■日産東京販売ホールディングス<8291>の業績動向
3. 事業別動向
事業別では、自動車関連事業が売上高131,533百万円(前期比1.3%減)、セグメント利益(営業利益)4,748百万円(同26.1%増)、情報システム関連事業が売上高6,486百万円(同4.9%減)、セグメント利益423百万円(同16.3%増)、その他が売上高358百万円(同10.8%増)、セグメント利益144百万円(同11.3%増)となった。
自動車関連事業では、新車事業が車両供給が不足する中、ニッサン・リテール・コンセプト導入店舗を拡充し(着工6店舗、開店3店舗)、「ノート」などe-POWER車や「リーフ」などEVを中心に受注台数と収益の確保に取り組んだ結果、増益となった。中でも「ノート」の上級タイプとして市場投入した「オーラ」は、輸入車志向の新たな客層を呼び込み販売台数が安定して上位に入るなど結果を残し、カーオブザイヤー三冠にも輝いた。中古車事業は、新車販売減による下取車の減少で販売台数は減少したものの、収益性の高い小売りに注力し、また新車同様中古車需要も根強かったため価格が上昇して増益となった。全体としては3販社統合による生産性向上や経費削減もあり、自動車関連事業のセグメント利益は2ケタ増益となった。情報システム関連事業では、ハードウェア、導入支援サービスなどの売上高は減少したものの、データセンターなどのマネージドサービスが堅調に推移し、減収ながら増益を達成した。その他事業(不動産関連)は賃貸契約の増加や賃料改定などにより増収増益となった。なお、同社は2022年3月、子会社GTNETの株式(持分51%)を従来のオーナーに売却した。売却の理由は、GTNETがスポーツカーなど資産性の高い自動車の中古車販売を全国の店舗で展開しているのに対し、東京都を中心に一般の乗用車を販売する同社との間でシナジーが得づらくなったためである。投資効率や費用負担の面から売却の決断は妥当と思われる。
車両供給不足の中、今期は新型車続々と投入
4. 2023年3月期の業績見通し
2023年3月期の業績見通しに関して同社は、売上高140,000百万円(前期比1.2%増)、営業利益4,500百万円(同2.1%増)、経常利益4,200百万円(同0.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,200百万円(同4.7%増)を見込んでいる。GTNETが連結から外れるため、売上高は実質6%増程度が見込まれるが、利益への影響はほとんどない模様である。
世界的な半導体不足による車両の供給不足が継続するなど自動車業界は引き続き不透明な状況にあり、原燃料高や円安など企業経営にとっても逆風が吹いている。これに対して同社は、日産自動車の進める先進技術への取り組みと電動車(EV・e-POWER搭載車)などのラインナップ充実を活かすことでマーケットシェアの向上を図り、提案型営業による付加価値販売や販売効率の改善を継続することで収益拡大を目指す方針である。また、3販社の統合効果をさらに発揮することで、生産性や顧客利便性の向上にもつなげていく計画である。なお、今期に予定される新型車は前述した通り「アリアB6」、新型軽EV「サクラ」、「フェアレディZ」などの新型車で、日産自動車の意気込みを示すかのように例年より多い。
2023年3月期は、車両供給不足や国際情勢、原燃料高、円安といったリスクが期初から打ち揃っているため、前期以上に不透明感が強い。しかし、受注の積み上がりに見る需要の強さ、日産自動車の新型車攻勢を考慮すると、GTNET連結除外をカバーして増収は十分ターゲットと思われる。利益面では、新型車の販売が増える分、ミックス改善が進んで売上総利益率が改善する可能性が高まると思われる。また、新型車の投入やニッサン・リテール・コンセプトの店舗への導入など経費も増えることになるが、統合が一巡する7月以降については統合効果(特に統合時の一時的コスト増の反動)を見込んでおらず、販管費に抑制の余地がありそうだ。リスクの多さを考えるとある程度致し方ないことかもしれないが、実質6%程度の増収となる中で営業利益が微増予想というのは、やや保守的な印象である。
新たな販売スタイルを通じて持続的成長に取り組む
5. 持続的成長に向けた取り組み
持続的成長に向けた取り組みとして、同社は、新たな販売スタイルを通じて、日産自動車の先進性やVRを活用した試乗体感の提供、カーボンニュートラルへの貢献を進めている。
まず、日産自動車の先進性を示す「NISSAN INTELLIGENT MOBILITY」を体現する日産車の情報発信基地として、既存店にニッサン・リテール・コンセプトを導入するリニューアルを続けている。2023年3月期については、リニューアルのペースを引き上げ、9店舗に導入する予定である。さらに2022年3月、日産自動車の先進性のみならず快適性や走行性能を疑似体験できる「NISSAN TOKYO Virtual testdrive ブース(VR試乗体感)」を、イオンモール多摩平の森(東京都日野市)内の常設展示場に設置した。ゴーグルを使用することなく、1人から4人までバーチャル試乗体感を楽しむことができる。現在、セレナe-POWER、ノート オーラe-POWER、NISSAN GT-R、日産360°セーフティアシスト(先進安全技術)の4種類の試乗体感を用意している。将来的に「NISSAN TOKYO Virtual testdrive ブース」を改良して、ニッサン・リテール・コンセプト導入店舗に移植する可能性も期待したい。持続的成長に向けた取り組みとして最も重要なことがカーボンニュートラルへの貢献といえる。EVは、リーフであれば同クラスのガソリン車と比較して資源~廃車までのCO2排出量が約4割に留まるという。したがって、同社がEVを積極的に販売して新車に占める比率を引き上げることが、まさにカーボンニュートラルへの貢献といえよう。すでに、リーフの累計販売台数は8,000台(2022年3月)を超えており、さらなる普及を図るため急速充電設備(東京都内430基中101基)も拡充しているところである。また、EVを活用した地域社会貢献も推進しており、各自治体と「災害連携協定」を締結、避難所などへの電力供給体制も構築している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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3. 事業別動向
事業別では、自動車関連事業が売上高131,533百万円(前期比1.3%減)、セグメント利益(営業利益)4,748百万円(同26.1%増)、情報システム関連事業が売上高6,486百万円(同4.9%減)、セグメント利益423百万円(同16.3%増)、その他が売上高358百万円(同10.8%増)、セグメント利益144百万円(同11.3%増)となった。
自動車関連事業では、新車事業が車両供給が不足する中、ニッサン・リテール・コンセプト導入店舗を拡充し(着工6店舗、開店3店舗)、「ノート」などe-POWER車や「リーフ」などEVを中心に受注台数と収益の確保に取り組んだ結果、増益となった。中でも「ノート」の上級タイプとして市場投入した「オーラ」は、輸入車志向の新たな客層を呼び込み販売台数が安定して上位に入るなど結果を残し、カーオブザイヤー三冠にも輝いた。中古車事業は、新車販売減による下取車の減少で販売台数は減少したものの、収益性の高い小売りに注力し、また新車同様中古車需要も根強かったため価格が上昇して増益となった。全体としては3販社統合による生産性向上や経費削減もあり、自動車関連事業のセグメント利益は2ケタ増益となった。情報システム関連事業では、ハードウェア、導入支援サービスなどの売上高は減少したものの、データセンターなどのマネージドサービスが堅調に推移し、減収ながら増益を達成した。その他事業(不動産関連)は賃貸契約の増加や賃料改定などにより増収増益となった。なお、同社は2022年3月、子会社GTNETの株式(持分51%)を従来のオーナーに売却した。売却の理由は、GTNETがスポーツカーなど資産性の高い自動車の中古車販売を全国の店舗で展開しているのに対し、東京都を中心に一般の乗用車を販売する同社との間でシナジーが得づらくなったためである。投資効率や費用負担の面から売却の決断は妥当と思われる。
車両供給不足の中、今期は新型車続々と投入
4. 2023年3月期の業績見通し
2023年3月期の業績見通しに関して同社は、売上高140,000百万円(前期比1.2%増)、営業利益4,500百万円(同2.1%増)、経常利益4,200百万円(同0.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,200百万円(同4.7%増)を見込んでいる。GTNETが連結から外れるため、売上高は実質6%増程度が見込まれるが、利益への影響はほとんどない模様である。
世界的な半導体不足による車両の供給不足が継続するなど自動車業界は引き続き不透明な状況にあり、原燃料高や円安など企業経営にとっても逆風が吹いている。これに対して同社は、日産自動車の進める先進技術への取り組みと電動車(EV・e-POWER搭載車)などのラインナップ充実を活かすことでマーケットシェアの向上を図り、提案型営業による付加価値販売や販売効率の改善を継続することで収益拡大を目指す方針である。また、3販社の統合効果をさらに発揮することで、生産性や顧客利便性の向上にもつなげていく計画である。なお、今期に予定される新型車は前述した通り「アリアB6」、新型軽EV「サクラ」、「フェアレディZ」などの新型車で、日産自動車の意気込みを示すかのように例年より多い。
2023年3月期は、車両供給不足や国際情勢、原燃料高、円安といったリスクが期初から打ち揃っているため、前期以上に不透明感が強い。しかし、受注の積み上がりに見る需要の強さ、日産自動車の新型車攻勢を考慮すると、GTNET連結除外をカバーして増収は十分ターゲットと思われる。利益面では、新型車の販売が増える分、ミックス改善が進んで売上総利益率が改善する可能性が高まると思われる。また、新型車の投入やニッサン・リテール・コンセプトの店舗への導入など経費も増えることになるが、統合が一巡する7月以降については統合効果(特に統合時の一時的コスト増の反動)を見込んでおらず、販管費に抑制の余地がありそうだ。リスクの多さを考えるとある程度致し方ないことかもしれないが、実質6%程度の増収となる中で営業利益が微増予想というのは、やや保守的な印象である。
新たな販売スタイルを通じて持続的成長に取り組む
5. 持続的成長に向けた取り組み
持続的成長に向けた取り組みとして、同社は、新たな販売スタイルを通じて、日産自動車の先進性やVRを活用した試乗体感の提供、カーボンニュートラルへの貢献を進めている。
まず、日産自動車の先進性を示す「NISSAN INTELLIGENT MOBILITY」を体現する日産車の情報発信基地として、既存店にニッサン・リテール・コンセプトを導入するリニューアルを続けている。2023年3月期については、リニューアルのペースを引き上げ、9店舗に導入する予定である。さらに2022年3月、日産自動車の先進性のみならず快適性や走行性能を疑似体験できる「NISSAN TOKYO Virtual testdrive ブース(VR試乗体感)」を、イオンモール多摩平の森(東京都日野市)内の常設展示場に設置した。ゴーグルを使用することなく、1人から4人までバーチャル試乗体感を楽しむことができる。現在、セレナe-POWER、ノート オーラe-POWER、NISSAN GT-R、日産360°セーフティアシスト(先進安全技術)の4種類の試乗体感を用意している。将来的に「NISSAN TOKYO Virtual testdrive ブース」を改良して、ニッサン・リテール・コンセプト導入店舗に移植する可能性も期待したい。持続的成長に向けた取り組みとして最も重要なことがカーボンニュートラルへの貢献といえる。EVは、リーフであれば同クラスのガソリン車と比較して資源~廃車までのCO2排出量が約4割に留まるという。したがって、同社がEVを積極的に販売して新車に占める比率を引き上げることが、まさにカーボンニュートラルへの貢献といえよう。すでに、リーフの累計販売台数は8,000台(2022年3月)を超えており、さらなる普及を図るため急速充電設備(東京都内430基中101基)も拡充しているところである。また、EVを活用した地域社会貢献も推進しており、各自治体と「災害連携協定」を締結、避難所などへの電力供給体制も構築している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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