オンコリス Research Memo(3):テロメライシンは2023年に国内臨床試験結果を発表予定(1)

配信元:フィスコ
投稿:2023/03/27 16:53
*16:53JST オンコリス Research Memo(3):テロメライシンは2023年に国内臨床試験結果を発表予定(1) ■オンコリスバイオファーマ<4588>の開発パイプラインの動向

1. テロメライシン
(1) 概要
テロメライシンは、5型のアデノウイルスを遺伝子改変した腫瘍溶解ウイルスの一種で、テロメラーゼ活性の高いがん細胞に対して特異的に増殖することで、がん細胞を破壊する特徴を持つ。アデノウイルス自体は自然界の空気中に存在し、風邪の症状を引き起こすウイルスのため、ヒトに投与すると発熱等の症状が出るケースもあるが、正常な細胞の中では増殖能力が極めて低いため副作用も少なく、人体への安全性には問題のないことが確認されている。また、用法としては局所療法が中心となるため、放射線治療や免疫チェックポイント阻害剤等との併用により、患者のQOL並びに治療効果の向上が期待されている。なお、テロメライシンの国際的な一般名称は、「suratadenoturev(スラタデノツレブ)」である。

(2) 中外製薬とのライセンス契約解消と今後の国内における事業方針について
同社は2019年4月に中外製薬とライセンス契約を締結以降、国内の臨床試験は中外製薬が主体となって進めてきたが、前述のとおり2021年12月にライセンス解消契約を締結し、2022年10月をもって契約が解消された。このため、同社は中外製薬で実施していた食道がんを対象とした放射線併用療法による第2相臨床試験を引き継ぎ、データベース等の移管作業を行うとともに、(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)に対して治験依頼者変更手続きを行い、同年8月に同治験を承継したことを発表した。

また、契約解消にあたって同年10月までに製造委託先から受領したテロメライシンのGMP※製造開発費用等に関する請求額の約50%を中外製薬が負担することで合意した。なお、ライセンス契約の解消については、テロメライシンの安全性及び有効性が理由ではないことを両社で確認している。

※GMP(Good Manufacturing Practice):医薬品の製造及び品質管理に関する基準のこと。GMP認定のためには、製造工場ごとに構造や設備の運用・管理、製品の品質・衛生・製造管理などの細部にわたる審査・査察を受け、基準を満たすことが必要となる。創薬においては、GMP準拠施設で製造されたGMP製剤でないとヒトを対象とする治験に適用できない。


同臨床試験については2022年12月に被験者登録が完了し、2023年後半にもトップラインデータが発表される見込みだ。良好な結果が得られれば、2024年内に販売承認申請を行う予定である。先駆け審査指定制度※1の対象品目に指定されているため、早期審査により2025年には承認され上市する可能性がある。また、同社は販売承認申請までに、「オーファンドラッグ※2指定」の申請を行うとともに、自社販売ができる組織体制(製造販売、品質保証、安全管理に係る人材の採用)の構築を進めていく。販売についてはリソースがないことから、コ・プロモーションができる製薬企業と販売提携契約を締結する方針である。現在、国内及び外資系の複数の製薬企業と交渉を進めている状況で、トップラインデータ発表前でも契約に前向きな企業もあるが、同社はテロメライシンの事業価値を最大化できるようなパートナー企業を選定する意向のようだ。例えば、今後適応拡大を進めていくために必要となる臨床試験を共同で実施できる企業や、消化器領域に強い販売力を持つ企業などが想定される。なお、販売開始当初は市販後調査を行う必要があるため、現在治験を実施している医療施設(17施設)などを中心に販売を進め、徐々に対象医療施設を拡大する方針だ。

※1 先駆け審査指定制度とは、対象疾患の重篤性など一定要件を満たす画期的な新薬などについて、PMDAが薬事承認に関する相談・審査を優先的に取り扱い、承認審査期間を短縮することで早期実用化を目指すもの。通常は、承認申請から12ヶ月程度を目標に審査を行うが、同制度を活用することで審査期間を6ヶ月程度に短縮することが可能となる。テロメライシンは2019年4月に指定された。
※2 オーファンドラッグとは希少疾患用医薬品のことで、日本では対象患者数が5万人未満で医療ニーズが高いものなどが指定条件となっている。オーファンドラッグとして指定されると、10年間の独占販売期間が得られる。


(3) 開発状況
テロメライシンは現在、国内と米国にてプロジェクトが進んでいる。このうち、国内では食道がんを対象とした放射線併用による第2相臨床試験の最終登録が2022年12月に完了し、2024年の販売承認申請を目指すことになる。一方、米国では胃がんを対象とした免疫チェックポイント阻害剤との併用療法による医師主導の第2相臨床試験の組入れが完了した。今後は、胃がんの2nd-Line治療に対する医師主導治験を新たに実施するために、製薬企業との共同開発契約を2023年中に締結する予定である。

a) 食道がん(放射線併用療法、日本)
食道がんを対象とした放射線併用療法による第2相臨床試験は、外科手術による切除や根治的化学放射線療法(放射線と抗がん剤を用いた治療法)が不適な患者(ステージ2または3)を対象に行われ、ヒストリカルデータ(日本食道学会による放射線単独療法)との比較により有効性と安全性を確認する試験となる。予定症例数は37例で、2022年12月にすべての組入れが完了した。主要評価項目である有効性については、内視鏡検査で撮影した腫瘍部分の画像を専門医師が観察して判断する。トップラインデータについては2023年後半にも発表できる見通しだ。また、副次評価項目として生存率のデータについても調べるため、最終的なデータは同年冬頃に得られるが、生存率が問題になることはないとみられ、トップラインデータが良好な結果であれば、2025年の上市に向けて大きく前進する。

テロメライシンと放射線の併用療法では過去の臨床試験の結果から、放射線単独療法と比較して高い治療効果が得られていることが確認されている。具体的にはステージ2または3の患者に対する局所奏効率で見ると、放射線単独療法では30%未満であったが、テロメライシンとの併用療法では55%まで上昇した。放射線をがん細胞に照射することでテロメライシンのがん細胞への感染力が向上するとともに、放射線で切断されたがん細胞の遺伝子修復をテロメライシンが阻害することが要因と考えられる。このため、第2相臨床試験においても好結果が得られるものと期待される。

b) 胃がん・胃食道接合部がん(免疫チェックポイント阻害剤との併用療法、米国)
米コーネル大学等で進めていた胃がん・胃食道接合部がん患者(ステージ4)を対象とした免疫チェックポイント阻害剤※との併用療法による医師主導の第2相臨床試験は、2022年までに16例の組入れを実施し、うち3例で長期生存が確認され、有効性を示すボーダーライン(免疫チェックポイント阻害剤単剤で約15%)を超える結果を得たことにより、組入れを完了した。

※ペムブロリズマブ(開発:米メルク、商品名:キイトルーダ)


現在、胃がんでは免疫チェックポイント阻害剤と抗がん剤による併用療法が標準治療法となっているため、標準治療で効果が得られない患者を対象とした2nd-Line治療としての承認取得を目指すべく開発を進める方針である。現在、免疫チェックポイント阻害剤を販売する海外製薬企業と共同開発に向けた協議を進めており、コーネル大学で作成した医師主導の第2相臨床試験のプロトコルについて、候補先企業が了承次第、共同開発に関する契約を締結する。また、併せてオーファンドラッグ指定の申請準備も進める予定だ。契約締結後、2024年の早い段階で医師主導第2相臨床試験が開始されるものと見られる。順調に開発が進めば、2026年に第3相臨床試験に移行し、承認取得を目指すスケジュールとなる。第2相臨床試験の開発費用については、共同開発先が一部負担する可能性がある。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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