円安がドル円をサポート カナダ中銀受けカナダドル下落=NY為替概況

著者:MINKABU PRESS
投稿:2021/12/09 06:56
 きょうのNY為替市場、ドル買いは一服していたものの、円安がドル円をサポートした。ドル円はNY時間に入って113円台後半まで上昇し、114円台をうかがう展開を見せた。市場はファイザーの発表もあってオミクロン株への懸念をひとまず後退させている。きょうの米株式市場は上げを一服させているものの、リスク選好の雰囲気は温存しており、円安と米国債利回り上昇がドル円をサポートしたようだ。21日線が114円ちょうど付近に来ているが、目先の上値メドとして意識される。

 オミクロン株の出現で強まったリスク回避の雰囲気は大きく後退している。その過程で為替市場はこれまでにない動きを示している。それはドルが逃避通貨から一旦離脱していることだ。むしろ、リスク選好のドル高の反応が強まっている状況だが、それだけ市場はFRBの金融政策に関心を集めている証拠とも言える。

 感染拡大への懸念が緩和すれば、FRBは早期の引き締めを進め易くなるとの観測が強まっている。市場では来年のFRBの利上げ回数は2-3回というのがコンセンサスとなっているが、ECBや日銀と比べても早期の利上げが想定されている。その分、金融政策の格差拡大に伴うドル高期待が強まるとのシナリオを市場は期待しているものと思われる。

 ユーロドルは買い戻しが強まり、1.13ドル台半ばまで回復。特にECBが慎重姿勢を緩めるなどのファンダメンタルズ的な材料は見当たらないものの、ユーロドルはストップを巻き込んで買い戻しを強めた。前日は1.12ドル台前半まで下落し、先月に付けた年初来安値をうかがう動きも見せていた。リバウンド相場が完全に終了したかにも思われたが、1.12ドル台前半で下値攻めを躊躇している気配も見られていた中で、ショート勢も下値を攻め切れずにショートカバーに転じたのかもしれない。きょうの上げで21日線も回復しており、明日以降の動きが注目される。

 ただ、市場ではユーロドルに弱気な見方が圧倒的で、来年は1.08ドルまでの下落の可能性も指摘されている。もし、ユーロドルが反転するシナリオがあるとすれば、ECBが慎重姿勢を緩めるか、FRBの利上げ期待を市場が完全に織り込んだ瞬間との見方が出ている。むしろ、後者のほうが可能性が大だという。ちなみに、CMEのFF金利先物取引からのFRBの利上げ確率を確認すると、来年末までに2回以上の利上げ確率が87%、3回以上を63%で織り込んでいる。現状からすれば、かなり織り込んでいる状況のようにも見える。

 ポンドドルはNY時間に入って買い戻しが膨らみ、1.32ドル台半ばまで戻している。ただ、ロンドン時間には1.3165ドル付近まで下落し、年初来安値を更新する場面が見られた。ジョンソン首相がオミクロン株の感染拡大を防ぐために新たな規制を導入すると伝わったことが嫌気された模様。一方、来週の英中銀金融政策委員会(MPC)での利上げ期待も後退しており、翌日物スワップ金利(OIS)市場では、来週の利上げ確率が22%まで低下している。先月はほぼ100%まで高まっていた。

 きょうはカナダ中銀が金融政策委員会(MPC)の結果を公表し、それを受けてカナダドルは売りが強まった。政策は予想通りに据え置かれ、金利のフォワードガイダンスも変更はなかった。10月と変わらずに2022年半ばの利上げ開始を予想している。一部からは先週の強いカナダ雇用統計を受け、利上げ開始見通しを前倒しして来るのではとの予想もあっただけに、市場はネガティブ・サプライズの反応を見せた模様。

MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

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