【QAあり】サイエンスアーツ、楽天グループ・JVCケンウッドと資本業務提携 北米や海外市場への参入等により成長の上積みを目指す

投稿:2024/10/21 11:00

参考資料 サイエンスアーツについて

平岡秀一氏(以下、平岡):こんにちは。サイエンスアーツ代表取締役社長の平岡です。2024年8月期決算説明を行います。本日はよろしくお願いします。

参考資料 Buddycomについて

事業概要のご説明に入る前に、「Buddycom(バディコム)」というアプリがどのようにして生まれたかというストーリーについてお話ししたいと思います。

私の父は、パソコンが非常に得意だったのですが、スマホを使い始めた途端、メールを打つのに大変苦労していました。この姿を見て、「こういう人たちはたくさんいるな」と思いました。「簡単に誰でもコミュニケーションできるようなアプリがあったらいいのに」と思い、作ったのが、そもそもの始まりです。

技術的には、私は日立ソリューションズで証券のオンラインシステムや銀行の勘定系システムなどの高速処理に携わったことがありますので、「Buddycom」のサーバーに当たる部分の高速処理は得意分野でした。このような背景もあり、「Buddycom」が生まれたということを、まずご説明しておきます。

会社概要 事業概要

事業概要です。「Buddycom」の料金体系はサブスクリプション型で、ソフトウェアのライセンスとハードウェアの2つがセットになっているところが特徴です。

「Buddycom」のライセンスを買う方のほとんどがハードウェアも我々から調達されるところも特徴です。ハードウェアをなぜ我々から買うのかについては後ほど説明します。

会社概要 事業概要

みなさまがなぜ「Buddycom」を使ってくださるのかについてご説明します。理由は効率化です。

「Buddycom」を使うことで、16パーセントもの効率化を図ることができます。会社名はお伝えできませんが、ある企業の内部データについて聞き取り、スライドに示しています。

我々としてはこの先、AIを活用し、さらなる効率化を図っていきたいと考えています。例えば、店長に聞くのではなく、AIに簡単に聞けるようなかたちなど、フロントラインワーカーのみなさまに喜んでいただける便利な物を今後も提供していきたいと思います。

会社概要 市場環境

市場環境についてです。我々は机を持たずに最前線で作業されている方々のことを指してフロントラインワーカーと呼んでいます。例えば、鉄道などの運輸に携わる方々やスーパーマーケットで働く方々、小売の店舗で働く方々などです。日本の労働人口のうちフロントラインワーカーが占める割合は意外に多く、60パーセントに上ります。グローバルの労働人口においては80パーセントを占めます。

今までは、ここに対しDXがなかなか届いていなかったのが実情です。例えば従来のソリューションでは、電話やインカム、トランシーバーなどがあったのですが、もう少し効率良くいろいろな情報を一気に送れないかと考えました。

携帯電話と無線機は簡単に誰でも使えるものの、両方を持つのはやはり重たいです。それらを1つで扱うかたちで生まれたのが「Buddycom」です。スマートフォンとアプリ、我々の専用のイヤホンマイクなどを、より便利にフロントラインワーカーの方にお使いいただくという狙いで作っています。これが今回、市場に見事にはまったかたちかと思っています。

会社概要 ビジネスモデル

ビジネスモデルについてです。サブスクリプション型の収益が全体収益の約6割を占めています。

アクセサリーの販売の傾向はスライド中央のグラフのとおりです。一番下の黒いラインが契約ID数で、その上の赤いラインがマイクの受注数の累計、その上の青いラインがイヤホンの受注数を示しています。

要は、買い換えが発生しているということになります。スライドでも示していますが、おおむね、イヤホンは1年から3年、マイクは2年から5年と、定期的に買い換えていただいています。ある意味ではストックビジネスでリカーリングなかたちの収益となっているのも1つの特徴になっています。

また、我々は直販を一切していないことも非常に強いポイントです。後ほどご説明しますが、セールスパートナーすなわち大手の携帯キャリアさまなどを通して「Buddycom」を販売しています。やはり彼らの営業網や販売網がかなり強いところに意味があり、彼らの既存のお客さまに対するソリューションの一部として、我々を担いでいただくという狙いがあります。

我々の営業だけでは限界がありますが、セールスパートナーと組むことでレバレッジを効かし、大手のエンタープライズがどんどん入っていっているというところです。

会社概要 Buddycomの競争力①多機能性

「Buddycom」の強みについてです。1点目は多機能性です。一般的に無線機というと音声が中心になりますが、「Buddycom」は音声以外にも、音声の瞬時なテキスト化やチャットができる機能があります。

翻訳機能もあります。例えば、中国語、英語、スペイン語などの翻訳を一気に行うことができます。多国籍な現場でも、日本語で話すと、それを3ヶ国語、4ヶ国語に一気に翻訳できます。この機能は外国人労働者やインバウンド向けを意識して作りました。

映像配信(ライブキャスト)も可能です。無線でしゃべりながら映像を送るような機能です。

「MAP通話」は、会話できるユーザーを地図上で指定した範囲にユーザーに限る機能です。

能登半島地震の災害現場では、ボランティアの方々に「Buddycom」を使っていただいています。彼らは映像配信と「MAP通話」の2つの機能しか使っていませんが、「もう『Buddycom』は手放せない」と言っています。

例えば、「この備品はどうしましょう?」というようなことを映像で本部へ送り、どう処分するかという会話を瞬時に行います。トラックがどこにいるかをMAPで見て、「近くのこの現場に行ってください」という会話もできます。Webサイトの動画もご覧いただければと思います。

また、大手向けにさまざまな機能があります。1つは海外サーバーでの提供です。グローバルカンパニーが我々のお客さまにもたくさんいらっしゃいますが、例えばニューヨークで使うのであれば、アメリカにある北米のサーバーを経由して通信します。

光通信が速いといっても、やはり日本のサーバーで受けて往復させるよりも北米のサーバーを使い往復させたほうが断然速くなります。そのような意味でグローバルな展開を目指しています。その他、大手向けのさまざまな機能はスライドのとおりですので割愛します。

会社概要 Buddycomの競争力②ハードウェアの競争力

2点目の強みはハードウェアの競争力です。これは、我々も最初はわからなかったのですが、用途は現場によってまったく異なります。

例えば、飛行機の整備士の場合、エンジンの横で会話するため、強力なノイズキャンセリング機能と非常に大きな音を出すスピーカーマイク、雨に濡れてもよい仕様などが必要になります。また、ホテルや飲食店ではスタイリッシュな物が好まれたり、流通の小売店では長時間使える必要性があったりと、現場によってさまざまなニーズがあります。

このようなニーズに対し、我々はイヤホンなどのハードウェアを作る会社に出資などを行い、幅広いラインアップを用意することができました。

さらに、アクセサリー売上の8割以上を付加価値の高い独占販売品が占めています。このように「Buddycom」にチューニングしたアクセサリーを展開していることも、我々の強みの1つになっています。

会社概要 Buddycomの競争力③大規模対応力と大手導入実績

当社の強みの3点目は、グローバルレベルで見ても大規模ユーザーが非常に多く、業種にかかわらず、ホリゾンタルに利用されていることです。どれだけ大規模かというと、一例として、JR東日本さまは4万チャンネル、JR西日本さまも数万チャンネルを有しており、世界でもここまでの規模でご利用いただいているところはありません。

一般的にチャンネル数は制限されることが多いですが、我々は無制限のチャンネルを想定し設計しています。大手に実績があることも「Buddycom」の強みや安心感につながっています。

加えて、「Buddycom」は24時間365日ご利用いただけます。飛行場では、使用しない時間帯は朝3時から4時の間ぐらいで、他の時間はすべて使用しています。これは鉄道会社も同様です。絶対にダウンしてはならず、素早いレスポンスが求められます。チャットなら2秒、3秒遅れてもよいですが、音声で2秒、3秒待っていたら、イライラします。

国内や海外の同業他社と比較しても、まれに見るミッションクリティカルな厳しい環境で利用されていることも「Buddycom」の強みとなっています。

サマリー 2024年8月期実績サマリー及び2025年8月期計画

2024年8月期の実績についてご説明します。サマリーはスライドに記載のとおりです。

前期実績 業績ハイライト|損益計算書(通期)

業績ハイライトです。売上高は前期比53.5パーセント増と、かなり上振れています。「Buddycom」の利用料は30パーセント、アクセサリーもおよそ倍の伸びとなりました。

アクセサリーについては、やはりリカーシブルで買い替えが多く、ストックビジネスになっていることが非常に強いところです。

営業損失は修正計画比でも縮小していますが、これは広告宣伝費が期ずれの影響で減少したことによるものです。

前期実績 業績ハイライト|損益計算書(4Q会計期間)

第4四半期会計期間の損益計算書です。2024年第4四半期は営業利益と営業損失が黒字になっています。主な要因として、広告宣伝費をあまり使用しなかったことが挙げられますが、ポテンシャルとして黒字体質にできるということです。来期もどんどん投資をしていきますが、広告宣伝費や投資をやめれば、黒字にすることは可能だと考えています。

前期実績 業績ハイライト|KPIの状況1 ARR

ARRです。スライドに記載のとおり、2025年8月期も前期比32.5パーセントの増加を見込んでいます。

前期実績 業績ハイライト|KPIの状況2 ID数及びID単価

ID数およびID単価についてです。ID数は順調に推移しています。ID単価が若干上振れていますが、これは上位プラン「ライブキャストエンタープライズ」の大口受注が寄与しています。

前期実績 業績ハイライト|KPIの状況3 契約社数、契約単価及び解約率

月次解約率は0.32パーセントと、引き続き非常に低い値で推移しています。契約社数は前年同期比42.1パーセント増となりました。従前よりSMBへの展開を拡大してきた効果が現れてきたと考えています。

前期実績 業績ハイライト|売上高及び売上総利益

売上高および売上総利益についてです。「Buddycom」利用料、アクセサリー売上ともに、順調に推移しています。売上高総利益は非常に高く、「Buddycom」単体で見ると80パーセントほどの高い粗利率を誇っています。

前期実績 業績ハイライト|販売費及び一般管理費

販売費と一般管理費については、スライドに記載のとおりです。

提携 楽天グループ・JVCケンウッドとの資本業務提携について

資本業務提携についてご説明します。今回、楽天グループとJVCケンウッドとの資本業務提携を実施しました。実は、楽天グループとJVCケンウッドから同時期に資本提携の話が来たのですが、2社同時に株を調達するということで、IPOと同じほど、大変苦労しました。

というのも、我々の資本政策上の制約があるため、18パーセントほどを2社で分けていただくような交渉となりましたが、結果としてうまくいって本当によかったと思っています。

調達する資金の具体的な使途は、スライド下部に記載のとおり、営業と開発です。後ほどご説明しますが、事業提携した上でどのようなものを今後提供していくのかについては、おおよそ決まっていますので、そのような投資に使用していきます。主に投資開発が多いと考えています。

提携 楽天グループとの提携

個々にご説明します。まず、楽天グループとの連携についてです。我々の弱い部分として、これまで大手に力を入れていたため、SMBのマーケットになかなかリーチできていないということがありました。我々としても、今後はSMBへ行く必要があるということは認識していました。

さらにAIについても、我々1社だけでなく、やはりどこかと強力に組まなければいけないという、2つのウィークポイントがありました。そのような時に、楽天グループからお声掛けいただき、この2つのパズルがきれいにはまったかと思います。

もともと2024年4月より、「楽天トラベル」を通じて「Buddycom」の販売を行っていましたが、これが非常に功を奏していることから、今後、楽天エコシステムに参画している事業者にも販売を拡大し、楽天グループとして「Buddycom」の販売をしていきたいというお話をいただきました。

もう1つは、楽天エコシステムに関わる事業者に対してのAIの活用です。例えば、ホテルや旅館の人手不足の問題を、「Buddycom」の音声とAIの組み合わせで補っていこうということで、楽天グループと非常に話が盛り上がったということです。

提携 JVCケンウッドとの提携

次に、JVCケンウッドとの提携についてご説明します。我々は昔からの望みとして、消防などのミッションクリティカルな領域で使用する無線機と「Buddycom」を連携させたいという思いがありました。今回、JVCケンウッドとの提携の中では、ゲートウェイでつなげることを検討しており、マーケットに対しても非常に便利でインパクトのある商材になると期待しています。

もう1つは、北米への進出です。JVCケンウッドは、北米において40年以上の実績があり、特許も押さえています。現在、北米に約800の代理店を持ち、第3のシェアにまで成長しています。JVCケンウッドの決算報告を見ても、北米の無線マーケットは非常に好調です。

そのような意味で、既存の無線機とのつながること、携帯では実現できない高スペックのIP無線機に我々の「Buddycom」を搭載すること、北米や海外市場への参入、この3つのパズルがうまくはまったのが、今回のJVCケンウッドとの提携です。非常に幸運だったと同時に、我々の「Buddycom」の強みをご理解いただけたのではないかと思っています。

成長戦略 中長期成長目線

中長期の経営方針です。もともと2030年に売上50億円を目指すという話をしていましたが、今回の楽天グループとJVCケンウッドとの提携により、さらなる成長を目指そうと考えており、詳細については今後詰めていく予定です。今後について、ぜひ期待していただければと思います。

成長戦略 既存サービスの成長 - Enterprise

既存サービスの成長です。我々は大手のお客さまに非常に強く、携帯4キャリアさま、リコーさま、NTT東日本さまと組み、まだ伸ばせる余地のあるこのマーケットに挑戦していこうと考えています。

成長戦略 既存サービスの成長 - SMB

SMBです。円グラフにあるとおり、SMB市場はフロントラインワーカーが大変多く、エンタープライズの2.5倍以上のマーケットを我々は開拓していきます。

楽天グループも加わり、パートナーと強力に推進していこうと考えています。このようなSMBのマーケットに受け入れられるように「Buddycom」の改造を進めているところです。

成長戦略 新規プロダクトの展開

現在、いろいろな新規プロジェクトを立ち上げていますが、3つほどご紹介します。1つは「Buddycomベル」です。これまで「Buddycom」を使っていたのは、店員やその会社の方だけでしたが、一般のお客さまがQRコードを使って店員に話しかけたりできるなど、コンシューマーと店員がつながる「Buddycom」を作っています。

他にはAIのサービスや、オンプレミスのサービスです。これはセキュリティ上の観点からインターネットにつなぎたくない、または信頼性の関係でオンプレミスしたいというお客さまのためのサービスです。発表はこれからですが、引き続きいろいろな商品を導入していく予定です。

成長戦略 ライブコミュニケーション資産を活用した展開

我々の強みについて質問されることがありますが、その答えとしては、これまでに蓄積されたデータということになります。音声、動画、位置情報など、現場のさまざまなデータがあります。業種に特化した音声だけを集めることもできます。また、データを分析したりAIでソリューションを提供したり、我々の資産を活用して、お客さまにサービスを提供していきたいと考えています。

成長戦略 海外展開の強化

海外展開についてです。国内だけの特許は取らず、すべてグローバル特許を押さえています。例えば、翻訳などのテキスト化に関する特許は北米を含めて5ヶ国、ライブキャストに関する特許は北米を含めた2ヶ国で取得するなど、グローバルを意識した特許出願を行っています。今後は、JVCケンウッドとの共同開発により、北米での展開を目指していきます。

成長戦略 長期ビジョン

長期のビジョンです。我々のマーケットであるフロントラインワーカーに対し、未来のDXを提供していきたいと考えています。彼らが明るく笑顔で働けるような社会にしたいと思っており、そこに積極的に貢献していきます。

そのためには「Buddycom」のようなコミュニケーションツールをはじめ、現場のDXを推進する新しいサービスも作っていきます。世界中のフロントラインワーカーに喜んでもらえる商品を展開していこうと考えています。

今期計画 2025年8月期事業計画

2025年8月期の業績見通しです。ARRはこのまま積み上げていくと前期比32.5パーセント程度の増加になると見ています。従業員数もこれまで増やすのは10名程度でしたが、今回は15名の増員を予定しています。楽天グループ・JVCケンウッドとの業務提携による開発人員の増強により、プラス15名という大幅な人員増となっています。

売上高は前期比26.9パーセント増加しました。「Buddycom」利用料も前期比31.9パーセント増加ということで、このまま順調にいくのではないかという計画です。

私からの説明は以上です。どうもありがとうございました。

質疑応答:SMBの顧客獲得について

司会者:「SMBの顧客獲得を2024年8月期から注力するとのことでしたが、結果はいかがでしたか?」というご質問です。

平岡:以前は1桁台でしたが、15パーセント程度のシェアになりました。先ほどの社数も含め、SMBが伸びてきたという実感はあります。

質疑応答:楽天グループ・JVCケンウッドとの資本業務提携について

司会者:「今回、楽天グループ・JVCケンウッドの2社から出資を受けることになりました。お話にもありましたが、それぞれどちらから打診があったのでしょうか? またその目的は何だったのでしょうか?」というご質問です。

平岡:先ほどの説明と重なるところもありますが、実は両者ともに先方からいただいた話です。

楽天グループにしてみれば、楽天モバイルのSIMを伸ばしたかったのだと思います。旅館やホテルに向けてソリューションを展開し、それがさらに広がり、楽天エコシステムでも「Buddycom」とSIMをセットで販売したいという思いがあったのではないかと思います。「Buddycom」と一緒に、楽天モバイルを成長させたいという考えもあったのではないでしょうか。

JVCケンウッドについてですが、JVCケンウッドはIP無線を持っていません。これは聞いた話ですが、アメリカの消防や警察では、IP無線のニーズがあるらしく、そこを補うためにJVCケンウッドは自社で作るか、我々のようなところと協業するかをかなり悩んだそうです。今から4、5年前、もしくはそれより前の話です。

我々としては、以前からJVCケンウッドと展開していきたいという思いがありました。実際、過去にラブコールを送ったこともあるのですが、その時は見事に振られてしまいました。しかし今回は、先方からお声掛けいただきました。

携帯電話の電波が届かないところは、日本でも北海道などにはありますが、アメリカではそのようなエリアがたくさんあります。

今後、衛星のSIMが出てくると、世界中でつながるようになります。そのような意味で、我々のIP無線が必ず求められるようになると考えており、そのような背景から、我々と一緒に組みたいという思いがあったのではないかと思います。

配信元: ログミーファイナンス

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