月末要因やパウエル講演を控え、ドル買い優勢に=NY為替前半

著者:MINKABU PRESS
投稿:2022/12/01 02:28
 きょうの為替市場はNY時間に入ってドル買いが優勢となる中、ドル円は一時140円台をうかがう動きも見せていた。朝方発表のADP雇用統計や米求人件数はともに労働需要の鈍化傾向を示したものの、為替市場の反応はドル買いとなっている。午後に控えているパウエルFRB議長の講演を巡って、調整が出ているのかもしれない。また、本日は11月末ということもあり、月末のドル買い需要が出ている可能性もありそうだ。

 市場では本日のパウエルFRB議長の講演はドルをサポートする可能性があるとの声も出ている。パウエル議長はタカ派トーンを堅持し、利上げサイクルが間もなくピークを迎えるとの市場の思惑に水を差し、市場の意識をハト派期待から遠ざける可能性があるという。

 ただ、議長の講演は、先日のFOMC後の会見とトーンは変わらずに、利上げペースを緩める可能性を示唆する一方で、ターミナルレート(最終到達点)は従来予想よりも高くなる可能性に言及すると見られているようだ。議長の講演は日本時間の1日3時30分頃の予定。

 ユーロドルは戻り売りが強まっている。ロンドン時間には1.04ドル台をうかがう動きも見せていたが、NY時間に入って一時1.02ドル台まで下落する展開。200日線が1.0375ドル付近に来ているが、その水準で上値レジスタンスが形成されているようだ。

 ロンドン時間に11月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)が発表され、物価上昇圧力の緩和が示された。この結果を受けて、見方が二分していた次回ECB理事会での利上げ幅は0.50%ポイントとの見方が強まっている。短期金融市場ではその確率が75%程度まで上昇。ただ、ユーロは大きな反応を示していない。外部要因とドルの情勢が引き続きユーロドルのパフォーマンスを牽引しており、この後のパウエルFRB議長の講演を受けての下振れリスクを警戒している模様。

 ユーロドルは現在の1.03ドルを完全にブレイクすると、下落の勢いが増し、週初に見られた1.0200-1.0250ドルの水準まで下落する可能性もあるという。

ユーロ圏消費者物価指数(HICP)(概算値速報)(11月)19:00
結果 10.0%
予想 10.4% 前回 10.6%(前年比)
結果 5.0%
予想 4.9% 前回 5.0%(コア・前年比)
結果 -0.1%
予想 0.1% 前回 1.5%(前月比)

 ポンドドルは一時1.19ドルちょうど近辺まで値を落とした。NY時間の朝方には1.20ドル付近での上下動が続いていたが、NY時間に入って売りを強めている。

 きょうは英中銀のチーフエコノミストのピル委員の講演が伝わっていたが、EU離脱も英国の高インフレの一因との見解を示していた。EU離脱は労働力不足を引き起こし、それによって企業間の価格圧力が強まり、経済を弱体化させたとしている。EU離脱により15年以内に英国が永久に失う国民生産は3%と推定し、この仮定を変更する理由はないとも付け加えた。EU離脱は、移民の変化、競争力低下、貿易強度低下の3つの経路で物価に上昇圧力をかけているという。

 EUとの自由な移動が終了したことで、企業は国外から人を雇うことが難しくなっている。移民全体への影響はまだ限定的に収まっているが、移民労働者の国籍がEU圏外からの人が多くなる傾向にあり、その人たちが労働市場ですぐに生産性を発揮するかは疑問の余地があるとしている。また、EU離脱によって、英中銀の仕事が複雑になっているとも指摘していた。

MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

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