日経平均株価がさえない中、社会課題の解決にあてるソーシャルボンド(社会貢献債)や環境に使途を絞ったグリーンボンド(環境債)といったSDGs債の発行を発表した企業の株価が好調だ。ESG(環境・社会・企業統治)の取り組みが本格化するとの期待から思惑買いが広がる。機関投資家は企業が調達資金で企業価値を向上させられるかを注視しており、実績を証明できれば、関連銘柄の株価の押し上げ要因となりそうだ。
「SDGs債への取り組みで企業を選びたいというニーズが出てきている」。立花証券の担当者は話す。人気が高いのはトヨタ自動車。3月に使途を環境・社会問題の解決につながる事業に限るサステナビリティボンドを発行。同証券では、70代以上の顧客が「SDGsやESGというテーマを良く目にする」と話し、買い付けが増えているという。
今年、SDGs債を発行した銘柄の株価は好調だ。28日終値は4月末と比べ日本郵船は27%高、西武ホールディングスは7%高、SCSKは6%高。4%下落した日経平均と対照的だ。
国内のSDGs債発行額は2020年に2兆円を超え、16年比で47倍と急増した。
日本郵船のIR担当者は「国内外問わず機関投資家から問い合わせは増えている」と話す。同社は日本で初めて脱炭素に向けた中長期の経営戦略に用途を限定するトランジションボンド(移行債)を発行。国内運用会社のファンドマネージャーは「SDGs債発行会社は投資対象として注目度が上がっている」と話す。
思惑買いも広がる。みずほ証券の三浦豊氏は「SDGs債発行により企業のESGへの本気度をとらえる投資家に加えて、株価上昇を期待したヘッジファンドや個人が買っている可能性がある」と指摘する。
国内運用会社が注目する背景の一つは、欧州で3月から運用会社向けに適用が始まった「サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)」だ。運用会社に気候関連データの開示を求めるもので、投資先の企業が情報開示しなければ規則への対応が難しくなる。
三井住友DSアセットマネジメントの坂口淳一氏は「7月から投資先と気候変動への取り組みについて対話している。開示不十分な会社には助言し、脱炭素戦略の実効性を重視する」と話す。
SFDRのようにESG関連の情報開示が強化される中で、運用会社にとってSDGs債発行銘柄は都合がよいうえ、環境に配慮しているふりをする「グリーンウォッシュ」の排除にもつながり得る。別の国内運用会社幹部は「SDGs債を発行しているか否かで企業を選別する時代が来るかも」と指摘する。
海外勢は冷ややかだ。CLSA証券の釜井毅生氏は「海外勢はESGを気にしているが、(実際の)投資判断ではまだ重要視していない」と指摘。ESGで企業の競争力が向上するかを注目しているという。
足元の株価は好調だが、期待先行の感は否めない。国内のファンドマネージャーも「企業が調達資金でどんな取り組みをして、企業価値向上につなげたか確認したい」と話す。調達資金を活用できるかが、株式だけでなく、SDGs債の発行市場をも左右しそうだ。(長江優子)
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#SDGs債に見る本気度
2件のコメントがあります
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こんにちは、堅実さん。コメント感謝します。
数日前まで夏バテしてましたが鰻と梅干しを食べて
夏バテ解消しました。
この先市場は今まで置き去りにされていた環境を中心に
景気を潤して牽引していくと思います。
こんにちわ
情報、ありがとう、ございます。
夏バテしないように、しましょう。