米長期金利の上昇で株価は大幅安

優利加さん
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昨日の米国株式相場は高安まちまちとなった(DJIA 194.55 @35,813.80, NASDAQ -79.62 @15,775.14, S&P500 +7.76 @4,690.70)。ドル円為替レートは114円台後半の前日比円安水準での動きだった。本日の日本株全般は下げる銘柄が多かった。東証1部では、上昇銘柄数が486に対して、下落銘柄数は1,600となった。騰落レシオは79.39%。東証1部の売買代金は2兆7804億円。

TOPIX -24 @2,019
日経平均 -471円 @29,303円

バイデン米大統領が米連邦準備制度理事会(FRB)のパルエル議長を(ハト派のブレイナード理事ではなく)再任すると発表した。これにより量的金融緩和の縮小(=テーパーリング)が予定通り進むだけでなく、利上げが当初予想よりも早まるとの見方が強まり、米長期金利は1.6%台後半まで上昇した。パウエル議長は「完全雇用の実現」と「インフレ阻止」という非常に難しい使命を背負い再任された。長期金利の上昇は企業の設備投資意欲を挫くだけではなく、割引率である資本コストを上げるため理論株価を引き下げる。そのため株価をダブルの力で押し下げるが、遠い将来のキャシュフローの成長を織り込んでいる成長株の理論株価(=現在価値)はより大きく下落する。その結果、ハイテク成長株が多いナスダックは下落した一方で金融株の比重が高いダウ工業株30種平均は上げた。この流れを受けて、東京市場でも値がさハイテク成長株を中心に母広い銘柄が売られた。日経平均は一時560円安まで急落した。他方、米長期金利の上昇で恩恵を受ける銀行株や、円安・ドル高により採算が良くなる自動車株は買われた。

足元の日本企業の業績見通しは非常に好調である。1年先のTOPIXベースの一株利益EPSは138円であり、2018年10月の134円を超えており、過去最高を更新した。しかし、株価は下げている。株価P=予想EPS x 予想PERで決まるので、これは予想EPS(=企業業績の見通し)が上がる以上に予想PER(=投資家の楽観・悲観度合い)が下げているためである。では、なぜ企業業績が足元で上昇しているにも拘わらず投資家の先行き楽観度が下げているのだろうか。その答えは内閣の経済政策が日本経済を中長期的に押し上げるものであると評価されていないからである。小泉政権発足後に始まった株価の上昇トレンド、第2次安倍内閣発足後の株価の上昇トレンドはどちらも経済政策が引き金となった。岸田内閣の経済政策は55.7兆円という過去最大規模にも拘わらずそのような引き金になるとは評価されていない。政府支出乗数が低いものが多く、また長期的にイノベーションを促すような支出(例えば教育)が不足しており、日本経済はデジタル化・ジョブ型雇用への転換の遅れなどが構造的問題と認識されており、海外投資家は日本株投資の拡大を躊躇している。

日経平均の日足チャートを見ると、長大陰線で10日移動平均線と25日移動平均線を一気に下抜けた。米長期金利の上昇が引き金となったので、これが一時的なものか持続的なものか次第で中期トレンドは決まるだろう。

33業種中25業種が下げた。下落率トップ5は、サービス業(1位)、精密機器(2位)、情報・通信(3位)、金属製品(4位)、電気機器(5位)となった。

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