(特に主力のプラント向け産業設備、炭素繊維複合材関連、精密ファスナー関連が好調)であり前期比2.4%増の43,660百万円となった。営業利益は同11.2%増の1,112百万円となった。また、経常利益は為替予約の時価評価で為替差損が発生したことにより、同2.4%減の1,487百万円であり、親会社株主に帰属する当期純利益は前期に計上した特別損失が減少したことなどにより同13.7%増の1,156百万円となった。
(2) 2024年3月期第1四半期業績の概況
産業設備関連部門においては海外プラント向け機器や国内鉄鋼・化学プラント向け設備の受注が前期に引き続き好調を維持し、資源・計測機関連事業においても資源開発機器及び防衛関連設備の受注が順調に推移した。また、セグメント利益は近年損失が続いていたが損失額が大きく改善された。産業素材関連部門では好調な米国経済を背景に自動車部品用樹脂・塗料が堅調に推移したものの中国日系自動車メーカー向け樹脂・塗料が低迷している。機械部品関連部門では精密ファスナー関連事業は自動車産業向けを中心に引き続き好調に推移した。一方、特殊スプリング関連事業においては「構造改革」が効を奏して収益性が改善し、黒字転換した。これらの状況により、2025年3月期第1四半期の営業利益は214百万円(前年同期比43.8%増)と大幅に回復した。
2. 2024年3月期のセグメント別業績
事業ポートフォリオを最適化し、事業の「選択と集中」と部門横断的な新規事業の育成を加速させることを目的として、2022年4月より報告セグメントを従来の4事業セグメントから「産業設備関連部門」「産業素材関連部門」「機械部品関連部門」の3事業セグメントへ変更した。また、同時に営業組織も再編した。
(1) 産業設備関連部門(旧 基幹産業関連部門及び旧 電子・制御システム関連部門)
産業設備関連部門は、事業ポートフォリオの最適化に基づき「産業インフラ関連事業」と「資源・計測関連事業」へと再編した。
2024年3月期の売上高は前期比7.2%増の12,323百万円、売上総利益は同7.2%増の3,085百万円の増収増益となり、緩やかに回復している。産業インフラ関連事業においては国内基幹産業(鉄鋼・化学)プラント向け事業に回復傾向(3期連続受注増)が見られ、また海外プラント向け重電事業も引き続き好調をキープしている。一方、資源・計測機関連事業も堅調に推移しており、海洋資源探査機器は引き合いが多く、海外の取引先では多く受注案件を抱え、納期遅れが生じるほど多忙のようである。同部門は全体的に受注回復しており、同社の業績安定化に大きく寄与している。
(2) 産業素材関連部門
産業素材関連部門は、事業ポートフォリオの最適化に基づき、「機能素材関連事業」と「生活・環境関連事業」へと再編した。
2024年3月期の売上高は前期比0.2%増の13,157百万円、売上総利益は同2.9%減の1,964百万円と、ほぼ前年同期並みに推移した。機能素材関連事業において海外向けを中心に炭素繊維複合材料関連事業が堅調に推移した。自動車部品用樹脂・塗料事業は米国においては好調だった一方で、中国向けなどは低調に推移した。生活・環境関連事業においては食品業界向け資材事業など一部事業に持ち直しの兆しがあるものの、本格化には至らず低調に推移した。
(3) 機械部品関連部門
機械部品関連部門は、ヱトーの精密ファスナー関連事業(旧 ねじ関連)とサンコースプリングの特殊スプリング関連事業(旧 ばね関連)で構成している。現在同部門は、3部門(事業セグメント)のなかで売上高・売上総利益ともトップになり、同社の事業成長基盤の推進力を担っている。
2024年3月期の売上高は前期比0.8%増の18,180百万円、売上総利益は同1.6%増の4,065百万円の増収増益となった。精密ファスナー関連事業においては、中国景気減速の影響による需要低迷が続くなか、幅広い市場(建設機械、自動車、FA、医療機器など)での受注活動を活発化し、売上高・利益拡大を継続している。特殊スプリング関連事業は定荷重ばねの自動車産業向け及び中国向け特需が一服したことなどにより低迷したが、機械部品関連部門全体では、精密ファスナー関連事業の高収益が特殊スプリング関連事業の損失をカバーした。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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1. 2024年3月期及び2025年3月期第1四半期の業績概要
(1) 2024年3月期通期業績概況
原材料価格やエネルギー価格の高騰、円安による物価の上昇、ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の緊迫化といった地政学リスクの高まりなど不透明かつ不確実な事業環境が続くなか、同社では新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の業績ショック(2021年3月期営業利益362百万円と前期比6割減)を脱し、営業利益は2期連続の10億円超えとなり、2016年3月期の過去最高益水準(2016年3月期営業利益1,203百万円)近くまで戻り、完全回復した。
収益の完全回復のポイントは2つある。まず第1に、同社の基幹事業である産業設備関連部門の売上高・利益の回復である。産業設備関連部門は、国内プラント向け、海外プラント向け機器・設備とも好調で、特に国内プラント向けは直近3期連続受注増である。長らく続いた低迷期を脱し回復期に移行したとみてよい。これは、同社の得意先である国内大手鉄鋼・化学メーカーの設備更新やCO2削減対応の設備最新鋭化に伴う設備投資の増強がプラス要因として働いたものであり、この状況はしばらく続くものと思われる。次に、業績不振が続いた特殊スプリング関連事業(機械部品関連部門)が「構造改革」を断行し、コストカットはもちろんのこと、不採算商品・顧客からの撤退、陥没価格の是正など合理化・リストラ対策は全て実行したようである。
2024年3月期の連結業績は、売上高は3事業セグメントとも増収(特に主力のプラント向け産業設備、炭素繊維複合材関連、精密ファスナー関連が好調)であり前期比2.4%増の43,660百万円となった。営業利益は同11.2%増の1,112百万円となった。また、経常利益は為替予約の時価評価で為替差損が発生したことにより、同2.4%減の1,487百万円であり、親会社株主に帰属する当期純利益は前期に計上した特別損失が減少したことなどにより同13.7%増の1,156百万円となった。
(2) 2024年3月期第1四半期業績の概況
産業設備関連部門においては海外プラント向け機器や国内鉄鋼・化学プラント向け設備の受注が前期に引き続き好調を維持し、資源・計測機関連事業においても資源開発機器及び防衛関連設備の受注が順調に推移した。また、セグメント利益は近年損失が続いていたが損失額が大きく改善された。産業素材関連部門では好調な米国経済を背景に自動車部品用樹脂・塗料が堅調に推移したものの中国日系自動車メーカー向け樹脂・塗料が低迷している。機械部品関連部門では精密ファスナー関連事業は自動車産業向けを中心に引き続き好調に推移した。一方、特殊スプリング関連事業においては「構造改革」が効を奏して収益性が改善し、黒字転換した。これらの状況により、2025年3月期第1四半期の営業利益は214百万円(前年同期比43.8%増)と大幅に回復した。
2. 2024年3月期のセグメント別業績
事業ポートフォリオを最適化し、事業の「選択と集中」と部門横断的な新規事業の育成を加速させることを目的として、2022年4月より報告セグメントを従来の4事業セグメントから「産業設備関連部門」「産業素材関連部門」「機械部品関連部門」の3事業セグメントへ変更した。また、同時に営業組織も再編した。
(1) 産業設備関連部門(旧 基幹産業関連部門及び旧 電子・制御システム関連部門)
産業設備関連部門は、事業ポートフォリオの最適化に基づき「産業インフラ関連事業」と「資源・計測関連事業」へと再編した。
2024年3月期の売上高は前期比7.2%増の12,323百万円、売上総利益は同7.2%増の3,085百万円の増収増益となり、緩やかに回復している。産業インフラ関連事業においては国内基幹産業(鉄鋼・化学)プラント向け事業に回復傾向(3期連続受注増)が見られ、また海外プラント向け重電事業も引き続き好調をキープしている。一方、資源・計測機関連事業も堅調に推移しており、海洋資源探査機器は引き合いが多く、海外の取引先では多く受注案件を抱え、納期遅れが生じるほど多忙のようである。同部門は全体的に受注回復しており、同社の業績安定化に大きく寄与している。
(2) 産業素材関連部門
産業素材関連部門は、事業ポートフォリオの最適化に基づき、「機能素材関連事業」と「生活・環境関連事業」へと再編した。
2024年3月期の売上高は前期比0.2%増の13,157百万円、売上総利益は同2.9%減の1,964百万円と、ほぼ前年同期並みに推移した。機能素材関連事業において海外向けを中心に炭素繊維複合材料関連事業が堅調に推移した。自動車部品用樹脂・塗料事業は米国においては好調だった一方で、中国向けなどは低調に推移した。生活・環境関連事業においては食品業界向け資材事業など一部事業に持ち直しの兆しがあるものの、本格化には至らず低調に推移した。
(3) 機械部品関連部門
機械部品関連部門は、ヱトーの精密ファスナー関連事業(旧 ねじ関連)とサンコースプリングの特殊スプリング関連事業(旧 ばね関連)で構成している。現在同部門は、3部門(事業セグメント)のなかで売上高・売上総利益ともトップになり、同社の事業成長基盤の推進力を担っている。
2024年3月期の売上高は前期比0.8%増の18,180百万円、売上総利益は同1.6%増の4,065百万円の増収増益となった。精密ファスナー関連事業においては、中国景気減速の影響による需要低迷が続くなか、幅広い市場(建設機械、自動車、FA、医療機器など)での受注活動を活発化し、売上高・利益拡大を継続している。特殊スプリング関連事業は定荷重ばねの自動車産業向け及び中国向け特需が一服したことなどにより低迷したが、機械部品関連部門全体では、精密ファスナー関連事業の高収益が特殊スプリング関連事業の損失をカバーした。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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