スカパーJSATHD、営業利益は前年同期とほぼ同水準 会計基準適用の影響を受けるも予想に対して順調に進捗
連結業績概況
松谷浩一氏(以下、松谷):松谷でございます。本日はお忙しい中、スカパーJSATホールディングスの決算説明会にご参加いただきまして、誠にありがとうございます。それでは第1四半期の業績について、まずは連結決算の概要からご説明します。スライドの4ページをご覧ください。
当事業年度から「収益認識に関する会計基準」を適用しています。利益面での影響は軽微ですが、営業収益と営業費用の純額処理により、営業収益に影響があります。第1四半期の連結営業収益は291億円、前年同期比16パーセントの減少です。ただ、会計基準適用の影響が52億円ほどありますので、この点を考慮すると、昨年度から実質1パーセント程度の減収となっています。
営業利益は55億円です。会計基準適用の影響が9,000万円弱あるため、前年同期とほぼ同水準になっています。当期純利益は49億円で、連結子会社の解散に伴う税効果による税金費用の減少により、前年同期比22.6パーセント増となりました。通期業績予想の進捗で見ると、営業収益は24パーセント、営業利益は30パーセント、当期純利益は38パーセントと順調に推移しています。
セグメント別業績概況:宇宙事業
各事業セグメントです。5ページをご覧ください。まずは、宇宙事業セグメントの業績についてご説明します。営業収益は138億円です。会計基準適用の影響が6億円あるため、前期とほぼ同水準でした。「JCSAT-17」の安定収益に加え、アジア太平洋をカバーする「Horizons 3e」も顧客数を増やしています。
一方で、連結子会社のエンルートの解散や、前期に発生した、一時的な機器販売がなくなったことによる減収要素もあり、セグメント営業収益としては、前年度と同等の水準となっています。先ほどお伝えしたとおり、セグメント利益については、連結子会社の解散に伴う税金費用の減少、9億円を計上したことにより、前年同期比で増益となっています。
セグメント別業績概況:メディア事業
メディア事業セグメントについてご説明します。6ページをご覧ください。営業収益は179億円です。会計基準適用の影響が47億円ありますが、その点を考慮しても、プレミアムサービス加入者の減少に伴う視聴料収入減などにより、減収となりました。
営業費用については、昨年度と今シーズンでプロ野球等の開幕時期が異なったことによる関連費用の発生時期がずれた影響も含め、前年同期比で減少していますが、セグメント利益は前年同期比で増益となっています。以上が、第1四半期の業績の概要です。
パートナー企業との取り組み
ここからは、宇宙事業・メディア事業それぞれの直近のトピックス、成長に向けた取り組みについてご紹介します。まずは、宇宙事業からご説明します。9ページをご覧ください。
2021年5月に、NTTと持続可能な社会の実現に向けて、新たな宇宙事業の創出を目指すことに合意し、ビジネス協業を目的とする業務提携契約を締結しました。NTTが保有するネットワーク・コンピューティングインフラと、当社が保有している宇宙アセット・事業を統合し「宇宙統合コンピューティング・ネットワーク」の構築に挑戦します。宇宙空間のICTインフラ基盤としての有効活⽤に向け、2022年より技術実証を開始する予定です。
また、本年6⽉にはパートナー企業6社で、衛星データサービス企画株式会社を設⽴しました。本企画会社は、災害時の迅速な状況把握や、平時の継続的なインフラ監視などに幅広く適⽤可能な、衛星データ解析情報の提供サービスの事業化を進め、2023年度から本格的なサービスを開始することを⽬指しています。
衛星量子暗号技術への取り組み
10ページをご覧ください。総務省公募案件の「グローバル量⼦暗号通信網構築のための衛星量⼦暗号技術の研究開発」に提案を⾏い、6⽉に採択されました。量⼦コンピューターの登場やデータ通信の増大などを背景に、安全保障や外交などの分野において、よりセキュリティレベルの⾼い量⼦鍵配送技術への需要が⾼まっています。
衛星通信は、地上では実現が難しいとされている⻑距離や移動体における鍵配送にも適しており、当社は、⾒通し通信量⼦鍵配送技術、および物理レイヤ暗号技術の研究開発を⾏い、地上から低軌道、中軌道、静⽌軌道まで含めた、グローバルなスケールで量⼦暗号通信網の実現に貢献していきたいと考えています。
衛星フリート図
衛星フリート図について、11ページをご覧ください。JAXAから譲り受けた「SDS-4」の運用が6⽉に終了したため、現在はお手元の資料のとおり、17機の体制になっています。
21/22シーズン ブンデスリーガ
続いて、メディア事業についてご説明します。13ページをご覧ください。8月3日に行われた東京オリンピック、サッカー男子準決勝は残念な結果でしたが、高い視聴率だったようです。
いよいよ8⽉13⽇にドイツ、ブンデスリーガの「21/22 新シーズン」が開幕を迎えます。リーグ最年⻑の⻑⾕部選⼿や、U-24⽇本代表の遠藤選⼿など、多数の⽇本⼈選⼿が所属しているブンデスリーガを、「スカパー!」は全試合放送・配信します。
今シーズンからの新たな取り組みとして、放送・配信だけでなく、ブンデスリーガ関連商品のECサイトも開始する予定です。また、ブンデスリーガをさらにお楽しみいただくために、次世代ブロードキャスト実現に向けた専⽤アプリを投⼊する予定です。
アジア初のインタラクティブフィードの実装に加え、タイムライン表⽰や試合スタッツなどのカスタマイズを可能とする機能を搭載し、サッカーファンに向けて、次世代の新しい視聴体験を提供していきたいと考えています。
開幕に合わせ、今⽉11⽇にブンデスリーガ開幕のPRイベントも開催します。現役選⼿にもドイツからリモート出演いただき、ブンデスリーガをさらに盛り上げていきます。
株主還元
最後に、株主還元施策についてご説明します。14ページをご覧ください。本⽇、当社の取締役会において、30億円を上限とした⾃⼰株式取得の決議を⾏いました。従来から実施している安定配当に加え、⾃⼰株式取得により、株主還元を拡充したいと思います。私からの説明は以上でございます。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:宇宙事業の売上状況について
質問者1:スライド5ページの宇宙事業のセグメントについて、売上の状況をもう少しお伺いしたいと思います。昨年度は新型コロナウイルスの影響で、航空機Wi-Fiの収入が減少するなど、少し影響があったと思うのですが、それがどのようになっているのか教えてください。
また、先ほど衛星ごとのお話の中では、「Horizons」の客数が増えているということでしたが、どのくらい増えているのでしょうか?
松谷:全般的な流れとしては、ご承知のとおり現在においても新型コロナウイルスのまん延に伴って、国際線ならびに国内線の航空機Wi-Fiの需要は落ち込んでいる状態が続いています。
また、先ほどお伝えしたとおり、海外でのゲートウェイの展開等も進めていますが、新型コロナウイルスの影響を受け、スケジュール的に若干の影響が出ているというのが定性的な状況です。数字面については森合から補足します。
森合裕氏(以下、森合):今、松谷からもありましたが、昨年度は航空機Wi-Fiの需要が大きく落ち込みました。今回の第1四半期および今後の見通しですが、引き続き不透明な状況が続いているという認識です。
一方で、欧米ではある程度ワクチンの供給が進み、経済活動が再開されていることを背景に、航空機の需要も上向いてきていると認識しています。そのため、国内においてもワクチン接種が進むことによって、昨年度よりも向上・改善していくことを期待しています。
ただし、現在のように感染者数が増加している状況においては、まだ不透明な部分はありますので、そのあたりについては引き続き注視していきたいと考えています。
また、「Horizons」関係については、顧客数が大きく増えているということではないものの、着実に受注を重ねています。特に「Horizons 3e」については着実に受注を重ねている状況です。
質問者1:航空機Wi-Fiについて、昨年度は四半期ごとに「最終的には7億円減収」など、「何億円」というかたちでディスクローズしていただきました。昨年度よりさらに減っていることはないかと思いますが、この第1四半期と昨年の第1四半期を比較するとどのようになっているのでしょうか?
森合:第1四半期での比較で言いますと、今期のほうが若干落ち込んでいます。これは、当社とサービスプロバイダとの契約が航空機需要と同期しているわけではなく、契約上の影響が現れるまでには時間差があるためです。昨年の第1四半期と比較すると、この第1四半期は数字としては落ち込んでいますが、それでも大きな差があるわけではありません。
質問者1:要は「何億円」などという単位ではないということでしょうか?
森合:数億円というようなレベルではないということです。
質疑応答:「JCSATー1C」の商談の進捗について
質問者1:「JCSATー1C」について、昨年度の決算の時にはインドネシアや極東ロシアで大型の商談が進んでいるというご説明があったと思うのですが、その後の進捗はいかがでしょうか?
森合:引き続き、今お話にあった2地域で営業活動を推進している状況ですが、インドネシアについては、今年度の下期には収益の計上が図れるものと期待しています。
ロシアについても引き続き営業活動を推進しており、進捗もありますが、今のところ収益化が何月になるという見通しが出せない状況ですので、こちらも引き続き注力していきます。
質疑応答:エンルート解散の影響について
質問者1:エンルート関係についてですが、税引前の営業利益への影響はあまりなかったということでしょうか? それともなにか影響が現れたのでしょうか?
森合:エンルート自体の営業利益はマイナスだったため、昨年度と比較してその部分は少し改善したということです。
質疑応答:広告宣伝費について
質問者1:メディアの契約数を見ると、IC数はまた別のトレンドですが、契約数はまだ減っている状況です。広告費等もかなり削られており、昨年の第1四半期のSACの水準はそれほど大きくなかったため、経費削減の余地はあまりないと思っていました。
広告宣伝費が8億円くらい減っているわけですが、昨年の第2四半期、第3四半期は少しずつ増え、第4四半期は大きく増えたということで、今年も戦略的な取り組みがあるのだと思います。そのあたり、契約や視聴料収入と経費のバランスについて、第1四半期の仕上がりはどのような出来栄えだったのか、第2四半期、第3四半期以降の展望をどのようにお考えか、解説をお願いします。
美谷衛氏(以下、美谷):第1四半期の仕上がりは、一言で言いますと、なんとか踏んばっている状態です。
広告宣伝費がマイナスだというご指摘がありました。当社は毎シーズン、プロ野球にかなりの力を入れてプロモーションを行っています。前年度は開幕が遅れて6月になったため、プロ野球のプロモーションコストが丸々第1四半期に計上されていました。今期は予定どおりの開幕で、主に3月にプロモーションを行ったため、前期と比べるとそこが大きな差として出ています。
契約数については、今のところなかなか大きなトレンドが変えられず、新規加入については前年比85パーセントというレベルです。
ただ、解約も同じように8掛けくらいで、今のところギリギリの線を保っています。第2四半期、第3四半期にかけてコストを削減し、攻め手を緩めて利益を出そうというスタンスには決して立っていません。必要なコストをかけ、健全なかたちで加入者の維持に努めていこうというのは、部門で一致して実行しているところです。
質疑応答:自己株式の取得について
質問者1:財務の部分で、自己株式30億円取得の発表は驚いたのですが、決断に至った背景と、継続的なものかを教えてください。
さまざま考慮し判断したということですが、配当には配当政策を規定していると思います。状況次第ですが、機動的に自己株式取得を行う大きな枠組みでの設定をしているのでしょうか?
松谷:当社は、引き続き成長投資を推進しつつ、株主さまへの還元を図るという、両方を睨みながら経営しています。6月末時点で、現金と現金同等物が700億円を超える状態になっており、健全な財務体質と資本効率の両面から見た時に、今後数年間での成長投資の計画とキャッシュ等を睨みながら、今回自己株式を取得しようという判断をしました。
長期的に毎年行う、また、どのような状態になったら行うといった期間決定はしていません。今回は現状を鑑み、自己株式を取得する判断をしています。
質問者1:今の回答を素直に取ると、いつの時点でも将来数年間の投資額をシミュレーションし、手元の現金の水準を勘案して、その段階で十分可能であれば、自己株式を含めて還元するという考えのような気もします。これは全体の設計のように感じますが、いかがでしょうか?
松谷:基本的な考え方としてお話ししており、成長投資についても、現在想定している範囲を鑑みて判断しています。先ほどご説明したとおり、宇宙の分野、メディアの分野でさまざまなポートフォリオを変更する、あるいは成長投資に向けた計画、検討を進めているところです。
全体の規模感がすでに固まっているわけではないため、日々実行しながら、しかるべきタイミングで、この考え方のもとに判断したいと考えています。
質疑応答:SACについて
質問者2:先ほどの質問と被るところがあるのですが、SACについて、今回の第1四半期は17億円と、昨年の新型コロナウイルスのことを考えても、同等の非常に低い水準だったと思います。
野球の宣伝時期である第4四半期には、先ほどお話にあったとおり、37億円というかなりの金額をかけていますが、このような時期以外は、従来と比べると10億円台くらいの少ない数字が今後も続いていく、つまり「その程度のSACをかけていく方針である」という理解でよろしいでしょうか?
美谷:マーケットの状態をよく研究したのですが、今年度のプロモーションの大きな戦略としては、ファンマーケティングという考え方と、ご好評いただいている「基本プラン」のマス広告、この2通りをメインで計画しています。
ファンマーケティングは、顧客の居場所にきめ細かい施策を積み重ね、コミュニケーションをとっていく方法で、もう1つは、わりとマスに仕掛けていくものです。
この2本を組み合わせて、SACの最適な配分を考えながら計画しています。数字はその結果として出てきていますので、当部門としては極めて健全な計画を立てていると考えています。
質問者2:例えば広告宣伝費などとして、ファンマーケティングと言われているものもSACの中に含まれていて、なおかつ現在の数字という理解でよろしいでしょうか?
美谷:おっしゃるとおりです。
質問者2:今のお話は「ファンマーケティングを行うことによって、広告宣伝費や、既存顧客に対するカスタマーサクセスのようなものの費用が、従来のマス向けのものよりは減少する傾向にあるため、現在の数字に落ち着いている」というご説明だと理解したのですが、いかがでしょうか?
美谷:結果として最適化が図れていると考えていますので、今おっしゃっていただいたご理解でよろしいのではないかと思います。
質疑応答:ブンデスリーガについて
質問者3:ブンデスリーガ関連で「次世代ブロードキャスト実現に向け、専用アプリを投入予定」と伺いました。この機能として「インタラクティブフィード」を実装ということですが、どのようなものかを教えてください。
アプリとは別に、タイムライン表示や試合スタッツなどがカスタマイズ可能なECサイトも開始ということですが、ブンデスリーガの一連の取り組みについて、追加のご説明や補足をお願いします。
美谷:スライド下部に記載していますが、ブンデスリーガについては、8月11日の夜9時からオンラインで開幕PRイベントがあります。そこですべての情報解禁を予定していますので、ぜひご覧いただければと思います。
質疑応答:「スカパー!オンデマンド」のリニューアルについて
質問者3:前回の決算説明会で、御社は今年度の下半期に「スカパー!オンデマンド」のリニューアルを行う予定だと、コメントをいただきました。
「スカパー!オンデマンド」のリニューアルについて、このタイミングで追加発表できることがあればお願いします。また一部の媒体で「リニューアル時期が2021年10月である」と報道されていたと思うのですが、時期についても決まっているようでしたら、教えてください。
美谷:オンデマンドのリニューアルについてはご指摘のとおり、今年度下半期を予定しています。正確な日程等は、まだ情報解禁前ですので、本日は控えさせていただきます。
リニューアル内容についてです。お客さまにご利用いただいている現在の「スカパー!オンデマンド」は、放送を契約している方が無料でコンテンツを見られるものや、契約していなくても、オンデマンド契約だけでお金を払ってご覧いただけるものをワンストップで提供しているのですが、お客さまから見てややわかりにくいところがあります。
「見られるのか、見られないのかわからない」というコンテンツが混在しており、「使い勝手がよくない」というご意見を多く頂戴しました。大きな趣旨としては、放送を契約している方がすぐに見られるものは、公式サイトを中心に展開しています。
そうでないオンデマンド、いわゆる有料で販売している配信サービスは、放送契約があってもなくても、みなさまに対して「こちらが有料の販売のサイトです」あるいは「アプリです」と大きく宣伝しています。主な変更内容としては、これまでワンストップで混在していたものを2つに分けるということで、狙いは、使い勝手の向上と、それによる収益のアップを期待しています。
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