両利きの投資~鍵はネタ探し調査

著者:鈴木 行生
投稿:2020/07/08 12:43

・どの会社でも新製品・新サービスを出して、世の中をあっといわせ大ヒットさせたいと思っていよう。しかし、容易ではない。新製品といっても、今まで見たことも聞いたこともないものはほとんどないし、たぶん、そんなに珍しいものは売れないかもしれない。

・今時の新サービスなら、月額課金のサブスクリプション型にして、どうしても無くてはならない必需サービスにもっていきたい。そうすれば顧客はやめることができないので、毎月チャリン、チャリンと儲かることになる。スマホはそうかもしれないが、どんなサービスでもプラットフォームの胴元になるのは簡単でない。

・顧客ニーズに合ったものに絞り込んでいけばよさそうだが、そうするとマーケットは小さくなり、顧客を特定するのに結構手間がかかる。顧客に受けようとすると、こりすぎて儲からない。供給サイドの都合だけで思い込むと、意外に当たらない。

・まして、どの企業にもすでに本業がある。その本業が輝いていればよいが、長い年月を経ると次第に色あせてくる。しかし、本業であるから、そこに人材、資金など経営資源を最もつぎ込んでいる。しかし、リソースを使っているわりには成果が上がらない。大企業のトップは得てして本業育ちであるから、なかなかその土俵から出ることができない。

・新規分野を伸ばす必要があると分かっていても、そこへの投資は十分でなく、常に遅れがちになる。そうなると十分な成果が出ないから、社長が変わったりするとすぐにやめてしまうことも多い。こうして企業の停滞が長期化していく。

・既存事業と新規事業はどのように運営したらよいのか。上場企業をみると、確かにうまくやって、新規事業を伸ばして、ポートフォリオを広げ、組み換えている企業もある。安定感がありながら、きちんと成長している。エムスリーなどはその典型であろう。

・最近、両利きの経営(C.オイラー&M.タッシュマン)が注目されている。とかく既存事業の深化に入れ込み過ぎて、新規事業の探究が疎かになる。この深化と探求の双方をバランスさせることを両利きの経営と名付けた。

・既存事業、既存顧客、既存技術、さらには既存ビジネスに捉われて、イノベーションが起こせない。本業に余裕がある時に新規事業を伸ばせというが、余裕ある時には、新規事業に身が入らない。逆に、本業が苦しくなってくると、新規に回す資源に余裕がなくなってくる。よくあるパターンである。

・どの企業にも‘変な人’はいる。永年の経験でそう思う。新しいことを起こそうとするイノベーターである。このイノベーターをうまく捌ければよいが、サラリーマン的マネジメントにとっては、言うことをきかないうっとうしい社員になってしまう。暫くは認めておくとしても、いずれ会社にいづらくなってしまう。

・こうしたイノベーターにチャンスを与え、少し動き出したら、それをサポートする仕組みを作って、個人の変革力を組織の力にしていくことが求められる。

・投資家としては、今儲からない新規事業をすぐに止めろと言ってはいけない。退出基準も大事であるが、もっと大事なコトがある。イノベーションへの思いを情熱として受け止め、それが本物かどうかに共感していくことである。

・アナリストとしては、若い時から3つのことに力を入れてきた。産業・企業を調べる調査(リサーチ)において、常に ① ベーシック調査、② フォローアップ調査、③ ネタ探し調査をバランスよく実行するように心掛けた。

・当時でも、多くのアナリストは今日の仕事、つまりフォローアップの調査を優先してしまう。決算が出た、何か発表があった、ちょっとした変化が見えたとなると、それを追いかける。フォローアップ調査は、ニーズはあるが、多くの場合付加価値は小さい。

・ベーシック調査は、時間と手間がかかる。現地まで出かけてグローバルな調査をし、中長期な予測を打ち出す。それを産業だけでなく、個別の企業の戦略や業績予測にまでおろしていく。これを行うと、全体がみえてくる。経営トップとも、さしで議論ができる。戦略の変化や予測を速やかに修正できる。これがアナリストの本領である。

・そして、3つ目がネタ探し調査である。当時の私でいえば、水素自動車の可能性について、いくつもの研究所を訪ねた。新素材について物理学会に行って、ネオジウム磁石を発表した研究者と直接議論した。

・国際商品市況をみていると、金融先物が影響していた。シカゴの商品取引所までいってインタビューした。今日の仕事にはほとんど役立たない。しかし、リサーチすることが面白く、視野が広がる。こうしたネタが本業周辺のいたるところで役立つ。

・筆者がリサーチ部門を担当した時には、この3つの調査をバランスよくできるようにマネジメントした。しかし、ベーシックは大変である。ネタ探しは焦点がはっきりしない。そこで、フォローアップで成果をあげようとするアナリストが増えてくる。さて、どうするか。ここがツボであった。

・投資家としては、こうしたネタをポートフォリオにどう組み込んでいくか。でき上がった企業を中心にポートを作って、それをフォローアップするだけでは新鮮味がない。たぶん、パフォーマンスに大きな変化はでないであろう。

・ベーシック調査をして、次の有力企業を見出し、それをポートに組み込んでいく。ポートフォリオの入れ替えはじっくりやってよいが、変化はつけることは重要である。

・一方で、ネタ探し調査の中から、新興企業を組み入れていくことは面白いし、ぜひ実践したい。中小型株投資ははずれることもあるが、当たるとパフォーマンスへの寄与は大きい。

・まさに、サテライト投資のプラスアルファ効果である。ネタ探し調査のカギは、しっかり調べながらも、最後はピンとくるかどうかである。この勘を研ぎ澄ますことは、さほど難しくない。たぶん誰でもできよう。

・両利きの投資とは、既存の企業をベースにしたポートフォリオと、新規の企業をベースにしたポートフォリオをバランスよく構成することである。企業の両利き経営を見定めつつ、投資家としての両利き投資も、ぜひ実践したいものである。

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配信元: みんかぶマガジン
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