クイック Research Memo(2):「人材」・「情報」ビジネスを通じて企業経営を支援し、社会に貢献

配信元:フィスコ
投稿:2021/06/17 15:22
■事業概要

1. 会社概要と事業内容
クイック<4318>は、就業希望者と求人企業を結び付ける総合人材サービス事業を展開している。人材紹介を中心に人材派遣・紹介予定派遣・業務請負等を運営し、人事労務コンサルティングなど人材サービスの周辺事業も幅広く展開している。このため、同社と就業希望者、求人企業との接点は幅広い。なかでも、看護師やMR(Medical Representative:医薬情報担当者)、施工管理技術者など、労働需給がタイトになりがちな専門職の人材紹介に強みがある。事業としては人材サービス事業、リクルーティング事業、情報出版事業、IT・ネット関連事業、海外事業の5事業を展開、事業理念である『「人材」・「情報」ビジネスを通じて社会に貢献する』の実現を目指している。

(1) 人材サービス事業
人材サービス事業は「人材紹介」と「人材派遣・紹介予定派遣・業界請負業等」の2つに区分される。人材紹介の運営メディアは「看護roo!(看護師領域)」や「Ansewers(製薬領域)など多岐に渡るが、なかでも人材紹介需要が高止まりしている看護師領域を対象とした「看護roo!」は、看護師のコミュニティサイトとして圧倒的ブランドを確立している。同サイトでは、看護師のための掲示板や専門知識や技術向上に役立つ記事や動画、業界最大級の転職サイトなど幅広い情報を掲載していることに特徴がある。一方、人材派遣では地域特性や得意分野に絞って業務を展開しており、子会社の(株)キャリアシステムが主力の看護師派遣に加え、北陸・信越では医療福祉分野に強みを持つ「メディケアキャリア」サイトを運営し、同分野での事業展開を進めている。また、保育士の派遣・紹介に関しては、子会社の(株)ワークプロジェクトが大阪・神戸を中心に関西エリアで転職を希望する保育士をターゲットにした専門サイト「ほいとも」を運営するほか、大阪府で小規模認可保育園・認可保育所「こぐまの森保育園」も運営している。

(2) リクルーティング事業
リクルーティング事業では、求人情報サイトや求人情報誌などに掲載する広告の案内から求人企業のニーズに合わせた広告制作までを行っており、リクルートのトップ代理店の1社として、Webサイト「リクナビ」やフリーペーパー「タウンワーク」などリクルートメディアをメインに取り扱っている。近年急速に普及している求人情報検索エンジン「Indeed」は取扱高が好調で、リクルーティング事業の収益を下支えしている。また、採用パンフレットや適性検査など採用支援ツールの制作など、リクルートメディアに自社企画を交えた様々なサービスを提供しており、求人企業が抱える採用・人事の課題解消に向けた高いコンサルティング能力にも定評がある。ちなみに、これらのサービスは同社の求人企業向けサイト「採用サロン」に集約されており、新たな顧客開拓の窓口にもなっている。なお、2020年6月にジャンプ(株)を子会社化しており、ジャンプが持つ採用戦略の企画や採用マーケティングをはじめとする採用力向上のためのノウハウと、同社が培ってきた顧客資産や営業力、人材ビジネス分野のノウハウを連携させる方針である。これにより、求人広告から採用戦略・企画立案、人事担当者育成、入社後研修といった周辺サービスまで、顧客企業をワンストップで支援する考えだ。

(3) 情報出版事業
情報出版事業では、子会社の(株)カラフルカンパニーが北陸3県と新潟県において地域情報誌の出版やポスティングサービス、「ココカラ。」ブランドで展開するコンシェルジュサービスなどの事業を行っている。地域情報誌の出版では、地元情報に特化した幅広いジャンルのフリーペーパーなどに飲食店や住宅メーカー、求人などの広告を掲載して発行する。ポスティングサービスでは折り込みチラシなどを各家庭に配布する。コンシェルジュサービスでは転職や家づくり、結婚などを考える人と企業を対面カウンターでマッチングさせるサービスを展開している。また、「Indeed」ではゴールドパートナーグループの一員として認定されている。なお、コロナ禍においても、コンシェルジュサービスの転職領域と「Indeed」は順調に拡大している。

(4) IT・ネット関連事業
IT・ネット関連事業では、子会社の(株)HRビジョンが、人事・労務に関する情報ポータルサイト「日本の人事部」の企画・運営や「日本の人事部 HRカンファレンス」など、「日本の人事部」ブランドによるイベントの企画・運営、Webプロモーション支援といったHRビジネス関連の事業を行っている。「日本の人事部」は経営者や人事担当者など20万人近い人事キーパーソンが正会員登録しているサイト、「日本の人事部 HRカンファレンス」は人事キーパーソンが集う日本最大規模のHRイベントであり、ともに強いブランド力を誇る。また、IT・AIテクノロジーに強い子会社のクロノスは、システム開発やエンジニア育成のための研修及びセミナーを行っている。なお、「日本の人事部 HRカンファレンス」は、コロナ禍を機にオンライン化が急速に進んでいる。

(5) 海外事業
海外事業では、現地の日系企業を対象に、米国や英国では人材紹介や人材派遣、中国では人事労務コンサルティングや人材紹介、ベトナムやメキシコ、タイでも日系企業向けに人材紹介を手掛けている。なお、これらのネットワークを利用して、国際間の転職支援「クロスボーダーリクルートメント」の展開を進めている。

2. 業界環境と同社の強み
人材サービス業界は、リーマン・ショックによる低迷から抜け出した後、アベノミクスと少子高齢化による人手不足を背景に10数年成長を続けてきた。なかでも、専門職に対する採用ニーズは非常に強い状態が続いている。一方、就業希望者と求人企業の接点は、スマートフォンの普及などからインターネット求人サイトの伸びが著しくなる一方で、フリーペーパーの増加は緩やかになり、従来型の有料求人情報誌や折り込み求人誌は低迷気味である。また、就業希望者の争奪戦が徐々に激しくなっていることから、就業希望者にとって魅力的で役立つ情報が多数掲載されているWebサイトやスマートフォンアプリの開発・運営は、人材サービス業にとって必須となっている。こうした状況は長期的に変わらないと考えられているが、短期的にはコロナ禍により、特に飲食サービス業を中心に労働需給が緩和している。

このような業界環境において、同社の強みは専門職の人材紹介と自社内のITエンジニア部隊にある。一般的に専門職人材紹介は、ニッチ分野であるがゆえに収益化しづらいが、相対的に高い利益率を確保できるうえ、労働需給がタイトなため経済減速時でも比較的採用ニーズが高いという特徴がある。同社は、専門職人材紹介の事業ノウハウを他の専門職分野へと横展開することで対象領域を拡大するという「ブティック戦略」を採っており、効率化しづらい専門職の人材紹介の収益化に成功している。また、高度な専門性が必要とされる専門業種・職種において、1人のコンサルタントが求職者と求人企業双方を担当する「一気通貫システム」を採用している。これにより、それぞれの立場を理解したWIN-WINのマッチングを行うことで満足度の向上を目指している。さらに、同社のエンジニア部隊は、システム周辺のみならず、「看護roo!」をはじめとする紹介登録者獲得のための自社Webサイトや、「ナスカレ(看護師のスケジュール管理アプリ)」など専門職の便利ツール(アプリケーション)の開発・運営も行っている。社内に自社エンジニアがいるということは、同社の業務システムや専門職独特の仕組み・慣習を理解したうえでシステム構築やWebサイト・アプリケーションの開発ができるということであり、他社に対して常に優位性を保つことができる要因となっている。このように、同社の「ブティック戦略」「一気通貫システム」「登録者獲得施策」は、業界の中で非常に大きな差別化要素となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)


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