ドル円は108円台半ばでの狭い範囲での振幅が続く=NY為替後半

著者:MINKABU PRESS
投稿:2019/11/22 06:01
 NY時間の終盤に入ってもドル円は108円台半ばでの狭い範囲での推移が続いている。市場では米中貿易協議を巡って楽観と悲観とが行き来する中、ドル円もニュースに敏感に反応。

 米議会が上下両院で香港人権法案をほぼ全会一致で可決した。トランプ大統領も署名する意向とも伝わっており、法案は成立する運びとなっている。人権問題に踏み込んで来た米国に対し、中国側の反応が警戒されたが、苦言は述べているものの、意外に落ち着いた反応を見せている。

 ドル円も東京時間に朝方に108円台前半に下落していたが、買い戻しも入り108円台半ばに戻す展開。香港のサウス・チャイナ・モーニングポストが、米中が第1段階の合意に達しなくても、12月15日に米国が予定している中国製品への追加関税の発動は、少なくとも延期される公算が大きいと伝えた。交渉で大きな成果が出る可能性は低いが、関税延期は両国の利益にかなうという。また、中国の劉鶴副首相の発言などもあり、ドル円はサポートされている。

 ただ、上値は依然として重い印象で、本日108.75円付近に来ている21日線は上値抵抗となっている模様。きょうは米国債利回りの下げが一服しているが、今度は米株が利益確定売りに押されておりドル円を圧迫しているようだ。ドル円は本日を含めて、先週から3度108円台前半に落とされているが、いずれもサポートされている。下値では押し目買いも入り上値期待を温存させているものの、109円ちょうど付近に来ている200日線を再度試す気配はない。米中協議の行方や米国債利回りの下げ止まりを確認したい雰囲気が強まっており、踊り場にいるようだ。

 ユーロドルはNY時間に入って戻り売りに押されている。NY時間の朝方に1.11ドルを試す場面も見られたが、回復することなく戻り売りに押される展開。このところ買い戻しが優勢となっているユーロドルだが、ユーロ自体に買い材料はなく、ドルの動向に左右される値動きが続いている。一時1.1050ドル付近まで下げ幅を拡大する場面が見られた。政治ニュース専門サイトのポリティコが「トランプ大統領が対EU関税を正当化する新たな貿易調査を検討している」と伝えたことがユーロ売りを誘ったようだ。

 市場ではユーロ圏の財政刺激策拡大への期待感が高まっており、特にドイツへの期待感が高い。しかし、メルケル首相は必要ないとして消極的な姿勢を維持している。財政刺激策については、経常収支の黒字を減らすとの見方もあるものの、やはりユーロにはポジティブとの見方が多いようだ。

 ポンドも戻り売りが強まっている。ポンドドルは1.28ドル台まで一気に下落している。1.30ドルを再び回復できずに失速した格好。きょうは英労働党が総選挙に向けたマニュフェストを公表しており、それがが利益確定売りのきっかけになったとの声も聞かれる。富裕層や企業への増税や、公共部門の労働者の昇給、そして、インフラの全面的な国有化で英国を変革する急進的な計画を打ち出している。

 どちらかと言えば、社会主義的なビジョンだが、富裕層向け増税や、インフラの国有化が有権者に受け入れられる可能性もあり、市場はポンドにとってリスクと判断しているのかもしれない。

MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

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