イージェイHD Research Memo(7):公共事業の需要は引き続き堅調、2025年5月期は増収増益に転じる見通し

配信元:フィスコ
投稿:2024/09/12 16:07
*16:07JST イージェイHD Research Memo(7):公共事業の需要は引き続き堅調、2025年5月期は増収増益に転じる見通し ■E・Jホールディングス<2153>の今後の見通し

1. 2025年5月期の業績見通し
第5次中期経営計画の最終年度となる2025年5月期の連結業績は、売上高で前期比3.5%増の38,500百万円、営業利益で同11.5%増の4,850百万円、経常利益で同7.7%増の4,950百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同10.5%増の3,350百万円と2022年7月に上方修正した数値を据え置いた。また、受注高については同0.6%減の38,500百万円とほぼ前期並みの水準を見込んでいる。

前提となる2024年度の国土交通省の予算において、公共事業関係費予算は約7.2兆円(補正予算約2兆円含む)と前年度とほぼ同水準となり、また「防災・減災、国土強靭化の強力な推進」や「持続可能なインフラメンテナンスの実現」「防災・減災対策、老朽化対策等に対する集中的支援」「社会資本整備の戦略的かつ計画的な推進」「グリーントランスフォーメーション(以下、GX)の推進」など同社グループ事業に関連する予算については前年度を上回る規模となるなど、国内事業については引き続き安定的な業務量の確保が可能な状況となっている(海外については2024年度のODA予算が前年度比微減の5,650億円)。このため、同社は引き続き人材の採用を積極的に実施し、2025年5月期は前期末比で2.2%の人員増加を計画している(2024年4月の新卒採用30名弱から2025年4月は50名を予定)。業界内における人材獲得競争が激化するなかで同社はグループ合同説明会の実施や、会社ホームページのリニューアルを行うなど認知度の向上に努め採用力の強化に取り組んでいる。こうした取り組みにより計画を上回る人的リソースを確保できれば、業績の上ぶれも十分に可能な市場環境にあると弊社では見ている。

(1) 重点施策
2025年5月期は、第6次中期経営計画に向けて「革新・進化のための基盤整備」を推進する1年と位置付けており、以下の4点に重点的に取り組む方針だ。

(a) 事業の戦略強化と事業領域の拡大
コア・コンピタンスを基盤に、AIやAR/VR、ドローンなどの最先端技術を取り入れながら事業戦略を強化するとともに、M&Aの推進により市場の拡大を目指す。M&Aは、売上規模で5億円~60億円規模の会社をターゲットとしている。日栄プランニングは売上規模が1億円強で20数名程度の規模の会社であったが、九州エリアでのシェア拡大を目的に前期末に子会社化した。同様の規模のM&A案件は多く寄せられているもようだが、既存のグループ会社にない技術力や顧客基盤を持つ会社でなければ、効率性の観点から見送っているのが現状だ。

(b) バリューチェーンの全社最適化と経営基盤機能の強化
DXによる経営管理、組織管理に必要な数値の可視化を図り、バリューチェーンにおける効率的・効果的なマネジメントを推進する。SAPとSalesforceを核とする新基幹システムに2024年6月より移行しており、他の業務システムと連携することでデータの一元化と可視化を図り、迅速な経営判断を行う。新基幹システムの操作に慣れるまで期間を要するものの、生産性向上につながる取り組みとして期待される。なお、新システムには2024年5月期までの3年間累計で20.0億円となった。

(c) 資本コストや株価を意識した経営
資本効率やROEを意識した経営を実践し、PBR向上と企業価値の向上に努める。

(d) サステナビリティへの取り組み
「気候変動対応」や「人的資本経営への対応」などを、4つの要素「ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標」に沿って開示し課題解決に取り組むことで、ESG経営を推進する。

(2) 事業計画
受注計画については、重点6分野を中心に案件創出型営業を推進するほか、中央省庁への積極的な展開、海外基盤の再構築、インフラDXへの対応やGXを考慮した地方創生への対応に取り組むことで、前期比横ばい水準を見込んでいる。重点6分野の受注高は前期比4.0%増の23,700百万円を計画し、すべての分野で増加を目指す。受注全体に占める比率も前期の58.8%から61.6%に上昇する見通しだ。また、技術提案型業務についても採択率の改善により同9.9%増の14,000百万円と2期ぶりの増加を目指す。海外についても2024年度のODA(政府開発援助)予算が前年度比微減となるものの、非ODA案件の取り込みに注力し同46.3%増を計画している。

一方、売上高は業務DXの活用による作業効率向上や、ドローン、BIM/CIMなど最先端技術を用いた生産性向上に取り組むことで、受注残高(前期末27,713百万円)の早期完了を図り、過去最高売上の更新を目指す。発注機関別では、中央省庁が前期からの期ずれ案件が寄与し前期比11.7%増と伸長するほか、市町村が同9.4%増、海外が同15.8%増となり、都道府県や民間の減少分をカバーする見通しである。

売上原価率は前期比0.1ポイント低下の66.4%を計画している。賃金改定による労務費の上昇は受注単価のアップで吸収する見通しで、増収効果による若干の改善を見込む。また、販管費率も前期比0.8ポイント低下の21.0%となり、金額ベースでも同0.3%減とほぼ横ばい水準を計画している。人的資本投資の強化により人件費や研修費が増加するほか、研究開発費も同24百万円増の100百万円となるが、業務DXの推進による業務効率の改善等を見込んでいる。これらの取り組みにより、2025年5月期の営業利益率は12.6%と前期比0.9ポイント上昇し、過去最高水準となる見通しだ。なお、2024年6月にエイト日本技術開発の東京オフィスを移転したことに伴う什器・消耗品等購入費用や旧オフィスの原状回復費用を販管費及び特別損失として計上する見込みだが、増収効果により吸収できる見通しだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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