【米大統領選】新大統領が決まらない? 3つのシナリオ~その3

著者:MINKABU PRESS
投稿:2020/11/01 09:10
 11月3日の米大統領選。バイデン候補勝利を一つ目のシナリオ、トランプ候補勝利を二つ目のシナリオとしてみていきました。バイデン氏勝利でも、トランプ氏勝利でもないシナリオとは何か。新大統領が決まらないというケースです。一見ありえなさそうに聞こえますが、ここにきてこの可能性が高まってきています。
 
 今回の大統領選挙は新型コロナウイルスの感染拡大第三波の動きが強まる中で実施されます。そのため、密になることがほぼ確実な投票所での投票を避けて、郵便投票の制度を利用するケースがこれまでにない規模で増加しています。

 全米50州の中で最も早く9月4日に郵便投票の手続きを開始したノースカロライナ州では、開始から10日ほど過ぎた9月15日時点での申請者が、前回の同時期と比べてなんと16倍にも上り、最終的には有権者の40%が利用する可能性があると選挙管理委員会が見解を示しました。

 しかし、通常の投票に比べ、郵便投票は開票作業にかなりの手間がかかります。2重投票などの懸念もあり、集計が相当遅くなる可能性が指摘されています。トランプ大統領は郵便投票での集計の公平性にかなりの疑問を呈しており、投票所での投票で自身がリードし、郵便投票でひっくり返されるような事態になると、その有効性を巡って裁判所に提訴する可能性もあります。

 米大統領選は11月3日の投票で決定された選挙人が12月14日に選挙人投票を実施し、大統領を決定します(選挙人はどちらに投票するのかを11月3日の選挙で決められており、あくまで形式的なものですが)。この期限までに選挙人の確定が間に合わないケースが多発する可能性があります。

 さらに次の節目が1月3日にあります。この日行われる上下両院合同会議で各州の結果を集計します。この日までに確定していない選挙人がそれなりの数に上り、両名とも270名の選挙人を確保できない可能性があるのです。

 この場合、11月3日の選挙で選ばれた下院議員によって次期大統領が選出されます。

 ただ、この次期大統領の選出。議員が一人一票というわけではありません(もしそうならば、下院選は民主党の勝利がほぼ確定的なので、この時点でバイデン候補が勝利の可能性が高いです)。州ごとに一人が代表となり、50州による投票が行われ、26州を抑えた方が勝利となります。要は、カリフォルニア州のように53名の下院議員がいる州でも一票。ノースダコタなどのように1名しか下院議員がいない州でも一票というわけです。この区分では、現有勢力のままだと共和党26州、民主党24州となります。ただ民主党が票を伸ばすと考えると、25州対25州になる可能性もあり、この場合は決まらないということになります。そうなると上院が選出した副大統領が代行になってという具合に、一応ルール化はされているのですが、混乱は必至です。

 このシナリオが現実化した場合、世界最大の経済大国の混乱を嫌った投資資金の移動が大規模で起きる可能性があります。欧州は新型コロナウイルスの感染拡大の動きが強まっており、この移動先の第1候補は円になりそう。大規模な円高を誘う可能性に留意したいところです。

MINKABU PRESS 山岡和雅


 

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