長期投資は勿論、半年から1年以内に一旦利益を確定するトレーディングのためにも株価のファンダメンタルズ分析は重要である。株価は理論的に必ず「株価P=予想EPS X予想PER」で決まる。したがって、予想EPSの変化の方向が株価の変化の方向を決定するため、業績見通しが良くなっていく企業の株価は上昇トレンドを描き、反対に業績見通しが悪化していく企業の株価は下落トレンドを描くのである。これをトレーディングで実践するには、予想EPSを四半期ごとに観測し続け、時の経過と共に理論株価を修正し続ける。しかし、どの程度上げるのか下げるのかは予想EPSの変化だけでは決まらない。株価は予想PERの変化の影響も受けるからである。予想PERが大きく変動する原因は多くの場合、事業環境の大きな変化である。事業環境がその企業にとって良い方向へ動いている場合、予想PERは拡大して株価を押し上げる力が働く。反対に事業環境が悪化している場合、予想PERは縮小して株価を押し下げる力が働く。巷に溢れている株本では、「予想PER=株価P÷予想EPS」で株価の割安度を表し、「PBR=1」のような明確な基準がないと説明してあるが、これでは理解が浅すぎる。予想PERの本当の意味は先行きに対する「楽観度」・「悲観度」であり、この数値は投資家の期待収益率R(=株主資本コスト)と予想EPSの期待成長率Gの差(R-G)の逆数で決まる。但し、予想PERはその国の(その企業の)その時代の期待経済成長率を反映して変動する。例えば、投資家の期待収益率が8%、期待成長率が6%とすると予想PERは50倍となる。1989年のバブルの頃、日本株の予想PERは50~60倍が普通でありこの数値が「基準値」だった。2021年9~10月の日経平均の予想PER基準値は予想PER=1/(0.08-0.02)=16.7倍である。バブル経済当時の日経平均ベースの予想EPSのピークは700円弱だったが、1989年12月29日には日経平均は終値で38,915円となった。この時の予想PERは約55倍で、それほどに未来に対して期待が大きく楽観的だった。それに対して2021年9月14日時点の日経平均の予想EPSは2,169円とバブル経済時の3倍もあるのに、株価は30,670円(終値)であった。目先の業績見通しの良し悪しだけなら、2021年9月の方がはるかに良いが、株価を決定するもう一つの要素である予想PERが楽観的どころか悲観的過ぎてバブル経済時の3分の1以下(12~14倍)まで低下している。これが当時と比べると強烈に株価を押し下げる力として働いているから業績見通しが過去最高でも株価が期待したほど上がらない理由である。チャート分析から「帰納的」に導き出した「定石」を最大限活用しながらも、このように、「演繹的」に「原理原則」から理論株価を算出し、その変化で実際の株価の変化の裏付けを取り続ける。これが優利加の実践している「理に適った株式トレーディング」の基本となっている。