ナノキャリア Research Memo(3):創薬バイオベンチャーとして必要とされる形に進化・成長(2)

配信元:フィスコ
投稿:2023/03/07 14:33
*14:33JST ナノキャリア Research Memo(3):創薬バイオベンチャーとして必要とされる形に進化・成長(2) ■会社概要

2. 事業概要
次世代医薬品の中核となるmRNA医薬に事業領域をシフトした。mRNAはCOVID-19ワクチンとして世界的に大きな注目を集めている新しい創薬技術である。ナノキャリア<4571>は、mRNAを用いた変形性膝関節症の治療薬として開発を既に進めており2023年度に第I相臨床試験に入る計画である。ワクチンで広く認知されたmRNAであるが、国内企業でもmNRAを用いた治療薬の開発を手掛けている企業は非常に少なく、国内パイオニアとしてmRNA創薬を事業の柱に据える。新たなモダリティであるmRNAによる治療薬候補を創出し、臨床試験に入るためのパッケージを提供できるIP取得を速やかに行い、自社で臨床試験を実施せずに、非臨床ステージで開発企業へライセンスアウトし収益化を目指す。

M&Aや提携についても、技術基盤の拡充を目的に積極的に進める方針である。mRNA医薬の開発パートナーであるアクセリードの傘下にある企業との協業やその幅広いネットワークの活用とともに、共同研究開発など、企業やアカデミアとのオープンイノベーションによる多様な革新的技術を取り込むことで、mRNA創薬事業の推進と拡大を進めていく。

3. 特徴と強み
同社はこれまで数多くの臨床試験(治験)に取り組んでおり、後期ステージの開発も国内外で複数実施してきた。結果として、品質管理などが厳格に管理される治験薬製造も含めた臨床開発に関連する豊富な経験・知識と、がん領域から次世代医薬品(抗体、核酸)まで幅広い技術資産が蓄積されている。なお、次世代医薬品の中核となるオリゴ核酸医薬市場は、2030年に2.1兆円規模になるとの予測※もある。さらに、ビジネスモデル転換に関しても、核酸創薬に特化したアキュルナを吸収合併したことで、mRNAなどの核酸領域の研究実績が強みになっていると考える。

※Arthur D.Little「医薬品関連の産業化に向けた課題及び課題解決に必要な取組みに関する調査」(2020年12月)より


アキュルナは2016年からmRNAの研究に携わっている。mRNA医薬は新型コロナワクチンとして世界的に大きな注目を集め、mRNAワクチン市場規模は2022年に6兆円、2030年には16兆円になると予測されている。一方、ワクチン以外の治療薬の上市品は未だない。今後、mRNAによる治療薬創出の可能性は非常に大きく、アクセリードとの包括提携により、mRNA創薬に関わる製造、非臨床など研究開発の一貫体制を構築していることも大きな強みである。

4. 後期開発リスクを負わない収益化モデルにシフト
新たなmRNA創薬ビジネスは、同社の核酸医薬開発及びDDS技術の知見を生かしつつ、アクセリード及び傘下企業との協業によるmRNA研究開発一貫体制の構築により、効率的にmRNA医薬の創薬及び知財獲得を進め、後期臨床開発ステージに入る時点までに、製薬企業にライセンスアウトを行うこととしている。

非臨床段階に特化する背景には、製薬業界における非臨床段階でのライセンス活動の活発化がある。実際、非臨床段階でのライセンス契約数は、256件(2010~2014年)から423件(2015~2019年)に急増している。同社はmRNA医薬の研究開発に6年以上取り組んできた経験と実績及び、この過程で構築したバイオベンチャーやアカデミア、日本の政府機関等とのネットワークがあることから、mRNA医薬品の技術及びIP創出が可能としている。

開発資金は自社資金50億円と競争的資金獲得や共同研究先資金50億円を想定し、合計100億円程度とし、3年間で8件のIPを創出することを目標としている。1件当たりの開発費用は4~8億円、共同研究先は製薬、非製薬、バイオベンチャー、アカデミアなどを想定している。

収益目標は、IP1件当たりのライセンスアウト収入を30~50億円とし、ライセンスアウト収入として30億円を確保できれば黒字になる見込みである。なお、支払い時期はワンタイム一括(高値)でのマイルストーン収入としている。

現時点におけるプロジェクト数は、mRNAパイプラインとして5件(準備中を含む)進めているほか、来年度のIP取得を2件程度としている。2024年までに8件、その後毎年6〜8件のプロジェクトを実行し、3年後にIP創出を最低8件、ライセンスアウトを2件、ライセンスアウト収入を60~100億円と計画している。IP創出には2~3年必要であることから、早めに仕込むとともに、全社的なIP創出力の底上げを図っていく。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)

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