S&P 500月例レポート(2017年2月配信)
S&P 500®
S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。
交渉か、それともつぶやくか
ウォール街のニュースマニアには十分過ぎるほどの1ヵ月だったのではないでしょうか。トランプ新大統領の動きは電光石火のスピ―ドで、国内外でさまざまな反響を引き起こしています。M&Aは活発化し、企業各社からは決算が発表され、1896年5月26日に40.94ドルの初値を付けてから120年の歴史を持つダウ工業株30種平均(NYダウ)は、史上初めて2万ドルの大台を突破しました。S&P500指数も終値で過去最高を3回更新し、終値では戻りましたが、取引時間中に一時2300に達しました。1月を乗り切ったニュースマニアの皆さんに朗報です。1月に見られたイベントは今後も持続するとみられ、一部はさらに上向き(確かにNYダウには、決算スケジュールとかトランプ大統領の発表とか議会採決などの事実よりも、期待感が重要なのです)、2月も「最新ニュース」が満載の1ヵ月になると予想されます。しかも、そうした大量のニュースはボラティリティや恐怖とは無関係のものになると思えるでしょう。なぜなら、VIX恐怖指数は11.99という10年来の低水準で1月を終え、過去平均の19.7を大幅に下回るだけでなく、2016年末の14.04から14.6%低下し、大統領選投票日(2016年11月8日)の18.74と比べると36.0%も低下しているからです。投資家にとっての結論は、株価指数が過去最高値を更新、S&P500指数(銘柄間のばらつきはあります)が1.79%上昇(大統領選以降では6.51%高)、楽観論の持続、前代未聞の政治ショー(まるで映画のような)でした。
トランプ大統領は、大半の閣僚候補者がいまだ承認されていないにもかかわらず、大統領令を発令して選挙期間中の公約の実現に乗り出し、米国のイベントはすぐに世界的イベントとなりました。ただし、閣僚承認は野党が反対の意を表明して遅らせていますが(通常の政治プロセスです)、全ての閣僚候補が承認される見通しです。最初の大統領令は雇用に関するものでした。これに対して企業はワシントンに出向き、表敬と成功祈願の意を表明するだけでなく、トランプ氏が規制緩和、環境規制の軽減、政府支出拡大で応えてくれることを期待して、雇用と投資の拡大を約束しました。企業だけでなく、労働組合もワシントンを訪れましたが(共和党大統領では異例のことです)、これは一般労働者と労組幹部の格差が拡大していることの表れと思われます(トランプ大統領は労働組合員から多くの支持を得ましたが、組合の方針は左派支持です)。支出拡大が話題となっているうちは全てが順調に進んでいましたが、トランプ大統領がメキシコ国境での壁の建設を命じる大統領令を発動すると、事態は複雑になり、さまざまな議論が起こり始め、メキシコ大統領は予定していたトランプ大統領との会談を中止すると発言しました。ところが、トランプ大統領がツイッターで会談中止は相互の合意であると述べ、報道の数日後には両大統領が非公式に会談することで合意したことから、トランプ氏について「偉大な交渉人」との呼び名が浮上しています。一方で、移民に関する大統領令は大きく報じられ、大規模な抗議行動が発生し、政府は対応に追われています。1月31日(午前8時)には、トランプ大統領が最高裁判事を指名しましたが、これまでの推移から考えると、この人選に関しても「活発な」議論が巻き起こると思われます。
ウォール街や財界(そして世界全体)では、トランプ大統領に関するものも、そうでないものもありましたが、とにかく多くのイベントがありました。大半の中央銀行は、イエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長が述べた「大きな不確実性」を理由に様子見の姿勢を維持し、国際通貨基金(IMF)はトランプ大統領による政策推進と支出拡大が見込まれることを理由に、米国の2017年GDP成長率予想を2.3%(従来予想は2.2%)に、2018年については2.8%(同2.4%)に引き上げました。世界経済に目を向けると、中国の2016年第4四半期GDP成長率は前年同期比6.8%、2016年通年では前年比6.7%(目標は6.5%~7.0%)となり、ユーロ圏の2016年通年のGDP成長率は前年比1.7%という結果となりました。英国の第4四半期GDP成長率は予想を上回る前期比0.6%となり、メイ首相は今年3月にもEU離脱の手続きを開始するとみられます。一方、米国の第4四半期GDP成長率は前期比1.9%となり、予想の2.2%には届きませんでした。米国の他の経済指標は好調で、住宅市場は緩やかな上向きが続き、雇用は堅調で、低水準の失業率からインフレ懸念も浮上しつつあります。大手企業の買収や合併のニュースも相次ぎ、ヘルスケア製品大手Johnson & Johnson(JNJ)は、スイスのバイオ医薬品会社Actelion(ALIOY)を300億ドルで買収することでようやく合意に至りました。イタリアのサングラスメーカーLuxottica Group(LUX)は、フランスの光学用レンズ企業Essilor International(ESLOY)と合併し、時価総額490億ドルの眼鏡メーカーが誕生します。たばこ大手のBritish American Tobacco(BTI)は、同業のReynolds America(RAI)の未保有株57.8%を494億ドルで取得するという、前回の提示額を上回る金額で合意しました。合意に至らなかった案件としては、医療保険大手のAetna(AET)と同業Humana(HUM)の合併は、反トラスト法の観点から連邦地方裁判所によって差し止められました。米国企業の決算発表が続き(これまでに56%の企業が発表済み)、全体としては予想をわずかに上回っていますが、影響は市場の出来高を押し上げるにとどまり、ニュースを賑わすほどではありませんでした(ニュースはトランプ一色でした)。決算発表で特筆すべき点は企業ガイダンスで、多くの経営陣は期待感を持っているものの、現段階では様子見のスタンスにあり、今後のイベント次第で必要に応じて対応していくとの見方を示しました(この点で各社の考え方は私たちと似ています)。
S&P500は大統領選挙後から年末にかけて4.64%上昇しました。年明けの1月に入るとその勢いはやや弱まり、トランプ大統領の就任式が行われた1月20日までに年初来で1.79%上昇した後は一進一退の展開となりましたが、月末にかけて辛うじて0.33%上乗せしました。とはいえ、すべてのセクターで株価が上昇したわけではありません。2017年1月のS&P500指数は2016年1月とは対照的な動きを見せ、幅広いセクターの上昇により月間で1.79%上昇しました。2016年には、S&P500指数は1月に5.07%下落し、2月11日までに年初来で10.51%下落しました(その後、年末までには最終的に22.40%上昇しました)。大統領選挙以降の上昇率は6.51%で、このところは決算と政治ニュースが競って市場に材料を提供しています(個別銘柄に与える影響では決算が勝りますが、市場の地合いとセンチメントに与える影響では政治ニュースが勝っています)。
1月は11セクターのうち8セクターで月間騰落率がプラスになり(12月は9セクター)、各セクターのリターンのばらつきは引き続き拡大しました。最低の騰落率だったのは2016年に23.65%上昇したエネルギーセクターで、原油価格がレンジ内にとどまり(月間では2.0%下落)、トランプ大統領がエネルギー関連の複数のプロジェクトを承認したにもかかわらず、1月は3.64%下落しました。エネルギーセクターは原油価格が105ドルだった2014年6月比では、いまだに26.56%安の水準にあります。2016年に17.81%上昇した電気通信サービスセクターも、通信サービス大手のVerizon(VZ)の下落の影響で、3.50%安と大幅に下落しました。VerizonはYahoo(YHOO)の資産買収が延期され、買収後の資産の活用をめぐる懸念が強まったことから8.2%下落しました。騰落率が3番目に悪かったのは2016年に横ばい(0.01%上昇)だった不動産セクターで、1月はわずか0.12%の上昇でした。一方、月間で最も上昇したのは素材セクターで、コモディティ価格の見通しの改善を背景に4.59%上昇しました。素材セクターに次ぐ上昇を示したのは4.34%の情報技術セクターです。同セクターでは36銘柄中30銘柄が事前予想を上回る好業績を発表しました。1月31日の取引終了後に予想を上回る決算を発表したApple(AAPL)はその後の時間外取引で上昇しており、2月初めの情報技術セクターの上昇に貢献すると思われます。薬価に対する圧力が続くヘルスケアセクターは1月に2.15%上昇しました。1月末に行われた業界代表者らとトランプ大統領との会談では「笑顔」と希望が見られましたが、ヘルスケアセクターは昨年下落(4.36%安)した唯一のセクターであり、引き続き薬価の問題が懸念されます。金融セクターの騰落率は0.12%上昇とほぼ横ばいでしたが、選挙後では20.14%の上昇を維持しています。一般消費財セクターは4.18%上昇しました。消費は、米国の新規雇用の増加が賃金の上昇につながるとの期待から押し上げられた模様です。
決算発表で好業績が相次ぎ、企業が新政権に協力する姿勢を見せていることが背景となり、1月は値上がりした銘柄数が値下がりした銘柄数を前月よりもさらに大きく上回りました。値上がりは327銘柄(平均上昇率は5.38%)と、12月の302銘柄(11月は335銘柄)から増加した一方で、値下がりは176銘柄(平均下落率は4.42%)と、12月の203銘柄(11月は170銘柄)から減少しました。10%以上の上昇は前月の12銘柄から39銘柄(平均上昇率は16.02%)に増加しましたが、10%以上の下落も16銘柄(平均下落率は17.00%)と、12月の12銘柄を上回りました。4銘柄が25%以上値上がりし(前月はゼロ)、2銘柄が25%以上値下がりしました(前月はゼロ)。出来高は、前月比17%減だった12月に対して1月はほぼ横ばい(0.5%増)となり、過去1年間の平均月間出来高を10%下回りました。月中の高値と安値の差で見た変動率は2.49%となり、過去1年間の平均である4.61%を大幅に下回りました(11月は6.25%、12月は4.12%)。1962年以降の年間変動率のチャートにこの1月の数値を加えると、2017年1月の変動率が(55年間の)過去最低を記録したことがわかります。トランプ大統領が発令した大統領令が議会、大統領、そして間違いなく裁判所に立法に関する手続きを要求することを勘案すると、ボラティリティは上昇するという見方が大勢を占めています。
S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは1月に、S&P500の構成銘柄について2銘柄を入れ替えました。動物用診断薬・検査機器メーカーのIDEXX(IDXX)を追加し、ヘルスケア会社Abbott Laboratories(ABT)に買収された医療機器メーカーのSt. Jude(STJ)を除外しました。
利回り、金利、コモディティに関しては、米国の利上げ時期が早まるとの投資家の予想を反映して金利は1月に上昇しましたが、インフレと消費の加速も同時に見込まれていたことから反転し、月中の最高水準から低下して1月の取引を終えました。米国10年国債の利回りは12月の2.45%や2015年末の2.27%から1月末は2.46%に上昇(価格は下落)して月の取引を終えました。30年国債の利回りは3.07%と、12月の3.07%から横ばいでした(2015年末は3.02%)。外国為替市場の取引は活発で、ユーロは12月末の1ユーロ=1.0520ドルから1.0796ドルに上昇して1月を終えました(同1.0861ドル)。英ポンドは12月末の1ポンド=1.2345ドルから1月末は1.2576ドルに上昇しました(同1.4776ドル)。円はドルに対して12月末の1ドル=117.00円から上昇して112.68円で1月を終えました(同120.66円)。人民元は1ドルに対して12月末の6.9448元から6.8817元に上昇しました(同6.4931元)。金価格は12月末の1152.00ドルから1212.40ドルに上昇しました(同1060.50ドル)。原油価格は大きく変動しましたが50ドル台を維持し、12月末の1バレル53.89ドルから52.80ドルに下落して1月を終えました(同37.04ドル)。米国のガソリン価格は、12月末の1ガロン2.309ドルから1月末は2.326ドルに上昇して月の取引を終えました(同2.034ドル)。VIX恐怖指数は10年振りの低水準で推移し、12月末の14.04から1月末は11.99に低下しました(同18.21)。
参考情報|投資家が押さえておくべきポイント
【1月の概況】
2017年1月のS&P500指数は1.79%上昇し(2016年1月は5.07%の下落)、1年間では17.45%上昇しました。
1月中にS&P500指数は3度にわたり終値としての史上最高値を更新しました。NYダウも2万ドルの大台を(終値としても)突破しました。
グローバル市場は大統領選挙後の米国市場のラリーに対する出遅れを取り戻しました。
交渉か、それともつぶやくか / トランプ大統領のご加護がありますように / トランプ大統領、私をこれまでと全く異なる世界へ連れてって / 結局は「トランプ・ワールド」なのか?
【1月の重要ポイント】
トランプ大統領、私をこれまでと全く異なる世界へ連れてって
==> 株式市場は上昇
○米国を除くグローバル市場は、大統領選挙後の米国市場のラリーに対する出遅れを取り戻し、2.67%上昇しました。
*新興国市場は5.10%上昇しましたが、選挙後の上昇は0.77%
*先進国市場は2.42%上昇しましたが、米国市場を除外すると3.57%の上昇。また、選挙後は5.72%上昇しましたが、米国市場を除外すると3.94%の上昇
*S&P500指数の1月のリターンは例年を下回る1.79%の上昇となりましたが、選挙後は6.51%の上昇
○S&P500指数は史上最高値を3度更新し、NYダウは2万ドルの大台を(終値としても)突破しました。
*規制緩和の動きが好感され、VIX指数は10年ぶりの低水準となりました。
*ただし、インフレ上昇と利上げが予想されます。
○消費者がツケを支払わされる可能性もあります。
==> トランプ大統領:偉大な交渉人か、それとも…
○企業は雇用計画と投資案件を手土産に交渉のテーブルに着いていますが、
*何らかの見返りを期待しています。
○メキシコ大統領との公開ツイート合戦から交渉のお膳立てが整いました:正式な協議となるか、それとも非公式の話し合いとなるか
==> トランプ大統領、大統領令に次々に署名
○トランプ大統領は矢継ぎ早に一部の選挙公約の実行に着手しています。国家は分断状態のままで、抗議運動も続いています。月末には最高裁判事の任命で政治的対立を招きました。
○大統領令は手始めに経済と安全保障に照準を合わせています。
*エネルギー関連プロジェクトの認可、規制変更、雇用創出
*移民の問題、国境の壁建設
==> 最高値更新
○S&P500指数は終値としての史上最高値を3度更新し、2,298.37を記録しました。取引時間中に2,300.99を付ける場面があったものの、その水準を維持することはできませんでした。
○NYダウも終値としての史上最高値を更新し、2万ドルの大台を突破しました(しかし、月末終値は大台割れとなりました)。
○VIX指数は10年ぶりの低水準? 恐怖感が全くないことが逆に懸念されます。
==> 2017年1月のパフォーマンス
○S&P500指数は2016年12月の2,238.83から1.79%上昇し2,278.87で取引を終えました。2016年11月8日の終値2,139.56からの上昇率は6.61%でした。NYダウは昨年12月の19,762.60から0.51%上昇し、19,864.09で取引を終えました。また、月中に初めて終値で2万ドル台を超えました。
○原油価格は昨年12月の53.89ドルから2.0%下落し、52.80ドルで取引を終えました(2015年末の37.06ドルから42.5%上昇)
○米国10年国債利回りは昨年12月の2.45%から2.46%に上昇して取引を終えました(2015年末は2.27%)。
○金価格は昨年12月の1,152.00ドルから5.2%上昇して1,212.40ドルとなりましたが、2015年末の1,060.50を14.3%上回っています。
○英ポンドは対ドルで昨年12月の1.2345ドルから1.2576ドルに上昇し(2015年12月は1.4776ドル)、ユーロは対ドルで1.0520から1.0796に上昇し(同1.0861ドル)、円は対ドルで117.00円から112.68円に上昇しました(同120.66円)。
○VIX恐怖指数は昨年12月の14.04から11.99に下落して10年ぶりの低水準で取引を終えました(2015年末は18.21)。
==> 各国中央銀行は様子見姿勢
○トルコ中央銀行はオーバーナイト金利を0.75%引き上げました(現行9.25%)。
○しかし、大半の中央銀行は必要な場合には行動すると表明はしたものの、様子見姿勢を維持しました。
==> S&P500指数構成企業の56%が業績発表を終えましたが、第4四半期の業績は過去最高となる可能性
○比較の問題から前年比での業績改善は難しいものではありませんでしたが、2016年第4四半期の利益は同年第3四半期から5.1%増加しています。
○売上高は前年比5.1%増、前期比4.4%増となりました。2016年通年では2.3%増にとどまりました。
○今後の業績見通しは現状維持もしくは改善となり、市場では楽観的なムードが引き続き支配的となっています。
○しかしながら、企業発表の業績見通しは一層の不透明感を示しています。
*楽観的とか悲観的というのではなく、ただ「分からない」ということです。
==> 2016年第4四半期の配当は記録的水準、しかし配当の伸びは引き続き鈍化
○米国企業はレパトリの一部を配当に回すと思われますが、より多くの金額が自社株買いとM&A資金に回されるとの予想が殆どです。
==> 成立した買収案件と白紙になった案件
○ペットケア製品、チョコレート、食品、飲料等の製造に従事するMars Inc.は、ペット向けヘルスケアサービスを手掛けるVCA (WOOF)を77億ドルで買収すると発表しました。
○イタリアのサングラスメーカーLuxottica Group(LUX)は、フランスの光学用レンズ企業Essilor International(ESLOY)と合併し、時価総額490億ドルの眼鏡メーカーを設立する計画を明らかにしました。
○たばこ大手のBritish American Tobacco(BTI)は、同業のReynolds America(RAI)の未保有株の57.8%を、より一層のプレミアムを上乗せした494億ドルで取得する取引を完了したと発表しました。
○ネットワーク機器大手のCisco(CSCO)は新規株式公開を計画していたAppDynamicsを37億ドルで買収する計画について公表しました。
○ライバル社も関心を示す中、数カ月に及ぶ交渉を経て、ヘルスケア製品大手Johnson & Johnson(JNJ)は、欧州最大のバイオ医薬品会社Actelion(ALOIY)を300億ドルで買収すると発表しました。
○エネルギー企業WGL Holdings(WGL)は、AltaGas(ATGFF)を約64億ドルの現金で買収することを公表しました。
○通信サービス大手のVerizon(VZ)がケーブルTV大手のCharter Communications(CHTR)の買収を「検討している」と報じられました。
○米国の司法当局は、医療保険会社Aetna(AET)による同業Humana(HUM)の買収計画について、反トラスト法に違反するとして認可しないとの判断を示しました。
==> 12月の雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比15万6,000人増と、予想の17万5,000人増を下回りました。一方、11月分は従来発表の17万8,000人増から21万4,000人増に上方修正されました。2016年の雇用者数の増加はネットで220万人となり、6年連続で年間200万人を上回りました。
○失業率は2007年8月以来の最低水準であった4.6%から4.7%に上昇しました。
○労働参加率は前月の62.6%から62.7%に小幅上昇しました。
○週平均労働時間は横ばいの34.3時間でした。
○時間当たり賃金は前月比0.4%増加しました(11月の25.90ドルから26.00ドルに増加)。
==> トランプ大統領の政策に応える形で、複数の企業が米国内での雇用を増やす意向を表明
○Amazon(AMZN)は新たに10万人を雇用すると発表し、Wal-Martは1万人の人員増計画を約束しました。
*Apple(AAPL)、Alibaba(BABA)、Foxconnも雇用を増やす意向を明らかにしました。
○しかしながら、小売業界では人員削減が進んでいます。
*百貨店大手Macy’s(M)はホリデーシーズンの売上不振を理由に、予定していた閉鎖店舗数をさらに増やして100店舗(当初は63店舗)とし、併せて10,000人(当初は3,900人)の人員削減を行うと発表しました。
==> 経済指標関連では
○12月のマークイット製造業PMIは11月の54.1から54.3に上昇しました。1月の速報値は55.1となっています。
○12月のマークイットサービス業PMIは53.9と前月の54.6から低下しました。また、12月のISM非製造業景況指数は57.2と予想の56.8を下回りました(11月も57.2)。
○12月のISM製造業景況指数は54.7と、予想の53.8を上回り、11月の53.2から大きく上昇しました。
○12月の消費者物価指数(CPI)は予想通り前月比0.3%上昇し、CPIは2016年通年では前年比2.1%上昇となりました。コアCPI(食品とエネルギーを除く)は12月が前月比0.2%上昇(予想通り)、2016年通年では前年比2.2%上昇でした。
○12月の生産者物価指数(PPI)は、前月比では予想通り0.3%上昇、前年同月比では1.6%上昇となりました。コアPPIは前月比では予想の0.1%上昇に対して0.2%上昇、前年同月比では1.6%上昇でした。
○12月のPCE価格指数は前月比0.2%上昇し、2016年通年では前年比1.6%上昇となりました。コアPCE価格指数は前月比が0.1%上昇、2016年通年が前年比1.7%上昇でした。
○12月の小売売上高は11月の前月比0.2%増に対して0.6%増(予想は0.7%増)、自動車を除く小売売上高は予想の0.5%増に対して0.2%増となりました(11月は0.3%増)。
○11月の企業在庫は予想の前月比0.6%増に対して0.7%増となりました。10月は0.2%減でした。
○12月の自動車販売台数は値引き販売の継続を背景に好調な数字となり、2016年通年では過去最高を記録しました。しかし、2017年は金利上昇による自動車ローン負担の増加を背景に「厳しい」年となることが予想されます。メーカー別の12月の米国販売台数は、General Motors(GM)が前年同月比10%増(過去10年間で最大の伸び)、Ford(F)が0.1%の微増、Fiat Chryslerが10%減でした。
○米国の11月の貿易収支は、輸出が前月比0.2%減、輸入が同1.1%増となった結果、赤字額は10月の422億ドルから452億ドルに拡大しました。
○11月の製造業受注は予想の前月比2.5%減に対して、2.4%減となりました。10月は、当初発表の2.7%増から2.8増に上方修正されました。
○12月の鉱工業生産は前月比0.8%増と、予想の0.6%増を上回りました。12月の設備稼働率は11月の74.9%から75.5%に上昇しました。
○11月の建設支出は前月比では予想の0.6%増に対して0.9%増、前年同月比では4.1%増となりました。
○12月の耐久財受注は、主要項目の国防資本財が前月比33.4%減少したことを背景に、前月比は予想の2.3%増に反して0.4%減、前年同月比では1.6%減となりました。
○2016年第4四半期のGDP成長率速報値は、予想の前期比年率2.2%を下回る1.9%となり(改定値は2017年2月28日、確報値は3月30日に発表)、第3四半期の3.5%から低下しました。GDP価格指数は第3四半期の前期比年率1.4%上昇から2.1%上昇に加速しました。
○ユーロ圏は予想を上回る経済成長を見せ、2016年のGDP成長率は前年比1.7%となりました。12月の失業率も9.6%と、2009年5月以来の低い水準に低下しましたが、残念ながら高止まりしている点に変わりはありません。
==> 住宅市場関連では
○1月のNAHB住宅市場指数は予想の69に対して67となり、12月の数値も当初発表の70から69に下方修正されました。
○12月の新築住宅着工件数は年率換算122万6,000戸(予想を若干超過)、住宅建築許可件数は同121万戸(予想を若干未達)となりました。
○12月の中古住宅販売件数は年率換算549万戸(予想は555万戸)で、前年同月から0.7%増加しました。
○12月の新築住宅販売件数は年率換算53万6,000戸と、予想の同59万3,000戸を下回りました。
○12月の中古住宅販売仮契約指数は予想の前月比0.6%上昇を大幅に上回る1.6%上昇となり、11月の2.5%低下から力強く反発しました。
○11月のFHFA住宅価格指数は予想通り前月比0.5%上昇し、前年同月比でも6.1%上昇しました。
○11月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数は、前年同月比5.6%上昇しました。
==> S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、動物用診断・検査機器メーカーのIDEXX Laborites(IDXX)を新たにS&P500指数に組み入れた一方、ヘルスケア会社Abbott Laboratories(ABT)による買収に伴い、医療機器メーカーのSt. Jude(STJ)を同指数から除外しました。
==> その他の注目材料は以下の通りです。
○Ford(F)はメキシコでの小型車向け新工場の建設を取り止め(16億ドル規模)、代わりにメキシコの既存工場を拡充し、ミシガン州にある米国の工場に7億ドルの投資を行うと発表しました。
○ファストフード・チェーンのMcDonald(MCD)は、2,200店舗を展開する中国事業の株式の80%を21億ドルで売却することで合意したと発表しました。
○ドイツの自動車大手Volkswagen(VLKAF)は、43億ドルの制裁金を支払うことで米司法省と合意し、排ガス試験での不正ソフトウェア使用に関して罪状を認める方針を明らかにしました。
○米環境保護局(EPA)が、ディーゼル車で排ガス不正を行った疑いがあるとして、Fiat Chrysler(FCAU)を告発しました。
○米連邦取引委員会(FTC)が半導体メーカーのQUALCOMM(QCOM)を独占禁止法違反で提訴しました。
○米証券取引委員会(SEC)は、インターネット大手Yahoo!(YHOO)の過去のハッキング問題に関して、開示時期が適切であったかどうかについて調査を行っていることを明らかにしました。
○ドイツの銀行大手Deutsche Bank(DB)は、住宅ローン担保証券の不正販売問題で、72億ドルの制裁金を支払うことで米司法省と和解しました。同社は2016年第4四半期に12億ドルの引当金を計上することも発表しています。
○バイオ医薬品企業のBristol-Myers(BMY)は、同社が計画する新たな肺がん治療薬(オプジーボとヤーボイの併用療法)の迅速承認申請を行わないことを発表しました。
○中国のネット販売最大手のAlibaba(BABA)が、2028年までのオリンピックのスポンサー契約を結びました。契約の詳細は明らかにされていませんが、過去、スポンサーは4年間のオリンピック・サイクルで1億ドルを拠出しています。
○英最高裁判所は、EU離脱手続きの開始には議会承認が必要との判断を下しました。今回の判決は政府にとってもう一つ課題が増えるとはいえ、状況を大きく変えるものではないと受け止められています。
○ハーバード大学の総額357億ドル(Southwest Airlinesの時価総額に匹敵)の寄付基金を運用するHarvard Management,は、資産運用を外部に委託するのに伴い、人員を半分に削減することを発表しました(現在は230名)。同基金の運用成績はベンチマークを下回っています。
○スイスのダボスで世界経済フォーラムの年次総会が開催されました(今年のテーマは「迅速で責任あるリーダシップ」でした)。会議に集った世界の政財界のリーダーたちは、講演を行い、会議の期間中に莫大なマネーを費やし、会議の成功と共通の認識、そして一つのプランを宣言しました(来年再びこの地に戻って来るための)。
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト
このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはこちらをご参照ください。
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