クイック Research Memo(1):コロナ禍においても、主力の人材サービス事業が業績を下支え

配信元:フィスコ
投稿:2021/06/17 15:21
■要約

クイック<4318>は、就業希望者と求人企業を結び付ける総合人材サービスを事業としている。人材紹介、人材派遣、紹介予定派遣、業務請負の人材サービス4事業形態のほか、人事労務コンサルティングなど周辺事業も展開している。なかでも労働需給がタイトな専門職の人材紹介に強みがあり、同社の専門職向け求人サイトやスマートフォンアプリはいずれも業界トップクラスの登録者数と求人数を誇っている。事業としては人材サービス事業、リクルーティング事業、情報出版事業、IT・ネット関連事業、海外事業の5事業を展開している。主力の人材サービス事業が売上高の約3分の2、各事業の営業利益合計の約8割を占める(2021年3月期)が、近年は人材サービス事業以外も活発な動きを見せている。

人材サービス事業では主に人材紹介と人材派遣を行っている。主力の人材紹介では看護師や施工管理技術者など専門職の紹介に強みを持つが、登録者獲得をはじめ競争環境は年々激しさを増している。しかし同社は、専門職分野の事業ノウハウを横展開することで対象領域を拡大する「ブティック戦略」や1人のコンサルタントが求職者と求人企業の双方を担当してマッチングを行う「一気通貫システム」、自社エンジニアが最新技術を取り入れて開発するシステムやスマートフォンアプリを使った「登録者獲得施策」によって優位性を保っている。人材派遣では看護師や保育士の派遣、リクルーティング事業では採用活動の企画・提案、情報出版事業では北陸3県(石川県、富山県、福井県)と新潟県で地域情報誌の出版やコンシェルジュサービス(対面相談サービス)、IT・ネット関連事業では人事・労務の情報ポータルサイト「日本の人事部」の企画・運営に加え、システム開発やAIソリューション、ITエンジニア育成のための研修及びセミナー、海外事業では現地日系企業向け人材紹介や人事労務コンサルティングなどを行っている。

2021年3月期の業績は、売上高20,089百万円(前期比4.5%減)、営業利益1,867百万円(同36.3%減)となった。新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)で悪化した雇用情勢は、2020年10月を底に緩やかながら回復の兆しを見せているものの、依然として先行き不透明な状況が続いている。こうした環境のなかでも、人材サービス事業では、デジタル化の流れを追い風とした半導体業界におけるエンジニアや、医療体制のひっ迫を背景とした看護師など専門職の採用ニーズが引き続き強く、業績を下支えした。また、IT・ネット関連事業では、「日本の人事部 HRカンファレンス」などイベントのオンライン化が奏功したほか、会員向けメール広告などの取り扱い増加等により「日本の人事部」サイトの広告収入も堅調に推移した。さらに、2020年3月期下期からグループ入りした(株)クロノスの業績が2021年3月期は通期で上乗せされたことも、売上高・利益に大きく寄与した。

2022年3月期の業績見通しについては、売上高21,400百万円(前期比6.5%増)、営業利益2,486百万円(同33.1%増)と業績回復を見込んでいる。コロナ禍がワクチン接種の開始により徐々に収束に向かうとの見方から、採用ニーズが旺盛な専門職を中心に採用支援を積極化していく方針である。

コロナ禍による中長期的な影響を合理的に算出することは困難ではあるが、少子高齢化などによる人手不足から、特に専門職の採用ニーズは一層強まることが見込まれている。こうした事業環境において、同社の強みである「ブティック戦略」「一気通貫システム」「登録者獲得施策」をベースに、既存領域の拡大及び新領域の拡大を積極展開する余地は非常に大きいと弊社では見ている。

■Key Points
・「ブティック戦略」「一気通貫システム」「登録者獲得施策」を強みとする総合人材サービス企業
・2021年3月期は主力の人材サービス事業とIT・ネット関連事業が業績を下支え
・コロナ禍の影響で依然として先行き不透明な状況が続いているものの、中長期的には強みを生かした積極展開の余地は大きい

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)


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配信元: フィスコ

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