■事業概要
1. 事業内容とビジネスモデル
SOU<9270>はリユース市場の中でも最後発の企業と言える。しかし、同社を設立した2011年頃は、2000年にIT革命がスタートして10年経ち、総合ECのアマゾンやブランド衣料ECモールのZOZOTOWN、総合リユースのメルカリなど、後発ながらレガシーな経営資源に束縛されず、ITを使いこなす企業が各カテゴリーで急速に台頭してきた時期と重なる。同社も、自社開発の商品管理システム「SOU Brain」をコアに、Webマーケティングや買取専門店の多店舗展開、業者向けオークションをつなぎ込んで成長してきており、ラグジュアリーリユース業界でアマゾンなどと同様にIT系ニューカマーとしての高シェアを得ている。さらに、アプリやビッグデータなどデジタル技術を積極的に取り入れ、オンラインオークションや小売のオムニチャネル化へと既存ビジネスを進化させるなど、「圧倒的差別化策」を推進している。一方で、海外でのビジネスや個人所有のブランド品の囲い込みといった業容の拡大も進めている。
Webマーケティング×専門買取店の多店舗化
2. 買取事業
(1) 高いITリテラシーを背景にした圧倒的集客力
同社は設立当初、他社が看板効果やチラシを主体に買取と販売を併営する店舗への集客を進めているとき、既にWebマーケティングを駆使している。そして、SEOによる検索上位表示や検索に連動するリスティング広告といった最新の広告手法を使って、駅そばや繁華街など来店しやすい立地に多店舗展開している買取専門店に集客するというOtoO(Online to Offline:Webから店頭への集客)の仕組みを確立している。このため、来店顧客の約9割がWeb経由による個人の顧客で、商品仕入点数の99%が個人の顧客からの仕入れとなっている。さらに「LINEで査定」では、顧客がブランド品などの売却を検討する際に、SNSアプリ「LINE」の「なんぼや」などの同社店舗のアカウントに売却希望品の写真と情報を送ることで、買取価格の概算金額を確認することができる仕組みも構築した。査定結果が数分で返送されるため利便性が高いと好評で、集客のための大きな武器となっている。また、こうした同社のITリテラシーの高さは、ITリテラシーが高くブランド好きなバブル世代や団塊ジュニア世代といった主力顧客層と同期しやすく、彼らが同社に対して親近感を抱きやすくなる要因の1つになっていると考えられる。
ところで、2017年にリリースした「miney」は、ITリテラシーの高い同社らしいアプリである。商品の現在価値や過去から現在までの価格推移、登録商品の総額の確認ができる資産管理アプリで、日々変動するモノの価値をユーザーに提示することで、ユーザーが所持品を実物資産として管理し気軽に売却することができる、画期的なマーケティングツールだからである。既存顧客の囲い込みだけでなく新規顧客の掘り起こしにも有効と考えられる。現在、時計やブランドジュエリー、バッグ、財布を管理することができるが、拡張性も高そうだ。「miney」は、2017年12月に自動家計簿・資産管理サービスの「Money Forward」、2018年10月には画像買取アプリ「ONE」など他社との連携も進めている(「ONE」との連携は現在は終了)。こうした連携を継続・拡大することで、不動産や骨董品、酒など同社ビジネスとシナジーの大きいジャンルへと管理対象が広がっていく可能性がある。つまり「miney」は、顧客層の維持拡大と顧客一人当たりの売却額向上を促進するツールと言えるだろう。
(2) 全国多店舗展開による圧倒的買取力
同社の主な取扱商品はブランド品、貴金属、時計、地金、宝石及び骨董品、美術品などのリユース品である。なかでも鑑定難易度が高く、販売時に高単価を確保できる商品をメインに買い取っている。Webマーケティングの効果などにより年間の買い入れ点数は50万点に上るが、買取平均単価は平均50,000円と高い。買取方法は店頭買取、宅配買取、出張買取の3種類がある。店頭買取は顧客の売却したいブランド品などを、店頭でコンシェルジュ(鑑定士)が鑑定・査定、その場で買取を行う。同社の買取専門店は非常に特徴的で、本部ベテラン鑑定士とオンラインでつながっており、特に高額品の買取価格ついては店頭と本部で同時に二重にチェックすることができる。また、他社が店頭で買取と販売という2つの作業を行っているのに対し、同社は買取に特化しているため、資金的にもオペレーション的にも運営が容易で多店舗展開しやすく、急成長の一因になったと考えられる。
ほかに、宅配買取は宅配便などで顧客が送ってきた品物を鑑定・査定し、買取金額をメールなどで通知して買い取り(買取不成立の場合は商品を返送する)、出張買取は持ち運びや発送困難な場合にコンシェルジュが顧客のもとへ出向いて鑑定・査定・買取を行う。同社は、白など明るい色合いを基調とした瀟洒なサロンのような店舗デザインの「なんぼや」を52店舗、電話やインターネットでの予約も可能な国内百貨店などで展開している高級感あふれる「BRAND CONCIER」を3店舗、子会社の(株)古美術八光堂が運営する骨董品や古美術品、現代美術品などを取り扱う「古美術八光堂」を8店舗展開しており、店舗数と業態の面に関しても同業他社に比べて買取の間口が幅広くなっている。なお、商品は買い取った後2日で在庫センターへ配送、専門家による検品やメンテナンスが行われた後、その多くがオークションに供される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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1. 事業内容とビジネスモデル
SOU<9270>はリユース市場の中でも最後発の企業と言える。しかし、同社を設立した2011年頃は、2000年にIT革命がスタートして10年経ち、総合ECのアマゾンやブランド衣料ECモールのZOZOTOWN、総合リユースのメルカリなど、後発ながらレガシーな経営資源に束縛されず、ITを使いこなす企業が各カテゴリーで急速に台頭してきた時期と重なる。同社も、自社開発の商品管理システム「SOU Brain」をコアに、Webマーケティングや買取専門店の多店舗展開、業者向けオークションをつなぎ込んで成長してきており、ラグジュアリーリユース業界でアマゾンなどと同様にIT系ニューカマーとしての高シェアを得ている。さらに、アプリやビッグデータなどデジタル技術を積極的に取り入れ、オンラインオークションや小売のオムニチャネル化へと既存ビジネスを進化させるなど、「圧倒的差別化策」を推進している。一方で、海外でのビジネスや個人所有のブランド品の囲い込みといった業容の拡大も進めている。
Webマーケティング×専門買取店の多店舗化
2. 買取事業
(1) 高いITリテラシーを背景にした圧倒的集客力
同社は設立当初、他社が看板効果やチラシを主体に買取と販売を併営する店舗への集客を進めているとき、既にWebマーケティングを駆使している。そして、SEOによる検索上位表示や検索に連動するリスティング広告といった最新の広告手法を使って、駅そばや繁華街など来店しやすい立地に多店舗展開している買取専門店に集客するというOtoO(Online to Offline:Webから店頭への集客)の仕組みを確立している。このため、来店顧客の約9割がWeb経由による個人の顧客で、商品仕入点数の99%が個人の顧客からの仕入れとなっている。さらに「LINEで査定」では、顧客がブランド品などの売却を検討する際に、SNSアプリ「LINE」の「なんぼや」などの同社店舗のアカウントに売却希望品の写真と情報を送ることで、買取価格の概算金額を確認することができる仕組みも構築した。査定結果が数分で返送されるため利便性が高いと好評で、集客のための大きな武器となっている。また、こうした同社のITリテラシーの高さは、ITリテラシーが高くブランド好きなバブル世代や団塊ジュニア世代といった主力顧客層と同期しやすく、彼らが同社に対して親近感を抱きやすくなる要因の1つになっていると考えられる。
ところで、2017年にリリースした「miney」は、ITリテラシーの高い同社らしいアプリである。商品の現在価値や過去から現在までの価格推移、登録商品の総額の確認ができる資産管理アプリで、日々変動するモノの価値をユーザーに提示することで、ユーザーが所持品を実物資産として管理し気軽に売却することができる、画期的なマーケティングツールだからである。既存顧客の囲い込みだけでなく新規顧客の掘り起こしにも有効と考えられる。現在、時計やブランドジュエリー、バッグ、財布を管理することができるが、拡張性も高そうだ。「miney」は、2017年12月に自動家計簿・資産管理サービスの「Money Forward」、2018年10月には画像買取アプリ「ONE」など他社との連携も進めている(「ONE」との連携は現在は終了)。こうした連携を継続・拡大することで、不動産や骨董品、酒など同社ビジネスとシナジーの大きいジャンルへと管理対象が広がっていく可能性がある。つまり「miney」は、顧客層の維持拡大と顧客一人当たりの売却額向上を促進するツールと言えるだろう。
(2) 全国多店舗展開による圧倒的買取力
同社の主な取扱商品はブランド品、貴金属、時計、地金、宝石及び骨董品、美術品などのリユース品である。なかでも鑑定難易度が高く、販売時に高単価を確保できる商品をメインに買い取っている。Webマーケティングの効果などにより年間の買い入れ点数は50万点に上るが、買取平均単価は平均50,000円と高い。買取方法は店頭買取、宅配買取、出張買取の3種類がある。店頭買取は顧客の売却したいブランド品などを、店頭でコンシェルジュ(鑑定士)が鑑定・査定、その場で買取を行う。同社の買取専門店は非常に特徴的で、本部ベテラン鑑定士とオンラインでつながっており、特に高額品の買取価格ついては店頭と本部で同時に二重にチェックすることができる。また、他社が店頭で買取と販売という2つの作業を行っているのに対し、同社は買取に特化しているため、資金的にもオペレーション的にも運営が容易で多店舗展開しやすく、急成長の一因になったと考えられる。
ほかに、宅配買取は宅配便などで顧客が送ってきた品物を鑑定・査定し、買取金額をメールなどで通知して買い取り(買取不成立の場合は商品を返送する)、出張買取は持ち運びや発送困難な場合にコンシェルジュが顧客のもとへ出向いて鑑定・査定・買取を行う。同社は、白など明るい色合いを基調とした瀟洒なサロンのような店舗デザインの「なんぼや」を52店舗、電話やインターネットでの予約も可能な国内百貨店などで展開している高級感あふれる「BRAND CONCIER」を3店舗、子会社の(株)古美術八光堂が運営する骨董品や古美術品、現代美術品などを取り扱う「古美術八光堂」を8店舗展開しており、店舗数と業態の面に関しても同業他社に比べて買取の間口が幅広くなっている。なお、商品は買い取った後2日で在庫センターへ配送、専門家による検品やメンテナンスが行われた後、その多くがオークションに供される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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