エリートに対する不信・反逆の流れ

著者:菊川弘之
投稿:2016/10/04 11:32

当てにならない世論調査

 南米コロンビアで2日、政府と左翼ゲリラ・コロンビア革命軍(FARC)が交わした和平合意への賛否を問う国民投票の結果、「反対」が小差で「賛成」を上回った。選管当局によると、開票率99・59%で、和平合意の内容に「反対」は50・23%、「賛成」は49・76%。
 投票前の複数の世論調査では、「賛成」が5~6割で、3割台で推移していた「反対」を上回り、地元メディアは和平合意が承認される可能性が高いと伝えていた。

 英国のEU離脱を問う国民投票でも、事前の世論調査は当てにならなかった。

 米国大統領選挙第1回のTV討論会では、CNN世論調査でヒラリー候補優勢が伝えられ、マーケットはトランプリスク後退から一旦はリスクオンとなっているが、このままヒラリー大統領誕生と捉えるのは時期尚早。CNNなどの統計的な調査ではヒラリー候補優勢であったものの、CNBCなどのネット投票ではトランプ候補優勢となっている。CNNは「300人の科学的調査は、10万人のネット調査より良い判断基準になる」と指摘しているが、エリートに対する不信・反逆の流れを無視すべきではない。日本でもエリートほど大衆の気持ちを見誤っている。この既存体制に対する不満の流れは、世界的に感染しており、「トランプ大統領誕生」なら、一気に拡大していく事となろう。

 4年前のTV討論会第1回目では、ロムニー候補が優勢だった。現段階で勝者総取り方式の大統領選挙でのヒラリー優勢に変わりはないものの、2回・3回目のTV討論会を前に、ヒラリー勝利を決め付けてポジション取りをするのは避けたいと考える。特に、今回はウィキリークスが大統領選挙前にクリントン候補の「重大情報」を公開すると述べており、波乱の種は残ったままだ。7月のアメリカ民主党全国大会開幕の前日に、ウィキリークスの告発により、党全国委員長のデビー・ワッサーマンシュルツ氏が辞任した件を忘れてはいけない。

 大統領選挙直前やTV討論会に合わせて、国益に反する重大な証拠や、健康問題に関する否定できない証拠などが出てくると、「風」が一気に吹いて流れが一変するリスクがある。

 ドイツ銀行問題が一服し、移民の是非を問うハンガリー国民投票も有効投票率が成立条件の過半数に届かず不成立となった中、ISM製造業景気指数に続き、週末の雇用統計が強気となった場合、再度、年内利上げ観測が高まりドル買いが進みそうだが、9日(日本時間10日)に第二回のTV討論会を控え、8月以降のレンジ(100ー105円)を上抜けるような値動きにはなり難いと予想する。90日移動平均線(103円台前半)~9月高値(104円台前半)で戻り一杯となるか?
菊川弘之
日産証券調査部 主席アナリスト
配信元: 達人の予想