アンジェス Research Memo(9):治療法がない疾病等を対象に開発を進め遺伝子医薬のグローバルリーダーを目指す

配信元:フィスコ
投稿:2021/06/11 15:09
■今後の成長戦略

アンジェス<4563>は経営理念として、「治療法がない疾病分野や難病・希少疾患などを対象にした革新的な遺伝子医薬の開発・実用化を通じで、人々の健康と希望にありふれた暮らしの実現に貢献する」ことを掲げ、長期ビジョンとして「遺伝子医薬のグローバルリーダー」になることを目指している。

黒字化の時期に関しては、開発パイプラインの進捗状況次第となる。特に、米国でHGF遺伝子治療用製品の開発に成功した場合には、数十億円規模のマイルストーン収益(既に受領した契約一時金含む)が得られる見通しとなっているため、その動向には注目しておきたい。また、Emendoを子会社化したことで中期的に研究開発費の増加が予想される一方、Emendoが開発を進めているパイプライン導出の可能性や、先進的なゲノム編集技術として注目されている「OMNITM」プラットフォーム技術のライセンスフィーを獲得できる可能性もある。

今後の事業展開を進めていくうえでの基本戦略としては、1)「コラテジェン®」の事業価値最大化、2)ポスト「コラテジェン®」の育成、3)新規事業領域への展開の3点を掲げている。

1. 「コラテジェン®」の事業価値最大化
「コラテジェン®」の国内戦略に関しては「潰瘍の改善」に関する市販化後調査を進め2024年の本承認と同時に、「安静時疼痛の改善」に適応拡大を図ることで、薬価の見直しを図りたい考えだ。また、米国では臨床試験を進め早期の販売承認を目指していくとともに、米国の開発状況を見ながら欧州でも上市に向けた開発を進めていく方針となっている。日米欧以外の国や地域でもイスラエルやトルコに続く新たな導出先を開拓していく。さらには、適応症拡大のための基礎試験や臨床研究も推進していく。同社ではこうした戦略を進めることで「コラテジェン®」の事業価値最大化を図っていく方針であり、海外での上市や適応拡大が進んだ段階で売上高も本格的な拡大期に入るものと予想される。

2. ポスト「コラテジェン®」の育成
「コラテジェン®」に続く第2の柱を育成し、成長基盤の強化を図っていく。椎間板性腰痛症を対象としたNF-κBデコイオリゴや高血圧症を対象としたDNAワクチンなど現在、臨床試験を進めている開発品の早期POC取得と導出活動に注力していくほか、キメラデコイの早期プロジェクト化を目標としている。また、新型コロナウイルス感染症に関する予防用ワクチンや治療薬についても、今後の開発状況次第で収益に貢献することが期待される。

3. 新規事業領域への展開
「次の10年」を見据えた新規事業の展開に向けて、以下の領域において資本提携先との協業も進めながら事業化を目指している。

(1) マイクロバイオーム事業
マイクロバイオーム※を用いた医薬品の研究開発が世界的に注目を集めており、同社も同領域のパイオニア企業であるMyBioticsと2018年7月に資本提携を締結し、事業化の可能性を探索している。MyBioticsは現在、婦人科系の治療薬について欧州の大手製薬企業とライセンス契約を締結し、製剤化に向けた開発を進めているほか、感染症等の治療薬開発も進めている。

※マイクロバイオーム(微生物叢)とは、ヒト微生物叢のゲノムとそれが発現する遺伝子群及び微生物叢とヒトの相互作用を含む広い概念を指す。この微生物叢とヒトとは共生しており、ヒトの身体は微生物叢の集合体とも言える。近年では生活習慣の変化がマイクロバイオームの生理状態の変化を誘導し、それが各疾患の増加に関係しているとの報告もあり、菌を活用して医療やヘルスケアに役立てる研究が活発化している。


マイクロバイオームの働きは精神疾患に関係しているとの研究報告があるほか、健康食品やサプリメントとして開発が進む可能性があるなど潜在的な成長性は大きい。同社も将来的にセルフメディケーションにつながる可能性のある事業として注目しており、今後の具体的な開発の方向性について検討を進めている段階にある。

(2) 診断事業(抗がん剤)
2019年8月に資本出資したイスラエルのBarcodeが持つ遺伝子診断技術※を用いて、がん患者一人ひとりに最も有効な抗がん剤を選択する診断技術の早期実用化に取り組んでいる。現在は複数の抗がん剤の中から患者に適合すると思われる抗がん剤を臨床データや患者の状態などから医師が判断して投与しているが、第一選択薬で効果が得られず別の抗がん剤を投与するケースもある。遺伝子解析を行うことでより最適な抗がん剤の選択が可能となれば、患者負担が軽減するだけでなく医療費の削減にも寄与することになる。

※Barcodeの診断技術は、患者に有効性が期待できる抗がん剤とDNAバーコードを封入したリポソームを複数製造し、多種類の抗がん剤をごく少量ずつ一度に患者に投与したのち、DNAバーコード量を測定することで、個々の患者に有効な抗がん剤を特定するというもの。マウスを使った実験で特定できることが確認されており、将来的に乳がん患者を対象とした臨床試験の実施を目指している。


同社は2020年2月に公益財団法人がん研究会と共同研究契約を締結し、早期の実用化に向けた共同開発を開始した。がん研究会は、がんの新しい診断・治療法の開発において国際的にも評価の高い研究機関であり、がん細胞に対する抗がん剤の有効性データも数多く蓄積している。現在は実用化に向けてBarcodeの診断技術を用いた実証データの収集を行っている段階にあり、今後の動向が注目される。また、遺伝子診断では、がん疾患以外にも新生児の難病や希少疾患の早期診断でも需要があると見られ、将来的に取り組んでいく予定にしている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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配信元: フィスコ

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