*14:07JST キットアライブ Research Memo(7):売上高は過去最高見込むも、人材育成等に注力するため利益面は減少見通し
■キットアライブ<5039>の今後の見通し
1. 2024年12月期の業績見通し
2024年12月期は、売上高が前期比11.6%増の910百万円、営業利益が同38.1%減の121百万円、経常利益が同35.3%減の130百万円、当期純利益は同38.0%減の91百万円を見込んでいる。
売上高は過去最高となるものの、利益面は減少の見通しである。減益となるのは、パブリッククラウドサービス市場の成長とDXの加速に伴う顧客要求の変化に対応するため、人材育成と採用施策の強化に注力することが主な要因だ。特に、顧客との直接コミュニケーションを増やすことで、顧客のビジネスを深く理解し、持続的なサービス提供の実現を目指す。これにより、顧客のビジネス成功に貢献し、同社自身の長期的な成長基盤を構築することが期待される。2024年12月期には、設立以来8期連続の増収を予定しており、引き続き堅調なクラウド需要を背景とした成長を見込んでいる。
2. 成長戦略
同社は2022年9月に上場した。中長期経営計画などの具体的な施策はまだ発表していないが、同社では3ヶ年計画を策定し毎年見直しを行っている。今後は採用計画や社員1人当たりの労働稼働率などをKPIとして開示内容を検討している。
同社は成長期へ順調に推移しており、ホワイトスペース戦略、ITエンジニア育成の強化などをはじめとするこれまでの施策や、東京事業所及び拡張する本社の機能を生かした戦略を考えながら、健全な基盤をつくるための内部留保を進める方針である。現在は、人材採用による成長を重視しているが、今後はM&Aなども成長拡大の1つの手段として検討する可能性がある。
(1) ホワイトスペース戦略
同社は、未開拓領域に進出するための「ホワイトスペース戦略」を推し進めている。同社が上場するまで親会社であったテラスカイは、同社との協業によるグループシナジーを追求する方針である。首都圏で大企業をターゲットにするテラスカイとは事業領域が異なり、同社は地方で中小企業、IT関連部署のない企業、創業間もないスタートアップ企業がターゲットである。テラスカイグループにおける同社の特徴は、1) 札幌に本拠地を置くことでIT人材を獲得する機会を増やしていること、2) 予算が少ない企業に対して少人数・低予算で対処が可能であること、3) リモートワークによるWeb会議の推進、がある。こうした独自のビジネスモデルで「ホワイトスペース戦略」を推進している。
同社の累積取引社数は、2017年12月期から2023年12月期にかけて着実に増加している。2017年12月期に24社(北海道内12社、北海道外12社)からスタートし、2023年12月期には114社となった。特に前期から2023年12月期にかけては北海道内取引社数が54社から74社に、北海道外取引社数が39社から40社に増加した。同社のサービスが地域を超えて広く認知され、需要が高まっていること、また同社のマーケットプレゼンスが強化され、特に北海道内での信頼性と顧客基盤が拡大していることが読み取れる。取引社数の増加は、同社のサービスの質の高さと顧客満足度の向上に起因している。今後も取引社数の増加を継続させるためには、既存顧客との関係を強化し、新規顧客の開拓を進めることが重要である。特に、北海道外でのさらなる市場拡大を目指すことで、同社の成長を一層加速させることが期待される。
(2) ITエンジニア育成の強化
同社は地方の中小IT企業である。地方のIT産業は、地元の直接業務だけでは成り立たず、首都圏からの下請業務が主となっているため、ITエンジニアのキャリアアップや収入アップを見出しにくかった。その打開策として、設立当初から全国のエンドユーザーからの元請業務を増やすことを目指し、開発に関する基礎知識に加え、企画力、発想力、コンサルティング力(ITとビジネスをつなげる力)などの能力を身に付けたITエンジニアの育成を推し進めてきた。顧客と直接向き合い、顧客が本当に必要とするシステムや機能を見つけられる人材育成が同社にとっては必要であり、ITとビジネスをつなげられる人材を増やすことで同社の成長スピードを上げることができる。
(3) ハイブリッドワークの推進
ウィズコロナにおける同社の日々の業務は、リモートワークのみでも順調である。一方で、社員同士のコラボレーションを通じてさらに成長するために、顔を合わせてコミュニケーションを図ることが重要なことにも気づいた。拡張した事務所を通じてオフィスワークとリモートワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」を行い、オフィスの価値を最大化する、「リモートワークで働きながら、オフィスワークでイベントを楽しむ」といった働き方改革を進める。快適に作業ができる広いフリーアドレスデスク、気軽に利用できる打ち合わせスペース、そのほかバーカウンターやカフェエリアなどのリラックススペースを設けるなど、社内でのコミュニケーションとコラボレーションが最大限に発揮できる「社内コワーキングスペース」を新たに構築し、株主総会でも利用している。
(4) 東京事業所
「Salesforce」は、コミュニティサイトやポータルサイトを簡単に構築でき顧客やパートナーと共有できるため、情報共有に適している。こうした特徴を生かして、東京事業所に在籍する5名ほどの社員が首都圏で開催されるオフラインイベントに参加し、積極的に情報共有を行う。札幌や地方だけでは得られない首都圏ユーザーからの情報を獲得しながら、今後の事業展開に反映していく。
(5) IR活動
道内では、まだ同社や「Salesforce」の知名度が低いため、四半期に一度の説明会の生配信、札証と共同の北海道各地での投資家への説明会などといった積極的なIR活動を行っていく。こうしたIR活動を踏まえて、投資家とのコミュケーション機会を増やし、透明性の高い経営を社内外にアピールしていく。
同社が本拠地を置く北海道は、地方のなかでも少子高齢化をはじめとした課題を多く抱えている。その状況下で自社の技術力・ノウハウを生かし成長することで、地方におけるモデルケースとなる。
(6) 北大テックガレージとの提携
2024年2月から、同社は、北海道大学技術支援・設備共用コアステーション(CoSMOS)と連携し、「Spring/Summer Founders Program(SFP)」を開始した。これは、北大テックガレージを拠点に、学生によるプロダクト開発を支援するプログラムである。文部科学省の支援を受け、北海道大学は教育プログラムのほかOB・OGを含むガレージアドバイザーや技術職員による助言・サポート体制を提供し、同社はプロダクトの開発費用やテックガレージの運営を支援する。このプログラムは、学生が自由な発想で技術的なプロダクト開発を進められる環境を提供し、起業家精神を養うことを目的としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中山博詞)
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1. 2024年12月期の業績見通し
2024年12月期は、売上高が前期比11.6%増の910百万円、営業利益が同38.1%減の121百万円、経常利益が同35.3%減の130百万円、当期純利益は同38.0%減の91百万円を見込んでいる。
売上高は過去最高となるものの、利益面は減少の見通しである。減益となるのは、パブリッククラウドサービス市場の成長とDXの加速に伴う顧客要求の変化に対応するため、人材育成と採用施策の強化に注力することが主な要因だ。特に、顧客との直接コミュニケーションを増やすことで、顧客のビジネスを深く理解し、持続的なサービス提供の実現を目指す。これにより、顧客のビジネス成功に貢献し、同社自身の長期的な成長基盤を構築することが期待される。2024年12月期には、設立以来8期連続の増収を予定しており、引き続き堅調なクラウド需要を背景とした成長を見込んでいる。
2. 成長戦略
同社は2022年9月に上場した。中長期経営計画などの具体的な施策はまだ発表していないが、同社では3ヶ年計画を策定し毎年見直しを行っている。今後は採用計画や社員1人当たりの労働稼働率などをKPIとして開示内容を検討している。
同社は成長期へ順調に推移しており、ホワイトスペース戦略、ITエンジニア育成の強化などをはじめとするこれまでの施策や、東京事業所及び拡張する本社の機能を生かした戦略を考えながら、健全な基盤をつくるための内部留保を進める方針である。現在は、人材採用による成長を重視しているが、今後はM&Aなども成長拡大の1つの手段として検討する可能性がある。
(1) ホワイトスペース戦略
同社は、未開拓領域に進出するための「ホワイトスペース戦略」を推し進めている。同社が上場するまで親会社であったテラスカイは、同社との協業によるグループシナジーを追求する方針である。首都圏で大企業をターゲットにするテラスカイとは事業領域が異なり、同社は地方で中小企業、IT関連部署のない企業、創業間もないスタートアップ企業がターゲットである。テラスカイグループにおける同社の特徴は、1) 札幌に本拠地を置くことでIT人材を獲得する機会を増やしていること、2) 予算が少ない企業に対して少人数・低予算で対処が可能であること、3) リモートワークによるWeb会議の推進、がある。こうした独自のビジネスモデルで「ホワイトスペース戦略」を推進している。
同社の累積取引社数は、2017年12月期から2023年12月期にかけて着実に増加している。2017年12月期に24社(北海道内12社、北海道外12社)からスタートし、2023年12月期には114社となった。特に前期から2023年12月期にかけては北海道内取引社数が54社から74社に、北海道外取引社数が39社から40社に増加した。同社のサービスが地域を超えて広く認知され、需要が高まっていること、また同社のマーケットプレゼンスが強化され、特に北海道内での信頼性と顧客基盤が拡大していることが読み取れる。取引社数の増加は、同社のサービスの質の高さと顧客満足度の向上に起因している。今後も取引社数の増加を継続させるためには、既存顧客との関係を強化し、新規顧客の開拓を進めることが重要である。特に、北海道外でのさらなる市場拡大を目指すことで、同社の成長を一層加速させることが期待される。
(2) ITエンジニア育成の強化
同社は地方の中小IT企業である。地方のIT産業は、地元の直接業務だけでは成り立たず、首都圏からの下請業務が主となっているため、ITエンジニアのキャリアアップや収入アップを見出しにくかった。その打開策として、設立当初から全国のエンドユーザーからの元請業務を増やすことを目指し、開発に関する基礎知識に加え、企画力、発想力、コンサルティング力(ITとビジネスをつなげる力)などの能力を身に付けたITエンジニアの育成を推し進めてきた。顧客と直接向き合い、顧客が本当に必要とするシステムや機能を見つけられる人材育成が同社にとっては必要であり、ITとビジネスをつなげられる人材を増やすことで同社の成長スピードを上げることができる。
(3) ハイブリッドワークの推進
ウィズコロナにおける同社の日々の業務は、リモートワークのみでも順調である。一方で、社員同士のコラボレーションを通じてさらに成長するために、顔を合わせてコミュニケーションを図ることが重要なことにも気づいた。拡張した事務所を通じてオフィスワークとリモートワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」を行い、オフィスの価値を最大化する、「リモートワークで働きながら、オフィスワークでイベントを楽しむ」といった働き方改革を進める。快適に作業ができる広いフリーアドレスデスク、気軽に利用できる打ち合わせスペース、そのほかバーカウンターやカフェエリアなどのリラックススペースを設けるなど、社内でのコミュニケーションとコラボレーションが最大限に発揮できる「社内コワーキングスペース」を新たに構築し、株主総会でも利用している。
(4) 東京事業所
「Salesforce」は、コミュニティサイトやポータルサイトを簡単に構築でき顧客やパートナーと共有できるため、情報共有に適している。こうした特徴を生かして、東京事業所に在籍する5名ほどの社員が首都圏で開催されるオフラインイベントに参加し、積極的に情報共有を行う。札幌や地方だけでは得られない首都圏ユーザーからの情報を獲得しながら、今後の事業展開に反映していく。
(5) IR活動
道内では、まだ同社や「Salesforce」の知名度が低いため、四半期に一度の説明会の生配信、札証と共同の北海道各地での投資家への説明会などといった積極的なIR活動を行っていく。こうしたIR活動を踏まえて、投資家とのコミュケーション機会を増やし、透明性の高い経営を社内外にアピールしていく。
同社が本拠地を置く北海道は、地方のなかでも少子高齢化をはじめとした課題を多く抱えている。その状況下で自社の技術力・ノウハウを生かし成長することで、地方におけるモデルケースとなる。
(6) 北大テックガレージとの提携
2024年2月から、同社は、北海道大学技術支援・設備共用コアステーション(CoSMOS)と連携し、「Spring/Summer Founders Program(SFP)」を開始した。これは、北大テックガレージを拠点に、学生によるプロダクト開発を支援するプログラムである。文部科学省の支援を受け、北海道大学は教育プログラムのほかOB・OGを含むガレージアドバイザーや技術職員による助言・サポート体制を提供し、同社はプロダクトの開発費用やテックガレージの運営を支援する。このプログラムは、学生が自由な発想で技術的なプロダクト開発を進められる環境を提供し、起業家精神を養うことを目的としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中山博詞)
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