ドル円は104円付近で売買交錯 弱い米雇用統計もドル買い続く=NY為替概況

著者:MINKABU PRESS
投稿:2021/01/09 06:58
 きょうのNY為替市場、ドル円は104円付近で売買が交錯した。ドル買い戻しの流れはきょうも続き、ドル円も104円台に上昇。ドル買い戻しについては様々見方が出ているようだが、昨年3月をピークに一貫してドル安トレンドが続き、その過程でだいぶショート・ポジションが積み上がった。米大手銀の調査では、昨年末時点でのドル・ショートは10年ぶりの水準に積み上がっていたという。今週の米政治イベントを受けて米国債利回りが上昇したことをきっかけに、ポジションの巻き戻しが出ているものと思われる。

 朝方に12月の米雇用統計が発表になり、非農業部門雇用者数(NFP)は14万人減と予想外の減少となっていた。レジャーやホスピタリティの雇用の減少が大きく影響したようだ。これを受けてドル円も戻り売りが強まったものの、一時的な反応に留まっている。

 感染拡大が雇用回復に影響し始めたことが示された格好で、回復への不安感を示す内容ではあった。ただ、NFPは前回分が大幅に上方修正されたこともあるが、弱い米雇用統計にもかかわらず、米国債利回りが上げ幅を広げたことがドル円をサポートしたようだ。一部からは、米雇用統計が弱かった分、バイデン政権の財政刺激策の規模が大きくなるのではとの声も聞かれた。

 一方、米国債利回りの上昇は続かないとの見方も出ている。市場が力強い回復を期待するのは適切と思われるが、必ずしも米国債利回りが上昇し続けることを意味するものではないという。米上院での議席数は民主党と共和党で50対50となった。ハリス次期副大統領が上院議長として決定票を持っているとはいえ、上院で容易に法案を可決できる状況にはない。いまの市場はその点に目を瞑っているという。また、FRBが資産購入ペース縮小など金融引き締めに転じる可能性を過大評価している面もあり、むしろ、長期金利の上昇抑制に動く可能性もあるという。

 ユーロドルは下値模索が続き、一時1.21ドル台まで下落。米雇用統計の発表直後はドル売りの反応が見られ、ユーロドルは1.22ドル台後半まで戻したものの、買い戻しは一時的となった。21日線を一時下回っており、来週以降の動きが警戒される。 

 ユーロドルは短期的に1.20ドルまでの調整の可能性が高まっているとの声も聞かれる。ドル先安観は根強く、長期的にはドル安が続くというのがコンセンサスだが、ドル・ショートが10年来の水準に積み上がており、特に対ユーロでショートが積み上がっている。これらのショートポジションの解消がドルを押し上げる可能性が高い。ドル安・株高の中で、ユーロドルも相当程度ロングが積み上がっており、ポジション調整が出易いという。

 ポンドドルも売りが優勢となり、1.3540ドル付近まで一時下落。ただ、対ユーロや円では上昇し、底堅さもみられた。本日の21日線が1.3520ドル付近に来ており、その水準が目先の下値メドとして意識される。

 英国では感染拡大が続いており、英当局は死者数が1325人増え、パンデミック以来の最悪となったと発表した。1日の新規感染者数は6万8053人となり、入院患者は3万1624人となっている。ただ、市場は楽観的だ。前日のジョンソン首相の会見が支援している模様。首相は「英医療関係者は1月15日までに毎日数十万人にワクチンを投与できるようになる」と述べていた。

MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

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